第一話 転生したらシャーロット・ラーナー公爵令嬢でした
私の現世の名前はシャーロット・ラーナー。なぜ現世の、と付け加えて説明したかというと簡単だ。私には前世の記憶がある。いわゆる転生者だ。
前世での最後の記憶は、勤め先のブラック企業から午前1時を越えて帰宅し、疲れ果てて寝てしまったところで途切れている。
次に意識が戻った時には赤子としてオギャーオギャーと元気な産声をあげながら現世に爆誕していたというわけだ。
前世の私……もしかして過労死したのか?いや、もう細かいことは考えないでおこう。
とりあえず説明した通り私は前世の記憶持ちの転生者だ。
転生したこの世界は、よくありがちな乙女ゲームの世界だった。
私が乙女ゲームの世界に転生したと分かったのは、生まれ変わってすぐのことだった。
生まれたばかりの私を取り上げた産婆と思われるおばあちゃんは私の母であろう女性に私を抱かせた。
母であろう女性は私を優しく抱きしめて、愛おしげな瞳を向けながら「生まれてきてくれてありがとう。私は貴女の母、エリザベス・グレイス・ラーナー。貴女は私の娘、シャーロット・ラーナーよ。これからよろしくお願いしますね」
私の母らしいその女性はそれはもう美しい女性であった。金髪の髪と青色の瞳をしていて、まるでお姫様のような美しい女性だった。
うん?お姫様?エリザベス・グレイス・ラーナー?私の名前はシャーロット・ラーナー、どこかで聞き覚えがあるような……。
私がそんなことを考えていたら、バンッと扉が勢いよく開く音がして、男性の「産まれたかっ!?」という声がして私の思考は一時中断された。
部屋へ入ってきた男性は私の顔を覗き込んで私の頭を優しく撫でた。そして私を撫でながら「私は君の父親だよ。父親のロバート・ラーナーだ。君が産まれてきてくれて私は本当に幸せだ。これから君を守り、愛し、慈しんで育てることを誓うよ」とこれまた美形の父親らしき男性に優しい笑みを向けられながら私は悟った。ああ、この世界は乙女ゲームの世界なんだ〜と。
私の名前はシャーロット・ラーナーで、母親はお姫様みたいに美人のエリザベス・グレイス・ラーナー。そして父親は銀髪碧眼の美形で、名前がロバート・ラーナー。ここまで乙女ゲームの登場人物の名前と容姿が一致すれば認めざるを得ない。
私は乙女ゲームの悪役令嬢であるシャーロット・ラーナー公爵令嬢に転生してしまったのだ。