表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したから平和に生きたい  作者: rab
平和な暮らし
8/23

ニワトリ

今日は金曜日ですね。嬉しい。

「ぬいぐるみさん、貸してくれてありがとう!またモフモフさせてね」

「うん、何時でもいいよ」

「やった!じゃああした、あした遊びに来て!」

「分かったよ、また明日来る」

「うん!ぜったい、ぜったいぬいぐるみさん持ってきてね!」

「はは、うん。絶対ね」


ニワトリが本命だ。


「ノエル、またね!おじさん、送ってくれてありがとうございました!」


礼儀正しい子だなぁ。


ジャックをローレンス家まで送った後はアランさんの家に向かった。アランさんの家に着くと、クロエはさっさと家の中へと入ってしまった。アリスは少し名残惜しそうだったが、素直にニワトリを返してくれた。

アリスと会う約束をして別れた家路で、俺は父さんと話していた。


「ノエル、そのぬいぐるみは外に持ってきて良かったのか?」

「うーん…まあ、大丈夫かな…」


持ってくるつもりは無いし、持って来ていなかった。ニワトリがどっかから降ってきたのだ、家に置いてきたのに。呪いの人形か?


今日は家を出る前から、ずっと考えていた。スキル画面が出た時点で大体予想はついている、というか薄々分かっていたことだがこのニワトリ、俺の固有スキルだな。

あのステータス画面が本物なら、俺の固有スキルは『鶏と卵』だった。ニワトリが鶏なんだろう。多分、自分の能力が見られるとか鑑定とかのそういう類のスキルに違いない。

ただ、ニワトリが固有スキルだとすると幾つか疑問が浮かび上がる。まず、前世で死ぬ寸前にこのニワトリを渡してきたあの変な人は何者だったのか。前世には固有スキルなんてトンデモ概念は無かったし、この世界でも固有スキルは生まれつき持っているものという認識が一般的だ。スキルを渡す能力なんて図鑑にも載っていなかった。人にスキルを渡す事が出来るような人物が、一体あの世界で何をしていたのか?


そしてもう一つ。


卵要素どこ?


鶏はニワトリだとしても卵なんてどこにも見当たらないものだから、まさかな…と思う程度にしか考えてなかった。ステータス画面が出る以外はただのぬいぐるみだって思い込んでたのに、ワープしてきちゃダメだ。


「父さん、これって何時から家にあった?」

「んん?さあ、いつの間にかお前が持ってたぞ。家のどこかに落ちてたのを拾ってきたんじゃないか、あの家は父さんの父さんの父さんの時代からあるからな。父さんが知らない物も沢山置いてある」

「そっか…」


もしかしたら卵も何処かに落ちているのかも…帰ったらちょっと探してみようかな。


しばらく歩いていると家に着いた。

父さんはまた農場へと向かっていった。俺はもう外に出る気力は無かったので、大人しく家に入った。

寝室を覗いてみると、母さんと妹はまだ寝ていた。俺が出掛ける前から寝ていたのに…夜に眠れなくなるぞ。

家を出る前にニワトリを置いていた椅子を見てみたが、案の定何も無かった。ニワトリは手元にある。


家のクローゼットとか物置を片っ端から探そうかと思ったが、やめた。二つ目のクローゼットを開けた所で本日の体力は尽きた。

これはジャックに何も言い返せないな。うーん、モヤシです。


あまり体力を使わないように見える範囲だけ探すようにした。家の主要な場所は大体探したが、結局夕飯時になっても何も見つからなかった。


「ノエル、探し物は明日にしたら?とても疲れた顔してるわよ」

「うん…」

「大丈夫?とても顔色が悪いわよ…そんなに大事なものなの?」

「いや、大事でも何でもないよ。ちょっと疲れちゃっただけ」


母さんはとても心配してくれるが、俺は別に切羽詰まってる訳でも無く、卵が特に何か大事な物とも思っていない。あるかどうかも分からないし、顔色が悪いのはただ単に体力が無いだけである。

昼間は外に出て農場まで歩いたし、もうクタクタだ。


俺が探し物をしている間、ニワトリはアビーに遊ばれていた。アビーはニワトリをふわふわしたり、叩きつけたり、食べたりしてる。俺のスキルが妹に食べられている…


夕飯を食べ終わり、寝室でアビーのヨダレ塗れになったニワトリを拭いている時、ある事を思いついた。

ニワトリをしっかりと手に持ち、思い付きのままに卵、と念じてみた。


…何も起こらないか。

ステータス画面とかワープの現象は、故意かどうかに関わらず念じた時に起こってたので何か出るんじゃないかと思ったが。


と、結論付けようとした所でニワトリが光始めた。なんだ!?


「眩しっ!」


目を開けられない程強い光がニワトリから放たれた。

全身から光を放つニワトリは十秒程寝室を照らした後、ただのぬいぐるみに戻った。ああ、眩しかった。


やっぱり何か起こったな。今の現象はなんだったんだろうか。産んだ?


どこかに卵が落ちてたりするかと思って辺りを探してみるが、特に何も無い。ただ光っただけなのか…もう一度、念じてみよう。


先程と同じようにニワトリを持って卵、と念じたが今度は何も起こらなかった。

条件があるのだろうか、ヨダレ塗れにして叩きつけるとか。


このニワトリ、本当に謎だ。

とりあえず、拭いても落ちなかったアビーのヨダレを洗いに行くことにした。

ちょっとくさい。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ