異世界転生
引き続き何話か投稿します。
ノエル・イーストウッド
Lv.1
生命:20/20
魔素:40/40
持久力:5
筋力:7
耐久力:6
魔力:35
固有スキル:【鶏と卵】
コモンスキル:なし
……………?
ステータス画面みたいなものが出てきた。
というかステータス画面だった。
俺のフルネームとレベルと能力、スキル?らしき記述がある。教えてくれって祈ったけど、まさかデータ化されて出てくるとは思わなかった…
少し驚いてニワトリの頬を握り潰してしまった。ごめんよ…しかし驚いたお陰で先程よりは大分落ち着いた。
まだ少し胸に残った不安をよそに、とりあえず観察してみる。
青い板の大きさは縦横それぞれ30cm程で、厚さはほぼ無い。少し透けているため、薄い青の向こうからこちらを覗くニワトリが見える。
板に触れようとすると、手がすり抜けてしまった。すり抜けたまま手を横に動かすが、何の感触も無くスっと通り抜けた。ステータス画面には何の変化もない。
スライドしたら何か出てくるかな、とか思ったけど…これ以上の記述は無さそうだ。
作りとしては結構簡素なんだな。
次は内容を見てみようかな。気になる所が…
「ほら、今日の朝は野菜のスープとパンだ。冷めないうちに食べるんだぞ」
カタッ、とニワトリの隣に、湯気の立ったスープと、少し黒いパンが乗った皿が置かれた。
ビックリした、朝食なんて完全に意識の外だった。前世では結構なゲーム好きだったからか、ありがちなステータス画面にちょっと夢中になりかけていた。朝食後にまた詳しく見よう。
と、ステータス画面がそのまま出ていた事に気がついた。はっと父さんの顔を見る。
「どうした?」
…見えていないのかな?
ニワトリを手に持ち、恐る恐る父さんに差し出す。
「…ああ、そのぬいぐるみか。隣の椅子に座らせておいてもいいぞ。母さんはまだ起きてこないだろうしな」
「…うん」
父さんはまたキッチンの方へ向かっていった。ステータス画面には触れられなかった。どうやら見えていないようだ。
…それとも気にしてないだけだろうか?
言われた通り、ニワトリを隣の椅子に置こうとして気がついた。このステータス画面はどうやって閉じるんだろう…
そもそもどうやって開いたんだっけ?
もし、念じたことで開いたのであれば、さっきと逆のことを祈れば閉じるかもしれない。
流石に開きっぱなしなのも気になるので閉じたい。ニワトリを持ちながら、閉じろ、と祈った。
ステータス画面はあっさりと消えた。
念じるだけで開閉出来るんだな…覚えておこう。
ニワトリを隣の椅子に乗せ、手を合わせる。
「いただきます」
暖かいスープを少し飲み、パンを頬張りながらまた考え始める。
食べながら先程までの情報を整理する。
唐突に現れたステータス画面のお陰で、もしや?と思い当たる事があった。
「…」
唐突に蘇った記憶。
自分が死ぬ場面。
ステータス画面。
これはもしかして、異世界転生なのでは?
前世の記憶があるだけなら、ただ転生しただけの可能性も考えられたが、ステータス画面が出るのは大分現実離れしている。
明らかに転生前の世界とは違う。
転生前の世界にもそういう概念はあったし、知っていた。しかし実際に転生し、当事者となると色々と考え方が違ってくる。
もし本当に異世界なら、身の振る舞い方を考えなければならないだろうな…
前世の記憶を持っていることが、この世界でどのような扱いなのか分からない。
もしかしたら迫害されるかもしれない。
俺だけでなく、両親やまだ産まれて間もない妹にも被害が広がるかもしれない…
この世界を知るまでは、知っても安全だと分かるまでは、誰にも言わない方が良いだろう。
それに、先程見たステータス画面にも、見慣れない言葉があった。
知っている言葉でも意味が違うという事もあるかもしれない。
…まだ分からないことが多すぎる。
この世界を知るところから始めよう。
そう結論づけたところで、丁度朝食を食べ終わった。