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転生したから平和に生きたい  作者: rab
平和な暮らし
2/23

目覚め

最初なので幾つか投稿します。

また目が覚めた時には、毛布に包まれていた。

いや、目が覚めたというよりは思い出した、と言った方がいいかもしれない。


高度な文明の中で、普通の家族に囲まれて普通の生活を送っていたこと、突如起こった災害に巻き込まれたこと、死に際で変な人に出会って変なものを渡されたこと。


どれもこれも鮮明に覚えており、まるで本当に経験したかのようである。

ようである、というのは、自分自身が夢じゃないかと疑ってるからだ。


本当に俺の記憶か?


いくら記憶があっても疑ってしまう。


何故なら今、俺は3歳だからだ。

昨日まで、父さんと母さんに甘えることしか考えてなかった。新しく産まれた妹に、兄らしくしてみようという気持ちと、両親の注意が妹に行ってしまったことへの嫉妬の気持ちがあった。


…全部頭から吹っ飛んだ。


どうして冷静に分析出来てるんだろうか?

3歳が自分の気持ちを客観的に分析出来るのは異常だ。

ほんとに3歳か?こっちの方が疑わしくなってきた。

でもこの前、3歳の誕生日おめでとうって言って貰えたのは覚えてる。この前っていつだっけ。

記憶が二重にあってよく分からなくなつてきた。


名前はなんだっけ…そうだ、ノエル。

ノエルだ。そう呼ばれていたはず。

思い出した方は…ダメだ、覚えていない。


自分の手を見る。

両腕ともある。右腕は欠けてもいないし、手のひらは結構小さい。

記憶の中の俺の手は3倍くらい大きかったはず。


何度か開閉してみるが、自分の思うように動く。

ということはこっちが現実だな…災害にあったのは夢だ。

ここまで分析出来てるのもアレだ。

3歳だけど急に賢くなってしまったんだ。

人間は3歳になったら急に賢くなるのかもしれない。

きっとそうに違いない。


記憶を全部夢だと片付け、身体を起こしてキョロキョロと周りを見渡す。


「これは…」


毛布を捲ると、自分の身体と一緒にニワトリのぬいぐるみが温まっていた。

夢で出てきたやつだ。

これのせいか、変な夢を見たのは。

やっぱりかわいいな。


大きさは自分の顔より少し小さく、形は丸々としていて愛嬌がある。夢で見たものと同じだ。こんなにかわいらしいぬいぐるみを持って寝たのに、どうしてあんな夢を見たんだ…。


ニワトリを左脇に抱え、外に出ようと身体を起こす。

今は朝だろうか?寝ていた部屋には窓があり、そこから日が射し込んでいるが、部屋の中はよく見えない。


3歳の記憶では、父さんと母さんにおやすみと言って貰えたのが最後の記憶なので、多分朝なんだろう。


朝ならリビングに行けば、父さんが朝食を作っている。

父さんは妹の世話に付きっきりの母さんに代わり、家事に勤しんでいる。

どうにもお腹が空いてしまったので、リビングへ向かうことにした。


木製の床を踏むと、キシキシと音が鳴る。

1歩ずつ歩いていくが、扉が遠い………あの扉の向こうがすぐリビングなのに…


…なんだかとても足が遅い気がする。いや、気がするのではなくほんとに遅い。

あの夢の中での足の記憶が、現実の感覚を狂わせている。18歳の足のつもりで、3歳の足を使っているのだ。


ようやっとドアに辿り着き、ノブを握って…握……握れない。

ドアノブが高く、背伸びをしても握ることすら難しい。


「……」


今まで出来ていた事が出来なくなっている。この身体じゃドアを一人で開けられた記憶が無いけど、そんな感覚がする。


「…………!」


ヤケになってガタガタとドアノブを触っていると、扉の向こうから足音が聞こえてきた。

間もなくしてドアが独りでに開くと、その先には男がいた。

ブロンドの短髪に、青い目、端正な顔付きをしている美丈夫。

俺の父さん、ブレットだった。


「おや、今日は早いな、ノエル。おはよう」

「おはよう。お腹が空いて目が覚めちゃって…」

「はは、成長期なんだな。ちょっと早いけど朝ごはん、食べるか?」

「食べる」

「分かった。今よそうからな、座って待ってな」


そう言って父さんは俺の身体を抱き上げると、リビングの中央にあるテーブルに向かって歩いていく。

力持ちだ。


テーブルの周りには4つの椅子があり、扉から向かって1番手前の右側に位置する椅子にポンと座らされた。


「そのぬいぐるみと遊んで大人しく待ってるんだぞ」

「うん」


父さんは俺の頭を少し撫でてから、リビングと繋がっているキッチンへ向かう。

繋がっている、と言うよりはリビングにキッチンがある。


俺は大人しく、腕で抱えていたニワトリを机の上に置き、気の向くままに頬を掴んだり、むにむにと揉む。

持ち替えて上下に引っ張る。

また頬を持ち揉む。


少し力を込めて両側にぐいーっと引っ張ったところで、あることに気がついた。




…俺は今、どうやって喋っていた?




少し前に交わした父さんとの会話を思い出す。

何気なく話していたが、あれは日本語では無かった。


…日本語?そもそも日本語って何だ?


どこから出てきた?


今、自分が話していたのは何語なんだ?


そもそも一体ここはどこなんだ。

それすら分からない事に気づいた。

自分の家であるのは確かだが、それ以上何も知らないことがとても怖い。

3歳の自分は、家の中とその周りしか知らないはずだし、その事を疑問にも思わなかった。


記憶が混乱してきた。

あの夢はもしかして本当に自分の記憶だったのか?

前世の記憶ってやつなのか?

夢だとは断じきれなくなってきた。


腕が折れていた絶望、肺が潰され呼吸の出来ない苦しみ、目の前の地獄絵図、全部本当だったのか?


不安が俺を包む。

怖い。

昨日まで何も知らなかった。

何も恐れることなんて無く、ただのんびりと平和に暮らしていた。


今日になって何故、突然思い出したんだ。


あんな痛みは知らない。


漠然とした不安から小刻みに震える手の中では、ニワトリがくりくりした目でこちらを見ている。

今はニワトリだけが心の支えだった。

助けてくれニワトリ。

もう揉まないから何か言ってくれ。


なんなんだ、

一体俺の身に何が起きてるんだ。


誰か教えて欲しい。

誰でもいい。


ニワトリ…


そう念じた時、唐突に目の前に青い板が広がった。

ニワトリと俺の顔を挟むように現れたそれには、何か文字が書かれている。


「…?」




ノエル・イーストウッド

Lv.1

生命:20

魔素:40

持久力:5

筋力:7

耐久力:6

魔力:35


固有スキル:【鶏と卵】

コモンスキル:なし


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