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転生したから平和に生きたい  作者: rab
平和な暮らし
19/23

再会

月曜日ですね。。とてもつらい。

橋の上まで上がると、そこにはアランさん達が立っていた。ローラさん、アリスも居る。


「アランさん!ローラさん!アリス姉!」

「お久しぶりだね、アビーちゃん。ノエル君とジャック君も変わりなさそうで良かったよ」


本当か?本当にそう思っているんだろうか?俺達がアビーの服を脱がせようとしていた場面をガッツリ見られていたはずだが…


「はあ、あんた達。本当に何やってたのよ…馬車に乗ってたら叫び声がして、橋を見たら誰かが川に落ちてくんだもの。ビックリしたわ」

「はは、本当だよね。橋で遊んでるなぁと思ったら急に飛び込むんだから」

「事態に気が付いたの、お父さんよりもクロエの方が早かったんだけど…」

「あなた、何見てたの?御者でしょ?」

「はは…」


どうやらアランさんは御者をしていたようだが、あの時目の前で何があったのか分かってないようだ。助かった。


「で、何やってたの?アビーちゃんの上で」

「う…」


しかしクロエは追求する。何故娘の方が正確に事態を把握しているのだろうか。仕方ない…


「実は、川に風魔法を放ったら魚が空を飛んでアビーの服に入っちゃったんだ。魚を取り出そうとしたんだけど取れなくて、しょうがないのでアビー達に風魔法を放ったんだよ」

「…?」


めちゃくちゃ困惑した顔をされたが、事実をそのまま伝えただけだ。これ以上どうも言えない。


「本当だよ!クロエ姉!お魚さんが服の中に入っちゃってもう大変だったんだよ!」

「どういう状況なのよ、それ…」


しかし、クロエは未だに全身ビショビショだ。引き上げられた直後に聞いたが、誰かが溺れているように見えたから迷いなく飛び込んだそうだ。相変わらず優しい娘だ。


「改めてありがとう、クロエ。そしてごめんね、折角綺麗な服を来てただろうに」

「…ふん、そんなのどうでも良いわよ」

「ノエル君達、ちょっと待っててね。今、荷物からタオル取ってくるから」


アランさんは馬車の中へと戻っていった。馬車に乗っていたらしき護衛の二人と何かを話している。


「はあ…にしてもノエル、お前泳げないんだな!」

「兄ちゃん、溺れるなんて情けないよ?」


妹よ、それは死にかけた人に言うセリフでは無い。初めて川に入って泳げる二人がおかしいのだ。


「俺も自分が泳げないなんて思わなかったんだよ」

「ノエルってば、ホントに変わらないんだね」

「全くよ、この運動音痴」


クロエとアリスがくすくすと笑う。多分生まれつきなんだからしょうがないじゃないか。

…そう言えば何故アリス達はここに居るんだろう。 今はまだ街に居るはずだが。


「ところで、アリス達はどうしてここに?」

「ブレットさん達に聞いていないの?私たち、また村に住むんだよ!」

「えっ!?そうなのか!?」


それは初耳だ。父さん、伝えるのを忘れていたのか?いや…もしかして今日アリス達がここを通ることを知っていて、わざと何も知らせずに俺達をここに向かわせたのだろうか?どうやら、ジャックも知らなかったようだ。俺達は顔を見合わせるが、お互い首を振る。


「なんだよ、父ちゃん達も趣味が悪いな…」

「うん、全くだよ…」

「ほら、君たち。タオルだよ、これで身体を拭きなよ」

「あっ!ありがとうアランさん!」


アランさんが人数分のタオルを持ってきてくれた。俺達は借りたタオルで身体を拭く。クロエはどうするのかと顔を向けると、濡れた上の服を脱ぐ所だった。


「ち、ちょっと!こっち見ないで!」

「バカノエル!あっち向いててよ!」

「うわ、ごめん!」


しまった。そんなつもりは無かったが、完全に軽率な行動だった。失敗した。


「…兄ちゃん…」

「お前、もしかしなくてもデリカシー無いだろ」

「…」


妹から向けられる目が痛い。ジャックにも何も言い返せない。つらい。




しばらくして落ち着くと、一緒に村へと向かう事になった。アランさんは御者の位置へ着き、馬車を発進させる。俺達はその後ろから着いていく形だ。

クロエとアリスは馬車から降り、俺達と一緒に歩いている。


「クロエ、五年の約束じゃ無かったのか?」

「そうなんだけど、またお爺ちゃんが気を利かせてくれたのよ。と言うよりは、ママとアリスが脅して無理矢理言う事を聞かせたような感じだけど…」

「えへへ…」

「…」


えへへ、じゃないが。前から思っていたが、アリスはお爺ちゃんに対してめちゃくちゃ辛辣な気がする。もう少し優しくしてあげて欲しい。


「ほら。来年で私達、成人でしょ?成人の儀もこの四人でやりたいって思ったの!」

「ああ、そういう事か。アリスらしいな」

「でしょ?」

「…いいなぁ、兄ちゃん達。わたしも同い年だったら良かったのに」

「アビーちゃんの時も私達はいるよ?大人側としてだけど」

「それじゃ意味無いもん…」


成人の儀もこの四人で受けられるとは嬉しいな。アリス達はギリギリ間に合わないと思っていた。


成人の儀とは、シレン村だけでなく国共通で行われる行事である。成人として扱われる年齢は国それぞれだが、一貫してどの国もこの成人の儀を行う。ただ、その内容は様々で定まってはいない。うちの村なんかだと、皆でお祈りをした後はキャンプファイヤーのように火を囲んでただ飲んだり食べたり騒ぐだけらしい。ただの飲み会じゃないか。


「ああ、早く酒を飲みてえな。どんな味がするのかずっと気になってんだよ」

「あんた気が早いわよ。あと半年はあるじゃないの」

「ああ?半年なんてあっという間だろ!お前らが街に行ったのだって、昨日のような気もするからな!」

「えー!私達なんて今日がどれほど待ち遠しかったか分からないのに…」

「そうなのか?街の生活はどうだったんだよ。てっきり街の方が楽しくてこっちの事なんて忘れてるかと思ったぞ」


実は俺もそう思っていた。というのも、アリス達からはこの四年間一度も音沙汰が無かったからだ。手紙すら寄越さないのでもしかしたらそうなんじゃないかとジャックやアビー達と話したりしていた。


「そんな事あるはずないじゃない…まあ、全く連絡しなかったのは悪かったけど」

「私達、学校に通わされてたんだよ。全寮制の」

「ぜんりょうせい?」

「学校に住み込みってことだよ、ジャック」

「ああ、そういう事か」

「そう、その学校が厳しくてね。家族への手紙すら中々書けなかったのよ」


それは厳しすぎないか…?どこの軍人施設なんだ。本当に学校なんだろうか。


「その癖、学校で習うことなんてもう村で習ったことばっかだし!ホントにつまんなかったんだよ!」

「それは…大変だったね」

「ええ。でもそのお陰であたし達の成績は常にトップだったわ」


クロエは得意そうに言う。


「ふーん、良かったじゃねえか。バカ女にしてはやるな」

「あんたねえ…」

「そ、それで学校はどうなったの?もう辞めたの?」


アビーが気を使って話を続ける。ジャックは何故かアリスとクロエに対しては昔と同じような態度をとる。本当に何故だ。


「学校は四年で卒業だったのよ。この前卒業したばっかりね」

「え、てことはお爺さん達とまともに暮らしてないんじゃ…」

「まあ、そうね…」


なんていうか、アリス達のお爺さんの事がめちゃくちゃ可哀想になってきた。毎年椅子を送るくらい(?)孫達を愛しているのに、アリスには脅されるし約束の五年は一緒には住めないし…


そんな風にアリス達と話しながら歩き続けると、シレン村の西門に着いた。

西門にはロブ兄さんの他にも父さんとローレンスさんが雑談をしていた。


「おう!帰ってきやがったな!アラン!」

「ローレンス、ブレット!久しぶりだね!」

「元気にしてたかアラン、お前ちょっと老けたんじゃないか?」

「はは、ブレットこそ!」


西門前でアランさんは馬車を止め、御者の席を降りて父さん達と話し始めた。馬車の扉が開き、ローラさんと護衛の二人も降りてくる。


「お二人、今回もありがとうございました。お陰様で無事辿り着けました」

「いやいや、ローラさんとこには毎度贔屓して貰ってるから!ここら辺は平和だってのに、弾んでくださってありがたい限りですよ」

「まあ近頃変な噂は聞くけどね。最近この辺りで変な人影が見えたりだとか、森の中に沢山の人がぼーっと立ってたとか…」

「おい!依頼の終わり間際に怖いこと言わないでくれよ!」


降りてきたのは黒色の髪の男性と茶髪の女性だった。二人とも見覚えがある。記憶に拠れば、前回アランさん達を迎えに来た護衛もこの二人だったはずだ。


「ふふ、まあまあ。何事も無かったから良いじゃないですか…お二人さん、良ければ私達の家で休憩していきませんか?長旅でお疲れでしょう」

「おっ!本当ですか!?そいつはありが───」

「いえ、ローラさん達の方がお疲れでしょう。私達は次の依頼も有りますし、申し訳有りませんがこれで失礼させて頂きます」


女性が男性の口を塞いでローラさんに返事をする。


「そうですか…それは残念です」

「いえいえ、お気遣いありがとうございます。荷物を降ろし終わり次第、私達は街へ引き返します。おい、荷物を降ろすぞ!」

「ぷはぁ、はぁ。分かったよ、はぁ。相変わらず乱暴だな…でもそこが可愛いんだよな───ごふっ!」

「何か言ったか?」


うわぁ、綺麗に肘打ちが決まったぞ。横腹にナイスショットだ。あれは痛いだろうな。

ローラさん達の会話を盗み聞きしている間に、アランさん達の会話も終わったようだ。

この隙に父さんに話をしに行こう。


「父さん、どうして言ってくれなかったの?」

「ノエル。いや、お前達を驚かせようと思ってな。今日あそこに行かせれば合流すると思ったんだ。予想通りだったようだな」

「はっは!どうだ驚いたろ?俺とブレットで共謀したんだ」

「父ちゃん…」


やっぱりか。なんて親父達だ。そのせいで俺は溺れかけたんだぞ…なんてことは言わないけど。


「ところでお前ら、何で裸なんだ?服はどうした?」

「飛んでった」

「はぁ?」


まあ、突っ込まれるよな。俺は父さん達に事情を説明した。


「なるほどな…道理でアビーの服も行きと違う訳だ」

「そういうことです」

「…にしてもノエル、あんた次会う時はムキムキとか言ってなかった?ジャックに比べて筋肉が無いように見えるわよ?」


うっ。なんでそんな事覚えているんだ。

クロエが悪戯っぽい笑みを浮かべて俺を見ている。


「べ、別に無いわけじゃないでしょ…この一年で鍛える予定だったんだよ」

「ふうん、ホントかしら?」


クロエが俺の腹筋をつつく…やめろ!力入れてない時は柔らかいんだから触らないで!


「あはは、ジャックは逞しくなったね。こっちがムキムキって言うんだよ?ノエル」

「おう、そうだぞ!」

「分かってるよ…」

「…兄ちゃん…」


ほら見ろ、また妹の目が残念な物を見るような目になってしまった。ジャックは順当に筋肉が付いてきているのに、どうして俺には付かないんだろうか。これ以上比べられると泣いてしまうぞ。どうにか話題を変えなくては…あっ、そうだ。


「そ、そんな事より、クロエ。髪伸びたね?前はもっと短かったのに」

「…っ!そ、そうかしら?そう見える?」

「うん、そう見えるけど」


引っ越す直前、アリスとクロエはほぼ同じ長さのミディアム位だったと思う。アリスはその時と同じなのだが、クロエは腰あたりまで伸びている。にしても、髪の事に触れたら少し反応があった。これはもしかしたら…


「ま、まあちょっとは伸びたかも知れないわね。べ、別に髪型なんて気にしてないけど、変じゃなきゃ良いと思ってる位だもの…」

「うん?変じゃないよ。長いから金色が映えるし、とても似合ってるよ」

「っ!!!」


率直に褒めるとクロエは顔を赤くして俯いてしまった。

ははあ、これは髪に自信を持っていたな。確かに、先程川に入ったっていうのに乾くともうサラサラだ。どこも傷んだ様子が無い。余程丁寧に普段から手入れしているのだろう。

…これは良いポイントを付けたぞ。俺にしては珍しくナイスプレイかもしれない。


「ノエル、お前…中々やるな」

「ノエルもこういう所は成長したんだね。私、感心しちゃったよ」

「?う、うん。まあね?」


俺までめちゃくちゃ褒められてしまった。やっぱりさっきのはナイスプレイだったんだな。よし、これでさっきのマイナスをどうにか逆転出来たようだ。良かった。


「良かったね、クロエ!お母さんに色々お願いした甲斐あったね」

「う、煩いわね…」

「はは、クロエ。良かったじゃないか」

「パパまで…やめてよ…」


珍しくクロエが弄られている。この光景はレアだな…

と、そんな話をしている内に大分日が傾いてきた。もう直、夜の帳が降りるだろう。


「アラン、俺達も荷物運びを手伝うぞ。人数が多ければその分早く終わるだろ」

「気持ちは嬉しいけど大丈夫だよ。荷物なんて道中の食料と衣類くらいしか載せて無かったからね。僕達だけで運べるよ」

「そうか?重いものとかも無いか?」

「はは、問題無いよ。それよりもノエル君達を早く家に返した方がいい。昼は結構暑かったけど、夜は大分冷え込みそうだ」


確かに結構肌寒い。そろそろ何か服を着たいと思っていた。


「じゃあ、一旦今日は解散するか!歓迎会はまた落ち着いたら開こうぜ」

「そうだね…アラン達、またよろしく」

「ああ、こちらこそよろしく」

「ジャック、ノエル、アビー!また一緒に沢山遊ぼうね!」


こうしてその日は各々が家へと帰って行った。

しかし、今日突然アランさん達が帰ってくるとは思わなかったな…また騒がしくなりそうだ。あと、久々に見たアリスとクロエはめちゃくちゃ綺麗になっていた。


つまり、この四年でまともに成長していないのは俺だけだった。

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