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幸せがつまった新生活 3

 

 朝、オーロラは今まで通りきっちり5時に目が覚めた。

 ふかふかのベッドに、あたたかい部屋。それから豪華な夕食に、朝は寝過ごしてしまうだろうと思っていたけれど、慣れというのは恐ろしい。


 目が覚めてしまうと、もう動かずにはいられない。

 オーロラはメイドのヘレンたちが離宮の管理は10人ほどで行うと言っていたことを思い出し、急いで支度を始めた。


 とりあえず、1番着ても良さそうなワンピースドレスを手に取り、三角巾で頭を覆うとオーロラは部屋を出た。




「お、オーロラ様!?」

「おはよう、ティナ」

「おはようございます、ではなくてオーロラ様はまだお休みになっていていいのですよ!」



 そうティナが部屋に戻るよう促すがオーロラは窓掃除を止める気配はなく。



「いいの、何かしていないと落ち着かないの」



 オーロラはヘレンたち他のメイドにも仕事はないからと部屋に戻るよう言われたことを話し、はにかむ。

 窓掃除だけでいいなんて、本当にいいのか逆に不安になる。いや窓掃除も本当はやることなんてないくらい綺麗だけれど。



「ああ、でしたらエレン様を起こしてくださいませんか?」

「え? エ、エレン様を?」

「? ええ、あら、昨夜はご一緒では……」

「い、いいえ!! あの、とりあえず起こしてきますね!!」



 オーロラはぴゅーっとすごい速さで廊下を走って行ってしまった。ティナは可愛らしい新しい主人にふふっと笑みをこぼすのだった。




 昨夜は、疲れ果てて眠ってしまったの……や、やっぱりティナの言う通りそういうのを大事にすべきだったのかしら……いえ、でもまだ結婚をしたわけではないわ!



 ドキドキドキドキとうるさい心臓を押さえながら、オーロラはエレンが眠る部屋をノックした。




「エレン様、オ、オーロラです」

「入ってもいいですよ。俺が許可します」



 返事がしないと困っていたオーロラにユーリがそう声をかける。オーロラはわかりました、と頷きドアノブを捻った。



「エレン様……きゃあ!?」

「ん……オーロラ……?」



 オーロラは小さく悲鳴をあげて、目を覆った。

 視線の先にはほぼ裸で眠るエレンの姿がある。

 白くて男の人らしい筋肉のつき方が目に焼き付いて離れない、とオーロラは「服を着てください……」とやっとの思いで言った。



「ほら、人間は服を着て過ごすと昨日言ったでしょう」

「そんなこと言っていたかな……」



 ユーリは完全に面白がっているようだった。エレンはまだ寝ぼけているのかつっこみを入れようとはしない。



「朝起きてオーロラがいるの幸せだなあ……」

「おい、エレンその格好で抱きつこうとするな」



「エレンは俺がなんとかしておくので」とユーリはオーロラに言い、オーロラは部屋を出る。


 オーロラは部屋を出てから小走りで朝食の席へと向かう。

 外した三角巾で口元を隠しておかないと、顔が綻んでいるのがすぐにバレてしまいそうで――





「おはよう、オーロラ」

「お、おはようございます」



 朝食の席に現れたエレンはさっきの寝ぼけっぷりを感じさせない王子スマイルで微笑んだ。オーロラは先程見たことを今だけでも忘れようと目の前に並べられた朝食を凝視した。



「オーロラ、これはなんていう食べ物なの?」

「え! あ、これはポタージュですよ。あとお隣にあるのはパンです」

「へえ! 美味しそうだね!」



 オーロラが一通り食材のことまで説明するとエレンは興味深そうにスプーンを掴む。

 昨夜一度使っただけだからまだぎこちない持ち方だ。



「ユーリ様いい感じです。ああ、エレン様、こうお持ちになるんですよ」



 オーロラはスプーンを持つ手を近づけて見せる。

 エレンも見よう見まねでスプーンを持ち、食事を進めていく。



 まだまだやることは多い。 

 もちろん食事のマナーも、歩き方やさらに至難の技であろうダンスや服の着方。


 幸い、2人とも飲み込みは早いようだった。エレンは直接見せると抜群の速さで覚えてしまう。ユーリは説明ですぐ理解するタイプのようだった。



「今日からあと2週間ほど、私ができるかぎり色んなことを教えますので、なんでも聞いてくださいね」



 オーロラがそう笑いかけるとエレンもユーリも頷いた。

 ヘレンたちもお手伝いをしてくれると言ってくれているのがさらにオーロラにとって心強かった。






「では、まずは歩き方、走り方の練習をします」



 オーロラはとりあえず転んでも痛くないようにとふさふさの芝生を練習場に選んだ。

 だいぶ捕まらないでも歩けるようになった2人だが、長時間立ち続けるのはまだ難しいようだった。


 見事に足だけがプルプルしているのを見てオーロラは少し吹き出しそうになってしまいながら、一生懸命教えていく。




 それから、ダンスの練習。

 ステップだけでももつれてしまいそうだけど、エレンはオーロラとのダンスに俄然やる気を見せた。



 さらに、2人は「海では、軽快な音楽の方が多くてね」とか「ヒレをこんな感じにふるんだ」とか海でのダンスを熱弁した。あまりの熱弁っぷりに思わずオーロラも笑ってしまう。




 それからもオーロラはエレンとユーリに色んなことを教えた。

 食事のマナーや、陸での社交について、それからポートリヒト王国のことも。




 あっという間に時が過ぎ去り、いよいよ入学式は明日に迫っていた。


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