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あやとり  作者: 近江 由
六本の糸~研究ドーム編~
59/232

灯火

コウヤ・ハヤセ:

本名コウヤ・ムラサメ。何事においてもそつなくこなす器用な人物。主人公

ハクト・ニシハラ:

地連の兵士。フィーネの元艦長。階級は大尉

ユイ・カワカミ:

コウヤの前に現れた少女。

レイラ・ヘッセ:

ゼウス軍の兵士。階級は少尉

クロス・バトリー:

イジー、レイラの探し人。コウヤの過去にも大きく関係している人物。

ディア・アスール:

元中立国指導者。


シンタロウ・コウノ:

コウヤの親友。軍に志願した。訓練所破壊の後、行方不明扱い。

アリア・スーン:

コウヤと友達。軍に志願した。


レスリー・ディ・ロッド:

地連の中佐。冷酷で最強で世界一の軍人と呼ばれる。

キース・ハンプス:

コウヤを助けてくれた男性。階級は少佐。

イジー・ルーカス:

レスリーの補佐。階級は中尉。

リリー・ゴートン:

ハクトの部下。階級は曹長。

モーガン・モリス:

フィーネの機械整備士。気さくな少年。

ソフィ・リード:

戦艦フィーネの元副艦長。階級は准尉。

レイモンド・ウィンクラー:

地連の大将。ほぼ隠居状態。ロッド中佐の後ろ盾だった。

ライアン・ウィンクラー:

地連の総統。軍トップ。レイモンドの弟。


テイリー・ベリ:

ディアの補佐であり、彼女に忠誠を誓っている。地連軍のことをよく思っていない。


マウンダー・マーズ:

ゼウス共和国の生んだ天才と名高い若き研究者であり医者。ダルトンの兄。通称マックスと呼ばれる。

ラッシュ博士:

ゼウス共和国のドール研究を仕切っている謎の女。

タナ・リード:

元地連少将。「天」襲撃の際にゼウス共和国に渡り、ゼウス共和国准将となった。ソフィの父親。


ギンジ・カワカミ:

カワカミ博士。ドールプログラムの開発者の一人。

マリー・ロッド:

レスリーの母親。息子想いの優しい貴婦人。

ミヤコ・ハヤセ:

記憶を失ったコウヤを引き取った今の母親。


ユッタ・バトリー:

幼いころのイジーの親友。クロスの妹。「天」に避難していた。襲撃時に死亡。

シンヤ・ムラサメ:

ムラサメ博士。ドールプログラムの開発者の一人。「希望」破壊時に死亡。

レイ・ディ・ロッド:

ロッド侯爵。レスリーの父。レイモンドの親友。襲撃時に死亡。

ロバート・ヘッセ:

ゼウス共和国のトップ。ヘッセ総統。ロッド中佐に殺害される。

ジュン・キダ:

ゼウス共和国の若き兵士。ロッド中佐によって殺害される。

ダルトン・マーズ:

ゼウス共和国の若き兵士。マウンダー・マーズの弟。ロッド中佐によって殺害される。

グスタフ・トロッタ:

第6ドームの訓練施設に関係している研究者。訓練施設の教官に殺害される。


 久しぶりに向けられるその瞳は相変わらず優しかった。

 赤い綺麗な瞳。

 嬉しさに涙がこぼれた。


 私は何で気付かなかったんだろう。

「・・・どうして・・・・どうして・・・?」

 そんな言葉しかぶつけれない。

 涙を流しながら同じ言葉を繰り返す私に彼は微笑んだ。


「・・・・赦せなかった。私から・・・・僕から全てを奪った奴が。」

 彼は私の頬に手をかけた。

「僕は君を守りたかった。幼い時は無力で守れなかった。だから、今度こそ・・・・」

 彼は形のいい唇に優しい笑みを浮かべた。


「・・・・クロス」

 レイラは彼、クロスの名前を呼び、微笑んだ。


「・・・・中佐。いえ、クロスさん。再会を喜ぶのは後です。」

 イジーは微笑み合う二人の間に入るようにバッサリと言った。



 その言葉を聞き二人は頷いた。

「ニシハラ大尉を取り戻すのだろう?・・・カワカミ博士も一緒に来ているのでは?」

 言葉遣いが急に中佐のものに戻り、ロッド中佐もといクロスは、機械的な表情と、癖なのか片頬だけ歪めて笑った。


「来ています。この先の合流部屋にディアさんを連れて来てます。また、ハンプス少佐がユイさんを連れてきています。」

「なるほどな・・・」

 シンタロウは納得したように笑っていた。

「カワカミ博士の話を全て聞こう。あの人は確信がないとあまり情報を出してくれない。だが、確信がなくても情報は可能性の一つになる。しかし、ルーカス君。君の連れは非常に優秀なようだな。」

 そう言うとクロスは感心したようにシンタロウを見た。そして、コウヤに鋭い視線を向けた。


「中佐・・・・いや、クロス」

 コウヤは緊張と恐怖が混じりながらも懐かしさもある不思議な感覚に口元が強張った。

 クロスはコウヤに向けていた視線を彼に押さえつけられているアリアに向けた。


「その少女・・・・本当にただ操られているだけか?」

 そう言うとクロスはいつの間にか拾っていたサングラスを再びかけた。


「・・・・赦せない・・・・それは同じ・・・・」

 アリアは、ぼそりと呟いた。


『同じだろ・・・・お前等だって・・・・赦せないのだろう。』

 先ほどの頭痛の前に響いたように、施設内に声が響いた。



 声が響いたと同時にアリアがものすごい勢いで起き上がった。

「うわ!!」

 コウヤが上に乗り抑えていたにも関わらず、アリアはコウヤを突き飛ばした。


「!?コウ。この少女・・・・身体能力が無理やり挙げられている。しかも、動きまでいいぞ。」

 クロスはそう言うとアリアに走り出した。


「何で!?何で!?邪魔をする。お前だって!!」

 アリアは立ち向かってくるクロスに叫んだ。

 その形相をどこかで見たことがあった。

 さっきの声だって聞いたことが・・・・・


『逆接続』

『母体プログラム』

『機械を埋め込まれた』

『権限』

 コウヤの頭の中にこの言葉の羅列が浮かんだ。

「待てクロス!!」

 コウヤはアリアに向かうクロスを止めた。


 クロスは視界からアリアを外さずにコウヤを見た。

「私はこの少女を赦すほど穏やかではない。」

「違う・・・・彼女を殺してはいけない。」

 コウヤはアリアに今までとは違った目を向けた。


「キャメロンは・・・・・・・・」

 コウヤが言いかけた時

 ガタン

 辺りが真っ暗になった。




 ダッダッダ

 ザッザッザ

 何かが移動する音が聞こえる。


「逃げるつもりか?」

 クロスの声が響いた。

「ま・・・・待て!」

 移動する音を追うように叫ぶクロスだが、途中何か動揺が見えた。


「・・・・クロス。これは・・・・」

 レイラも動揺しているようだ。


 コウヤは全員の無事であるか気になった。

「みんな大丈・・・?」

 各々がいた場所を想像し声を辿ろうとしたとき

 位置感覚が掴めなくなっている。


 真っ暗になっただけではない。

 周りを把握しようとすると頭がゆらゆらし、今いる場所、自分がどこを向いているのかがわからなくなる。

 カチッ

 火の玉が浮かび上がった。

「皆さん大丈夫ですか?どうであれ、合流部屋に行きましょう。ライターを持っているので、私が先導します。」

 イジーがライターを持ち、手を挙げていた。

 微かな炎が照らす様子を見ると、先ほどの移動する音はアリアだったようだ。

 他の者がどんな表情をしているのかは分からないが、イジーの言う通りにするのが正しいと思った。

「賛成だ。コウの友人かルーカス君の彼氏かわからないが、そこの彼を早く処置を受けさせた方がいいだろう。」

 クロスは淡々と言った。一番背の高い影が動いた。

「悪いな」

 シンタロウが声を発しようとする音が響く。

「しゃべるな。私が運ぼう。コウはレイラを頼む。ルーカス君、先導たのむ。」

 慣れたように仕切るクロスに話し方にコウヤは納得したが、やはり寂しいものがあった。

「さっきの彼女・・・・」

 レイラはどうやらアリアを気にしているようだ。

「追う方が危険だ。・・・・コウは先ほど何を言おうとした?」

 クロスは冷静に言った。


「・・・・歩きながら話しましょう。声で場所が確認できると思うので。」

 イジーがそう言った。

 その言葉にコウヤ、レイラ、クロスは黙った。

 どうやら、先ほどの暗闇で位置を把握できなくなっていたのは3人だけのようだ。


 だが、視覚は生きているようで、イジーの持つ火の明かりを頼りにコウヤは歩きだした。

 明かりに反射する金髪を見つけ、

「レイラ。支えるよ。」

 とコウヤはレイラに言った。

「悪い。」

 レイラは撃たれた足を引きずり、コウヤの肩を借りた。


 淡々と進む足音が響くことから、クロスはシンタロウを運んでいるようだ。

「コウ。話の続きを頼む。」

 前方からクロスの声が聞こえた。


 コウヤは見えていないと分かりながらも頷いた。

「さっき言ったのは・・・・クロスはどうか知らないけど、変な声が聞こえて立っていられなく程の頭痛がしたんだ。俺とディアとレイラも。」

 コウヤの言葉にレイラは頷いた。

「ええ。助けられて部屋から出た時に・・・」

「『赦さない』・・・だったか。私も立っていられなくなった。おかげでもっていた銃は奪われてあのザマだ。」

 クロスは自嘲的に言った。


「そして、『同じだろ・・・・お前等だって・・・・赦せないのだろう。』って同じ声が響いた。声だけならシンタロウもルーカス中尉も聞いているはずだ。」

 コウヤは同意を求めるよう聞くと

「ええ、聞こえたわ。声は。でも、それだけよ。」

 イジーの返答には少し戸惑いがあった。


「お前は話すな。」

 クロスの声が響いた。どうやらシンタロウが話そうとしたようだ。


「あの声・・・・俺は知っているんだ。でも、それはあり得ないことだと思うんだ。」

 コウヤは記憶の中のある人物を思い浮かべていた。

 コウヤの発言で誰の声だか想像がついたようで、息を飲む音が聞こえた気がした。

「そして、キャメロンのことでカワカミ博士に確認したいことがある。」


 それからコウヤ、レイラ、クロス、シンタロウ、イジーは無言で合流部屋に向かった。




 血が止まらない。

 死ぬのかと思ったら自分の人生を振り返った。


 結構楽しかった人生だった。

 自分の人生に何か辛いことがあったのかと言われたら、私は無かったと答える。

 だって本当だ。

 挫折も何も味わうこともなく、ぬくぬくと育った。


 父が死んだと言われた。でも、私は知っていた。

 父は敵国に行ったと。

 でも、私は自分のために悲しんだふりをした。

 軍人の一族であった私は親のツテで軍に難なく入った。

 もっとも、ゼウス共和国との関係が悪化する情勢から軍に入ることに難しいことはなかった。

 戦艦に乗る軍人の、影のルールがあった。

 ある階級のものが一定数いること。

 このルールにより、若い軍人に、自身の経験や実力に見合わない階級が与えられ始めた。

 前線の戦艦は捨て駒だ。ただ、生き残る強者もいる。

 私にも戦艦に乗るための階級が与えられた。

 運よく生き残った。

 敵国にいる父とも連絡が取りやすい環境になった。

 というよりも、もともとこの軍の上層部は父の息がかかっていた。


 私は父の息のかかった軍で、捨て駒というカモフラージュをされて階級を保証されていた。だから、常に死の恐怖は無かった。

 私は生かされる。


 おかしい。私に死という影はちらつかないはずだった。

 楽しかったからよかった。

 でも、まだ死にたくないな。


 自分の視界が真っ暗になったことに、とうとうその時が来たのかと思った。

 人の足音が近づいてくる。


「・・・・お前がいれば、この施設のロックは解除できるのだな。」

 女の子の声。知っている子だ。

 けど、おかしい。

 この子はこんな話し方はしない。

 幻覚かしら。

 さっきもこの子の幻覚を見た。


「・・・・アリアちゃん・・・・・?」

「・・・・来い。」

 知っている子のはずなのに、まったく知らない子のようだ。

 彼女の腕に引っ張られて起き上がる。

 この子はこんなに力が強かったのか?




 ライターの頼りない光だけでなく、見慣れた人工的な明かりが見えてきた。

「合流部屋・・・・明かりがついているみたいです。」

 イジーは安心したように言った。

 前方の明かりに照らされてイジーの顔が見えた。

「・・・よかった。」

 人の顔が確認できたことで、コウヤは不思議と安心した。

 だが、これからのやるべきことを考えると安心などしていられない。


「誰だ?」

 キースの疑うような声が響いた。

 どうやら合流部屋にキース達が着いているようだ。

「大丈夫だ・・・・やっと揃ってくれたか・・・・」

 ディアの声が聞こえた。どうやら頭痛が収まり、正気に戻ったようだ。


「ハンプス少佐!!ディアさん!!」

 イジーは合流部屋に叫んだ。

「コウ。私は彼の容態が気になる。先に行かせてもらう。」

 クロスはシンタロウのことを言ったようで、コウヤに一言言い、明かりの元へ走った。

「・・・ふふ。」

 横でレイラが笑った。

「どうした?」

 コウヤは思いのほか無邪気に笑うレイラに緊張感が緩んだ。

「いや、だって・・・・経験も戦闘能力も上なのに、結局はコウを頼っているんだな・・・って。」

 レイラの言葉に、今まで再会する親友たちに置いて行かれていた気分が少し和らいだ。


 だが、コウヤのその気分もすぐに消え去った。

 合流部屋の方から何やら不安そうな騒がしさを感じた。

 キースやディア、クロスの声が聞こえる。


「コウ。私たちも急ごう。」

 レイラに言われ、コウヤは頷き足を速めた。

 前を見るとイジーも合流部屋に入ったようだ。




「シンタロウ!!」

 イジーの声が響いた。

 その声で何があったのか分かった。


 合流部屋に入ると、顔を青白くしたシンタロウが座っていた。

「心配しすぎだ・・・平気だ。」

 片手を挙げて大丈夫なことをアピールするが、顔色が悪い。

「シンタロウ・・・撃たれたときに何かあったのか?」

 コウヤはシンタロウに駆け寄った。

「レイラの肩を貫通した銃弾が彼の左肩でなく、左肺に留まっている。それに加え、さっきルーカス君を投げられ倒れた時にあばらも強打したようだ。」

 クロスは淡々と言った。

「どうすれば・・・・」

 シンタロウが首を振った。そして、口だけ動かして何か呟いた。

「・・・・まだ大丈夫だ。やることを優先しろ・・・・か」

 キースの言葉にシンタロウは頷いた。

「ハンプス少佐は読唇術もできるのか。おみそれした。」

 クロスは中佐の口調で言った。その様子にキースは口を尖らせた。

「ロッド中佐殿はまだ俺が何も知らないと思っているのか?」

「思っていないさ。ただ、私は君より上の立場だ。」

「クロス様。ハンプス少佐も止めてください。あなた方のやり取りは空気が重い。」

 カワカミ博士が二人をたしなめるように言った。

 クロスは両手を広げてとぼけたようなポーズを取っている。

「それより、ディア。君の作戦はどうだ?ユイの容態も気になる。彼の処置をするにしても、ニシハラ大尉・・・・ハクトを取り戻す必要がある。」

 クロスは期待するような口調でディアを見た。


「悪いが、私の頭は働いていないと同等だ。詳しくはカワカミ博士がわかっている。」

 ディアはカワカミ博士の方を見た。

「カワカミ博士・・・・説明お願いします。あと、この状況についてコウが確認したいことがあるようなので。」

 クロスはカワカミ博士に矢次に質問をした。

「ディア様の事についてより、コウヤ様の確認したいこととは・・・?」

 カワカミ博士は何かを悟ったような顔でコウヤを見た。

「その表情・・・・カワカミ博士は知っていたのですね。父さんが、復讐のためにだけドールプログラムの兵器活用をしたこと・・・・」

 コウヤの質問にカワカミ博士は頷いた。

「いや、俺以外何となく気づいていたはずだ。ディアも・・・クロスも。」


「・・・・とにかく進もう。」

 クロスは先に行こうとしていた。

「待て。クロス。この先に処置ができる部屋があるかもしれない。全員連れて行く。そのストレッチャーにシンタロウ乗せていいか?」

 コウヤはユイが転がる台車を指差した。

「そうだな。」

 キースはそう言うとユイを抱え下ろした。

 厭がるシンタロウをレイラとイジーが押さえつけ、クロスが抱え上げて無理やりストレッチャーに乗せて寝かしつけた。

「・・・連携・・・」

 コウヤとキースは三人の連携に感心していた。

 ストレッチャーに寝かしつけられるとシンタロウは大人しくなった。どうやら抵抗しても無駄だと思ったようだ。

「物わかりの良い奴は好きだぞ。」

 クロスはシンタロウを見て営業的に笑った。


 コウヤはまだ正気に戻らないユイを見て、早く全員が揃いたいと思っていた。

「・・・・コウ。お前、ユイは戻せないのか?」

 レイラは久しぶりにみる親友の痛ましい姿に眉を顰めた。

「ユイは声が聞こえる前から頭に何かやられていたみたいなんだ。とにかくハクトの傍に行こう。」

 コウヤはユイを険しい表情で見た。


 全員で合流部屋を出る。

 無傷なのはコウヤ、ディア、カワカミ博士、キースに背負われているユイ

 比較的軽いケガなのが銃弾を掠めた程度でクロス

 右手首を折られているイジー

 処置を済ませているが、右手に深い切り傷を負ったキース。

 右肩は貫通したが、右太ももを掠る程度に撃たれたレイラ

 左側の肺に銃弾が留まって肋骨にも何やら異常が見えているシンタロウ

 まともに戦えるのは・・・・

「私とハンプス少佐が動こう。ディアは他の者たちの警護を頼む。」

 クロスはそう言うとキースに頷いて前に出た。

 キースはコウヤの傍に寄り

「コウヤ。ユイちゃんたのむ。」

 と言うとコウヤの背にユイを乗せクロスと同じように前に出た。



 

「兵器の活用を始めたのは極秘にでした。それの対抗策として、あなた方6人を該当者と、まあ、いわゆる鍵に設定したのは私です。」

 カワカミ博士の告白に全員が目を剥いた。

「カワカミ博士が・・・?」

「これは、ドールプログラムが完全に開かれるのを阻止するためです。根っこのプログラムを開くための権限を分けました。根っこのプログラムが開かれると、地球を含めて宇宙に洗脳電波が発せられます。それだけは避けたい。」

 カワカミ博士はコウヤ、クロス、レイラ、ディア、ユイを順に見て言った。


「6人の権限がそろった時、ドールプログラムの源と同等近くに権限を有することになります。その中でも権限が強いのが、母体プログラムと呼ばれる3つのプログラムの該当者です。」

「・・・アレス、ヘルメス、アテナときたら・・・・」

 ディアが呟くとそれに応えるようにクロスは

「ゼウス、ポセイドン、ハデス・・・・か」

 と返した。

「ポセイドンプログラムはハクトが該当者だ。プログラム内での会話などで確認した。」

 レイラが付け加えるように言った。

「ハデス、ゼウスか・・・・」

 キースはコウヤとクロスを順に見た。

「・・・・カワカミ博士・・・・私は・・・・」

 クロスは何かを気にするようにカワカミ博士に訊いた。

「あなたは・・・・ハデスプログラム該当者です。」

 それを聞いてクロスはわずかに安堵の表情を浮かべた。

「じゃあ、俺がゼウスプログラム該当者か・・・・何か複雑だな。ゼウス共和国って名前の国があるから・・・・」

 コウヤがそう呟くとクロスが皮肉そうな笑みを浮かべた。

「あなたってたまに発言考えないのですね。」

 イジーはコウヤを見た後レイラに眼を移した。

「・・・・気を遣ってくれたのか・・・・?ありがとう。」

 レイラはイジーに笑いかけた。

「あ・・・ごめんレイラ。」

「それより、どうする?あの女がいなくなった今、進み始めたのはいいが、どうやってロックを解除する?」

 ディアはソフィのことを言っていた。

「システム内のロックを解除するのは難しいと思います。明かりだけなら取り戻すことはできると思いますが・・・・」

「・・・・・ソフィさんを回収しに行こう。」

 コウヤは提案したが、カワカミ博士に首を振られた。

「それより、先ほどからの声が気になるのです。」

 その言葉にコウヤ達は黙った。


「カワカミ博士は分かったんですね。」

「・・・・近くにいましたから。」

「・・・・じゃあ、キャメロンの様子も・・・・・」

「知っています。」

 それを聞いてコウヤはカワカミ博士に向き直った。


「カワカミ博士・・・・ドールプログラム内での会話が可能ということと、中に取り込まれることを踏まえて・・・・聞きたいことがあるんです。」

「なんですか?」


「・・・・プログラム内に人間の意識を留めることはできるんですか?そして、それはその人が死んでも留まることは可能ですか?」

 コウヤの問いにカワカミ博士は頷いた。


「いわゆる・・・プログラム内での会話は・・・プログラム特有のネットワークです。そして、それは、人の意識に大きく関わる。・・・・・ムラサメ博士はそれに重きを置いていました。」

「それを聞いて確信した。・・・・・キャメロンが持っているのは・・・・父さんの意識だと思う。」

「・・・・ムラサメ博士の意識を・・・・?」

 レイラは目を丸くした。

「確かに・・・・そうすると、コウがこの施設に入ってから言った違和感や感覚についての辻褄があう。」

 ディアは頷きカワカミ博士の方を見た。


「・・・・そうですね。どういう手段を使ったのかわかりませんが、それならニシハラ大尉が取り込まれたままなのと、この施設の状況について頷けます。」

 カワカミ博士はコウヤ達を順に見た。

「カワカミ博士・・・・そして、今その意識はアリアの中にあると思う。」

 コウヤは曖昧な言い方だが、確信を持った口調で言った。


「・・・・!?」

 その言葉に横たわるシンタロウが目を剥いた。

「アリアちゃんを捕えれば有利になるってわけか・・・・」

「・・・・あの女はその少女に回収された可能性もあります。私たちは彼女のことよりニシハラ大尉を取り戻すことを考えましょう。」

 カワカミ博士は話を戻すように言った。


「どうやって進むかか・・・ここまで揃っているのだから感覚でハクトの察知はできるだろう。だが、この先のロックはどう開く?」

 レイラはソフィの血液でロックが開かれていたことを思い出した。

「ロックの解除には関係者の血縁が必要だ。」

 コウヤはそう言うとレイラを見た。

 レイラも頷いた。

「私・・・・」

「そうね。ヘッセ総統の娘だものね・・・」

 イジーは頷いた。言葉にわずかに棘があるのは無意識のようだ。



「・・・・」

 カワカミ博士は無言でそれを聞いていた。

「場所の目星はついているんですか?中佐殿。」

 キースはクロスの横に並び歩いていた。

「ついている。その部屋に入ろうかと思ったが、レイラを救う方を優先した。」

「・・・・入ろう・・・か」

 キースは何かを含めた言い方をした。

「・・・・ハンプス少佐。君のようなものが私の傍にいれば、もっと違っただろうな。」

 クロスは自嘲的に笑い、キースを親しげな目で見た。

「他のやつは知っているのか?」

 キースは声を潜めて訊いた。

「カワカミ博士は知っている。あと、レスリー・・・だな。だが、どうせ皆知ることになるんだ。」

「単独行動の理由は確認か?」

「それもあるが、攪乱だな。」

「確認はできたのか?」

「できた。残念ながらな。事実だとは知っていたが、証明されているものではなかったから、結構ショックだった。」

「結構ショックか・・・?そんな顔で言われても全然思えねーな。」

 キースはクロスの顔を指差して笑った。

「君は軽口が過ぎるな。少佐殿」

「年齢は10近く上だろ。クソガキ。」


「キースさんとクロス仲いいな。」

 前でひそひそと話すクロスとキースを見てコウヤは思わず微笑んだ。

「・・・そう見えるか・・・・」

 ディアはコウヤを横目で見てため息をついた。

「・・・・・」

 レイラは無言で目を逸らした。

「・・・・中佐は優秀な人が好きですから・・・・」

 イジーは何故かにやにやしている。

 横たわるシンタロウは気の毒そうにコウヤを見ていた。




「・・・・大丈夫かな・・・・総裁・・・・」

 テイリーはフィーネの中をずっと歩き回っていた。

「大丈夫でしょう。あの人が簡単にやられるわけないです。それより、総裁はあなたですよ。」

 テイリーと一緒に船に乗せられた衛生兵はテイリーを元気づけるように言った。

「それに、キースさんたちも一緒なんだし。」

 テイリーと一緒に乗せられた機械整備士も元気づけるように言った。

「・・・・うー・・・・わかっているよ。」

 テイリーは未だ落ち着かず歩き回っていた。


『テイリーさん』

 通信が入った。

 それにテイリーは飛び上がり通信機器に走り寄った。

「はい!!はい!!リリーさんですね。」

 と大声で返答をした。

『これから4人船に乗りたいから開けてくれますか?』

「わかりました。誰と誰と誰ですか?」

 テイリーの問いにリリーは少し迷ったあと

『私とモーガンとここの研究員と・・・レスリーさん』

 その返答にテイリーは固まった。

「わ・・・わかりました。開きますので。入ったら中から操作室に直ぐ連絡お願いします。閉めますから。」

 テイリーは表情が硬いまま返事をした。

『ありがとうございます。』

 リリーはそう言うと通信を切った。


「・・・・レスリー・・・さんか・・・」

 テイリーは気まずそうな顔をしていた。

「地連一番の軍人じゃないですか?貴重な機会ですよ。仲良くなりましょう。」

「総裁の外交手腕が発揮されるときですよ。彼は間違いなく軍の主要人物になる存在ですよ。」

 衛生兵と機械整備士は口々に言った。

「・・・・渡り合えるきがしない・・・・」

 テイリーはぽそりと呟いた。

「・・・・ですよね。」

「・・・・アスール様なら・・・・・極秘に会談もしてましたし・・・・」

 この二人はテイリーに対して敬意をもっていないのか、平気でこんなことを言う。


『全員入りました。あと、テイリーさん。医務室使わせてください。衛生兵を一人ください。』

 リリーからの通信が入った。

「わかりました。誰か怪我してるのですか?」

『はい。レスリーさんの右腕が切り落とされました。』

「え?」

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