無色透明
今から3年前、とあるドームの一角にその男はいた。
一人の白衣を着た男だ。
彼は30~40という幅広い年齢の外見をした男だ。
彼は長身で身に着けた白衣が様になっている。
しかし、彼の横に誰か男が立ち、その男を確認すると長身の白衣の男は白衣を脱いだ。
長身の男の横に立った男もまた長身だった。
ただ、彼は異様に身なりがいい。
「…どうだった?」
身なりのいい男は白衣を着ていた男に尋ねた。
「いい子たちですよ。ドールプログラムを近くで見れましたし…彼等の人となりも見れた。」
白衣を着ていた男は身なりのいい男に答えた。
「そうか。」
「でも、勢いづいて軍を抜けちゃったので、俺はもう地連は無理ですよ。」
白衣を着ていた男は困ったように笑いながら言った。
「化けるのは得意だろう。私でさえ気づかない時がある。」
身なりのいい男は感心したように言った。
「それが仕事ですからね。」
白衣を着ていた男は得意げに笑った。
「だが…それはいい。お前は働いた。しばらく休むといい…」
身なりのいい男は白衣を着ていた男にカバンを差し出した。
「そうですね…せっかく彼等が作ってくれた平和だ。満喫するために憧れだった南国施設のドームでも行きますかね…綺麗に焼いて印象を変えますよ。次の仕事のために…」
白衣を着ていた男はカバンを受け取るとおちゃらけたように言った。
「そのキャラクターでいたのか?」
身なりのいい男は少しいぶかし気な口調で尋ねた。
「まさか?真面目で誠実ないい医者でした。」
白衣を着ていた男は過去形で言った。
「そうだろうな。お前の素は、いささか印象が強い。」
「ナイトさんにそう言われるならそうなんでしょうね。」
白衣を着ていた男は少しだけ嬉しそうに言った。
その言葉に対して、身なりのいい男は少し黙り、おそらく睨んでいるのだろう。
「まあ、あの立ち位置は地連軍がクズだってよくわかるものでもありましたよ。」
白衣を着ていた男は立ち上がり、片手を挙げて歩き出した。
「…苦労を掛けた。ウル。」
身なりのいい男は白衣を着ていた男を見送りながら言った。
「次も…彼等に接する仕事がいいですね。」
ナイトの言葉を受け、白衣を着ていた長身の男は挙げた手を振って、そのまま歩き去った。
シャトル前に着くと、もうすでに乗り込んだ後だとわかった。
だが、起動はしているが、撃ちあげようとする様子がない。
部下たちを従えた副艦長、ミゲル・ウィンクラーは片手で部下を制止し、様子を窺った。
目を細め不審な点がないかと確認したが、見ただけではわからない。
何せミゲル・ウィンクラーは普通の男だ。
鬼神のように崇められ、常人離れした功績を修めるウィンクラー少佐と同じ姓を持っていても、根本的に違う。
彼のような目を、力を欲したことがあったが、彼の苦悩を近くで見てきた身としてはその羨みは、微かな自己嫌悪にしかならなかった。
まあ、そういう人間だからウィンクラー少佐は彼を部下として置いているのだろう。
「…副艦長。…あちらに…」
ミゲルとは違う方向を見ていた部下がシャトルとは別方向を指して言った。
ミゲルはその方向を見て思わず息を呑んだ。
「…マリク大佐…」
そこにいたのは、裏切りものであると発覚したかつての協力者、カルム・ニ・マリク大佐だった。
彼の横には長身の彼と同じ褐色の肌の男が立っている。
「…?」
ミゲルはその男をどこかで見たことがあった気がしたが、いかんせん頭も常人だ。
思い出せない。
「これは…ウィンクラー少佐の部下たち…ですね。」
マリク大佐は冷たい目をしていた。
「何をやっているのですか?」
ミゲルは部下たちに軽く銃を構えさせ、マリク大佐とその横の男を睨んだ。
「…別に変なことはしていないです。」
マリク大佐は片手を挙げ、腰を指した。
そこに何か入っているのかと察し、ミゲルたちは身構え銃を向けた。
「やめた方がいい。あのシャトルを直ぐに爆破させたいなら別だがな…」
マリク大佐の横にいる長身で褐色の男が警告するように言った。
「爆破…だと?」
ミゲルは二人がこちらには何も向けていないことを確認して、部下の銃を下ろさせた。
だが、直ぐに抜けるように微かな合図だけはした。
「はい。それに、私は少佐に確かに言いました。」
マリク大佐はゆっくりとミゲルたちに体を向け
「テロリストをせん滅させる…と」
口を歪めて力強く言った。
「あなた…いや、お前は分かっていないのか?あのシャトルにはルーカス中尉が乗っている。」
ミゲルはマリク大佐をなだめ、説得するように言った。
「ならば、あなたは分かっていないのですか?宇宙に奴を放す脅威を…」
マリク大佐は顔を歪めたまま言った。
ミゲルはマリク大佐の主張が何となくわかった。
だが、それを確固たるものにしている理由が分からなかった。
こちら側としては何としてもイジーの身を確保しなくてはいけない。
それは脅威よりももっと大事で、ウィンクラー少佐の部下である自分たちにとってはよくわかっている。
「ドールプログラムが彼を宇宙に欲している。このドームのシステムは乗っ取られたままです。」
マリク大佐は両手を広げて言った。
彼の言っていることは合っている。
「…どうしてそこまで知っているのですか?」
ミゲルは疑問で仕方なかった。
何らかの手段でナイト・アスールと連絡を取ったから分かったのかもしれないが、マリク大佐がそれを知っているというのは、不思議であった。
その疑問は漠然として、不明確だった。
『第六ドームで捕まえたテロリストを吐かせたんですね』
どこからか機械を通した声が辺りに響いた。
ミゲルは顔を上げてシャトルを見た。
その方角にはシャトル以外見当たらなかったが、誰の声だかわかった。
「ルーカス中尉!!」
ミゲルは声の主に向かって叫んだ。
「…あなたの残した手がかりはとても有効でした。」
マリク大佐はイジーの声を肯定するように頷いた。
「…あの時というのは…まさか、ルーカス中尉が蹴落として少佐に手がかりとして残した…」
ミゲルの部下の一人が合点がいったのか、頷きながら呟いた。
「ええ。彼女の着眼点は見事でした。彼はあのシャトルに乗る奴とは違う頭で動くテロリストでした。」
マリク大佐は腕を組んで頷いていた。
彼は感心している。
「ウィンクラー少佐でも吐かせられなかったのに…」
ミゲルの部下の一人が悔しそうに言った。
「いや、彼は吐かせるのに有利だ。何せ、自分が損害を与え、部下を殺したと自覚のある、いわゆる負い目のある男が相手です。あの罪悪感のなさそうな男でも、根底にはそんな意識があった可能性がある。」
ミゲルは部下の一人の言葉に首を振った。
「そうも考えられるな…ウィンクラー少佐の部下たちは皆いい“部下”だな。」
マリク大佐の横にいた長身で褐色の男が感心したように言った。
「…お前何者だ?」
ミゲルは長身の男を見て、目を細めその姿を焼き付けようと睨みながら言った。
だが、彼の姿が記憶にあるのはやはり間違いない。
ミゲルは何か見落としている気がして仕方がなかった。
「…ほお…お前、俺のこと見覚えがありそうだな…そうだな…、折角南国で焼いてきたのに・・・」
褐色の男は自身の腕を見て少し恨めしそうに言った。
どうやらよく焼けた褐色の肌は意図的に日焼けさせたものだったようだ。
「雑談はそれくらいだ。どのみちシャトルは爆破する。」
マリク大佐は淡々と言った。
だが、それと同時にシャトルのエンジンがかかった。
辺りに轟音が響く。そして、シャトルを飛ばすための開閉口が開き始めた。
要は外気が取り込まれ始めたのだ。
「やりやがったな…外気は毒だってのに…」
長身の男はシャトルを睨みながらだが、少し楽しそうに言った。
『爆破…と言ったな。』
イジーの声ではない男の声が響いた。
「アズマ・ヤクシジ…」
ミゲルは思わず憎々し気に言った。
『燃料に点火を始めた状態でなら、お前らにも危害がいく。』
アズマは中々投げやりな言葉を放った。
「くそ。打ち上げ準備に入りやがった…どうにか止めることは…」
ミゲルの部下の一人が悔しそうに呟いた。
「無理ですよ。ネットワークを掌握されているのです。」
マリク大佐は淡々と言った。彼は慌てていないようだ。
『カルム・ニ・マリク…だっけ?あんたの噂は聞いたことがある。だが、ネイトラルのスパイだとは…』
「お前と話す気は無い。テロリスト。」
マリク大佐は冷たくアズマを突き放した。
『せいぜいここで一緒に飛び散るか?』
アズマは息を呑んだが、直ぐにマリク大佐を挑発するように言った。
「ドールプログラムを近くで見ていた我々がそんなわかりやすいミスをするはずがないだろ。」
長身の男が呆れたように言った。
『は?』
「飛びたきゃ飛べばいい。お前らが飛んでから爆破だ。」
マリク大佐は両手を広げて言った。
機械音の先で、アズマが息を呑むのが分かった。
彼は動揺している。
投げやりにシャトルの打ち上げに入ったのもあったが、どうやら彼の精神はかなり参っている。
ミゲルはどうにかこの状況を抑えることを考えた。
アズマではない。ここで押さえるべきはマリク大佐だ。
そして、その横の長身の男…
この男の言った今の言葉はヒントではなかったか…
ミゲルはふと先ほどの男の言葉を思い出した。
ドールプログラムを近くで見ていた我々…
研究者か?
ミゲルはまた長身の男を見た。
確かに日に焼けていないなら…
それにどこか知性を感じる気がする。
しかし、研究者とミゲルは接点がない。
そもそも、見覚えもあるのか分からない。
いや、見覚えはあるのだ。
それはあの長身の男も認めたのだ。
そのミゲルと接点を持っていてもおかしくない、そのうえ、ドールプログラムを近くで見られるもの…
ミゲルはそこまで考えて慌ててマリク大佐を見た。
今止めるべきはマリク大佐だ。
改めて彼を止めようとミゲルはマリク大佐の元に駆け寄った。
彼等はミゲルに攻撃する意思は無いようだ。
「マリク大佐。今すぐ爆破を止めてください。」
「断る。」
マリク大佐は即答した。
当然だろう。
「今の話を聞いている限り、あなたの部下たちを殺したのはそれこそあなたが尋問した男です。」
「だが、権限を用いたのはあの男だ。」
マリク大佐は説得の応じる様子はない。
何らかの端末で爆破を操作するのだろう。
取り押さえるにしても、マリク大佐の身体能力は知っている。
ミゲルは敵わない。
それどころか、ここにいる面々で敵う人物はいるのだろうか?
思わずミゲルは腰の銃手をかけようとした。
「バカな選択はよせ。ミゲル・ウィンクラー。」
ミゲルをいさめたのは褐色の長身の男だった。
「お前のことは知らないが、俺はお前の上官に思い入れがある。彼を悲しませることは少しは避けたい。」
長身の男はそう言った。
「ならば、ルーカス中尉を…」
「爆破の権限はカルムだ。俺は手伝っただけだ。」
長身の男はあっさりと言った。
だが、これで手がかりが一つ増えた。
彼はウィンクラー少佐と面識がある。
「ゴホ…」
部下の一人がせき込んだ。
だいぶ外気が取り込まれ始めている。
「そろそろ中に入れ。ここまでお前らが犠牲になる必要は無い。」
長身の男はミゲルたちを室内へ促した。
「それはルーカス中尉にも言える。」
「だろうな。」
長身の男は顎でマリク大佐を指した。
彼はマリク大佐の行動に何か思うところはあるのだろうか?
ただ、意外に彼は話の分かる男だとミゲルは思った。
「あなたはそんな身勝手をしていい訳がない!」
怒鳴り声と共に二人の男が飛び込んで来た。
それを見て、マリク大佐は驚いた顔をした。
そして、それを見て長身の男は安心したような表情を見せた。
ミゲルはそれを見逃さなかった。
そして、飛び込んで来た二人の男をミゲルは見た。
「え…?」
予想外の人物がいることにミゲルは驚いた。
何せ、彼はドームに置いてきたと思った
「オクシア君…どうして…?」
ミゲルは予想外の人物に少し間抜けな声をかけた。
対してマリク大佐は悲痛そうな顔をしている。
「俺と彼の人生を狂わせたあなたが…こんなわがままを?」
オクシアの横に立つテイリーはあからさまな敵意と憎悪を見せていた。
「…ベリ君…」
マリク大佐はオクシアにもだが、テイリーにもかなりの後ろめたさがあるようだ。
「やっとわかったんですよ。どうして…俺が生き残っているのか…を」
テイリーは顔を歪めていた。
普段涼し気な表情が多い彼にしては珍しい。
その言葉と視線を受けてマリク大佐は腰に当てていた手を下した。
彼は何かを諦めたような顔をして居る。
それはシャトルの爆破ではないだろうが、テイリーに対してのものだろう。
「…俺は…保険としての…スケープゴートだったんですよね。」
テイリーは顔を歪めていた。
その顔はひたすらに悲壮が溢れていた。
その顔から、テイリーが過去にマリク大佐を尊敬したことが窺え、ミゲルはいたたまれない気持ちになった。
「…君は賢い子だからな…」
マリク大佐は小さく呟いた。
チリ…と、頭の中に障害物の様な靄がかかった。
「…リコウ。」
隣を走るアリアも気付いたようだ。
リコウも頷いた。
「何かあったんだ…」
リコウは居ても立っても居られないが、これ以上速く走れない。
もどかしさで一杯だった。
「体力は集中力に直結するわ。温存しなさい。」
アリアはリコウをなだめるように言い、彼の前に身を乗り出し、先頭を走り始めた。
「…でも…心配で…」
「ドールプログラムを使った後の頭痛が厄介なのは分かっているでしょ?」
アリアは念を押すように言った。
確かにリコウは自身を酷使してから時間をそんなに置いていない。
「…ええ。先輩も頭痛に苦しんだって…今は考えられないけど…」
「そうね。最初は痛くて文句を言っていた。」
アリアは思い出したのか少しおかしそうに笑った。
彼女の幼い雰囲気があって、リコウは少しその過去を知っている人物に嫉妬をした。
「…そういえば…マックスが武器を組み立てた戦いのあと、俺が倒れたじゃないですか?あの時看てくれた医務室の先生がアリアさんと少佐と先輩の昔を知っているって…言っていましたよ。」
リコウは倒れて医務室に運ばれた後のことを思い出した。
あの時の医者は、リコウにコウヤたちの話をしてくれた。
アリアは少し顔色が変わった。
「え?」
「あの軍医は軍を辞めたはず…、それにそんな人事なら…私とコウヤが気付く…おかしいわ…」
アリアは眉間に深い皺を刻み、考え始めた。
「え?でも…少佐の部下たちは何も言わないでいましたし…」
リコウは首をかしげて言った。
「なおさらおかしい…誰?そいつ…」
アリアは深刻そうな顔をして居る。
「えっと…どうしてです?だって、関わった人間って可能性は…」
「そのあとそいつ見た?」
アリアはリコウに鋭い目を向けた。
「え?いや…だって、爆発もあって、ごたごたしてましたし…」
リコウはそのあとにあった格納庫の爆破を思い出した。
あの後、ドーム内と戦艦、そしてネイトラルの船とゴタゴタとしていたのだ。
「それに、過去に見たことのある医者なんて…私見ていない。格納庫に来た医者は…シンタロウがずっと連れていた人でしょ?」
アリアは引っかかっているようだ。
「イジーちゃんがいなくなってから、人事はおそらくシンタロウの部下が管理しているわ。そして、マリク大佐が入った時点で何人か追加されているから…おかしくはないけど…」
アリアは繋ぐリコウの手を強く握った。
「…ここまで関係者がいると…意図を感じてしまうわ…」
アリアは何か深刻そうな顔をして居る。
リコウは思い返してみた。
考えてみれば…彼をあの後見ていない気がする。
いや、考えすぎかもしれない…
リコウは、今はアズマのことを考えようと切り替えた。
横たわるドールの扉は遠隔操作で開きそうだった。
ハクトは近くに戦艦をつけて、ドールの様子を窺いながら遠隔操作でドールのコックピットを開いた。
開いた瞬間、目の前に拒絶したい光をいくつか飛んだ。
たぶんそれは妨害装置か何かの類だろう。
ハクトも覚えがあった。
昔、こんな装置をつけさせられたことがあったのだから。
だが、その光は微々たるものであった。
ハクトは小さい戦艦ならではの利点を感じながら、外気用のマスクを持ち、戦艦の外にワイヤーを下ろし、それにつかまり降りた。
降りた目の前には灰色と白のドールがあった。
「…まぶしいな…」
掠れているが、はっきりとした意思を感じる声が聞こえた。
それを聞いてハクトは安心した。
「手が空いているのは俺だけでな…」
ハクトは身軽にドールまでよじ登り、コックピットに座るものに外気用マスクを渡した。
「…ハクト・ニシハラ…か。」
渡された外気用マスクを受け取ると、コックピットに座る青年は眩しそうにハクトを見て言った。
「ああ。レスリー。」
ハクトは微かに外気用マスクをずらし、少し顔を見やすく見せた。
「…鬱陶しいな。」
青年、レスリーは頭についている機械を荒々しくはぎ取った。
バキバキと音を立て、どちらかというとそんな外し方をして大丈夫なのか心配になる様子だ。
「大丈夫か?それ…」
「ああ。誰かのお陰で無効化されている。」
レスリーはよろめきながら立ち上がり、コックピットから出てきた。
「無理するな。」
「すまん。」
途中ハクトが肩を貸し、二人でドールから離れようとした。
「…クロスと戦った。」
歩きながらレスリーは呟いた。
「ああ…」
レスリーの言葉にハクトは頷いた。
「ユイもいた。」
「ああ。」
「…シンタロウとコウヤもいた。」
「…ああ。」
「ハクト・ニシハラ…俺はドールプログラムに操られていたから感じたが…」
レスリーは肩を支えているハクトを見た。
ハクトはレスリーの視線を受けて彼を見た。
「奴らは…何の権限にも染まっていない、強い存在を求めている。」
それを聞いてハクトは先ほど感じた不安を思い出した。
「シンタロウがいなかったら…俺だった。」
レスリーは口を歪めて呟いた。
それを聞いたハクトは息を呑んだ。
「人質としてもあったが…ドールプログラムは俺を試していたみたいだ。」
レスリーは悔しそうに口を歪めた。
「そんなことのために…」
レスリーは周りを見渡した。
周りは、廃墟だ。
栄えていた気配のある崩れた建物たち、人の生活があったことが感じられ、そして、なによりも破壊されたという事実を突きつけるものだった。
ハクトはレスリーの肩を叩いた。
「…無理するな。」
登場人物
リコウ・ヤクシジ:
第三ドームの第四区の大学に所属する学生。ドールプログラムが専門。新たなネットワークの鍵。
コウヤ・ハヤセ:
リコウの先輩。「フィーネの戦士」の一人で、圧倒的な適合率を持っている。
マウンダー・マーズ:
ドールプログラム研究において現在のトップ。「フィーネの戦士」の一人。「マックス」が愛称。
シンタロウ・ウィンクラー:
地連の少佐。「フィーネの戦士」の一人であり、現在の地連にて最強といわれている。コウヤとアリアとは親友であるらしい。
アリア・スーン:
ユイと行動を共にする女性。「フィーネの戦士」ではないが、関係者。コウヤとシンタロウと過去はあるが親友。新たなネットワークに通じ、リコウの負担を軽くできる。
イジー・ルーカス:
地連の中尉。「フィーネの戦士」の一人。シンタロウの精神的主柱。アズマたちに連れ去られる。
ユイ・カワカミ:
リコウ達の乗る戦艦に保護される。「フィーネの戦士」の一人。コウヤの恋人。
ジュリオ・ドレイク:
従軍経験のある学生。標準的に「フィーネの戦士」を尊敬している。正義感が強い。
テイリー・ベリ
ネイトラルの情報局のトップ。フィーネの戦士との接点が多く、作戦に関係していた。それ以前は元地連の大尉であり、殲滅作戦でいとこを亡くし地連から離れた。現在はリコウ達と軍本部に向かう。
ミゲル・ウィンクラー:
シンタロウの部下で、彼の艦長をする戦艦の副艦長。階級は准尉。同じウィンクラー姓であるため、ファーストネーム呼びが多い。血縁関係はない。そして、名前も大して知られていない。
カルム・ニ・マリク:
月所属の地連軍の人間。大佐。殲滅作戦の犠牲者に深く関わっている。テイリーの元上官。ネイトラルのスパイであり、それを隠すために自身の部下を大量に捨て駒作戦に投じた。
オクシア・バティ:
第三ドームの学生。殲滅作戦の犠牲者であるカズキ・マツの甥。叔父の影を追っている。
ゲイリー・ハセ・ハワード:
地球所属の地連軍の大尉。マリク大佐と同じく艦長をする戦艦をテロリストによって壊滅させられる。元々ウィンクラー親子と対立派の立場。テロリスト側に部下を殺されたという恨みから現在マリク大佐と行動共にしている。ただし、マリク大佐に対しても恨みがある。
ウル:
マリク大佐と同じくネイトラルのスパイ。長身で褐色の男。テロリストせん滅に動いている。ハワード大尉が艦長を務める戦艦に乗組員として潜入しており、この戦艦の破壊に深く関わっている。
レイモンド・ウィンクラー:
現在の地連軍のトップで総統。「フィーネの戦士」ではないが、作戦の責任者であった。現在軍本部にて防衛戦を指揮する。
リュウト・ニシハラ:
ハクトの父親。ドームなどの構造物の技術者。レイモンドの防衛戦で協力をする。ナイトの友人。
ハクト・ニシハラ:
元地連大尉で「フィーネの戦士」の一人。ディアとは婚約関係。
ディア・アスール:
ナイト・アスールの娘。「フィーネの戦士」の一人。母親について何か秘密があるらしい。ハクトとは婚約関係。
レイラ・ヘッセ:
「フィーネの戦士」の一人。ゼウス共和国の人間。ジュリエッタの娘。
ジョウ・ミコト:
ゼウス共和国を成長させた指導者。国民からの信頼が厚い。「フィーネの戦士」の一人。
カカ・ルッソ:
ネイトラル出身のここ数年で出てきた俳優。「フィーネの戦士」の一人。
リオ・デイモン:
ネイトラル出身のここ数年で出てきた俳優。「フィーネの戦士」の一人。
クロス・ロアン(クロス・バトリーorヘッセ)
「フィーネの戦士」の一人。三年前に死んだと言われているロッド中佐本人であり、本物のレスリー・ディ・ロッドとは協力関係にあった。ロバート・ヘッセとカサンドラの息子。ナイトに捕らわれる。
タナ・リード:
現在ゼウス共和国の人間だが、三年前の黒幕のような人物。今はカワカミ博士と行動を共にする。
ギンジ・カワカミ:
リコウを新たなネットワークの鍵に設定した人間。ユイの父親であり、ドールプログラムの開発者の一人であり、「フィーネの戦士」でもある。
レスリー・ディ・ロッド:
「フィーネの戦士」の一人で、クロスと入れ替わっていた。マックスと共にテロリストに襲撃され、その時にマックスを庇って捕まる。
ナイト・アスール:
ネイトラルの現在の指導者。ディアの父。彼女の婚約者であるハクトにとても好意的。テロリスト集団を乗っ取り、地連軍に協力を持ち掛けたが、地連に深い恨みを持っており、協力から襲撃に転じた。
カサンドラ・バトリー(カサンドラ・ヘッセ):
ゼウス共和国を暴走させた独裁者ロバート・ヘッセの元妻。テロリストを主導する立場だったが、ナイト・アスールに乗っ取られる。
アズマ・ヤクシジ:
リコウの兄。地連の軍人で一等兵だった。第三ドーム襲撃の際、テロリスト集団「英雄の復活を望む会」を手引きし、自身もそのメンバーの一員だった。新たなネットワークの鍵でもあり、大きな脅威となっている。
キョウコ・ニシハラ:ハクトの母親。少しディアに雰囲気が似ている。
ルリ・イスター:第三ドームの市民。リコウに淡い思いを抱いている。
グスタフ・トロッタ:
かつてマックスと共にゼウス共和国のドール研究に携わっていた研究員。シンタロウと因縁がある。
キース・ハンプス:
「フィーネの戦士」の一人で、元少佐。戦士たちの精神的主柱であり、今の地連軍だけでなく他国の者にも影響を与えた。カズキ・マツの最期の部下。
ユッタ・バトリー:
クロスの妹でカサンドラの娘。ゼウス共和国と地連の争いで命を落とす。レスリーが看取る。
マイトレーヤ・サイード:マリク大佐の部下。テロリストの暗躍により死亡。
ジュリエッタ・サリ・アスール:
カサンドラが手にかけた女性。ナイト・アスールのスパイとして前ゼウス共和国総統の元にいた。レイラの母親。ネイトラル関係者どころでなく、中枢人物だった。
ロバート・ヘッセ:
ゼウス共和国元総統。クロスの父親。かつて武力で暴走したゼウス共和国を率いていた独裁者。
ナオ・ロアン:
ロバート・ヘッセの元腹心。カサンドラ達の亡命に加担したことにより、捨て駒にされ死亡する。レイラの父で、彼女の緑色の瞳は彼譲り。ジョウの元上司でもある。
レイ・ディ・ロッド:
レスリーの父で没落した貴族。レイモンドの親友。理想家として有名だった。ロバート・ヘッセによって殺される。
ディアス・オルム:
ナイトとロバートの過去に大きな影響を与えている人間。50年近く前に死亡している。




