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あやとり  作者: 近江 由
六本の糸~収束作戦編~
100/232

続いていく

最終話になります。

 

 ~一年後~



「どこに話しかければいいのかわからなかったんで、シンタロウにここかもしれないって聞いたので・・・・」

 コウヤは「天」の港近くにある石碑にいた。


「しばらく忙しかったですよ。作戦の時も大変でしたけど、あとがもっと大変だった。作戦が終わったら全て終わりと思っていたことが恥ずかしい。」

 コウヤは照れるように言った。


「・・・・えと、俺はムラサメ姓に戻ろうと思ってけど無理だったのでハヤセのままで、とりあえず大学に行くことになりました。母さんは、彼氏ができたとか言ってて、邪魔しちゃ悪いから別々に暮らしています。ちなみに俺、工学専攻で行きますよ。今から間に合うかわからないけど、マックスやキャメロンたちの仕事に関われればいいと思っています。そうだ、二人ともドールプログラムの解明と研究の現在トップですからね。身の安全は保障されています。」

 コウヤは石碑に向かって安心させるように笑いかけた。


「レスリーは・・・・あのあと、ロッド中佐は戦死扱いにしたんです。あまりにも力を持ちすぎて危険だと、クロスとレスリーが話し合った結果です。クロスはクロスに戻って、レスリーは、同じ名前だからということでマリーさんの養子に入る形でロッド家に戻りました。彼は今、マックスとキャメロンの研究施設の警備をしたり、まだ年も若いから何か勉強しているみたいですね。あと、マックスがロッド家に出入りしているんですよ。マリーさんとマックスなんですけど、あの二人仲良すぎてレスリーが引いてます。」

 コウヤは同意を求めるように大げさに笑った。


「途中で仲間になったリオとカカは泣きながらネイトラルに帰って行ったんですけど、この前会ったらすごく元気そうだったからたぶん何も心配ないです。アリアは定期的にキャメロンに頭に埋め込んだ機械を診てもらっている以外は普通の生活をしてますね。何かジャーナリストを目指しているらしくて・・・・よくユイと出かけてるんですよ。正直・・・思った以上にアリアとユイが仲良くなって怖いです。」

 コウヤは声を潜めて震えた。


「リリーは変わらず軍にいますよ。モーガンも。あの作戦の参加者だからかなり優遇されていると困ったように嬉しそうにしてました。あと、モーガンの適合率もバレてモーガンはドール隊に引きずり込まれそうでこの前泣いてました。正直もうドールを使うことは無いに越したことは無いのですけどね。」

 コウヤは最近泣いて縋り付いてきたモーガンを思い出して笑った。


「ルーカス中尉は・・・・まあ、変わらず軍にいますよ。ただ、レイモンドさんの専属秘書についたんですよ。あと、レイモンドさんが総統になりました。妥当ですけどね。ルーカス中尉を秘書に置いた理由は、シンタロウが大きいと思うんですよ。シンタロウは今士官学校に行っているんですよ。レイモンドさんの後ろ盾と・・・・ロッド中佐とニシハラ大尉の認めた者ということで高く評価されてて、あいつ頭がいいから学校でもトップで、身体能力も高いから一目どころでなく置かれていますよ。」

 コウヤは感心したように呟いた。


「少し困ったことがあるとしたら・・・・タナ・リード氏は、軍法会議にかけられるかと思ったら、元からゼウス共和国の人間であったと主張して・・・・捕虜待遇を求めました。鶏が先か卵が先か・・・そんな議論になりました。彼とソフィさんはしぶとく生きていて、レイモンドさんと因縁があるようで、少し動きが気になります。ライアン・ウィンクラー元総統は完全隠居と権力をほぼ取られてただの元軍人になりました。ただ、レイモンドさんに「やったことは馬鹿だが、行動力には驚いた。見直した。」と言われたら憑き物が落ちたように穏やかになったんですよ。・・・・きっとライアンさん。レイモンドさんに認められたかったんですね。」


「俺たちは・・・6人とも生きていくことになりましたよ。全てキースさんのお陰です。」

 コウヤは悲しそうに石碑を見た。そして、手を伸ばし石碑を撫でた。


「レイラは、火星のゼウス共和国の立て直しと復興。地球にいるゼウス共和国の人間がいつか火星に戻れるようにするために動いています。ゼウス共和国の運営は・・・・今はジョウさんが扱っていますが、いつかリード氏に乗っ取られてしまうのではとクロスが心配してました。そうそう、クロスもおとなしく生きてくことになったんですよ。もうロッド中佐を背負うことの無くなったクロスは戦いから身を引いてますよ。でも、実際まだ訓練をしてますよ。彼は警戒心が強いですから。彼は大学に行って、構造力学だっけ?そんなのをメインでやるって言ってました。レイラがやっている復興に役立てるようにドーム建設の知識を付けようとしてますよ。だから実際に建築をしていたハクトのお父さんとも交流を持っています。」

 コウヤは安心したように笑った。


「ハクトとディアに関しては・・・・結婚・・・・じゃなくて婚約しましたよ。予想通りですよね。本当につまらない。ただ、両方とも力がありすぎるために中々婚約まで大変だったみたいです。ハクトは軍を辞めるまでかなり揉めましたから。クロス曰く、ハクトにもしカリスマ性があれば揉めるだけで済まなかっただろうと言ってました。俺はハクトにカリスマある気がしますが・・・・クロスが言うにはハクトは最後まで中間管理職臭が漂っていたらしいです。ハクトはまだ生きていますから・・・最後ってそんな不吉なのじゃないですよ。というわけでハクトは軍を辞めて・・・・・貿易関係の仕事に就きたいらしくて彼も大学に行きましたよ。クロスと同じ大学なんですよ。二人とも頭がいいから一流大ですよ。・・・俺は・・・・専門大学ですよ。とまあ、あの二人は切れない関係だなと思いますよ。ディアは結局ネイトラルから逃げられないようで、お父さんのナイト・アスールさんが表に出てきたから最近ずっとバチバチやっていますよ。間に立っているテイリーさんがいつもげんなりしています。」

 コウヤは最近二人のやり取りを見たようで、苦い顔をした。


「ユイは・・・・子供に教える立場の人間になりたいってことで進学希望なんですよ。頭は特殊なのでいいんですけど、彼女はずっとモルモットをやっていたので基礎的な勉強をしています。来年に大学受けるって言ってました。あと、彼女走り屋という新たな楽しみを見つけてしまって・・・・・地球でと宇宙で両方飛び回ってます。さっきも言った通りアリアとです。まあ、カワカミ博士が消えたことが大きいと思います。いなくなったことに責任を感じてましたから、きっと探し回っているんでしょうね。」

 コウヤは立ち上がった。


「皆生きていますよ。キースさん。」

 コウヤは石碑を、まるで人の頭をなでるように上からなでた。


 ピーピー


 コウヤの携帯している電話が鳴った。

 コウヤは石碑に少し頭を下げて電話に出た。


「あ・・・・もしもし?どうしたの。ユイ・・・・あ!!ごめん。今戻る!!」

 コウヤは慌てて走り出そうとした。


 しかし、足を止めて、石碑に頭を下げた。


「すみません。キースさん。急ぎの用事が出来たので・・・・また来ます。」

 コウヤは丁寧に言うと走り出した。




 石碑のある丘を下がるとハクトとクロスがいた。


「ハンプス少佐の元に行くのなら俺も誘えよ。」

 ハクトは恨めしそうにコウヤを見ていた。


「二人で話したいことってあるだろうからいいじゃない?ハクトは意外と無神経だからね。」

 クロスはハクトを憐れむように見た。


 クロスは栗色のくせ毛でオールバックにしていた髪を剃って、今や坊主頭だった。それにサングラスをかけるからやくざの様な容貌をしている。


 横にいるハクトは外見こそ有名だが、戦闘訓練を受けた体は筋肉質であり、察知能力は健在であり隙がない。要するに二人とも並ぶと威圧感がすごい。


「それより・・・・ユイから連絡が入った。俺戻らないと・・・」

 コウヤは二人に圧倒されながらも慌てていた。


「ああ。準備が進まないから早くしろと言っていたな。俺にも電話が来た。」

 ハクトはコウヤの頭を叩いた。


「僕にも来たよ。なんか、すごい怒っていた。」

 クロスもハクトと同じくコウヤの頭を叩いた。


「ちょっと!!馬鹿になるから叩かないで!!」

 コウヤは二人の腕に一撃ずつ入れると我先にと走り出した。





 その日、ロッド家は騒がしかった。


 厨房にいるユイは並べられたお皿を見て、目を鋭くした。


「コウ!!お皿運んでいない!!」

 ユイがコウヤに怒鳴る声が響く。


「ごめん!!忘れていた!!」

 コウヤはその声に飛び上がり。厨房に入ってきた。


「早速尻に敷かれているのか。」

 ハクトは厨房を覗き込むとユイと目が合ってすぐさま逸らした。


「労力!!ハクトも手伝う!!」

 ユイは素早くハクトに駆け寄り手を掴んで引きずり込んだ。



「おー、騒がしいな。」

 居間で優雅に紅茶を飲んでいるクロスとレスリーとシンタロウは呆れたように笑っていた。


「その手、大丈夫そうだね。」

 クロスはマックスの義手を見て安心したように言った。


「ああ。マックスが作ってくれてな。調整もやってくれる。」

 レスリーは困ったように笑った。


「マックスは?」

 シンタロウは辺りを見渡した。


「いや、あいつドールプログラムのトップ研究者だから、あまり外出ができないんだとさ。」

 だから今日はいないとレスリーは少し残念そうに言った。


「出世を保証されたシンタロウは最近どうだ?士官学校でも君は話題の人だと聞いたよ。」

 クロスはシンタロウを横目で見て言った。


「とりあえずの話題だろ。俺は能力高くて当たりまえだから成績を落とすわけにいかないし、言うほどいい環境ではないぜ。」

 シンタロウは照れるわけでもなく考え込むように首をひねった。


「成績は嫌味だぞ。僕が大学受ける時に君に勉強を見てもらったんだ。優秀なのは知っている。」


「へーそうなのか?」

 レスリーは感心したように訊いた。


「ああ。本当はコウに聞こうかと思ったけど、彼の方が、頭が良さそうだから・・・」

 クロスは紅茶を飲みながら言った。


「聞き捨てならん!!今のは何だ?クロス!!」

 コウヤがドアの前で両手にお皿をもって立っていた。


「あなたが馬鹿だって言ったのよ。」

 コウヤの後ろにはレイラが立っていた。


「あらあら、お手伝いありがとうね。」

 彼女の横にはマリーが微笑んでいた。


「マリーさん。お邪魔しています。」

 シンタロウとクロスは立ち上がり、優しく微笑む女性にお辞儀をした。


「今日はお祝いだものね。レイモンドの・・・ねえ。」

 マリーは嬉しそうに言っていた。


「そう言えば、何のお祝いなんだ?総統に就いてからもだいぶ経つし・・・功績?」

 コウヤは首をひねっていた。



「・・・そうだ。コウヤ。俺、お前に言わないといけないことがある。」

 シンタロウ思い出したように立ち上がり、コウヤの前に立った。


「待って、お皿置いてからにして。」

 マリーは慌ててコウヤを居間のテーブルのところに連れて行った。



「そう言えば、私も特に何も聞いていないんだ。今日は何のお祝いだ?」

 気が付いたらレイラの横に立っていたディアは首を傾げていた。


「あら、ディア。私もよ。ただ、ユイは皆が集まれるから嬉しいって張り切っているけど・・・」

 レイラも首を傾げていた。



「コウヤは誕生日何月だ?」

 シンタロウはコウヤがお皿を置き終わったのを見て質問した。


「え?・・・俺は五月だけど?」


「俺は八月だから・・・コウヤ。」

 シンタロウは少し眉を顰めたが、コウヤの前に立った。


「俺、お前の弟になるらしい。」





「・・は・・・はああああ!?」

 一瞬何を言っているのかわからなくてコウヤは、コウヤ達はポカンとした。



「待て待て待て!!シンタロウ。今のわけわからんぞ!!」

 レイラは混乱しているようだ。


「・・・そんなドラマみたいなことあるの?」

 クロスはマリーを見た。

 マリーは知っていたようであららと笑っている。


「意味わからないんだけど?どういうこと?」

 コウヤは目を見開いている。


「いや、だから、俺はレイモンドさんの養子になるんだ・・・」

 シンタロウは当然のように言った。


「だから、何で?」

 コウヤは分かっていないようで眉を顰めていた。


「あ・・・」

 分かったようでレイラとディアは気まずそうにしていた。


 シンタロウも何かに気付いたようで少し申し訳なさそうな顔をしていた。


「・・・コウヤ。もしかして、知らないのか?」

 探る様に恐る恐るシンタロウは訊いた。


「知らないって・・・何が?」





「こんにちはー」

 玄関にはミヤコが立っていた。


「ミヤコさん。初めまして、ハクト・ニシハラといいます。地球では会えなかったので」

 ハクトはミヤコを確認すると駆け寄った。


「あらら、あなたが。素敵な人ね。そうだ、婚約おめでとう。」

 ミヤコはハクトに手を差し出して微笑んだ。


「ありがとうございます。」

 ハクトはミヤコの手を握った。


「初めまして。クロス・バトリーといいます。僕も地球では会えなかったので・・・」

 玄関にクロスが走ってきてミヤコに挨拶をした。


「まあ、素敵な・・・あなたがあのロッド中佐・・・」


「もう彼はいません。僕はただのクロスです。そして、この男もニシハラ大尉でなく・・・お前、アスールになるの?」

 クロスは横のハクトを見て尋ねた。


「ナイトさんは俺にアスール姓になってほしいっていうけど、ディアが全力で嫌がっている。」

 ハクトは困ったように笑った。


「彼はただのハクトらしいです。」

 クロスはハクトの肩を叩いた。


「おい、お前だけ来たのか?コウ達は?」

 ハクトはクロスだけが走ってきたことに首を傾げていた。


「・・・ああ、えっと、シンタロウがコウが知らなかったことを知らないで・・・」

 クロスは気まずそうにミヤコを見た。


 ミヤコはしまったという顔をした。


「いやだ。だって、あの子電話に出ないのよ。」

 ミヤコは慌てて屋敷の中に入って行った。


「なんだ?シンタロウが何を言ったんだ?」

 ハクトは事態が掴めていないようで首を傾げていた。


 クロスはため息をついた。


「・・・何か腹立つな。言えよ。」

 ハクトは眉を寄せてクロスを睨んだ。


「あのね・・・」

 クロスが口を開きかけたとき・・・


「失礼します。ウィンクラー総統とルーカス中尉です。」

 玄関にレイモンドとイジーが入ってきた。


「あ・・・」

 クロスは二人を見て口を止めた。


「これはこれは、総統閣下。お久しぶりです。」

 ハクトは慌てて敬礼をした。


「君はもう軍人ではないだろ?久しぶりだね。クロス君にハクト君。」

 レイモンドは二人に優しく微笑んだ。


「お久しぶりです。クロスさん。ハクトさん。」

 イジーは姿勢を正しく礼をした。


「久しぶり。イジー。それより、レイモンドさん。コウがシンタロウの兄になるって聞いて飛び上がっていましたよ。」

 クロスはレイモンドを見て言った。


 その横でハクトが飛び上がる勢いで驚いていた。


「はあああ?なんだそれ!?」


「うるさいな。そのままだよ。」

 クロスは耳を塞いでハクトを睨んだ。


 レイモンドは困った顔をした。


「それは、驚くだろうけど、私の養子になることぐらい予想していただろうに。」

 レイモンドは困ったように笑った。


「いえ、コウはミヤコさんとあなたが結婚すること知らなかったみたいです。」

 クロスはサラッと言った。


「え?」

 ハクトはレイモンドを二度見した。


 居間の方から叫び声が聞こえた。


「・・・ちょっと、説明に行ってくる。」

 レイモンドは慌てて屋敷に入って行った。



「そんなドラマみたいなことがあるのか・・・」

 ハクトはまだ驚いたままだった。


「まあ、いいんじゃない?レイモンドさんもやっと過去から解放されて、支えてくれる人を見つけたんだから。」

 クロスは穏やかな顔だった。


「血のつながらない兄弟とか・・・しかもあの二人か。」

 ハクトは少し面白そうに笑っていた。



「はあ!?妹!?」

 居間からコウヤの叫び声が聞こえた。


 ハクトはクロスの方を見た。

「・・・クロス。今の意味って・・・」


「ハクト。僕も驚きだよ。」

 クロスはハクトの方を見た。


 二人は急いで居間に向かった。





「おそくなってすみませーん。」

 ロッド家の玄関に新たな客が立っていた。


「あ・・・ごめんごめん。今みんな取り込んでいて、ようこそ。」

 ユイが慌てて出て来て客を迎えた。


「久しぶり。この前から瓦礫回収されて火星近くも飛べるようになったのよ。今度行かない?」


「ほんと?行きたい。アリアは自前の飛行船で来たの?」

 ユイはアリアを屋敷の中に招いた。


「まあね。どうしたの?取り込みって・・・」

 アリアは中から騒がしい声が聞こえて来るのに眉を顰めた。


「あのね・・・コウとミヤコさんが今、言い争いっていう感じかな?」


「どうしたの?」

 アリアは驚いた様子だった。


「えっとね。シンタロウがコウの弟になるんだって。」


「は?」

 アリアは低い声を出した。


 ユイは苦笑いをしてアリアを居間に案内した。



「おう。アリア。久しぶり。」

 シンタロウは入ってきたアリアを見て手を挙げた。


「どうも、イジーちゃんも久しぶり。変わらず可愛いわね。」

 アリアはイジーの頭を撫でた。


「恐縮です。」

 イジーは困ったようにシンタロウを見た。


「中々絡める年下の女の子がいなかったから先輩面したいだけだ。」

 シンタロウは気にするなと笑った。


「それよりも、大丈夫なの?コウヤなんか険しい顔をしているけど・・・」

 アリアはミヤコと向き合っているコウヤと二人の間に入ってあたふたとしているレイモンドを見ていた。


「ミヤコさんと連絡とっていなかったコウもコウだけど、寂しい気持ちになったのはわかる。」

 ディアはアリアに手を挙げて挨拶をした。


「そうだ。婚約おめでとう。お父さんの説得が大変だったの?」

 アリアはディアに手を挙げて挨拶を返した。


「いや、むしろ父はハクトに来て欲しかったようだ。大変だったのは、ハクトが軍を辞めるときと、今も父と私が喧嘩をしている。私はニシハラになる気満々なのに、父はハクトを自分の子供のようにしたいと騒いでいる。」

 ディアは困ったように言った。


「結婚を反対されているわけじゃないのね。なら、どうにかなるわね。」

 アリアは少し羨ましそうにディアを見た。


「コウヤもミヤコさんの再婚認めればいいのに。」

 アリアは未だミヤコに騒いでいるコウヤを見た。


「再婚は別にどうとかないはずだ。ただ、妊娠しているのが寂しかったみたいだ。」


「嘘!?」

 アリアはミヤコを二度見した。


「血のつながらない三兄弟とか・・・ドラマの世界だ。」

 クロスは楽しそうに笑っていた。


「そろそろ俺たちが助け舟出すべきだろ。どっちの味方する?」

 レスリーは立ち上がりクロス達を見た。


「じゃあ、ミヤコさん。だって、連絡を取れない状態にいたコウが悪い。」

 レイラは手を挙げた。


「私も同感。」

 アリアも挙手した。


「私も。」

 ディアも続いた。


「僕もだな。」

 クロスは腕を組んで頷いた。


「俺もだ。」

 シンタロウも頷いた。


「私も。」

 イジーも頷いた。


「みんなミヤコさんじゃん。」

 レスリーは困ったように笑った。



「おい。コウ。いい加減お祝いしないと、大人になれよ。」

 ハクトは未だ拗ねるコウヤに声をかけた。


「・・・わかっているけど、母さんから聞きたかった。」

 コウヤは口を尖らせていた。


「それは、俺が悪かった。あやまるよ。兄さん。」

 シンタロウが手を挙げてコウヤに言った。


「それキモイ。止めて。」

 コウヤは眉を顰めていた。


「さーさー!!ミヤコさんとレイモンドさんの結婚祝いなんだから、二人以外は準備に入って。」

 マリーは手を叩いて言った。




 

 作り物のドームの夜空を見上げてコウヤは思わず笑顔になってしまった。


 母親の再婚が寂しかったが、久しぶりに会えた親友たちがしっかりと生きていて嬉しいのだ。


「おい。まだ拗ねてんのか?」

 後ろから気を遣っているのかわからない声がかかった。


「拗ねていないって。ハクトには拗ねているように見えたか?」

 コウヤは振り返り、屋敷の中から出てきたハクトに笑いかけた。


「ならいいんだ。」

 ハクトはコウヤが座るベンチの横に座った。


「モーガンとかリリーとかも一緒に来れればよかったのに」

 コウヤはここにいない戦友の姿を思い出した。


「あの二人は今大変らしいぞ。何せ収束作戦に参加したから持ち上げられすぎて参っているらしい。」

 ハクトはもはや軍は他人事と言わんばかりの口調だった。


「・・・やっぱり、ロッド中佐を死んだことにしたのは、良くなかったのかな・・・」

 コウヤは考え込むように呟いた。


「いいわけないだろ。あんな殺人兵器。平和になったら脅威でしかない。人はそこまで馬鹿じゃないからすぐに気づく。」

 後ろにクロスが立っていた。


「クロス。その口調って何か俺未だに怖いんだよね。」

 コウヤはロッド中佐の口調で話すクロスに少しだけ恐怖心があった。


「大丈夫よ。中身は優しいクロスだから。」

 クロスの横からレイラが出てきた。


「すまん。優しいクロスを俺は知らない。」

 コウヤの横のハクトが異を唱えた。


「私もハクトに賛成だ。」

 ディアが拍手をしながら歩いてきた。


「うわ。出た!!バカップル。」

 レイラは嫌だ―と言いながらクロスにしがみ付いていた。


「本当に、お前ら二人の盲目さには苦労させられたとレスリーが言っていた。」

 クロスは屋敷の方を見て言った。


「ああ、研究施設に入る前ね。俺も馬鹿だと思ったもん。」

 コウヤは横のハクトとディアを見て困ったように言った。


「基本的に皆困る奴らだろ。クロスもレイラもたいがいだ。」

 ディアは言われたことを気にする様子もなく淡々と反論した。


「そうだ。この死にたがりだった二人組が。」

 ハクトはクロスを睨んだ。


「ちょっと!!みんな私を仲間外れにしないでよ!!」

 屋敷の中からユイが走って出てきた。


「盲目・・・まあ死にたがりと・・・、そして単なるおバカのカップルよね。」

 レイラは走ってっ来たユイを見て意地悪く笑った。


「今馬鹿って言ったな!!」

 ユイはレイラに突進した。


「おバカと言ったのよ!!」

 レイラはユイの突進を躱して更に言葉を続けた。


「・・・あれから一年か。」

 コウヤは宙を見上げた。


「明後日、収束作戦の犠牲者追悼式典をやるらしい。その時に俺もディアも呼ばれているんだ。」

 ハクトは少し困った顔をしていた。


「収束作戦に参加した者たちは基本的に隠されたけど、数少ない公表されている人だからね。」

 ユイは二人を気の毒そうに見た。


 収束作戦が宇宙に及ぼした影響は大きく、ドールプログラムの脅威を体感した人々は作戦参加者を畏敬の念を込めて「フィーネの戦士」と呼んでいた。


 作戦参加者が周りに与える影響は大きいため、一部を除いて公表をしていないのであった。公表できない者がいるのもあるが、権力が偏ることを恐れた各国の上層部が判断したようだ。


「まあ、操られていたとはいえ、互いに殺し合ったからゼウス共和国と地連よりも、地連とネイトラルの方が、溝が深くなっているよな。」

 コウヤは少し悲しそうに呟いた。


「そうだな。しかし、ネイトラルは地連に対して絶対的な弱みを持たれている。しばらくはうまくやるだろう。」

 ディアは気にする様子もなく言った。


「・・・あのね。アリアが火星近くの瓦礫の回収が終わりつつあるから、今度一緒に飛ばないかって。私行こうと思うんだ。」

 ユイは空を見上げて言った。


「いずれ私も火星には行くし、クロスも復興でいつかは行くでしょ?」

 レイラは横のクロスを見た。


「そうだね。」


「・・・お父さんが、たぶんどこかで生きていると思うんだ。いや、生きて、ドールプログラムの研究を続けているはずなんだ。私はわかる。」

 ユイは下を見て自分に言い聞かせるように言った。


「・・・カワカミ博士か。」

 ディアも考え込むように俯いた。


「・・・俺たちの課題は多いな。」

 コウヤは優しかった執事のカワカミ博士と、研究者として嬉々としている彼の姿を思い浮かべた。


「マックスが、いつか彼を凌ぐ研究者になる。僕はそう思うよ。レスリーもそう言っている。」

 クロスはコウヤ達を見た。


「そうだね。」

 コウヤは怖がりでレスリーの陰に隠れていた大人げない研究者を思い出した。


「そうだ!!みんなもちろんこれはつけているよね。」

 ユイは服の下からネックレスを取り出した。


「ああ。もうほぼお守りとしてつけているな。つけないと不安で仕方ない。」

 ディアも服の下から取り出した。


「それは気持ちわかるわ。ずっと身に着けていたから私も不安になる。」

 レイラも服の下から取り出した。


「これに関しては皆同じ意見だね。」

 クロスも服の下から取り出した。


「同感だ。」

 ハクトも同じく服の下から取り出した。


「・・・なんか、懐かしいな。」

 コウヤも服の下から取り出した。


 

「・・・・また、集まる約束しよう」

 六つの虹色に輝くネックレスを見てコウヤは呟いた。



(完)



 宇宙のどこか、浮かぶ鉄の塊の中で複数の男たちがいた。


「戦士を隠す世界に制裁を・・・・」


「戦士に救済を、今の不遇からの救済を・・・」

 男達の真ん中にいる人物は手を挙げた。


「・・・我々は、戦士を救うのだ。我々を救ってくれた戦士を今度は我々が救うのだ!!」

 真ん中の男の声に呼応するように周りの男たちは叫んだ。


「フィーネの戦士に・・・祝福と救済を!!」

 男達は何かに酔うように叫んだ。


 彼らの後ろにはモニターがあり、そこに映るのは初老の男だった。


「・・・困ったことになりましたよ。みなさん。」

 初老の男が呟いた。



*************************

 こちらからあとがきになります。


 ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。

 この「六本の糸」はこれで完結となりました。

 最初に記載しておりましたが、このお話は別サイトに投稿していたものを大幅に加筆修正したものになります。別サイトの方は削除しました。


 かなり長いお話になりました。

 拙い文章と誤字脱字が多数で分かりにくいところもあったと思われます。


 私自身、このお話の人物達が好きで、まだまだ回収していない伏線や書きたいお話もあるので、「六本の糸」から数年後のお話を「糸から外れて」という名前で投稿させていただいています。

 もし気が向いたら、このお話も含めて読んでいただけると嬉しいです。


 最後に繰り返しになりますが、ここまで読んでいただきありがとうございました。



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