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妹と異世界転移 ~引きこもりだった俺が妹を護るために大陸を統一するまで~  作者: おとしんくるす


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93 姉妹の再会

※ 前話を読み飛ばされた方へ。

 嗜虐しぎゃく趣味の男爵に虐待されていたリンネの妹が、五体満足とはいかなかったもののなんとか救出された話だと理解していただければ、物語の進行上問題ありません。

 レンネさんの応急処理を終え、ライナさんは馬車を宿へと走らせる。

 なるべく揺らさないように、慎重にだ。


 宿に着くと、全身傷だらけのエルフを運び込むのは問題がありそうな気がしたので、申し訳ないけどもう一度箱に入ってもらい、ライナさんと二人でそっと部屋に運び込む。


 箱から出てきた妹を一目見て、その姿にリンネは一瞬表情を強張こわばらせて固まったが、すぐに駆け寄って優しく抱きしめてやり、髪を撫でてやりながらポロポロと涙を流す。


「レンネ……よかった、生きていてくれて……」


「……お姉ちゃん……ホントにリンネお姉ちゃんなの……? あ、ああ……うわあぁぁぁぁ!」


 レンネさんの方もリンネの胸に顔を埋め、声を震わせて泣いた。


 涙を流しながら再会を喜び、お互いの存在を確認しあう姉妹。

 喜ばしい光景だが、事情を考えれば痛ましい光景でもある。


 しばらく二人にしてあげようという事で、リンネに薬を預け、俺と妹、ライナさんは街に出て軽い昼食を食べる事にする。


 正直食欲なんて全くなかったので俺は果実ジュースだけを飲んだが、その味も苦味しか感じなかった。


 みんな口数の少ない時間が過ぎ、数時間して宿に戻ると、ベッドで眠るレンネさんの隣で、リンネが手を繋いだままいとおしそうに髪を撫でてやっていた。

 レンネさんの全身に包帯が巻かれているので、二段階目の治療は終了したらしい。


 俺達の姿を見て、リンネが床にひざまずいて頭を下げる。


「洋一様、香織様、ライナ殿。ありがとうございました!」


 それだけ言って、リンネは床に頭をつけたまま微動だにしない。

 俺もとっさに、リンネの前にひざをついて頭を下げた。


「ごめんリンネ。妹さん、無事に助けられなかった」


「洋一様、おやめください! 命があっただけで。再びこうして出会えただけで、私は十分に幸せです」


 リンネはそう言って、俺の頭を上げさせようとする。


 だが、たしかに命こそ無事だったものの、レンネさんは体にも心にも大きな傷を負っている。

 鑑定した時に『スキル:採取Lv3』と出たが、リンネと一緒に育ち、一緒に森に入っていたというのだから、本当はリンネと同じく、弓術Lv6に採取Lv5くらいはあったはずなのだ。


 でも片腕で弓は引けないし、知識こそ残っているだろうが、採取にも支障をきたすからこそのあの鑑定結果だったのだろう。

 失われた物はあまりにも大きい。


 リンネは再会できただけで幸せだと言ったが、俺に気を使っての言葉なのだと思う。

 俺だったら、香織をこんな目に遭わされたとしたらとても冷静ではいられない。どんな事をしても、相手を殺してやると思うだろう。


 リンネは長く生きているから感情のコントロールにけているだけで、実際にあの男爵を目の前にしたら、俺と同じくとても冷静ではいられないはずだ。


 その事は、リンネの右手を見れば痛いほどにわかる。

 どれだけ固く握ったのだろうか。爪が食い込み、血が流れた痕がある。

 本当なら、人間全てを憎んでいてもおかしくないのだ。



 俺は複雑な気持ちでその夜を過ごし。翌朝、レンネさんが馬車での移動に耐えられそうだという事で、安全運転で鉱山に戻る事にした。

 なるべく早く、薬師さんに診せた方がいいだろうから。


 必ずあの男爵にむくいを受けさせ、地下室に捕らわれていた他の子達も助けてみせると誓って、馬車の窓から遠ざかる街を眺める。

 空には重い鉛色の雲が立ち込め、雨がしとしとと降り注ぐ中を、馬車は水を跳ねながら進んでいくのだった……。




 30日ほどをかけて王都に到着し、護衛の人達の経費を精算した。

 B級冒険者の一人がしきりとライナさんにアタックをかけていたが、ライナさんは迷惑そうだったので、こっそり『パークレン子爵のお姉様ですよ』と教えてあげたら、びっくりして大人しくなっていた。


 そして俺は、そのパークレン子爵本人に会いに行く。


 エイナさんと会って、無事にリンネの妹を救出できた事を報告し、アドバイスが役に立った事のお礼を言う。

 そして俺が見た事をつぶさに話し、あの男爵家が取り潰しになるよう動いてほしい。俺にできる事ならなんでもするからと、頭を下げた。


 一瞬難しい表情を浮かべたエイナさんだったが、ライナさんが一緒にお願いしてくれた事で大いにやる気になってくれ、できる限りの事をすると約束してくれた。


 その言葉をわずかな慰めに、鉱山に帰り着いたのは、北部でも緑が鮮やかに茂る、6月上旬の事であった……。




大陸暦420年6月7日

現時点での大陸統一進捗度 1.2%(パークレン鉱山所有・エルフ5256人)(パークレン子爵領・住民0人)

資産 所持金 28億7957万(-839万)

配下 リンネ(エルフの弓士) ライナ(B級冒険者) レナ(エルフの織物職人) セレス(エルフの木工職人) リステラ(雇われ店長) ルクレア(エルフの薬師) ニナ(鉱山前市場商店主)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 本当に悔しくて悲しいレンネの姿。 それでも、礼を言ったリンネは本当にできたエルフだ…
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