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妹と異世界転移 ~引きこもりだった俺が妹を護るために大陸を統一するまで~  作者: おとしんくるす


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82 マーカム王国内戦

 俺達が王都へ帰り着いたのは、大陸暦419年も終わろうとする12月30日だった。


 すでに第二王子派、第三王子派とも兵力を王都の近郊に集めていて、一触即発の空気が漂っている。

 幸い街道は封鎖されていなかったが、帰って来る時遠目に第三王子派の大軍が見え、その中にバルナ公爵家の旗を見つけたネグロステ伯爵家派遣の護衛の皆さんが殺気立つなど、危なっかしい雰囲気だ。


 いつもならこの時期は新しい年を迎えるお祭りの準備で大賑わいなのだそうだが、さすがに今年はそんな状況ではないらしく、街全体もピリピリとした空気に包まれている。

 なので一緒にファロス公爵領へ行ったネグロステ伯爵家の皆さんの内、半数がそのまま俺達の護衛として残ってくれる事になった。


 本当は鉱山に戻りたい所だが、各領主とも王都周辺に領軍のほとんどを集めているので、地方では治安が悪化しているらしい。

 鉱山までの道も例外ではなく、主要な街道ではないので、なおの事治安が悪いとの情報だ。


 護衛を雇おうにも、戦闘ができる冒険者の大半が軍の補助としてどこかの貴族に雇われたり、大商会に護衛として雇われていて人がいない。

 さすがにネグロステ家の人に鉱山まで送ってもらうのは無理なので、やむを得ず王都に留まる事になった。


 エイナさんは報告と、もらったお金を届けに伯爵家の王都屋敷へ行ってしまったので、俺はリステラさんから情報を聞く。


 それによると、もう第二王子第三王子とも王城を離れ、それぞれの支持勢力と共に王都郊外に陣取っているらしい。

 四人いる王女も、すでに嫁いでいる上三人は嫁ぎ先の家にいて、王の傍にいるのは末娘である第四王女だけだそうだ。


 二人の王子は、王の死を合図に戦いを始めるべく待機中。死の床にある父親を放置して兄弟で跡目争いとか、なんともごうの深い話だと思うが、権力者とはそういうものなのだろうか?

 だとしたら、あまりなりたくないなぁ……。


 なんとも微妙な気持になるが、伯爵邸から戻ってきたエイナさんは『無事に間に合ったようですね』と、気にもしていない様子だった。ほんとドライだよねこの子。お姉ちゃんに関する事以外は。


 もっとも、リステラさんや王都の人々もおおむね似た感じで、関心があるのはどちらが勝つかと、自分達に被害が及ばないかの心配だけといった感じ。

 身分制度が厳しいので、王家の争い事など雲の上の話という意識があるのかもしれない。




 ……俺達が王都へ戻って二日。ほとんどの店が閉まっている中、買い溜めの食料で妹が作ってくれたささやかだけど美味しい料理を食べて新年を祝っていると、第三王子派の陣営に大きな動きがあったという情報が入ってきた。

 南部と南東部に領地を持つ貴族のほとんどが陣を離れ、盟主であるバルナ公爵も軍の半数を自領に戻したのだそうだ。


 エイナさんいわく『ファロス公爵が動いてくれたのでしょう。しかし、バルナ公爵も自軍の半数を南に差し向けたというのは意外ですね、南方の貴族だけで対処させると思っていました。ファロス公はかなりの大軍を動かしてくれたようですね』との事らしい。


 盟主が軍の半数を自領に帰したという情報は第三王子派の貴族にとってかなりの衝撃だったらしく、動揺が走って浮き足立っている部隊もあるらしい。


 実際には自領に帰ったのではなく、南方でファロス公爵の軍と対峙しているのだろうが、第二王子派が『自領に帰った』と噂を流しているのだそうだ。

 バルナ公爵はすぐに噂を否定したらしいが、疑念を解くためにはファロス公爵が大軍を動員して第二王子派についたという事を説明しなければならず、それはそれで大きく士気を低下させているらしい。


 情報戦と言えばそうなのだろうが、やることえげつないなぁと思っていたら、どうもエイナさんの献策だったらしい。

 久しぶりに鑑定してみたら、謀略Lv3になっていた。この子はどこに向かおうとしているのだろう……。




 それからさらに三日後の、大陸暦420年0月5日朝。本来なら新年を迎えるお祭りの最終日だったその日に、王城から国王の崩御が発表された。

 それと同時に第三王子が次期国王として即位する旨を宣言し、それを認めない第二王子派との間で戦闘状態に入ったらしい。


 ネグロステ伯爵家派遣の護衛の皆さんも、戦闘が始まった事で大半が別の任務に行ってしまい、俺達はリステラ商会に集合して、リステラ商会が雇っている護衛の人達に守られながら戦いの行方を見守っている。


 戦いは王都の南方で行われているらしいが、火薬などない世界なので少し離れてしまえば音などは全く聞こえてこない。

 ただただ、不気味な静けさが王都を覆っていた。


 戦況の方は、テレビやラジオはもちろん電話や無線もないので、リアルタイムの情報など入ってこない。

 俺達にはネグロステ伯爵家の人が定期的に伝令をくれるので、情報は速い方だが、それでも半日前の情報が最新だった。


 その情報によると、開戦直後の戦況は一進一退らしい。

 かなりの兵力が抜けたとはいえ、それでも兵力に勝る第三王子派と互角と言う事は、第二王子派はかなり善戦しているのだろう。


 リステラさんも個人的に各所から情報を集めているようだが、その情報は混乱を極めている。どちらも自軍が優勢だという情報を流そうとしているらしい。

 俺としては妹がいつも通りの様子で食事を作ってくれて、なにも警告してこないのが唯一の安心材料という程度だった。

 情報がなくただ待つだけというのは、とても不安にさせられる。


「……エイナさん、大丈夫ですかね?」


 エイナさんにだって分かるはずがないのに、思わずそう訊いてしまう。

 が、エイナさんは落ち着き払った様子で返事をくれた。


「勝敗の八割は、戦いが始まる前に決まっていると言います。今回は万全の体制が整っていますので、まず大丈夫でしょう」


 ……なんかすごく自信満々だ。それだけ自分がやった仕事に自信があるという事なのだろうか? すごいな。


 エイナさんはファロス公爵からの戦費50億アストルを伯爵家に届けた際、後日送られてくる研究費補助は自分達が受け取る約束を取り付けてきたらしい。

 伯爵家としても元々戦費までは期待していなかったので、50億アストルがもらえただけで十分過ぎると、二つ返事で了解してくれたそうだ。


 ちなみに、五年間20億アストルずつの研究費は、エイナさんいわく『ほとんど熱気球の功績でしたので』との事で、エイナさんの取り分が一割で、残りは俺達にくれるらしい。

 なんだか申し訳ない気がするが、資金は必要なのでお言葉に甘えておく。


 だがそれも、いま行われている戦いがこちら側の勝利に終わればの話だ。

 エイナさんは大丈夫と言っているけど、俺は大いに不安である。


 気の休まらない時間を過ごしていた開戦二日目の朝、王都がにわかに騒がしくなり、『軍務大臣が王軍を率い、第二王子派に立って参戦した』と言う情報が飛び込んできた。


 表向きの理由は第三王子派の軍が王都内で狼藉ろうぜきを働いたためらしいが、実際はエイナさんが言っていたファロス公爵絡みなのだろう。


 王軍の参戦で戦いは完全にエイナさんの筋書き通りに進み、二日目の夜には第三王子派は総崩れとなり、わずか二日で第二王子派の完全勝利となったのであった。


 年が変わって大陸暦420年、1月1日の事である……。




大陸暦420年1月1日

現時点での大陸統一進捗度 0.11%(リンネの故郷の村を拠点化・現在無人)(パークレン鉱山所有・エルフ3977人)(リステラ農場所有・エルフ100人)

資産 所持金 7億1207万(-6万)

配下 リンネ(エルフの弓士) ライナ(B級冒険者) レナ(エルフの織物職人) セレス(エルフの木工職人) リステラ(雇われ店長) ルクレア(エルフの薬師) ニナ(鉱山前市場商店主)

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