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妹と異世界転移 ~引きこもりだった俺が妹を護るために大陸を統一するまで~  作者: おとしんくるす


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75 B級冒険者ライナ

 久しぶりに王都郊外の冒険者ギルドに顔を出すと、例によって別室へと案内され、受付にいた人が『出張所長を!』と叫んで走っていったが、しばらくして姿を現したのはエリスさんだった。どうやら出世したらしい。


 簡単な挨拶をして、早速フランの花の査定をしてもらう。リステラ商会経由で売ってもいいんだけど、ここ経由で売るって約束があるからね。

 まだ貧しかった頃にできた縁なので、大切にしたい。


 馬車から大きな布袋を運び込むと、エリスさんは嬉しそうに顔をほころばせて『もう売りにいらっしゃらないのかと思いましたよ。ありがとうございます』と言った。

 フランの花は10月頃から採れはじめるそうで、今が11月の下旬だから、俺が姿を見せないのを心配していたらしい。


「ここに売るって約束でしたからね」


 そう言うとエリスさんは安心したような、嬉しそうな笑顔を浮かべたが、ライナさんが次々に運んでくる袋の山を見て、だんだん口の端が引きってくる。


「あ、あの洋一様。これ全部フランの花ですか?」


「はい。……さすがに多すぎましたかね?」


 リンネとエルフさん達ががんばってくれたので、馬車にいっぱい積んできたのだが、鉱山にはまだ結構な在庫がある。


「いえ、あの……お引き取りする分には問題ないのですが、さすがにこの量ですと価格が……」


「ああ、それは仕方ないですよ。適切な値段をつけてください。ちなみにまだこれと同じくらいの量があるので、それも考慮して」


「え…………ま、まだこれと同じくらいの量が、ですか……?」


 エリスさんが気を失って倒れそうになるのを、ライナさんがサッと抱き留めてくれた。さすが男前美人さん、とても絵になる。宝塚みたい。



 ……査定の方は花の量があまりに多く、一つずつ数えるのは不可能との判断で、品質だけをチェックして、あとは重さを量って数を算出する事になった。妥当な判断だと思う。


 ギルドが暇そうな時間を選んで来たつもりだが、それでも多少の客はいるので職員総出という訳にはいかず、査定には結構時間がかかる。


 待っている間に、エリスさんがライナさんに話かけてくる。


「ライナさん、よろしければB級への昇級試験を受けてみませんか? ちょうど今、試験官の資格を持つA級冒険者の方が来ているのです」


 その言葉にライナさんは一瞬驚いたような表情をしたが、すぐに俺の方を向いて『よろしいでしょうか?』と訊いてくる。

 俺が止めるような話でもないのでOKすると、ライナさんは勇んで試験を受けに行った。

 せっかくなので、俺と妹も見学させてもらう。



 試験会場は冒険者ギルドの裏にある広場。A級冒険者だという相手は、筋骨隆々とした二メートル近い大男だった。

 ライナさんも女性としては大きい方で170センチ以上あるが、それでも大人と子供ほど違う。


 ちょっと心配になるが、武器は木製の物を使うので安全だそうだ。

 ライナさんは槍、大男は剣だ。


 ライナさんは暇さえあれば槍の訓練をしているけど、最近わりと平和だったので戦うライナさんを見るのは久しぶりだ。

 エリスさんが双方に準備がいいか確認をして、はじめの合図を出す。


「はあっ!」


 離れて見ている俺が一瞬ビクッとしてしまう裂帛れっぱくの声を発し、ライナさんが振るう槍が大男を襲う。

 が、槍が振り下ろされた先にさっきまであった大男の姿はなく、ライナさんがすかさず横になぎ払った先からも、男の姿は消えていた。


 男は巨漢なのにとんでもなく動きが速い。

 二度・三度とライナさんが攻撃をかけるが、その全てが空を切り、男を捉えられない。


 赤い鎧を着て、束ねた長い髪を躍らせながら戦うライナさんはとてもカッコイイ。これが演舞えんぶなら拍手喝采だろうが、残念ながら今は模擬戦だ。


 それまで攻撃をよけるだけだった男が反撃に出て、ライナさんは振り下ろされた木剣を紙一重でよける。

 木剣が空気を切り裂く『ブォン』という音が、離れている俺の耳にもはっきり聞こえてきた。


 ……いやちょっと待って、木製の武器だから安全って言ってたけど、よく考えたら木の棒で思いっきり殴られたら人死ぬんじゃない?

 たとえ死ななくても、重傷を負うくらいはふつうにあるよね?


 一転してハラハラしながら戦いを見守り、思わず薬師さんからもらった傷薬が入った腰のポーチに手が伸びる。

 だがライナさんはひるむ事も臆する事もなく、槍を振るって戦い続ける……。



 戦いはその後もしばらく続いたが、結局ライナさんの槍は一度も相手を捉える事なく、体勢を崩されたライナさんの首に剣が突きつけられて終了となった。

 戻ってきたライナさんに、妹がタオルを差し出す。11月下旬の寒い季節だというのに、戦いを終えたライナさんは汗だくで、ほつれた髪が顔に張り付いている。

 ちょっとエロチックだなと思ってしまったのは、妹には絶対に気付かれてはならない。


 対戦相手だった男としばらく話していたエリスさんがこちらにやってきて、『おめでとうございます、B級昇格試験合格だそうです』と告げてくれた。

 ライナさんは嬉しそうでもあり、悔しそうでもある微妙な表情をしている。

 昇級は嬉しいけど、いくら格上とはいえいい所なく一方的に負けてしまったのが悔しいのだろう。

 ライナさん、優しいけど意外と負けず嫌いな所あるよね。


 だが相手の男がやってきて、『力は今一つだが、速さと身のこなしは良かったぞ。判断力も中々だ。B級でも中位くらいの実力はあるだろう。だが攻める時の踏み込みが弱い、これからも精進するんだな』とアドバイスをくれた時は、立ち上がって『ありがとうございました』と頭を下げていた。

 このあたりの礼儀正しさはさすがだ。


 エリスさんによると、元々ライナさんは実力的には十分B級と評価されていたのだが、実績が足りないのでC級止まりだったのだそうだ。

 ここ一年くらい俺の専属護衛をやってくれたのが実績となり、今回の昇級はほぼ決定事項であったらしい。


 ライナさん本人は『まだまだ鍛錬が足りません……』と唇を噛んでいたけど、俺だったら一撃で粉々にされてしまいそうな相手にあれだけ善戦したのだから、立派だったと思う。

 むしろ護衛として頼もしく思えた。あ、そういえばB級になったら契約料とか変わるのかな?

 ……っていうか今どうなってたっけ? エイナさんの学費を肩代わりしたので、エイナさんが学生の間は専属契約とかだったかな?


 契約した時の事を思い出そうとしてみたら、薄暗い部屋で毛布に包まった下着姿のライナさんの絵が浮かんできて、慌てて頭を振って正気に戻る。

 報酬の事は今度改めて話す事にしよう。うん……。



 ライナさんの昇級試験の間にフランの花の査定も終わったらしく、エリスさんから告げられた額は、『一つ2000アストルで買取、15万個として3億アストルでいかがでしょうか?』というものであった。


 もう一度同じ量を持ち込んでも同じ値段で買取ってくれるらしい。

 去年は一個2800アストルだったが、この量なので半値くらいになるかと思ったのに結構な高査定だ。


 その額で了解し、『今ギルドの金庫には1億アストルしかないのですが』と頭を下げるエリスさんに後日でいいと告げ、以前のような手形をもらってギルドを後にした。



 今夜はライナさんの昇格祝いをする事になり、照れくさそうに遠慮するライナさんを引っ張って市場に行き、早くもやる気満々な妹に食材をたくさん買い込んでもらう。


 エリスさんも誘ってみたら来てくれるとの事で、その日のパーティーは賑やかでとても楽しかった。

 エイナさんもライナさんの昇級を事の外喜んでくれ、その夜は徐々に暗い影を落としつつある情勢の中、明るく輝く一時ひとときの平穏な時間となったのであった……。




大陸暦419年11月21日

現時点での大陸統一進捗度 0.11%(リンネの故郷の村を拠点化・現在無人)(パークレン鉱山所有・エルフ3977人)(リステラ農場所有・エルフ100人)

資産 所持金 42億2838万(+9991万)

配下 リンネ(エルフの弓士) ライナ(B級冒険者) レナ(エルフの織物職人) セレス(エルフの木工職人) リステラ(雇われ店長) ルクレア(エルフの薬師) ニナ(鉱山前市場商店主)

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