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妹と異世界転移 ~引きこもりだった俺が妹を護るために大陸を統一するまで~  作者: おとしんくるす


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74 ローンの清算と新しい商売

 翌日。リステラ商会に出向いてリステラさんに会い、鉱山のローン一括返済についての話をする。するとなぜか、リステラさんが面白そうに笑顔を浮かべた。


「それはまた、間の良い事ですね」


「間がいい?」


「はい。つい先日、元鉱山の所有者であった商会から、鉱山を売値の半額で買い戻しても良いと言ってきた所なのですよ」


 ――! 一瞬、公爵家からの圧力でもあったのかとドキリとするが、よく考えたら違うな。それだったらリステラさんは笑っていない……ああなるほど、そういう事か。

 ここ最近、きんの売却量が大幅に落ちているので、経営が上手くいっていないのだと見て買い叩きに来たのだろう。素人しろうとが鉱山経営に手を出して失敗したと思われているのだ。


「半額ですか? 鉱山の価値は八割エルフの奴隷の評価額だったのに、半額は酷くないですかね?」


「そこは元所有者ですから、奴隷の半分以上は病気でまともに使えないと分かっているでしょうし、奴隷を何千人も一度に売りに出すなど不可能ですからね。首輪の価値だけ見れば20億アストルほどですから、買値の半額、24億アストルの提示は、先方としてはそう無茶な額でもないのでしょう。

 鉱山は所有しているだけでも経費がかかりますから、足元を見てきたのでしょうね」


 リステラさんの口調は淡々としている。俺が鉱山を手放す気など全く無い事を分かってくれているようだ。


 たしかに、鉱山は所有しているだけで税金が毎月1800万アストルかかるし、エルフさん達の食費も必要だ。ひょっとしたらこうなる事を狙って、わざと経営が失敗するように元の従業員を全員引き上げたのだろうか?


 もし今の鉱山に元の経営者達が帰ってきて、全員元気になったエルフさんと、全部壊された首輪を見たらどう思うだろう? 一般的なエルフの奴隷が一人100万アストル、その内首輪の価値が50万だと言われているので、資産価値暴落だとなげくのだろうか?


 まぁ、そんな事は起きないけどね。

 て言うか、もし今帰ってきたら薬師さんに殺されちゃうぞ。なんかえげつない薬とか盛られてさ……。


「とりあえず、こちらとしては売る気はありません。むしろ先ほどお話した、一括返済の話を進めてください」


 俺の言葉に、リステラさんは商人の目に戻って紙に数字を書き連ねはじめる。


「承知しました。契約は一括で37億アストルの所、月5000万アストルの8年払いで48億アストルとなっています。今までに7ヶ月分、3億5000万アストル返済していますので、今から一括となると……35億アストルといった所でしょうね」


 数字の書かれた紙を渡される。エイナさんもだけど、リステラさんも字綺麗だよな。ライナさんはちょっと独特な感じだったけど……。


「はい、これでよろしくお願いします。お金はどうしましょう?」


「後日、契約の日取りが決まったらお知らせしますので、その時にご用意ください。当商会の仲介手数料はおまけしておきます。洋一様には色々お世話になっていますからね」


 そう言ってにっこり笑うリステラさん。このおまけ、後々高くついたりしないだろうな……。


「あ、そうだ。リステラさんは昨今なにか不穏なうわさとか聞いていますか?」


「不穏な噂と申しますと……第二王子派と第三王子派の対立についてでしょうか?」


 おお、さすが商人。耳が早い。


「はい、なにか情報があればと思いまして」


「……洋一様の事ですから、エイナから聞いておられるのでは? 私もエイナから情報をもらっている身ですから、あの子以上の事はわかりません。ただ商人の間でも、特定の貴族家と関わりの深い所はピリピリしはじめていますね。当商会は今の所大丈夫ですが」


 ああ、やっぱりそういうのあるんだ。ネグロステ伯爵領に拠点を作ったり、森の拠点と連絡する時の便宜べんぎをお願いしたりするのは当面やめておこう。


「そうですか、商会も大変ですね」


「うちはまだ大した事はないですが、それよりエイナは苦労しているのではないですか? 王立学校の高等部ともなれば貴族の子弟も多いですし、この手の政争からは逃れられません。特にあの子は、色々と名前が売れていますから」


 ……おや、エイナさんはネグロステ伯爵家との事をリステラさんにも話していないようだ。秘密厳守なのは大変ありがたい。


「そうかもしれませんね。あまり学校の話は聞かないので分かりませんが、今度聞いてみます」


「あはは、あの子が素直に話すとも思えませんけどね。でも気遣ってやっていただけると、私としても安心できます」


 さすがリステラさんは親友想いだ。セシルさんの為に体を張っただけある。


「あ、そういえばセシルさんどうしてますか?」


「定期的に連絡を取っていますが、元気にやっているようですよ。想定よりずっと早く黒字化に成功し、運営も安定しているようです。来年早々にも安定経営の目処をつけて、こちらに戻ってくるかもしれません。洋一様にも多大な協力を頂いたそうで、感謝申し上げます」


「いえいえ、セシルさんの実力あってだと思いますよ。順調そうでなによりです」


「まだ黒字額としては微々たる物ですが、近々王都からトレッドへ当商会の荷馬車を定期運行しようと思っております。そうなれば利益率も上がるでしょうから、ご期待ください。あ、そうだ香織様。先日頂いたドレスのデザインですが、大変良い物でした。あれなら……」


 リステラさんは商売の話をさせると、とても饒舌じょうぜつで楽しそうだ。根っからの商人気質なんだろうな。

 妹ともドレスのデザインや生地の事でアドバイザーみたいな契約を結んでいるらしく、そっちも順調なようで大いに結構。


 しばらく妹と話をしていたリステラさんが、思い出したように再び俺に話を振ってくる。


「ところで洋一様。最近鉱山前の市場で色々珍しい物を売っているそうではありませんか。私としては事業の多角化に大変興味があるのですが……」


 さすがやり手商人、情報が速い。

 そしてなにやら含みのある笑顔。これはあれか、鉱山のローン清算の手数料おまけしてもらったの、もう活用しようという事かな?


 まぁ、こちらとしてもこれからもっと生産が増えるだろうし、鉱山前であまり大々的にやって目立つのもよろしくない。出所でどころを秘してリステラ商会で売ってもらえるなら、ありがたい話ではある。


「わかりました、今度ライナさんにいくつか見本を持って行ってもらいますね」


「よろしくお願いします。出所はもちろん秘密にしますが、他になにか注意するべき点はありますか?」


 さすが、理解が深くて助かる。


「今の所は特にないですが、木製品でなにか希望の品があれば言ってください。製作を頼んでみます」


 ……そんな訳で、椅子いすや机、ベッドなどいくつかの候補をメモし、長く話し込んでしまったリステラ商会を後にする。


 一応銀行の話もしてみたが、『発想としては悪くないと思いますが、お金を預かって守る上に利息までつけるというのはちょっと……保管料を取るというなら分かりますが』と言われてしまった。


 そういえば昔の銀行的なものって、預かり料取ってたりしたんだっけ? 治安の悪い時代ならそっちの方が需要あるのかな?


 そりゃ21世紀の感覚が中世風なこの世界でそのまま通用する訳ないよなと反省し、午後の予定である冒険者ギルドを目指す。


 久しぶりだな、エリスさん元気にしてるかな……。




大陸暦419年11月21日

現時点での大陸統一進捗度 0.11%(リンネの故郷の村を拠点化・現在無人)(パークレン鉱山所有・エルフ3977人)(リステラ農場所有・エルフ100人)

資産 所持金 41億2847万

配下 リンネ(エルフの弓士) ライナ(冒険者) レナ(エルフの織物職人) セレス(エルフの木工職人) リステラ(雇われ店長) ルクレア(エルフの薬師) ニナ(鉱山前市場商店主)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 現代的な銀行設立が現実的ではないという描写、そして歴史的観点から「預かり料」の発想ができる主人公が強いですね。 こういう描写は、多分トレンドからは外れていると思いますが、個人的には大好きで…
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