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妹と異世界転移 ~引きこもりだった俺が妹を護るために大陸を統一するまで~  作者: おとしんくるす


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70 村人三人

 王都に着き、リステラさんに会って報告とセシルさんからの手紙を渡し、王都で一泊してエイナさんにお姉様成分の補給をさせた後、俺達は鉱山に帰ってきた。


 鉱山の回りの山は半分くらいが赤や黄色に変わっていて、この世界にも紅葉こうようがあるんだなと妙に感心してしまう反面、もうこの世界に来て一年が経ったのだなと、感慨深い気持ちになる。

 去年の今頃は生きるのに精一杯で、葉っぱの色なんて気にしている余裕はなかったなぁ……。


 ちなみに農場にいる間。9月の12日は俺の誕生日で、17歳になった。

 本人もすっかり忘れていた誕生日なのに、妹はしっかり覚えていて干しブドウのケーキを作ってお祝いしてくれたのだ。

 すごく嬉しかった反面。妹の誕生日をすっかり忘れていた自分に気がついて、申し訳なさでいっぱいになる。

 たしか3月の24日だったよな。次は忘れないようにしよう……。



 およそ三ヶ月ぶりに帰ってきた鉱山だが、かつては恐ろしい場所に思えたこの場所が、今はとても懐かしく感じられた。


 門をくぐってしばらく行くと、いつも通り沢山のエルフさん達が仕事をしているのが見える。

 だがよく見てみると、鉱石を扱っている人より木材や布、各種の素材なんかを扱っている人が多いようだ。

 牧場出身のエルフさん達が自分に合った仕事を見つけてくれているようで、自立していく姿がとても輝いて見える。


 俺達が帰ってきたという知らせを聞きつけて、レナさんやセレスさん達が集まってきてくれた。薬師さんも姿を見せる。珍しい事もあるものだと思ったが、そういえばヒルセさんを連れてきているのだ。


 リンネは森に採取に行っているようだが、エルフさんの一人が呼びに走ってくれる。一人で森に入れるようになったらしい。成長が嬉しい。


「みんなただいま。新しい仲間を連れてきたよ」


 そう言って三人を紹介すると、一人が石加工の特技持ちだと分かった瞬間、念願の道具職人だとセレスさんが連れ去ってしまい、革加工の人は服のパーツの事で相談があると、レナさんが連れ去ってしまった。人材獲得競争が激しすぎる。


 残されたもう一人に、薬師さんが白衣をなびかせて駆け寄ってくる。


「ヒルセ! よく生きていたな!」


 薬師さんに抱きつかれ、一瞬目を白黒させたヒルセさんだったが、やがて目をうるませて泣きだしてしまう。


「ルクレアさん……お久しぶりです……手紙を見ましたが、まさか本当に会えるなんて……」


「ああ、そうだな。私も考えてもいなかった…………そうだ! 体は大丈夫か!? どこか悪い所や怪我などしていないか?」


 20年ぶりの再会だというのに、薬師さんはすぐに医術師の顔になって、ヒルセさんの体をあちこち調べはじめる。変わらないなこの人……。


「私は大丈夫です。ルクレアさんもお元気そうでなによりです」


 その人は半年前まで死にかけだったけどね……などと水を差すような事は言わず、再会を喜ぶ二人を温かく見守っていると、薬師さんが突然、ヒルセさんの左手首を握って顔色を変えた。


「……ヒルセ、これは……」


「あ、やっぱりわかりますか。六年位前にワイバーンに襲われた事があって、その時に折ってしまったんです。まともな治療設備もないし、医術師もいなかったものですから……添え木だけはしてもらったんですけど、上手くくっつかなかったみたいで……」


「――っ、痛みはあるのか?」


「寒い日や、雨の日などには少し。でも、もうほとんど以前と同じように動かせますよ」


「いや、そんなはずがないだろう! おまえは木工が得意だった。日常生活には支障がないかもしれんが、繊細な作業は十分にこなせないはずだ」


「……あはは、さすがにルクレアさんの目は誤魔化せませんね」


「あたりまえだ、私はおまえが産まれた瞬間にも立ち会ったんだぞ。おまえの体の事はすみから隅まで知っている」


「その言い方はちょっと……でも幸い利き手ではありませんでしたし、今までいた所では繊細な作業をする事などありませんでしたから、不自由がなかったのは本当ですよ」


「それは今までの話だろう。来い、私が繋ぎ直してやる」


「え、今からですか?」


 困惑するヒルセさんの右手を引いて、処置室に引っ張っていこうとする薬師さん。ちょうどその時、山の方からリンネが息を切らせて走ってきた。


「洋一様、香織様、ライナ殿、ニナちゃん、おかえりなさい!」


 そう叫んで駆け寄ってくるリンネの姿を、ヒルセさんが視界に捉える。


「リンネ! 貴女も本当にいたのね!」


「ヒルセさん! ご無事だったのですね……洋一様、ありがとうございます!」


 俺に向かって深々と頭を下げ、リンネはヒルセさんと手を取り合って喜びを分かち合っている。

 さすがの薬師さんも、ちょっとあせりすぎたと反省するように二人を見守っていた。


 まだ三人だけだけど、こうして元同じ村の住人同士が再会できたのだ。少しでも恩が返せたかなと、誇らしい気持ちになる。



 その日は温泉でゆっくりと長旅の疲れを癒し、夜は俺達の帰還祝いと新しい仲間の歓迎会が同時開催された。

 なぜか祝われる側のはずの妹が張り切って料理を作っていたが、久しぶりに家に帰ってきたような気持ちになれて、大いに楽しむ事ができた。


 俺がいない間の報告書だと言って、リンネが渡してくれた分厚い紙束から目をそむけながらだ……。




大陸暦419年11月13日

現時点での大陸統一進捗度 0.11%(リンネの故郷の村を拠点化・現在無人)(パークレン鉱山所有・エルフ3977人)(リステラ農場所有・エルフ100人)

資産 所持金 2億9880万(-11万)

配下 リンネ(エルフの弓士) ライナ(冒険者) レナ(エルフの織物職人) セレス(エルフの木工職人) リステラ(雇われ店長) ルクレア(エルフの薬師) ニナ(解放奴隷)

次回から、目指せ三日更新改め目指せ71時間更新にしてみようと思います。

ほとんど変わらないですけど……。

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