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6 能力

 半透明の板には、日本語で文字が書かれていた。


 高倉香織 人間 13歳 スキル:料理Lv2 裁縫Lv2 特殊スキル:危険察知 状態:幸福


 ……なにこれ?


 前半は妹のデータだけど、スキルってなんだ? 状態幸福?


 頭の中を『?』マークが駆け巡るが、しばらくしてピンとくるものがあった。

 俺は両手を前に出し、意識を集中して『かんてい』と言ってみる。すると、また『ピコン』という音が脳内に響いた。


 高倉洋一 人間 16歳 スキル:なし 特殊スキル:鑑定 状態:ふつう


 俺のデータだ。そして、特殊スキルに鑑定とある。


 俺の脳裏に、引きこもっていた時に読んだネット小説が思い浮かんだ。たしか異世界に転移した主人公が、女神様から特殊な力を貰って異世界で無双する話だったと思う。


 俺は女神様に会った覚えはないが、ひょっとして同じような状況なのだろうか? さっき頭の中でつぶやいていた『いかんて』を繰り返すと、中に『かんてい』の文字列が浮かび上がる……ってマジか?


 能力は一つだけらしく、どれだけ有用なものかも現時点ではよくわからない。

 それでも、頼るものがなにもないこの状況では一筋の光明だった。


 そういえばここまで来る途中、妹が何度か俺の袖を引いて『嫌な感じがするからそっちには行きたくない』と言っていた。

 そして妹の特殊スキルに『危険察知』の文字。これはつまり、俺は何度も妹に助けられていたという事なのだろう。護っていたつもりが護られていた訳だ。はは……。


 いかにも治安が悪そうなスラム街だったのに、泊まる所を探す事しか考えていなかった自分はなんて愚かだったのだろう。

 こんなザマで妹を護ろうなんて、聞いてあきれる。


 俺は改めて、ここは今まで暮らしてきた平和な世界ではないのだと胸に刻み込み、今度こそ俺が妹を護るのだと、固く心に誓うのだった。


 腕の中で眠る妹の頭をそっと撫で、これからしなければいけない事を考える。

 まずはここがどんな世界なのかをよく知る事。そして、この世界で生きていくための生活基盤の構築か……。


「んんぅ……」


 妹がもぞりと体を動かし、少し体勢を変えて再び穏やかな寝息をたてる。

 お互い下着なのであまり刺激的な事は避けて欲しいと思うが、今まで妹の肌と接していた場所が少し冷やりとし、新たに触れた部分がじんわり温かく感じる事からすると、二人で暖め合うというのはそれなりに有効らしい。


 意識がずれてしまったが、最終目的はやはり、せめて妹だけでも元の世界に帰してやる事だろう。

 引きこもりだった俺と違って、妹は両親との仲も悪くなかったし、元の世界に友達もいるだろう。恋人は……ちょっと考えたくないな。


 思わず悲しくなってしまったが、ともあれこの世界について知るにも生活基盤を築くにも、鑑定の能力は大いに役に立ちそうだ。

 能力を正確に把握するべく、俺は周囲を見回して片っ端から鑑定を発動してみる。


 ピコン『木製の壁』

 ピコン『木製の床』

 ピコン『木製の天井』

 ピコン『木製のバケツ・泥水』


 どうやら、対象を見ながら頭の中で『鑑定』と唱えるだけで良いらしい。

 調子に乗って次はお皿をと思った瞬間、不意に視界がぐらりと揺れ、貧血でも起こしたように意識が遠のいていく。


 あ、使用回数制限みたいなのあるんだな……。

 そんな事を考えながら、俺は壁にもたれかかるようにして気を失った……。




現時点での大陸統一進捗度 0%

資産 所持金 ゼロ

配下 なし

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