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妹と異世界転移 ~引きこもりだった俺が妹を護るために大陸を統一するまで~  作者: おとしんくるす


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50 鉱山温泉

 鉱山を買収して10日、現状一番差し迫った課題は水の問題だった。

 鉱石の粉塵で全身灰色の石像みたいなエルフさん達に体を洗って欲しいのだが、そのための水がないのだ。


 近くに沢がないので引いてくる事ができず、雨水を溜めたものは鉱石から金を取り出す作業に使われているし、そもそもあまりきれいじゃない。

 井戸は深くて汲むのが大変で、飲み水と調理用以上の供給は不可能だ。


 近くに沢がないのは、この辺りは地下水脈になっているからだろう。鉱山の記録を調べてみたら、


『大陸暦405年 11月18日 38番坑道で出水しゅっすい、エルフ23匹死亡、坑道埋設こうどうまいせつ

『大陸暦409年 3月12日 103番坑道で出水、エルフ18匹死亡、坑道埋設』

『大陸暦412年 2月1日 71番坑道で出水、エルフ25匹死亡、坑道埋設』


 などという、読んでいるだけでうつになりそうな記録がゴロゴロ出てきた。

 ちなみに、この10倍くらい落盤らくばん事故が起きている。


 だがそんな悲惨な事故の記録の中に、俺の目を引きつけるものがあった。


『大陸暦416年 12月27日 68番坑道で熱水噴出、エルフ39匹死亡、坑道埋設』


 わりと最近、二年半くらい前の記録だ。水ではなく熱水、しかも噴出とある。そのせいか死者が多いが、これはひょっとするのではないだろうか?

 もし俺の考えが当たっていれば、お風呂の問題が一気に解決するし、妹を喜ばせる事もできそうだ。


 坑道の地図を引っ張り出してきて場所を探してみると、68番坑道は北西に延びている坑道の支坑道で、5キロくらい先から斜め下向きに掘られている。

 熱水噴出の対策として、意図的に落盤を起こしたり土砂を盛ったりして埋められているようだ。


 ここより低い位置にあるのでこのままでは利用しにくいが、噴出するほどの勢いがあるなら、上から掘れば使えるんじゃないだろうか?


 俺は坑道の地図と、リンネが作ってくれている鉱山周辺の地図を照らし合わせて当たりをつけ、忙しいリンネに半日時間を貰って案内を頼み、針金をL字型に曲げた物を両手に持って山を歩き回る。


 針金の効果は未知数だったが、ここと当たりをつけた場所をエルフさん達に頼んで掘ってもらう事にした。


 報告によるとだんだん地面が熱くなってきているそうで、いつでも引き上げられるように命綱を巻きながら慎重に掘り進んでもらった所、三日目の今日、ついに熱水が噴出したとの連絡が入ったのだ。


 エルフさん一人が火傷をしてしまったとの事で心配したが、薬師さんによると軽症だという事で、胸をなでおろしつつ現場に向かう。

 現場に近付くと真っ白い湯気がもうもうと上がっているのが見え、鼻を突く硫黄の匂いが感じられた。やった、温泉だこれ!


 湧き出してくるお湯は透明に近く、手を入れられないほど熱い。温泉卵どころか固ゆで卵が作れそうだ。

 最初はこの近くに浴場をと思ったが、山道を長々と歩くのはかなり不便なので、セレスさんに頼んで鉱山までお湯を引くといを作ってもらう事にした。


 仮設という事で、ふたのない溝のような樋に適当な支柱で、とにかく急いで鉱山までお湯を引っ張ってきてもらう。

 鉱山には2メートル四方で深さ60センチの浴槽を用意し、洗い場と目隠しを仮設する。


 セレスさんと助手のエルフさん達ががんばってくれたおかげで10日ほどでお湯が届くようになり、実際にお湯を注いでみたら、2×2×0.6で2.4立方メートル。2400リットルくらいの浴槽が一時間ほどでいっぱいになった。お湯の量は一分間に40リットルくらいだろうか。

 4000人で割れば一人一日14リットルちょっと。十分とは言えないが、節約すれば二日に一度くらいは体を洗う事ができる計算だ。


 実際には時間の問題や、お湯を溜めておく設備の問題もあるのでもっと少なくなるだろうが、仮に四日に一度だとしても今までよりずっといい。夏場はちょっと辛いかもしれないが、それでも全く体を洗う事ができなかった今までとは比べ物にならないだろう。

 俺達は役得で毎日お風呂を使わせてもらおう。このくらいは許されるよね?


 鉱山に来てからは満足にお風呂に入れず、濡らした布で体を拭くだけだった妹は温泉を事の外喜んでくれ、『お兄ちゃん、一緒に入ろうよ!』などと言い出して、引き離すのが大変だった。


 セレスさん達には当分温泉関係の仕事を中心にやってもらうようお願いする。

 といに蓋をつけて地面に埋めてしまえば、真冬でも温度を保ってお湯を運べるだろうとの事なので、期待大だ。


 最初に4000人のエルフさん達全員が一通り体を洗うまでには、色々あって一週間ほどかかってしまったが、鉱石の粉を洗い流すと山エルフ特有の綺麗な金色の髪があざやかにひるがえり、栄養状態が改善しつつある白い肌もつやがあって、みんなとても美人だった。


 服も一緒に洗濯をしてもらったが、こちらはまだボロボロのままで、あちこち破れていて肌がのぞいているので目のやり場に困ってしまう。

 レナさんが作ってくれている新しい服も、布地を節約するために上着の袖とスカート丈が短いデザインなので、妙に色っぽい。

 妹の目が痛いので極力平静を装ってはいるが、ここはハーレムか天国かなといった感じだ。


 ……それはともかく、衛生状態の改善は健康状態の改善にも直結するので、温泉が引けたのはとてもありがたい。

 なにしろ水汲みなし、燃料いらずで大量のお湯が供給されるのだ。

 前は服や髪にシラミとかいるひどい状態だったが、これで一気に改善されるだろう。


 水の問題が解決した事で、運営資金の問題はともかく、エルフさん達の環境改善については一応の目途が立った……いや、実はもう一つ大きな問題が残っている。


 俺は『食事の準備ができたそうですよ』と呼びに来てくれたリンネの首、そこにはまった重々しいかせを見ながら、考えを巡らせるのだった……。




大陸暦419年5月30日

現時点での大陸統一進捗度 0.1%(リンネの故郷の村を拠点化・現在無人)(パークレン鉱山所有・エルフの労働者3974人)

資産 所持金 2160万5400アストル(-2860万)

配下 リンネ(エルフの弓士) ライナ(冒険者) レナ(エルフの織物職人) セレス(エルフの木工職人) リステラ(雇われ店長)

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