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妹と異世界転移 ~引きこもりだった俺が妹を護るために大陸を統一するまで~  作者: おとしんくるす


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48 鉱山経営(前)

 元所有者の商会の人達と、立ち会ってくれたセシルさんが帰り、俺達は鉱山に入る。

 エルフの奴隷達は鉱山の所有者が変わる事など自分達には関係ないとばかりに、黙々と働いていた。そもそも知らされていないのだろう。


 監視役の人間がいなくなる事については少し不安があったが、奴隷のエルフさん達は驚くほどに従順である。

 産まれながらの奴隷なので、反抗するとか逃亡するという発想がそもそもないのかもしれない。悲しい話だ……。


 まずは作業をいったん休止とし、全員に集まってもらう。正確な人数や健康状態を把握するためだ。一応事務所には、首輪のネジが3976本あった。予備の首輪はなかったので、多分持っていったのだろう。


 以前見た時と同じ、鉱石の粉塵だらけで灰色の石像のようなエルフさん達の人数を俺と妹で数え、リンネが薬師さん以外に森出身のエルフがいないかを探す。薬師さんは簡単な診察をして、重症の人はセレスさんが事務所を大急ぎで改造中の病室に収容する。



 レナさんには持ってきた布で病室用の寝具を作りを頼むが、その前にひもを4000本作ってくれるようにお願いする。

 この人数では俺達が毎日首輪のネジを巻いてなんてやっていられないので、各自に渡して自分で管理してもらうのだ。そのために、ネジをなくさないよう首から下げておくための丈夫な紐だ。


 いきなりそこまでするのはちょっと心配だったが、元ここの住民である薬師さんが大丈夫だと言ったので、多分大丈夫なのだろう。

『仮に森へ逃げたとして、ハナイチゴとアカイチゴの区別もつかないこの子達が、どうやって生きていけるというんだ……』と悲しそうに言っていた。


 ハナイチゴというのは、この時期森によく生えている赤い実をつける草で、実は甘酸っぱくてとても美味しい。アカイチゴはよく似ていて甘酸っぱくてとても美味しいけど、有毒な植物なのだそうだ。

 森育ちのエルフなら子供でも見分けられるらしい。ちなみに俺は見たけどわからなかった。


 レナさんとセレスさんは、初めて見る灰色のエルフの群れにしばらく呆然と立ち尽くしていたが、俺が『よろしくお願いします』と言うと、我に返ったように作業に取りかかってくれた。



 ライナさんは別行動で近くの村に馬車で買い出しと、新しいオーナーとしての挨拶回りに行ってもらう。



 昼過ぎまで半日かかった調査の結果、エルフさん達の人数は3976人、内865人が重症判定で病室送りになった。五人に一人以上の割合だ、多いな。


 当然事務所には入りきらなかったので、倉庫なども改造して臨時の病室にする。

 薬師さんは引き続き重症患者の治療に当たり、レナさんとセレスさんも作業を続行、リンネは森産まれのエルフさんを探してくれたが、一人も見つからなかったそうだ。

 ほぼ4000人いて薬師さん一人。どれだけ数が少ないかがよくわかる。



 リンネには鉱山周辺の森での採取任務に回ってもらい、重症ではないと診断されたエルフさん達は作業に戻ってもらう事にした。

 仕事量の割り当ては無くすから無理はしなくていいと伝えたが、休みにできないのは悲しいかな、予算が足りていないからだ。

 そして俺と妹は待遇改善の本丸、食事を改めるべく炊事場に向かう。



 炊事場に行くと、そこにいたエルフの子達にとてもおびえたような反応をされてしまう。

 少し傷つきつつ、持ってきた食材で料理にかかる。


 と言ってもメインで作業をするのは妹で、俺は炊事担当のエルフさん達と一緒に、指示に従ってあれこれ雑用をするだけだ。

 薬師さんから『飢えた体に急に栄養価の高いものはダメだ、体がショック症状を起こす』と言われているので、今夜のメニューは野菜多めの麦粥らしい。


 炊事場には今夜の分とおぼしき食材が用意されていたが、牧場でも見たキヨウの実に、茶色くしなびた葉物野菜、干乾ひからびたニンジンやカブ、芽の出たジャガイモや皮、食用油を絞ったあとの木の実、イチゴのヘタみたいな奴とかだ。

 完全に廃棄野菜と残飯である。申し訳ないけど廃棄だ。


 隣におがくずも積んであったが、燃料にするのではなくこれも混ぜてスープを作るらしい。おがくずって食べられるの? カブトムシの幼虫じゃあるまいに。


 もしかしてエルフは食べられるのかなと思って、外に出たついでに薬を調合中の薬師さんに訊いてみたら、『食べられる訳ないだろう! かさを増すために混ぜられていただけだ!』と怒られてしまった。そりゃそうだよね。


 ちなみに炊事場のエルフさん達があまりせていない理由だが、やっぱり炊事担当は多めに食べたりできたのかなと思っていたのだが、それも全然違う理由だった。

 薬師さんが薬を作りながら苦々しそうに話してくれた所によると、『あの子達は人族の玩具おもちゃでもあったからだ、身の回りの世話の他に、夜の相手もさせられる。だから見た目が悪くならないよう、いい食事と服が与えられていただけだ』との事だった。


 この世界の人間はエルフを性欲の対象として見ないと聞いていたが、これも薬師さんによると『エルフ族と人族の見た目など、髪の色と耳の長さくらいしか違わない。顔が見えないよう頭に袋をかぶせ、下の毛も剃ってしまえば人族のメスの代用として使えるんだ』との事だった。


 さらに、『ここでは少ないが軍隊などのオスが多い場所や、長旅をする冒険者や隊商では、荷運びもかねてそういう目的でエルフが使われるなど珍しくもない。人族の奴隷は高価だし、羊のメスなどを使う場合もあるらしいが、エルフの方が人族に近いからな。教会の神様とやらも、夜はお眠りになっているのだろうさ』と言っていた。


 その話をする薬師さんの表情は嫌悪感に満ちている。女性しかいないエルフにとって、人間の男に襲われるというのはどんな気持ちなのだろうか? すごく恐いだろうという事以外は、想像もできなかった。

 そんな事が行われていたのなら、炊事場の子達が俺を見て脅えたのも納得だ。


「おまえは炊事場の仕事は役得がある、当たり配置だとでも思っていたか? だとしたらとんだ勘違いだ、あそこは他にも、働けなくなった仲間の首を生きたまま切り落として首輪を回収する仕事や、死体をゴミ捨て場に運ぶ仕事もやらされる。ここで一番辛い配置だよ……」


 そう語る薬師さんの目には、涙が光っていた。

 妹が聞いていなくてよかったと思う。本当に……。




 その日の夕食は今までと違い、作業量の確認もなく全員に食事が支給され、しかもかなり味がよかったようで大好評だった。

 目の色を変えてかき込もうとするエルフさん達にゆっくり食べるようにと何度も念を押し、もっと食べたそうにすがるような視線が何百と注がれるのを、『飢餓状態から急に満腹にすると体調を崩す』という薬師さんの指導によって我慢させなければいけなかったのは、とても辛かった。


 早くみんながお腹いっぱいご飯を食べられるようになって欲しい。そのためにも、俺は資金の確保をがんばらないとな。


 同じく辛そうにしている妹を見ながら、俺は覚悟を新たにするのだった……。




大陸暦419年5月1日

現時点での大陸統一進捗度 0.1%(リンネの故郷の村を拠点化・現在無人)(パークレン鉱山所有・エルフの労働者3976人)

資産 所持金 7540万5400アストル(-450万)

配下 リンネ(エルフの弓士) ライナ(冒険者) レナ(エルフの織物職人) セレス(エルフの木工職人) リステラ(雇われ店長)

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 鉱山買収で、随分大陸統一進捗度が進みましたね。 「大陸の1/1000」と考えると、かなり広範囲に感じられます
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