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妹と異世界転移 ~引きこもりだった俺が妹を護るために大陸を統一するまで~  作者: おとしんくるす


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39 ラドガン鉱山

 俺は今までの仲間を探す過程で、それなりの数のエルフを見てきたと思う。鑑定してみた数だけでも200人は超えるだろう。


 だが、森出身のエルフは一人も見つける事ができなかった。それなのにさらにピンポイントに、薬学のスキルを持ったエルフを探さないといけないのだ。

 その可能性の低さたるや、砂山の中から特定の一粒を探し出すようなもの。いや、王都中探しても最初からその一粒が混じっていない可能性すらある。


 しかし、あきらめる訳にはいかなかった。どんなに小さくても、ついに見つけた妹を助けられるかもしれない可能性なのだ。

 だがどうする、まだ人間に捕まっていないエルフの集落を探すか? でも、リンネの村だってリンネが急いで往復10日なのだ。それより遠くにあるだろう村を探してなんて、到底間に合わない。

 かといって、王都をやみくもに探し回って見つかる可能性なんて……。


「そうだ! リンネ、たしか前に同じ村の薬師さんと一緒にりにかけられたって言ってたよね?」


 思い出したのは、王都の奴隷市場を見に行った時の事。そしてリンネが話してくれた身の上話。


「はい。私の村から連れて来られた人達はまとめてりにかけられましたから」


「どこに買われていったか知ってるような事言ってなかった?」


「はい。ルクレアさんは私の一つ前でしたから……たしかラドガン鉱山という場所だったと思います」


 ――う、よりによって鉱山か……。


 基本的に近代以前の鉱山というのは、とんでもなく労働環境が悪い場所だ。前の世界でも『銀塊一つに奴隷一人』なんていわれる鉱山もあったという。銀塊一つ分の鉱石を掘り出すごとに、奴隷一人が死ぬくらいの割合だったという意味だ。


 そして、ラドガン鉱山という名前には聞き覚えがある。王都で奴隷のりを見た時、何人かエルフを買い付けていた場所だ。

 常連のような扱いだったが、頻繁に奴隷を補充しなければいけないような環境なのだとしたら……。


 リンネ達の村が襲われて20年近く。果たしてまだ生きているだろうか……。

 不安は強いが、しかし当てもなく闇雲に探すよりはずっといい。


「ライナさん、ラドガン鉱山の場所ってわかりますか?」


「はい。王都から北東へ、馬車で二日ほど走った場所です」


 馬車で二日……妹が発病して今日で四日目。よし、ギリギリ間に合う。


「リンネ、本当に申し訳ないんだけど、街についてきてくれる? またこれをつける事になっちゃうけど」


 そう言って、念のために買っておいた奴隷用の鎖を出す。二度とリンネがつける事がないようにと願ったそれを、俺の手で再びつけようというのだ。

 だがリンネは一瞬の迷いもなく、大きくうなずいて自ら鎖を繋いでくれた。


「洋一様、急ぎましょう」


「……ありがとう、リンネ」


 心からのお礼を言って、早足で街に戻る。リンネの弓はライナさんに持ってもらい、リンネには奴隷らしく見えるよう、ボロボロのマントを羽織ってもらう。


 王都の郊外に着き、冒険者ギルドに駆け込んで用意しておいた馬車を出してもらう。商会のリステラさん宛に、しばらく留守にするので家の事を頼みますと書いた手紙を書いて配達を頼み、同時に俺の名前で『エルフの捜索 経費全て依頼主負担 成功報酬100万アストル 至急』という依頼を出し、即座にライナさんに受注手続きをしてもらう。


 そして、待機してもらっていた乗馬ができる冒険者三人のうち一人に先に鉱山に走ってもらい、来訪の先触れをお願いする。

 本当は俺も馬で急ぎたい所だが、この世界の馬はあぶみがない裸馬で乗るのがとても難しく、二人乗りでも俺には無理なのだ。


 なのでリンネと一緒に馬車に乗り、ライナさんに手綱たずなを取ってもらって鉱山へと急ぐ。乗馬ができる冒険者の残り二人も、伝令要員として一緒に来てもらう。

 すでに夜の遅い時間だったが、馬車はカンテラの灯りを頼りに鉱山への道を疾走した……。


 馬二頭で走らせる馬車はかなり速いが、それでも鉱山までは二日。実働24時間の行程だ。

 冒険者の人一人に先行してもらい、途中の村で代えの馬二頭の調達と、帰りまで今の馬を預かって休ませてくれるように交渉してもらう。


 真夜中に騒がせた事をび、多目のレンタル料を払って馬を交換し、休む事なく鉱山へ走る。今は時間がなにより貴重なのだ。


 途中でもう一度馬を交換し、リンネが馬車を扱えるというので御者ぎょしゃも交代してライナさんと交互に休んでもらい、乗馬の冒険者の人には適時休みを取ってもらって現地集合にする。


 そうして急いだ結果、馬車で二日かかる行程を丸一日弱で走りきり、25日の夕方には鉱山にたどり着いた。


 冒険者の人達には休憩を取ってもらい、リンネとライナさんの三人で鉱山の事務所のような所へ向かう。先に連絡が行っていたので、スムーズに所長だという人と会う事ができた。


 所長は俺達がエルフを探していると言うと怪訝な表情をしたが、冒険者ギルドの依頼が書かれた木札を見せ、金貨一枚を握らせると、一転してとても協力的になってくれた。


「我々が探しているエルフが、20年ほど前にこの鉱山に買われたという情報があるのです。該当するエルフはいませんでしょうか?」


 俺の問いに、所長は困ったような顔をする。


「エルフ一匹ごとの記録など取っていませんので……それにここのエルフは平均して10年ほど、15年生きたら長い方なので、20年前となると……」


 やはりだいぶ苛酷な環境で使われているようだ。

 俺はリンネの首輪に繋がれた鎖をわずかに持ち上げ、言葉を発する。


「このエルフが相手の顔を知っています。探させていただく事は可能ですか?」


「それは構いませんが、坑道の奥にいる者もいますので、夜まで待ってもらえれば一ヶ所に集める事も可能ですが」


 夜まで……ダメだ、今は少しでも時間が惜しい。


「この鉱山の売り上げは日にいくらくらいですか?」


「そうですね、800万アストルほどになります」


「なるほど。では800万アストルお支払いしますので、今すぐ全員を集めていただく訳にはいきませんか?」


 そう言って、金貨8枚をテーブルに置く。


「え……そ、それはもちろん可能ですが……よろしいので?」


「はい。急ぎの依頼なのです」


 こうしている間にも香織は苦しみ、死に近づいているのだ。お金を惜しんでいる時ではない。とにかくなによりも時間が惜しい。

 所長は依頼書の『経費全て依頼主負担 至急』という文字を見て、納得したようにうなずいた。


「わかりました、すぐに」


 所長は事務所の外に向かって指示を出し、辺りがバタバタと騒がしくなりはじめる。


「炊事などの雑用をやらせているエルフならすぐに集まりますが、まずはそちらから改めますか?」


「はい、ぜひ」


 そう返事をして間もなく、外に案内されると20人ほどのエルフ達が脅えた表情をして並んでいた。

 見た感じそんなに汚れておらず、せてもいない。街にいる人間の女の子と似た感じだ。実は意外と待遇悪くないのだろうかと思わせる外見だった。


 馬車の中でリンネに教わった薬師さんの特徴は、名前が『ルクレアリア』。200歳を超えているので、人間だと19歳くらいの見た目のはず。背が高めで目がちょっと鋭く、眼鏡をかけていたそうだが、眼鏡は貴重品なのでりの前に奪われてしまったそうだ。今もかけていてくれたら一目でわかったのに……。


 今目の前に並んでいるのは俺が見ても12~13歳くらいのエルフ達で、牧場から来たばかりといった感じだった。

 一応リンネにも確認してみたが、首を振ったので次の人達を見せてもらう。


「精錬所のエルフ達が先に集まりましたので、こちらへどうぞ」


 そう言われて案内された先で、俺は思わず息を呑む事になるのだった……。




大陸暦419年2月25日

現時点での大陸統一進捗度 0.001%(リンネの故郷の村を拠点化・村人3人)

資産 所持金 6462万8400アストル(-912万)

配下 リンネ(エルフの弓士) ライナ(冒険者) レナ(エルフの織物職人) セレス(エルフの木工職人) リステラ(雇われ店長)

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