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妹と異世界転移 ~引きこもりだった俺が妹を護るために大陸を統一するまで~  作者: おとしんくるす


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35 開店準備と商品調達

 翌日。再びやってきたリステラさんに店長をお願いする旨を告げ、準備に取り掛かってもらう事にする。

 リステラさんの給料は当面、月25万アストル。経営全般はリステラさんに一任し、商品はこちらから提供した物を売ってもらう。


 売上げの半分を仕入れと俺達の取り分として受け取り、残りの半分で店を運営する。経営が軌道に乗ったら、将来的には諸経費や税金からリステラさんの給料まで、全てを売上げからまかなう予定だ。手間がかからなくて大変良い。従業員が増えたら、必要に応じて人手も貸してくれるそうだ。


 ちなみに、なぜかもう店舗の候補まで決まっているそうで、俺の許可さえ出れば来月から使えるそうだ。

 大通り沿いの小さな店舗で、間口が五メートルなので税金が100万アストル、契約金が50万アストルに、家賃が月に35万アストルらしい。すごく段取りいいな、まるで俺がリステラさんを雇う事が最初から決まっていたみたいだ……。決まっていたんだろうな。


 物件を見に行くか訊かれたが、もう全部お任せにする事にして、ギルドに払うお金と税金で200万、契約金と家賃二か月分で120万、リステラさんの給料二か月分50万に他の経費130万を加え、合計500万アストルを渡しておく。今更詐欺を疑う事もないだろう。


 リステラさんは俺の金払いの良さに驚いたようで、人好きのする笑顔を浮かべながら『ご期待に添えるよう頑張ります』と言う。……気を抜くと惚れてしまいそうだ。


「開店準備は一月もあれば整いますが、商品の方はいかがでしょうか?」


 レナさんとセレスさんの事はリンネに任せたけど、多分仲間に加わってくれている……と思うので、それを信じて予定を立てる。

 次にリンネが戻ってくるのが今月末、それから仕入れに行くとして、往復20日と製作期間で……。


「本格的に商品を入れられるのは二ヶ月くらい先になると思うから、それまで待っててくれるかな?」


「承知しました。ではその予定で進めておきます」


「うん、よろしくね」


 話がまとまった所で、リステラさんはやる気満々で帰っていく。今月一杯は学生のはずなんだけど、大丈夫かな……。




 商会を開く事が決まって二週間弱。いよいよリンネがやってくる日になったので、旅支度を整え、ロバを連れて森に向かう。


 ちなみにこの期間、毎日街を散策して仲間候補のエルフを探したが、一人も見つける事ができなかった。

 エルフは基本裏で雑用などをやらされている事が多いし、やはり牧場出身のエルフが圧倒的多数なのだ。事前情報なしに見つけるのは難しい。


 結局ライナさんから『毎日妹を連れて散歩に出かけ、買い物にも付き合ってあげる優しいお兄さん』という評価を頂戴しただけに終わってしまい、ちょっと嬉しい。


 前回リンネに会った時に貰ったフランの花も換金しに行き、3301万2000アストルをゲットできた。商会が六つくらい作れてしまう圧倒的資金力だ。

 でもフランの花は時期的にもうおしまいで、冬季の採取品は全然探せていないので、このままでは半年以上収入が途絶えてしまう。やはり商売をなんとか軌道に乗せなくてはいけない。


 そんな訳でいつも通り森の入り口までライナさんに送ってもらい、『期日は未定だけど帰ってきたらギルドに連絡を入れるから、一日一回ギルドに顔を出しておいて』とお願いしてお別れする。


 森に入るとすぐに木陰からリンネが姿を現し、少し進んだ所で人目を避けて話をする。


「村はどうだった? レナさんやセレスさんは仲間になってくれた?」


「はい。二人共村の住民になる事を承諾してくださいました。今は新しく増える仲間に備えて服や寝具、家などを作ってくれています」


 良かった、商品の調達予定は狂わずにすみそうだ。


「ごめん、新しい仲間はまだ見つけられてないんだ……」


「いえ、お気になさらず。それより今回のご予定は?」


「うん。俺達を森の拠点まで連れて行って欲しいんだけど、その前に人間の街でなにか調達したい物とかある?」


「人族の道具ですか? ええと……特には思い当たらないですね」


 さすがエルフ、自立心バッチリだ。


「保存食は?」


「道中森で採れますから」


「なにかの素材とかは?」


「必要な物は全て森で採れますから」


「甘い物とか?」


「森で採れますから」


 森万能だな。


「じゃあ森の拠点へ向かおうか。案内よろしくね」


「はい、お任せください」


 そうして俺達三人は、二度目となるリンネの故郷への旅路に就くのだった……。




 旅立ってから10日、薄く雪が積もる寒々とした森を歩き続け、俺達はリンネの故郷へたどり着いた。


 年が変わって、今日は大陸暦419年の0月5日。0月というのは年が変わった時に5日間あるお祭り期間のようなものらしい。この世界は一ヶ月が一律30日なので、ここで日数を調整するようだ。


 旅をしていた俺達には無縁だったが、エルフ達もこの時期には山の神様をお迎えするお祭りをやるそうで、今年はレナさんとセレスさんの二人でやったらしい。

 二人だけのお祭り、なんか寂しい響きだ。今はリンネを入れても住民三人だからな。来年はもっと人数が増やせてるように頑張ろう。


 お祭り自体は五日目の昼に神様が帰ってしまうそうで、俺たちが着いた夕方にはすでに片づけが行われていた。


「あ、洋一様香織様、お帰りなさいませ!」


 俺達の姿を見つけたレナさんが嬉しそうに駆け寄ってきてくれる。『いらっしゃい』ではなく『おかえりなさい』と言ってくれた事が、心にじわりと暖かさをくれた。

 ここを本拠にする予定だと言っていたのをリンネが覚えていて、二人にも伝えてくれたのだろう。

 早くここに引きこもって安全に暮らせるようになりたいものだ。


 案内された村は前に来た時に比べて廃屋が少なくなっており、代わりに新しい家がいくつか建っていた。

 村の中央にはお祭りの時に山の神様を迎えるほこらもある。この一ヶ月の間にセレスさんがやってくれたのだろう。

 少しずつ村の再建が進んでいるようで嬉しくなってくる。頑張って住民探さないとな。


 レナさんはセレスさんに糸紡いとつむぎ機と織機しょっきを作ってもらったそうで、自分達の分と、増える予定の住民向けの服や寝具も作ってくれているらしい。

 お金の匂いを感じて見せてもらったが、森の草からとった繊維で作ったという服はなにやらくすんだ白色で、あまり高値で売れそうには見えなかった。


 妹に言わせると、人間の街で売っている布より柔らかくて質も良いそうでテンションが上がっているが、完全に実用品といった感じだ。レナさんに訊いてみる事にする。


「エルフの服ってこういうのが一般的なの?」


「はい。丈夫で動き易く、耐久性に優れていて保温性と通気性を併せ持ち、濡れてもすぐに乾く優秀な素材で作っています」


 ドヤ顔のレナさん。なるほど、実用品としてはとても優秀らしい。でも、街で高級品として売るにはどうなんだろう? 実用品を買う庶民はあまりお金を持ってない気がする……。


「……ん、あれは?」


 ほこらを片付けていたセレスさんが真っ白い布を取り出したのを見て、思わず声を上げる。


「あれは山の神様を迎えるためのほこらに敷いていた布ですね。本当は赤と白の布を使うのですが、赤く染める染料が手に入らなかったので……」


 それはもしかしてフランの花の事だろうか? ごめんなさい全部売っちゃいました。大金になっておいしかったです……。

 ってそれはともかく、セレスさんが持っている布は光沢があって、とても高級そうに見える。


「セレスさん、ちょっとその布見せて!」


 大声で叫ぶと、セレスさんはこちらにやってきて布を渡してくれた。受け取った布はとても軽く、きめ細やかで滑らかな手触りに加え、光を反射するほどの光沢がある。

 妹にも見てもらうと、元の世界の絹に近い感じで、ドレスを作るのにとても良さそうと上々の評価だった。


「この布はどうやって作るんですか?」


「森にいるサルクワームという虫のまゆからとった糸で作りますが……あの、お言葉ですがこの布は見た目と手触りがいいだけで通気性も吸水性も悪く、強度も弱いので実用性はありませんよ」


 作り方も絹に近いようだが、性質は違うのかな? その辺はよく知らないが、ドレスなんて見た目が十割で、実用性とか別にいらないんじゃないだろうか?


「この布譲って欲しいんだけど、いいかな?」


「お祭りが終われば焼いてしまうものですから、ご自由にどうぞ」


「え、それはなんか、儀式とかおきてとかで?」


「いえ、単に使い道がないからです。服には向きませんし、滑るので袋にも使いにくく、強度がないので寝具や敷物にも適しませんし、ひもにもできません。むりやり使い道を考えても、細く裂いてリボンくらいのものですね。なので基本お祭りで神様をお迎えする時にしか使わず、それは毎年新しい物を作るので、古い物は焼いてしまうのです」


 リボンか……そういえば、エルフの人達はあまりおしゃれに関心がないようだ。

 レナさんは自分で作った服を着ているが、飾り気のない実用一辺倒の物で、色も地味だ。装飾品の類もつけていない。元がかわいいから、それでも十分すぎるほど魅力的に見えるけどね。


「なあ香織、この布使えるか?」


「うん! これならすっごくいいドレスができると思うよ。腕が鳴るなぁ……」


 珍しくテンション高めのようだ。


「レナさん、これからしばらくこの布を重点的に作ってもらう事はできませんか?」


「素材はこの時期、森へ行けば羽化した後の残りがいくらでもありますし、糸を取るのは他の繊維より簡単なので可能ですが……」


「じゃあお願い!」


「はあ……」


 いまいち理解ができないという風なレナさんに強引に頼み込み、リンネには森での採取品目にサルクワームのまゆを加えてもらう。本当にいくらでもあるらしく、一時間もしないうちに部屋に小山が完成した。

 一個がソフトボールくらいある、わりと大きいまゆだ。虫の姿は想像しない事にしよう……。


 レナさんに糸と布の生産をお願いし、セレスさんとも会って話をする。


 将来的に人口が増える事を見越して、家や各種の設備の建築をメインに、道具の作成や材木・まきの作り貯めもお願いする。

 エルフは木を切り倒す事はせず、枝を落としてそれを使うのだそうだが、この辺りには中に家が掘れそうな巨木が無数に生えていて、俺が抱きついても半分も手が回らないような太い枝を縦横に伸ばしているので、当分材料が不足する事はないだろう。


 木工品は作ってもらっても輸送手段が限られるので、セレスさんには村で使う物を集中的に作ってもらうようお願いする。

 財源の確保と拠点の充実の同時進行。うん、いい感じだ。


 レナさんが作ってくれる布が溜まるまで、俺達はしばらく村に滞在する事になった。




大陸暦419年0月5日

現時点での大陸統一進捗度 0.001%(リンネの故郷の村を拠点化・村人3人)

資産 所持金 5542万9800アストル(+2766万8600)

配下 リンネ(エルフの弓士) ライナ(冒険者) レナ(エルフの織物職人) セレス(エルフの木工職人) リステラ(雇われ店長)

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