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妹と異世界転移 ~引きこもりだった俺が妹を護るために大陸を統一するまで~  作者: おとしんくるす


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308/323

308 (後日譚)引きこもりだった俺が妹を護るために統一した世界

 ……俺と妹がこの世界に飛ばされて来てから、どれくらいの時間が経っただろう。


 今年が大陸暦498年だから、ちょうど80年。大陸の統一を成し遂げてから71年になる計算か。


 思い返してみれば、平和で安定した暮らしを送れるようになってからも、色々な事があった。


 リンネとの約束だった全エルフの解放は、大陸統一からおよそ10年後の大陸暦438年に100パーセントが達成された。


 全体の99.999パーセントが故郷へと帰還を果たし。後はほんのわずかだが、あの酷い偏見と抑圧の時代でも心を通わせていた人間とエルフがいて、その人達は自分の意思で人間の国に残る事を選んだ。


 大陸全体で500万人を超えた奴隷エルフさんの内、ほんのわずかに54人だったそうだけど、それでもそういう人達がいたという事は、俺の中で多少なりとも救いになったと思う。


 エスキルさんは全エルフの解放が終わると同時に、後任を部下達に託し。自身は東部地区行政長官の地位を辞して、俺達の村へとやってきた。

 もちろん目的は尊敬して止まない恩人であり、師でもあるエイナさんの元で働く事である。


 エイナさん自身も正式に薬師さんに弟子入りして医術と薬学を学んでいたので、エスキルさんもその門下に加わり。30年後の大陸暦468年には、40年勉強したエイナさんが薬学Lv6の医術Lv5。30年のエスキルさんが、薬学Lv5の医術Lv4になっていた。


 出会った時から一つずつ上がって、薬学Lv9の医術Lv7になっていた薬師さんには及ばないものの、薬師さんが200年を超える修練の成果である事を思えば素晴らしいペースであり、人間の寿命で至り着く最高峰に達していたと思う。


 エイナさんはそれから、念願だったエルフの知識を記した薬学書と医術書の執筆をはじめ。エスキルさんの協力も得て、二人で薬学書全20巻と。医術書12巻を書き上げた。


 それは人間の薬学と医術を千年進める画期的なものであると絶賛を受け。俺が教えた活字を使って大量に印刷されて、薬師と医術師をこころざす人間の必携読本ひっけいどくほんとなり。多くの人の命を救ったのだそうだ。


 その大仕事を終えたあと。エイナさんはお姉ちゃんであるライナさんとの穏やかな生活に移り、エスキルさんは故郷である元エスキル小王国に戻って病院と医学校を開き、多くの優秀な後輩を育て上げた。

 旧エスキル小王国は大陸一の医学の先進地として大いに栄え、発展を続けている。


 年に一回。8月1日に開かれる大陸統一○周年記念のパーティーにはエスキルさんも毎回来てくれて。数十年を経ても変わらないエイナさんへの敬慕けいぼの念を感じさせてくれると同時に、『大陸東部における十日熱の死者を0にできた事は、私の生涯の誇りです』と、嬉しそうに語っていた。


 十日熱で愛する家族を失い。自身も死にかけて一度世界に絶望したエスキルさんにとって、それはどんなに嬉しい事だっただろうか。


 とても言葉では言い表せないだろうが、その輝くような笑顔が全てを物語っていたと思う……。




 エイナさんの後を継いでパークレン王国の王となったニナは、優秀な王として多くの国民にしたわれ、『隻眼せきがん慈王じおう』の異名で呼ばれて、長年にわたって人間の国を平和で安定的に統治した。


 その一方で、定期的に俺達の元を訪ねてくるのを欠かさなかった他、大陸暦435年。王位について7年目の25歳の時には、ヨミ・タカクラという男性と結婚もした。


 言うまでもなく俺とライナさんとの子供であり。エルフと同じく最初の一年を一ヶ月一歳のペースで成長したあとは急速に成長が落ち。その後はほとんど外見が変化しない状態になった。


 なので外見が12歳。実年齢6歳というわりとアレな状態での結婚となったが、二人揃っての希望だったし。ライナさんも許したので、俺も認める事にした。


 なんとなく、ニナの『これでまた洋一お父さんとの血縁が深まった……』という心の声が聞こえたような気がしてちょっとゾッとしたが。幼い頃からよく顔を合わせていた二人であり。結婚前の一年はヨミが王都に勉強に行き、ニナによく面倒を見てもらっていたという関係もあって、夫婦仲は極めて良好のおしどり夫婦となった。


 結婚二年目には子供も産まれ。最終的には2男1女を儲けたが、そのいずれもが半魔人だった。


 ……とはいえ、ヨミの外見が変わらないのはまずいので。結婚五年目に王配は急な病で死去した事になり。ヨミは俺達の村へと戻ってきた。


 離れてしまっても、ニナは定期的に村にやってくるし。子供も順番に村に連れてきて、ライナさんとエイナさん。エルフさん達や俺と妹の教育を受けて共に過ごす生活だったので、お互いあまり寂しくはなかったようだ。


 王子と王女を王城外で教育する事については、当初かなりの反発があったらしいが。『エイナ先王陛下に教育していただくのです』の一言で、ピタッと反発は収まったらしい。その光景が目に浮かぶようだった……。



 そしてその後。大陸暦460年には24歳になった長男が王位を継ぎ、ニナは引退して俺達の元へと戻ってきた。


 すでにわりといい歳になっていたニナだったが、俺と妹の前では無邪気な子供に戻るようで。一香が料理修行の旅に出た穴を埋めるかのように、子供時代の思い出を取り戻すかのように、親子三人で。ヨミも混じって四人で、笑顔に溢れた暖かい日々を送ったのだった……。




 ニナが国王を引退すると同時に、長年国を支えてきたファロス工業技術大臣も引退し。なぜか俺達の村に移住してきて、エイナさんと研究の日々を送るようになり。

 同じくリステラさんも政治の世界から身を引いて、商会の仕事に専念するようになった。


 新しい世代で運営される事になったパークレン王国だったが、引退した人達が目を光らせていたのと、全員が後継者をちゃんと育てていたおかげもあって、順調に安定を維持して発展を続け。かつて6つの国に分かれて戦乱をくり返していたのが嘘のように、平和裏に繁栄を謳歌おうかし続けた。


 それはこの大陸の歴史上。もっとも平和で豊かな時代だと、歴史学者たちがこぞって書き記したくらいである。


 エルフの国とも最低限の交流を保って交易が続けられ。人間の国からは主に食料を。エルフの国からは工芸品や薬、森の素材などの輸出入が続けられて双方の国を豊かにし。人間達のほとんどは数十年に渡ってエルフの姿を見る事がなくなった結果、かつて奴隷として使っていた記憶を急速に失っていった。


 それはある意味身勝手で都合がいい事とも言えたが、人間とエルフが対等の関係を築き直すには必要な事でもある。


 全てのエルフの解放が達成されてから60年が経過した大陸暦498年の現在では、もう奴隷エルフを実際に見た事がある人間はほとんどおらず。エルフは特別な土地に住む珍しい種族としてしか認識されなくなりつつある。


 実際には奴隷制度があった時代に牧場で大量に繁殖させられたので、珍しいと言うには程遠い数が存在しているのだが、見かける事がないのでそういう認識になるのだろう。

 悪い事ではないのでそのまま放置して。その一方で徐々に国境を開き、今は人間とエルフの交流を増やす方針に移行しつつある。


 今度こそ、対等な立場で人間とエルフの関係を再構築するのだ。


 寿命が数十年である人間と違い。数百年であるエルフさん達には奴隷時代を覚えている人が多くいるが、そこはエルフさん達の温和な性格に頼るしかない。


 口に出すのもはばかられるような酷い目に遭ったリンネの妹のレンネさんでさえ、今では人間の男……に見える俺と普通に話ができるようになっているのだ。


 もちろん奴隷時代の記憶を忘れられない人もいるだろうから、人間との交流はなるべく若い。解放後に産まれた世代を中心に行う方向で実行が進んでいる。


 俺が夢に見た。人間とエルフが共に肩を並べて暮らす世界が、ようやく実現しつつあるのである……。



 ……しかしそんな明るい情勢の一方で。どうする事もできない寿命という壁が、長い年月を経て俺の仲間達を襲い。特に人間のみんなを呑み込んでいくのであった……。




大陸暦498年3月10日


解放されたエルフの総数 504万1500人(+246万7802) 全体の100%


資産 所持金 323億4192万(+157億3988万)

 次話以降も後日譚が続きますが、主人公の冒険の本当の終焉となり。人間の仲間の多くは寿命を迎え、作者としては不幸な形ではないと思うのですが、主人公と妹も人生の終焉を迎える事になるかと思います。


 あまり直接的な描写はしないつもりですが、見たくないという方は今話をもって最終話と認識して頂き。一番最後に登場人物紹介を載せますので、そこまで飛んで頂くと良いかと思います。

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[良い点] テンポよく、壮大で長い物語を上手にまとめている [気になる点] 妹との場面は多いが、第一夫人の場面が少なく軽く扱われている感じがちょっと残念 [一言] 総体的に飽きずに楽しませていただきま…
[気になる点] 人の国には主人公の血脈が残り、エルフの国には主人公の伝説が残るのでしょうか。 [一言] アメリアさんの休日(あるのか?)、統一後のネグロステ家、もしも兄と妹ではなく、姉と弟だったら。 …
[良い点] 逃げ……というわけではないですが、主人公を死なせないとか不老不死の神にする作者さんは多いと思います。自分もなので、そういうハッピーエンドは大好きです。 その一方で、主人公が幕を閉じる(あ…
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