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妹と異世界転移 ~引きこもりだった俺が妹を護るために大陸を統一するまで~  作者: おとしんくるす


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307 帰る場所

 大陸統一から一周年のパーティーが盛況の内に終了した翌日。ニナやリステラさん達は王都へ戻って行き、遠方から来てもらったスミクトさん・カナンガさん・エスキルさんは、俺も同行してシェラに送ってもらった。



 再び日常に返った村で。俺は妹と二人だけで話をするべく、散歩に誘う。


 この世界に飛ばされて来てから最大の目標にしていた、妹と一緒に安全に暮らせる環境は実現する事ができた。

 恩人であるリンネとの約束であり、薬師さんの望みでもあった全てのエルフの解放も、実現しつつある。


 ……あと一つ。俺の中で問題として残っているのは、妹を元の世界に戻す方法だ。


 俺達が別世界から来たというのは一度薬師さんに話した以外は秘密にしているので、独力で地道に。それとなく情報を集める事しかできず。全く手掛かりを得られない状態で半分諦めかけていたのだが、今日のパーティの準備中。シェラをカラアゲから遠ざける作業をしていた時に、かなり有力かもしれない情報を聞いてしまったのだ。


 それはシェラの気を紛らわせるべく、雑談を持ちかけた時。『そういえば、今日はなんの祝いなのじゃ?』と言われてしまい。ああ、カラアゲにしか興味がなかったんだなと思いながら、大陸統一から一周年のお祝いだと言うと、『統一? じゃがまだ空の上には街があるじゃろう』と言われたのだ。


 一瞬背筋がザワっとするのを感じて詳しい話を訊いてみると。シェラでも到達するのが大変なとても高い場所。雲の上に、小さな街があると言うのである。


 ……それはつまり。俗に言う『天界』というやつなのではないだろうか?

 そこに行けば俺と妹をこの世界に飛ばした神様がいて、もしかしたら元の世界に帰る事ができる方法もあるかもしれない。


 正直、俺はあまり元の世界に帰りたいとは思わないが、妹は別だ。

 引きこもって親にも見離されていた俺と違い、両親に会いたいだろうし、友達もいるだろう。


 こっちの世界でも家族と仲間ができたので、帰るかどうかは妹の判断次第だが、可能であれば選択肢を用意してあげたい。


 なので、シェラにその雲の上の街に連れて行って欲しいとお願いしてみると。『別に構わんが……主殿あるじどのは半日くらい水に潜っていても平気か?』と訊かれ。もちろん平気な訳はないのでそう答えると、『では難しいな……』と言われてしまった。


 ……言葉の意味はなんとなくわかる。行き先がとても高い場所なので、おそらく空気が極限まで薄いのだろう。


 そのせいで息をするのが難しく。シェラも自由には飛べないので、到達に半日かかる。その苦しさと不自由さが水の中のようなので、シェラは水に潜る事に例えたらしい。


 逆にシェラがそんな環境でも平気な事にびっくりだが、まぁエンシェントドラゴンだからね……。


 とりあえず、天空の街に到達するには宇宙服のようなものが必要らしく。この世界で作れるかどうかはわからないが、もし妹が望むのなら、全力を尽くしてなんとかしてみようと思う。

 だから本当に望むかどうかを確かめるために、俺は妹の意思を確認してみる事にしたのだ。



「……なぁ香織。もしも元の世界に戻れる方法があるってなったら、帰りたいか?」


「え……」


 人気のない場所で話を切り出すと。妹は完全に不意を突かれた表情で、ポカンとなる。


「まだ確かな話じゃなくて、可能性の話だけどな」


 そう言葉を重ねた俺に、ようやく気を取り直したらしい妹は、ちょっと強めの口調で言葉を発した。


「わたしはお兄ちゃんと一緒にいたいよ。お兄ちゃんが帰るのなら一緒に帰るし、お兄ちゃんがこっちに残るのなら一緒に残る。それがわたしの望みだよ」


「そうか……じゃあ俺の事は置いておいて、もしもどっちか選ぶとしたらどっちがいい? こっちの世界でも家族や仲間ができたけど、元の世界には父さんも母さんもいるし、友達だっているだろう?」


「お兄ちゃんがいるならどっちの世界でもいいのが大前提だけど…………そうだね、あえて言うならこっちの世界かな。お兄ちゃんを見捨てたお父さんとお母さんの事は好きじゃないし、私は引っ込み思案だったから、向こうにあまり親しい友達もいないから。こっちの世界のニナちゃんや一香の方に愛着があるのは確かだと思う。それに記憶にある範囲だと、もうこっちで過ごした時間のほうが長いからね……」


 ああそうか。妹は13歳でこっちの世界に飛ばされてきて、もう9年と9ヶ月ほど。10年に近い。

 物心ついてからの記憶だと、こちらの方が長いのだ。


 16歳で飛ばされてきた俺でも、体感時間で同じくらい。記憶の濃さで言えば断然こっちの世界の方が強い。

 それに、俺は妹以上にこっちの世界で家族や仲間が増えてしまったので、愛着も完全にこちら側だ……。


「わかった。じゃあ今の話は聞かなかった事にしておいてくれ」


「うん!」


 ――こうして、俺と妹はこちらの世界に骨を埋める事を決め。天上の街への突撃計画は中止となった。


 ……これでもう完全に心配事はなくなり。穏やかに日々の平穏な暮らしを味わえるというものである。


 エルフさん達はみんな優しくて性格も穏やかで、ここにいれば襲われる心配なんてしなくていい。

 森には凶暴な魔獣や獣なんかもいるが、猛獣の襲撃からはリンネ達が守ってくれるし、いざとなればエンシェントドラゴンがいる。それこそドラゴンが襲ってきても大丈夫だろう。


 毎日が平和で美味しいものを食べられて、気の置けない仲間達に囲まれて過ごすのは、幸福そのものだ。


 ニナとは少し離れてしまっているが、活躍は定期的に聞こえてくるし、暇を見つけては会いに来てくれもする。


 遊びに来た時は俺と妹に甘えていくのはもちろん、弟のヨミと妹の一香とも仲良くしてくれ、いずれヨミが望めば、王都に留学の手配もしてくれるのだそうだ。


 ヨミは、ライナさんとエイナさんという二人の先生。加えて薬師さん以下大勢のエルフさん達や、一応別世界の知識持ちの俺と妹に囲まれて暮らしていて、学ぶ環境としてはこれ以上のものはないとさえ思うが、やはり体験しないと学べない事もあるだろうからね。


 ヨミ本人も乗り気なようなので、いずれお世話になる事もあると思う。


 子供が巣立っていくのは寂しくもあるが、まだ先の事だし、永遠の別れという訳でもない。


 一香のほうも、そのうち料理の修業に出たいとか言い出す気がするが、いつの日か旅に疲れたら、また帰ってくる。帰ってきたいと思う場所を用意しておいてあげるのが、親の務めというやつだろう。


 そんなある意味幸せな心配をしながら、俺は今日も妹と一緒にこの世界で多くの仲間に囲まれて、平和で穏やかな日々を過ごすのだった。



 こんな日々がずっと永遠に続けばいいなと、そう願いながら……。




大陸暦428年8月2日

現時点での大陸統一進捗度 100%(人間の統一国家パークレン王国。エルフの独立国三つに絶大な影響力)


解放されたエルフの総数 257万3698人 全体のおよそ51%


資産 所持金 166億204万


配下

リンネ(エルフの弓士・山エルフの王)

レナ(エルフの織物職人)

セレス(エルフの木工職人)

リステラ(リステラ商会副商会長・国王相談役)

ルクレア(エルフの薬師)

クトル(フェアリー)

シェラ(エンシェントドラゴン)

スミクト(森エルフの王)

カナンガ(沼エルフの王)


― 家族 ―


香織(勇者)


ライナ(B級冒険者)

エイナ(パークレン王国前国王)


ニナ(パークレン王国国王)

一香(ウンディーネ上位種)


息子

ヨミ(ライナとの子供・魔人)

 本編はここで一旦一区切りとなりますが、引き続き後日譚と言いますか、時間が進んだ未来の話を書きたいと思っております。


 よろしければ、今しばらくのお付き合いをいただければ幸いでございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 本編完結お疲れさまでした。 なろうで久しぶりに頭から終わりまで、更新が待ち遠しかった作品でした。ありがとうございました。 [気になる点] アメリアさん。 [一言] いただいたコメ返しからす…
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