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妹と異世界転移 ~引きこもりだった俺が妹を護るために大陸を統一するまで~  作者: おとしんくるす


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306/323

306 大陸統一から一周年

 大陸暦428年の8月1日。今日は大湿地帯東部の拠点で人間の王とエルフの王が会談し。人間の統一国家と、エルフの国が三つ建国された記念すべき日から一周年だ。


 俺がリンネ達からエルフの王の王にと乞われ、エイナさんを通じての人間の国も含めて、実質大陸全ての王となった日から一年でもある。


 ……まぁ、そんな偉そうな肩書きを持っていても。今の俺は大森林の奥のエルフの村で、妹と一緒にのんびり平和なスローライフを送っている、準引きこもりだ。


 一周回って元に戻ってきた感もあるが。以前と違うのは、今の俺の周りには妹をはじめ、沢山の家族や仲間がいてくれる事である。

 ……いや、妹は俺が元の世界で引きこもっている間も傍にいようとしてくれていたから。変わったのは家族と仲間だろうか。


 今日は一周年のお祝いだという事で、そんな家族と仲間が集まってパーティの準備をしてくれている。


 我が家の厨房では勇者である妹が包丁を振るってお祝いの料理を作り。人間の国のニナ国王が、それを広場に置かれたテーブルへと運んでいる。


 わりと不敬罪ふけいざい案件な気もするが、本人はお母さんのお手伝いができて嬉しそうなので、気にしない事にする。

 ちなみに公式には、当時のエイナ国王が王都に戻ってきて正式に宣言した11月1日が大陸統一記念日となっており。国の式典なんかはその日に合わせて行われるので、今日は国王がここに来ていても問題ないのだそうだ。


 ……視線を巡らせると、山エルフの王であるリンネ国王が、妹のレンネさんと一緒に森で採ってきてくれた果物の皮を剥いてくれていたり。エンシェントドラゴンのシェラがお迎えに飛んでくれた森エルフの王スミクトさんと、沼エルフの王カナンガさんが、それぞれ手土産の大密林と大湿地帯産の食材をテーブルに並べてくれていたりする。


 更に人間の国の先代国王で、今でも建国の母として絶大な影響力を持っているエイナさんが、姉のライナさんと一緒に椅子いすを運んでいたり。

 パークレン王国の東部地区行政長官であるエスキルさんが、運ばれてきた椅子やテーブルを水拭きしていたり。


 大陸最大の商会において実質トップのリステラさんが、食器やコップ、お酒や果実水が入った水差しを運んでいたりと。見る人が見たらわりと卒倒案件かもしれない。


 他にも薬師さんをはじめとするこの村の住民であるエルフさん達や、フェアリーのクトル。セイクリッドウンディーネの一香も、みんなで協力して準備を進めてくれている。

 ちなみに俺の担当は、シェラがフライングでカラアゲを全部つまみ食いしてしまわないように、監視する係だ。


 なんだか楽をしているようで申し訳ないが、妹を除くと世界で俺にしかできない任務だそうなので、とりあえず最善を尽くしている。

 フラフラとカラアゲに吸い寄せられていくシェラを両手で持ち上げて離れた場所へ持っていき。また吸い寄せられるシェラを……とくり返す単調な作業だけどね。



 ……俺がそんな事をしている間にパーティの準備が整ったらしく。妹が呼びに来てくれた。


 リンネ・スミクトさん・カナンガさんが集めてくれ、リステラさんが持ってきてくれたこの世界で最高級の食材を、この世界で最上級の腕を持った妹が調理した。世界で最も美味であろう料理が並ぶ会場。


 その前で、例によって俺が簡単に挨拶をし。あとは自由に、各自が旧交を温める時間になる。


 俺は妹とライナさんを伴って久しぶりに会うスミクトさんとカナンガさんの所へ行き、定期的に送ってくれる大密林と大湿地帯の食材へのお礼を言って、新しくできた息子と娘を紹介する。


 魔人のヨミはどうやらエルフの生態に近いらしく、一ヶ月で人間の一歳ペースで成長しているので、まだ産まれて6ヶ月なのに、もう人間の6歳相当だ。

 すでに言葉を覚え、ライナお母さんから精神面の。エイナ叔母さんから知識面の教育を受けている。


 エイナさんの血筋だからかとても優秀なようで、もう薬の調合とかをやっているらしい。

 そして外見はライナさんに似て、6歳相当にして早くも将来美男子に育ちそうな片鱗を感じる。

 俺の親馬鹿じゃなければ、なんだか将来すごい子に育ちそうだ。


 今も二人のエルフの王に礼儀正しく挨拶をし。小さいのに偉いと褒められていた。


 一方、一香は最初から大人サイズで言葉も話せるが、妹の影響か勉強よりも料理が好きなようで、よく母子で並んで料理をしていて、すでにかなりの腕前だ。わずか6ヶ月の修行で、もうスキルに料理Lv1がついていた。


 一香はウンディーネらしく水も好きなようで、家の近くに大きな池を作って、よくそこにいる……と思っていたのだが、この前二つ目の池の建設に取りかっていたので、なんで二つも要るのか訊いてみたら、食材にする魚を養殖しているらしい。


 なんか、料理が好き過ぎて食材まで自作する凝り性の人みたいだが、今も沼エルフのカナンガさんと、魚の話題で熱く盛り上がっている。

 ……これは近々、養殖池に新しい魚が入る事になるかもしれないな。


 ちなみに水自体は本当に好きなようで。妹が作ってくれた水着を着て、養殖池で泳いでいる姿をよく見かける。

 一香によると、ウンディーネの力で水質を浄化していたりもするらしい。


 ちなみに釣りをしていいか訊いてみたら『いいよ』と言われたので、釣り糸を垂れながら娘が泳いでいる姿を眺めるという、わりとレアな体験をする事ができる。

 たまに潜ったまま20分くらい浮いてこなくて、大丈夫だとわかってはいても、心配になる事があるけどね。


 ウンディーネは水と一体化できるのか、魚を警戒させないようで。一香が泳いでいても普通に魚が釣れるし、それを妹と一緒に料理して夕食に出してくれるので、最近釣りは俺の趣味の一つになっている。


 なので新しい魚が入るのは大いに歓迎なのだが、大湿地帯から生きた魚をここまで運ぶのは普通の方法だと難しいだろうから、シェラにお願いする事になるかもしれない。

 他ならぬかわいい娘のお願いであれば叶えてあげたいし、俺も楽しみなので、シェラに代償を払う用意をしておこう。


 ちなみにシェラと言えば、先日ヨミが薬の素材としてドラゴンの血が欲しいと言い出したので頼んでみた所。なんか愉快そうな笑みを浮かべて『かまわんぞ、好きなだけ採っていけ』と左腕を差し出された。


 ……最初は薬師さんにお願いして注射器で採血を試みたが、針が通らず。ならばとナイフを当ててみたが、やはり傷一つ付かずで。シェラに『ん、どうした。血が欲しいのではなかったのか?』とあおられて、このままでは父親の威厳いげんがと思って。セレスさんにノミとハンマー。しまいにはノコギリやオノまで借りてきてガンガンギコギコダンダンやってみたが、触れてみると普通にプニプニした柔らかい腕であるはずのシェラの皮膚には、傷どころか引っかいたような痕一つすらつける事ができなかった。


 ……こうなったらもう父の威厳は捨てて。俺の血と交換で取引を持ちかけるしか……と思いはじめたのだが、たまたま通りかかった妹が『お兄ちゃん、なにしてるの?』と話しかけてきた瞬間。シェラが『あ、いたた。血が出そうじゃ』と言いながら右手でサッと左腕をで、スッと走った赤い線から垂れてきた血をヨミに分けてくれた。


 俺はシェラが左腕を撫でた瞬間。右手の爪が一瞬刃物のように鋭くなったのを見逃さなかったが、なんだろう。いかにエンシェントドラゴンとはいえ、勇者にガンガンされるのはやっぱり怖いのだろうか?


 ……結局俺の威厳は保たれたのかどうかよくわからないが、ヨミは途中から、血よりもシェラのやたらと高い耐久力に興味を示していた気もする。


 今度は『エンシェントドラゴンの皮膚が欲しい』とか言われたらどうしよう? さすがにシェラにお願いするのは気が引けるよな……。


 ……と、そんな普通の父親にはあまりないだろう心配事にも悩まされながら、俺はなんとか父親をこなしているという話をスミクトさんにしたら、ちょっと引いていた気もするけど、なにか今の話に引かれる要素があっただろうか?


 ともかく、今の俺の生活は妹と家族、仲間達に囲まれて。安全で穏やかで、楽しいものだという事だ。



 スミクトさんとカナンガさんの所も特別の問題はなく。解放されて故郷に戻るエルフさんの数は順調に増えているようだ。


 みんなが持ってきてくれた最新の報告だと、奴隷から解放されたエルフさんの数は全体の半数を超え、51パーセントくらいになっているらしい。

 半年で7パーセント増なので、このペースが維持できるならあと7年で全てのエルフさんが解放される事になる。

 まぁ、実際にはそんな計算通りにはいかないだろうけどね……。



 そんな話をしてスミクトさん達と別れ。しばらくして会場を見回すと、妹と一緒に仲良く料理を食べているニナ国王。久しぶりに会うからだろう、なにやら難しそうな話を熱心にしているエイナ前国王と、エスキル東部地区行政長官。こちらもなにか難しい話をしているリステラさんとヨミ。


 相変わらず仲良しのクトルとスミクトさんに、まだ魚の話で盛り上がっている一香とカナンガさん。


 こちらも相変わらずの勢いで、専用に用意された大皿のカラアゲを吸い込むように食べているシェラ。


 ……お酒を飲んでゴキゲンの薬師さんをはじめとするエルフのみんなが、エイナさんとエスキルさんに『おまえらも飲め』と絡みに行ったり、リンネとレンネさんがそれを止めようとしていたりと、一部混沌としているが、笑顔に溢れた楽しい会場になっている。




 きっとこういうのを幸せと言うんだろうなと。俺は普段はあまり飲まないお酒をライナさんと一緒にちびちび飲みながら、しみじみと幸福を噛み締めるのだった……。




大陸暦428年8月1日

現時点での大陸統一進捗度 100%(人間の統一国家パークレン王国。エルフの独立国三つに絶大な影響力)


解放されたエルフの総数 257万3698人(+39万870) 全体のおよそ51%


資産 所持金 166億204万


配下

リンネ(エルフの弓士・山エルフの王)

レナ(エルフの織物職人)

セレス(エルフの木工職人)

リステラ(リステラ商会副商会長・国王相談役)

ルクレア(エルフの薬師)

クトル(フェアリー)

シェラ(エンシェントドラゴン)

スミクト(森エルフの王)

カナンガ(沼エルフの王)


― 家族 ―


香織(勇者)


ライナ(B級冒険者)

エイナ(パークレン王国前国王)


ニナ(パークレン王国国王)

一香(ウンディーネ上位種)


息子

ヨミ(ライナとの子供・魔人)

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