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妹と異世界転移 ~引きこもりだった俺が妹を護るために大陸を統一するまで~  作者: おとしんくるす


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305 ウンディーネ上位種

 部屋を包んだ強い光がおさまった時、俺達の前には一人の少女が立っていた。


 血を素材にしたいせいか、少し赤味がかった薄い水色の髪をしていて。体はスライムを思わせる半透明な水色。形こそ人間の少女だがあまり人間っぽくはなく、いかにも水の精霊といった感じである。……とりあえず呼吸は大丈夫らしい。


 外見は多分、17~18歳くらい。元の世界で言えば高校生辺りのイメージだ。

 背は妹より大きく、俺と妹の中間くらいなので、165センチ前後だろう。あまり子供という感じはしないが、妹はその辺気にしないらしく。目をキラキラ輝かせている。


 ……スライムに嫌な記憶がある俺はちょっと身構えてしまうが、少女は身動き一つする事なく。ただじっと妹を見つめていた。


 当の妹はじっと見られている事を気にもしていない様子で、ベッドからシーツを取って体にかけてやると、勢い込んで話しかける。


「こんにちは、言葉わかる? わたしは香織、あなたのお母さんだよ。そしてあっちにいる洋一お兄ちゃんが、あなたのお父さん。あとは今ここにはいないけど、ニナちゃんっていうお姉さんもいるから、後で紹介するね」


 ……もしこの子に家族に関する基本的な知識があったら、わりと難易度高い事を言っている気がするが。少女は特別な反応を示さず、じっと香織を見たまま言葉を発する。


「はい、言葉は分かります。そして、貴女あなたが勇者だという事も……本当なら今すぐ戦うか逃げるかを選んで行動に移さなければいけないはずなのに、なぜかその必要を……貴女から脅威を感じません」


 おお、なるほど。その違和感でじっと香織を見つめていたのか。


 そして香織はその言葉に気を良くしたようで、嬉しそうに話しかける。


「それはきっと、あなたがわたしの体から産まれたわたしの娘だからだよ!」


 ……妹よ。多分わざと言っているんだろうけど、『体から産まれた』って誤解を招く表現だと思うぞ。おまえの血を素材にしたから、間違ってはいないけどさ。


「私の産みの親は、こちらの魔王様であるはずなのですが……?」


「うん。だから私が母親で、お兄ちゃんが父親なの」


「ちょっとお待ちを……貴女は勇者ですよね?」


「そうらしいけど、そんな事は関係ないし、どうでもいい事なんじゃないかな。大切なのは、あなたがわたしとお兄ちゃんの子供だって事だよ」


「……魔王様が勇者である貴女の兄なのですか?」


「うん。血の繋がった正真正銘の兄妹だよ。あと、血は繋がってないけど娘がもう一人。あなたのお姉ちゃんもいるから、仲良くしてあげてね」


「……その姉というのは、私のような魔獣ですか?」


「ううん。人間だよ」


「…………」


 お、ウンディーネ上位種が頭を抱えてうずくまってしまった。

 そりゃそうだよね、俺もとんでもなくややこしい家族だと思う。


 この上さらに、ライナさんという人間の妻がいて魔人の子供がいるなんて言ったら余計混乱させてしまうだろうから、今は黙っておこう。



 思いっきり困惑している様子の少女に、妹は畳みかけるように、自分が母親で俺が父親だとくり返し、理解しがたいだろう家族構成を理解させようとしている。もうほとんど洗脳の領域だ。


 とはいえ少女の方も妹になにか感じるものがあるらしく、魔獣である自分の母親が勇者であるという話を否定する事もできずに、刷り込みは順調に成果を挙げつつあるらしい。


 ……その間に俺は、少女に鑑定を発動してみる。


 セイクリッドウンディーネ 0歳 スキル:水属性魔法Lv3 光属性魔法Lv1 状態:困惑 地位:高倉洋一と高倉香織の子供


 と出た。

 そうだ、この子にも名前付けてあげないといけないな。


 それは後で妹と相談するとして、セイクリッドってたしか、『神聖』とかそんな意味だった気がする。

 光属性魔法が使える事を考えても、やはり勇者の影響を受け継いでいるのだろう。魔獣でありながら、本来天敵であるはずの勇者を初見で敵と認識しなかったのもそのせいだろう。


 そして本人は妹の説明を受けて状況を理解し、徐々に受け入れつつあるようだ。

 納得した訳ではないようだが、現実なので否定もできないのだろう。



「なあ香織。この子の名前どうする?」


 状況が一段落したようなので話を振ると、妹はパッと表情を輝かせる。


「実はもう考えてあるの。『一香いちか』ってどうかな?」


 ……なんだろう。つい昨日も似たような事があった気がする。


「もしかして、洋一の一と香織の香か?」


「うん!」


 ……まぁ、妹がいいのならそれでいいんだけどね。一応本人にも訊いてみたがそれでいいとの事だったので、この子の名前は高倉一香に決定した。


「おいで、みんなに紹介するね」


 妹がそう言って、一香を部屋の外へと引っ張っていき。俺も一緒についていくと、ライナさんがいる病室にみんなが勢揃いしていた。


 ライナさん、エイナさん、ニナ、リンネ、レンネさん、薬師さん、レナさん、セレスさん、ヒルセさん、クトル、シェラ……。


「……香織、おまえが呼んだの?」


「うん。家族が増えるんだから、ちゃんと紹介しないとと思って。事前に相談もしたんだよ。特にニナちゃんが嫌だって言ったら諦めるつもりだったけど、賛成してくれたから」


 ……人見知りだった妹に、こんなにも心を許せる仲間ができたのかと思うと、なんだか無性に嬉しくなってくる。


 そして、ニナにはちゃんと事前に相談していたんだな。

 うちの妹の事だから、血の繋がった子供ができたからってニナをないがしろにしたりはしないと信じていたけど、事前に許可を取っていたというのは予想外だった。


 ニナはニナでいい子だから、ヤキモチを焼いたりはしないと思うけどね……うん、俺はつくづくいい家族に恵まれたな。


 そんな事を考えながら、妹によって全員に紹介され、お姉ちゃんになるニナ国王から始まって順番に自己紹介を受けている一香を暖かい目で見守っていたが、なぜかシェラの所にだけは、一香の方から挨拶に出向いていた。


 エンシェントドラゴンという最強魔獣なので、魔獣内の序列みたいなものがあるのだろうか? あるいは、直感的になにか感じるものがあったのだろうか?


 まぁ、シェラは『うむ』答えて偉そうにしていたら、妹に『うむじゃないでしょ、ちゃんと挨拶しなさい』と頭を掴んでむりやり下げさせられ、『こちらこそよろしく頼む』と言わされていたので、エンシェントドラゴンの威厳はだいぶ失われたと思う。


 妹にとってはシェラも娘のような感覚で、教育の一環なのかもしれないが。わりと怖いもの知らずだよな。一香が信じられないものを見るような目で二人を眺めていた。

 ……なんとなく、母親の言う事を素直に聞くいい子に育ってくれそうな気がする。



 ちょっと特殊な外見の一香をみんなは友好的に迎え入れてくれ。二日続けて子供が増えた俺は責任感と同時に、この平和な空間に限りない幸福を感じるのだった……。




大陸暦428年2月11日

現時点での大陸統一進捗度 100%(人間の統一国家パークレン王国。エルフの独立国三つに絶大な影響力)


解放されたエルフの総数 218万2828人 全体のおよそ44%


資産 所持金 166億204万


配下

リンネ(エルフの弓士・山エルフの王)

レナ(エルフの織物職人)

セレス(エルフの木工職人)

リステラ(リステラ商会副商会長・国王相談役)

ルクレア(エルフの薬師)

クトル(フェアリー)

シェラ(エンシェントドラゴン)

スミクト(森エルフの王)

カナンガ(沼エルフの王)


― 家族 ―


香織(勇者)


ライナ(B級冒険者)

エイナ(パークレン王国前国王)


ニナ(パークレン王国国王)

一香(ウンディーネ上位種)


息子

ヨミ(ライナとの子供・魔人)

※スライムの嫌な記憶については、177話をご参照ください。

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― 新着の感想 ―
[一言] 魔王家 妻 香織(万能お母さん) 子 長女 ニナ(しっかりしているようで実は甘えん坊) 次女 シェラ(力こそ正義な食欲魔神。だが母には弱し) 三女 一香(生まれたときから苦労人?) こ…
[一言] ウンディーネちゃん、混乱させられて可哀そう(笑) そろそろ完結かなと思っていたら、ここに来て新たな仲間とか、先が読めません。なんて作品だ(褒めてる)
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