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妹と異世界転移 ~引きこもりだった俺が妹を護るために大陸を統一するまで~  作者: おとしんくるす


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302/323

302 出産を待つ落ち着かない時間

 俺と妹の安住の地となったリンネ達の村にある、薬師さんの診療所。


 その一室に置かれたベッドにお腹が大きくなったライナさんが横になり。心配して集まってくれたみんなが周囲を取り囲んでいる。


 俺と妹の他、医術師としての薬師さんと弟子のエイナさん。リンネ国王に、妹のレンネさん。鉱山時代からライナさんと仲がよかったレナさん、セレスさん、ヒルセさん。他にクトルとシェラ、ニナ国王も来てくれている。


 ……ん、ニナ国王?


「あれ、ニナどうしているの?」


「はい。先王陛下に知らせていただいたので、リステラ様とファロス大臣に事情を話して留守をお願いし、部下達には重大な案件を相談に行くと言って城を抜けてきました。私の弟か妹が産まれるのですから、ぜひとも立ち会わなければと思いまして。ついさっき到着した所です」


 ――ああ、なるほど。エイナさんとニナは頻繁ひんぱんに情報をやり取りしているみたいだから、その情報網に乗ったのか。


 ……色々思う所がないではないが、ニナは決して仕事を放り出すような無責任な子ではない。ここに来られたという事はそれだけ政治が安定していて、仕事を任せられる部下も揃っているのだろう。いい事だ。


 ファロスさんもエイナさんが引退して以来。毎月欠かさず元子爵屋敷を訊ねてきているみたいだしね。

 て言うかエイナさんがこの村を出て屋敷に戻るのは、基本ファロス大臣が来る時だけだ。


 エイナさんは往復二日と滞在三日で五日間だが、ファロス大臣の方は往復10日もかけて来るそうで、ほぼ月の半分はエイナさんに会うために費やしている事になる。相変わらずすごい懐かれようだ。いっそ恋人かと疑いたくなる。


 移動の馬車でもちゃんと工業技術大臣の仕事をしてくれているみたいだけど、普段そんな事をしているだけに、今回のニナの行動にも理解が深かったのだろう。

 良好な関係を築けているようでなによりである。


 エイナさんとファロスさんとの意見交換はこの世界の技術を大いに発展させ。エルフ奴隷がいなくなった労働力の穴を埋める働きをしてくれているので、たまに俺の所に相談が来る件も含めて、積極的に応援している。頑張って欲しい。



 ……久しぶりに会うニナと話をしつつライナさんを見守っていると、いよいよ出産の瞬間が迫っていたようで、薬師さんの指示で俺達は部屋を追い出された。


 俺は最後にライナさんの手を握って言葉をかけ。ライナさんも力強くうなずいてくれたのに安堵して、後ろ髪を引かれる思いで部屋を出る。


 中に残るのは薬師さんとライナさん。そして薬師さんの助手をつとめるエイナさんだけだ。


 ……エイナさん、大丈夫だろうな?


 普段は完璧超人なのに、お姉ちゃんが絡むと嘘みたいにポンコツになる事があるので、緊張して失敗したりしないかちょっと心配である。

 まぁ、薬師さんもいてくれるから大丈夫だとは思うけどね……。


 そして、普段はハイスペックな人が揃っている事に関しては扉の外も負けていないのだが、こちらは完全に無力である。


 国王が二人に魔王と勇者。高い技能を持ったエルフさん達が揃っているが、子供を産んだ経験がある人は誰もいない。


 なので誰も的確な言葉を発する事ができず、ただオロオロするばかりで。落ち着きなく歩き回ったり、それぞれの得意分野で産まれてくる赤ちゃんのために、服を縫ったりオモチャを作ったりして、気を紛らわせているのである。


 クトルはさっきからずっと石を通じてスミクトさんと話をしているが、スミクトさんも子供を産んだ経験がある訳ではないので具体的なアドバイスはできず。ただ一緒に心配してくれている。

 いつも通り落ち着いているのはシェラくらいだ。


 俺もソワソワしながら時間が過ぎるのを待ち。時折チラチラとライナさん達がいる部屋の扉に視線を向けるが、なんの気配も感じられない。


「……主殿あるじどの、なにも起きておらんようじゃから少し落ち着け」


 さすがに見かねたのか、シェラが声をかけてくれる。


「え、シェラ中の様子わかるの?」


「耳を澄ませば声や音くらい聞こえるからな。助手の方が鼻血を噴いて、姉の隣で横になるくらいには余裕があるようじゃぞ」


 エイナさん……。そりゃまぁ、ライナさんのあられもない姿を見たらそうなるかもしれないけどさ……。


 まぁ、緊急事態だったらエイナさんも鼻血を噴いている余裕なんてないだろうから、シェラの言う通り順調なのだろう。

 …………ん、ちょっとまてよ?


「……ねえシェラ。シェラって耳を澄ませば扉の向こうの話し声とか聞こえるの?」


「注意を向ければな」


 ――それを聞いて。背筋を伝う冷たいものと一緒に、俺の頭に扉一枚を挟んでシェラに内緒の話をした時の記憶が蘇ってくる。


 あれはクムシ国王にエイナさんが襲われ、それをかばったライナさんが致命傷を負った時の事。エイナさんがドラゴンの秘薬を手に入れるために、シェラに毒ナイフを向けようとした時の話だ。


「……あの、シェラ。もしかしてライナさんが襲われた時の話も聞いてたりした? ほら、扉の鍵を壊してもらった時」


「ん? ワシの心臓から薬の材料を取り出そうとか言うておった話か?」


 おおう、バッチリ思いっきり聞かれてますやん……。


 ――あの時俺どんな反応したっけ? 無理だと思ったから賛成はしなかったはずだけど、エイナさんを止めもしなかった気がする。

 なにか別の手はないかと考えて、輸血を提案したはずだが。シェラから見ると自分を殺す案に反対しなかった事になるのだろうか?


 これは……とりあえず言い訳をしておくべきだろうか? いや、それよりもエイナさんのフォローが先か? 


 一瞬そんな考えが頭をよぎるが、よく考えてみるとあれは一年以上も前の話である。

 もしシェラが腹を立てたのならとっくに行動に出ているだろうし、今こうして話しているシェラも普段どおりで、別段怒っている感じはしない。


「……シェラ、怒ってないの?」


「ん、なにか怒る事があるか? 必要があれば獲物を狩るのは当たり前の事じゃろう。ワシだって腹が空けば獲物を狩って食らうのじゃ。自分がその対象にされたからといって、怒る事もあるまいよ。……まぁ、実際に向かってきたらひねり殺してやったがな」


「……それは、俺が相手でも?」


 思わずそう口にしてしまったが、次の瞬間ハッとする。

 こんな質問。本人を前にしてまともに答えられる訳ないじゃないか。


『ごめん、変な質問した』と謝ろうとしたが。シェラがめずらしく真面目な表情で、透き通る赤いひとみをじっとこちらに向けているのに気がついて、言葉を止めた。


「……シェラ?」


「相手が主殿だったらか……」


 いつものシェラらしくなく。重く考えに沈むような声。



 ……あれ、なんか急にすっごい重い空気になった?


 急な変化にとまどう俺に、シェラはゆっくりと言葉を発するのだった……。




大陸暦428年2月10日

現時点での大陸統一進捗度 100%(人間の統一国家パークレン王国。エルフの独立国三つに絶大な影響力)


解放されたエルフの総数 218万2828人 全体のおよそ44%


資産 所持金 166億204万


配下

リンネ(エルフの弓士・山エルフの王)

レナ(エルフの織物職人)

セレス(エルフの木工職人)

リステラ(リステラ商会副商会長・国王相談役)

ルクレア(エルフの薬師)

クトル(フェアリー)

シェラ(エンシェントドラゴン)

スミクト(森エルフの王)

カナンガ(沼エルフの王)


― 家族 ―


香織(勇者)


ライナ(B級冒険者)

エイナ(パークレン王国前国王)


ニナ(パークレン王国国王)

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