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妹と異世界転移 ~引きこもりだった俺が妹を護るために大陸を統一するまで~  作者: おとしんくるす


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26 壁の内側

 大陸西部の国、マーカム王国の首都マーカムの主要地区をぐるりと囲む街壁。その門の通行料は一人銀貨一枚。つまり1万アストルだ。


 初日にはいくらかもわからなかったし、その10分の1の値段の宿に泊まるお金さえなかったが、今はたやすく払う事ができる。

 ちなみに冒険者として正式に登録しているライナさんは免除だ。俺もちょっとカードが欲しくなるが、登録に50万、その後は年20万というのはちょっと高い。多分年に20回も出入りしないし。


 お金はあるが無駄遣いをする訳にはいかないので、普通に妹と二人分、銀貨二枚を払って門をくぐった。ちょっと胸が熱くなる。

 ライナさんの後をついて歩きながら、俺はしきりに周囲を見回していた。たぶん完全に田舎者に見えた事だろうが、これは必要な情報収集なのだ。


 ……一言で言えば、壁の内と外は別世界だった。

 壁の外では木か安物のレンガでできていた建物が、ここではツヤのある高級なレンガが主で、建物も乱雑にではなく整然と並んでいる。


 足元の道もレンガで舗装されていて、これなら雨の日も泥だらけにならずに済みそうだ。所々に街路樹が植えられていて、公園もある。

 雰囲気だけを見れば、21世紀の地球にも観光地とかでありそうな街並みだ。


 行き交う人も高そうな服を着ていて、特に女の人は色がカラフルだ。壁の外の茶色一色の世界とはぜんぜん違う。

 周囲に建ち並ぶ商店も上品で高級そうな物が並んでいるので、今度妹を買い物に連れてきたら喜びそうだ……。


「ねえライナさん。王都の区割りってどうなってるの?」


「え? ああ、はい。南門から入ったこの辺りは商業地区で、まっすぐ北に行くと貴族達の屋敷が並ぶ地区。更にその向こうには王城と軍の兵営があります。東は裕福な商人などが住む住宅地区、西は王家から許しを得た技量の高い工房群と倉庫街になっていますね」


 さすがによく知っている。大通りをずっと先まで見渡すと、街壁より一段高い王城の城壁が望見できた。

 ちなみにライナさんの妹が通っている王立学校は、貴族の子弟も多いので東地区と北地区の境界くらいにあるらしい。基本的に北に行くほど高級住宅地度が増すそうだ。


 そして俺達が連れてこられたのは、東地区でもかなり北寄りにある一軒家だった。


「予算の範囲内で、広さより治安の良さを重視との事でしたので、こちらになりました」


 ……マジで?


 案内された家は、自動車を四台くらい置けそうな庭がついた二階建ての建物だった。

 鈍く光るレンガで造られていて、なんかおしゃれな気配がする。


 中に入ってみると、一階は食堂と調理場と浴室とトイレ。二階には書斎が一つと、寝室が四つ。さらに裏手には、厩舎と倉庫まであった。

 周囲のお屋敷に比べれば小さいが、想像の10倍くらい豪邸で、しかもきれいに掃除されている。


 考えてみれば、月の家賃が40万アストルという事は、一日1.3万アストルほど。リンネのいた宿が一人一泊1000アストルで、街壁外で一番高い宿が3000アストルだったのだから、納得といえば納得だ。


 ちょっと予算を張り過ぎたようだが、今更どうしようもないのでありがたく使わせてもらう事にする。

 妹も広い調理場とお風呂がある事に喜んでいるし。うん、お風呂は俺も嬉しい。


 ちょっと気になったのは、厩舎の二階が使用人用の部屋という点だが、ライナさんによるとこの世界では珍しくもない構造だそうだ。

 奴隷じゃない使用人でもこれか……、ホント優しくない世界だよな。


 妹は早速、ライナさんとお風呂を沸かす相談をしている。この世界のお風呂はかなりの高級物件にしかないらしく、貴族邸でも下級貴族だと無かったりするそうだ。

 なのでライナさんも詳しくないようで、妹と二人であちこち調べているのが微笑ほほえましい。


 構造的には、台所と兼用の井戸からといを使って水を流し入れ、薪を使って沸かすらしい。排水は栓を抜くと下水道へ流れていくそうだ。王都は下水道が整備されているらしく、トイレも一応水洗だった。

 といっても、半地下にあるトイレを経由してお風呂の排水が流れていくという、ある意味エコロジーな構造になっているので、都度つど流したければ自分で水を汲んでこなければいけない。水道のありがたみが身にしみる。


 お風呂お風呂とテンション爆上がりな妹に押され、家の見学もそこそこに買出しに出る事になった。

 この世界に来てからのお風呂といえばお湯に浸したタオルで体を拭くだけだったので、寒い季節とはいえ辛かったのだろう。特に髪は、タオルで拭いているようだったが、そりゃあ洗いたいだろう。考えが至らなかった自分を反省する。

 っていうか、昔の西洋人とかどうしてたんだろうな? 臭いは香水で誤魔化していたと聞いた事あるけど……。


 そんな事を考えながら商業地区に出向き、お風呂を沸かすためのまきを買う。大量のまきはとても持ち運べないので、夕方家に届けてもらうようにお願いして、他におけ石鹸せっけん的なものなどお風呂用品を買い揃え、その足で家具類も買いに行く。


 食堂は半分居間にする事にして、テーブルとイスにソファー、寝室用のベッドとカーテン。絨毯じゅうたんはあまりに高すぎるので回避。

 他に追加の炊事道具、食器類、寝具、ロウソクやランプなどの日用品。ロバ用のわらとエサ……食堂にあった暖炉用の火掻き棒など、思いつかなかった物もライナさんのアドバイスで購入し、大きい物は配達を頼み、小さい物はロバの背に積んでいく。


 オーダーメイドなんてしている余裕はないので有り物を買ったが、テーブルやイス、ベッドなどの木製品が安いのに比べ、カーテンや寝具などの布製品が高いのが印象的だった。下手したら革製品より布製品のほうが高い。


 最後に人間用の食材を買い込み、家に戻る。

 妹は早速、はりきって浴槽に水を張る作業に取りかかったが、滑車とバケツを使って井戸から水を汲み上げ、といに流す作業は、重力半分状態とはいえかなりの重労働のようだった。


 浴槽は足を伸ばして入れるサイズで、日本の家にあった物より一回り大きい。ざっと測ってみたら、浅めにお湯を張って200リットル、ゆったり浸かろうと思ったら300リットルくらい必要っぽい。


 バケツはロープで引き上げることを考慮した小型のもので、満水5リットルくらい。つまり、40~60回汲まないといけない訳だ。

 井戸はわりと深いようで、一回汲むのに一分としたら、一時間くらいかかる計算になる。


 作業を交代しようと声をかけたら、重ねるようにライナさんが『私がやります』と言ってくれた。でも……


「いや、ライナさんは護衛と商売の補助として雇ってるんだから、そんな雑用をしてもらう訳には……」


「構いません。外出時はともかく、屋敷内ではさほど危険はないでしょう。あえて屋敷を狙って襲ってくるような相手なら、申し訳ありませんがどのみち私一人では対処できないでしょうから」


 それはそうだ。プロ10人くらいで襲撃されたら、いくらライナさんでもどうしようもないだろう。

 ここは王都でもトップクラスに治安が良い所らしいので、どこぞの有力者に目をつけられて手の者を差し向けられたりしない限りはまず大丈夫だそうだ。

 そんな事にならないといいなぁ……。


 そんな訳で、申し訳ないけど水汲みはライナさんにお願いして、妹と俺は買ってきた物の整理と、配達された荷物の受け取りに回る事にする。

 俺は水汲みをするライナさんの横顔を見ながら、少し違和感を覚えていた。再会した時は普通だったと思うが、ギルドを出た辺りから時々、少し上の空というか考え込んでいるような様子がある気がする。


 夕食の時にでもなにか悩みがあるのか訊いてみようと思いながら、俺は届いたロバ用のエサを厩舎に運んでもらうのだった……。




大陸暦418年12月5日

現時点での大陸統一進捗度 0.001%(リンネの故郷の村を拠点化)

資産 所持金 3120万3400アストル(-9万8600)

配下 リンネ:エルフの弓士 ライナ:冒険者(三ヶ月の専属護衛契約 2月6日まで)

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