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妹と異世界転移 ~引きこもりだった俺が妹を護るために大陸を統一するまで~  作者: おとしんくるす


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201 エンシェントドラゴンの国王評とニナの出立(しゅったつ)

 エイナさんとシェラについての話をした翌朝。王都に帰るエイナさんの様子は、一見いつもと変わらないものだった。


 昨夜は足元がふらついていたが、一晩お姉ちゃんにいやされた効果なのか。あるいは大好きなお姉ちゃんに心配をかけまいと平静を装っているのか。

 多分両方だと思うが、ライナさんの表情が少し曇っている事からするとバレていそうだ。


 さすがライナさん、だてに長年妹の面倒を見てきてない。



 ちなみに今回の王都行きには、俺達も同行する。


 表向きの理由は、人間とエルフ共同の対ドラゴン部隊を編成するに当たっての、双方代表の顔合わせ。

 なので今回はリンネも一緒だ。


 そしてもう一つの理由は、ニナの見送りである。


 馬車を二台用意して、それぞれライナさんとニナが操縦するが、ライナさんの馬車には荷物とエイナさんだけを乗せる。


 国王陛下を荷物と一緒とか、本来ならリアルで首が飛びかねない案件だと思うが、本人がいいと言ったのでいいのだろう。

 多分、せまい方が違和感なくお姉ちゃんとくっつけるとか考えていそうだ。

 昨夜はなんかプレッシャーを与えてしまったようなので、引き続き存分に心をいやして欲しい。


 そしてニナが操縦する馬車には俺と妹、リンネとクトルと、シェラも一緒だ。

 こっちはちょっとした家族旅行の雰囲気である。


 シェラは連れてこようかどうか迷ったが、王都に連れ込むリスクよりも一人鉱山に置いておくリスクの方が高い気がして、連れていく事にした。

 シェラは悪意なくとんでもない事をやらかしそうだから、目を離すのが不安なのだ。


 退屈しないか心配したが、さすが一万年以上を生きる種族だけあって気が長いらしく、文句を言う事もなく馬車の中でコロコロ転がっている。



 一見すると食べて寝るだけの能天気のうてんきな生物だが、見ている所は見ているらしく、不意に鋭い言葉を投げてきたりもする。


 そんなシェラが思い出したように言葉を発したのは、馬車の旅一日目の夜だった。


「のう主殿あるじどの。エイナといったか? あやつとはどういった関係じゃ?」


「え……この国の国王で、一応俺の配下……のはずですけど。なんでいきなりそんな話を?」


「ふむ、主殿の配下は勇者をはじめとして忠誠心が厚い者ばかりだと思っておったが、あやつだけは違う感じがしておったのじゃ。それが今朝から忠誠心とは違うが、従順じゅうじゅんになっておったようなので気になってな」


 ……さすがエンシェントドラゴン。寝ている所を棒で叩いても反応しないのに、そういう事には敏感びんかんなんだな。


「多分ですけど、エイナさんにとって一番大切な人は別にいるからですよ。いざとなったら俺を殺してでもその人を守りたいと思うほど大事な人がね」


 そして多分、従順になったように見えたのはシェラのせいだろう。

 万一の場合には俺を殺してでもお姉ちゃんを守るという選択肢せんたくしが、俺を殺してしまったら人間が滅びるかもしれないという可能性によってついえてしまったのだ。


 人間が滅びるという枠の中には、当然ライナさんも含まれる。だからお姉ちゃんを守るためには、ひたすら俺のご機嫌を取るしかないと判断したのだろう。


 俺はどこぞの悪徳貴族みたいにライナさんをしいたげて傷つけたりする気はないし、エイナさんもそう見込んだからこそ、『お姉ちゃんと自分を揃って妻に……』なんて話を持ちかけてきたのだと思う。


 でも、セシルさんをはじめとして今まで散々酷い事例を見てきたエイナさんは、万が一だとしても俺がライナさんを傷つける可能性を捨て切れないでいたのだ。


 怒る気にもなれない、悲しい話である……。



「……ところでシェラ。さっき俺の配下は忠誠心が厚い者ばかりって言ってたけど、それはシェラも含むのかな?」


 話を変えようと半分冗談でそう言ってみると、シェラは愉快ゆかいそうな笑顔を浮かべて口を開く。


「当然じゃろう。主殿がおらなんだら魔力を飲めぬようになるし、多分カラアゲも食べられなくなるからのう。それはもう大切に思っておるぞ」


 ……うん、どう聞いても忠誠心ではなくエサだとしか言われていない気がするが、笑いながらこんな事を言ってくれる辺り、いい信頼関係が築けているのだろう。

 半分は妹のおかげっぽいけどね。


 ちなみにシェラへの魔力供給は、みんなに相談した注射器が実用化され、扱いを覚えた薬師さんに血を抜いてもらって、それを供給する事で解決した。


 本体は土加工エルフさんがガラスで作ってくれ、リンネが知っていたゴムっぽい素材で可動部もなんとかなった。

 金属を扱わないエルフさん達なので針だけが問題だったが、これもリンネが中空ちゅうくうになっている丈夫なトゲを見つけてきてくれたので、無事に注射器らしきものが完成したのだ。


 口移しと違って俺の精神にも優しいし、妹がヤキモチを焼く事もない。献血みたいなものだという事で、妹の納得も得る事ができた。


 魔力供給で魔王のレベルが上がる経験値が入ってしまうか問題も、直接供給だと入るかもしれない気がするが、いったん血を抜いてからの間接供給なら、イメージ的にも入らなさそうな気がする。


 薬師さんと相談の結果、俺の体調を考慮して抜くのは三ヶ月に一回400ミリリットルほど。

 それを薬師さんが加工して、40個の小さな粒にしてくれる。


 加工しても魔力は失われないようで、そのままめてもいいし水に溶かして飲んでもいいそうだが、シェラは溶かして飲む方が好みらしい。

 三日に一個くらいのペースで提供すると、とても喜んでくれる。



 そんなこんなで王都まで二日の旅は平穏に過ぎ。ニナはお母さんの手料理を食べ、御者ぎょしゃ台に並んで座ってもらい、夜は俺と妹に挟まれて眠って、本当に幸せそうだった。


 王都に着いた晩も三人で眠ったが、明日の午後にはエイナさんの養子となり、次期国王候補になる事が正式に発表される予定になっている。

 そうなったら、当分の間はお別れだ。



「ニナ、がんばれよ……」


 俺と妹に挟まれて眠るニナにそっとささやき。頭をでてやると、ニナの表情が少しゆるんだような気がした。

 なにか幸せな夢でも見ているのだろうか?


 両親を失って自分も重傷を負い、一度はどん底まで落ちたこの子に幸せな未来がありますようにと、俺は何度も祈りながらその夜を過ごしたのだった……。




大陸暦426年1月22日

現時点での大陸統一進捗度 36.2%(パークレン鉱山所有・旧マーカム王国領並びに旧イドラ帝国領の大森林地帯を領有・旧サイダル王国領の大湿地帯を領有・大陸の西半分を支配するパークレン王国に強い影響力・旧サイダル王国領東部に孤児こじ用の土地を確保)


解放されたエルフの総数 78万39人

内訳 鉱山に13万9562人 大森林のエルフの村4592ヶ所に53万1897人 リステラ商会で保護中の沼エルフ10万8580人(一部は順次大湿地帯に移住中) 保護した孤児2万2273人


資産 所持金 211億4913万


配下

リンネ(エルフの弓士)

ライナ(B級冒険者)

レナ(エルフの織物職人)

セレス(エルフの木工職人)

リステラ(雇われ商会長)

ルクレア(エルフの薬師)

ニナ(次期国王候補)

エイナ(パークレン王国国王)

クトル(フェアリー)

シェラ(エンシェントドラゴン)

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