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妹と異世界転移 ~引きこもりだった俺が妹を護るために大陸を統一するまで~  作者: おとしんくるす


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197 エンシェントドラゴンと国王

 エイナさんが鉱山にやってきた翌日。俺達は大森林を奥へと進んでいた。


 メンバーは俺と妹、ライナさんエイナさん姉妹にリンネとニナ、シェラとクトルも加わった8人である。

 妹はなにやら大きな荷物を。シェラは妹に持たされたらしい、更に巨大な荷物を背負っていた。


 明らかにシェラの体の何倍もあるが、平然としているのはさすがである。

 勇者に荷物運びをやらされるエンシェントドラゴンって、どうなんだろうね……。


 まぁそれはともかく、俺達はシェラがいつも変身に使っている、開けた場所を目指して歩く。

 開けた場所というか、変身したシェラが周りの木々をなぎ倒すから勝手に広くなっただけなんだけどね。


 ちなみにエイナさんは事務仕事ばかりしていて体力が落ちたそうで、途中からライナさんにおんぶしてもらっていたが、個人的にはそういう作戦だったのではないかと疑っている。

 なにやらすごく幸せそうだった。



 ……そんなこんなで目的地に到着したので、まずはシェラの紹介からだ。


 昨日のうちにエンシェントドラゴンですとは紹介したが、少女の姿では説得力に欠けるだろうから、実際に見てもらうのだ。


「シェラ、ちょっと元の姿に戻ってくれる?」


「承知しました、主殿あるじどの


 空気を読んでくれたのか、いつもよりちょっと丁寧な返事をしたシェラは、おもむろに服を脱ぎはじめた。


 ……いや、わかるよ。着たまま変身すると破れちゃうし、布は貴重だと注意したのも俺だ。

 でも目の前で脱がなくても……エイナさんが俺に向ける視線がちょっと冷たいじゃないか。


 俺の困惑をよそに、シェラは脱いだ服を俺に渡すと、裸のままトコトコと歩いていく。

 近距離で変身すると最初の時みたいに押し潰されそうになって、危ないからね。


 シェラは体温が高いらしく、1月の冷たい空気で冷えた手に、服からじわりと暖かさが伝わってくる。

 ちょっと微妙な気持ちでそれを感じながら見守っていると、広場の中心付近まで進んだシェラの体が一瞬光り、見る間に巨大なエンシェントドラゴンの姿が湧き上がってきた。


 音がする訳ではないが、地面が盛り上がる轟音が聞こえるような気がする。



「こ、これは……」


 エイナさんが道中のゆるんだ表情を一変させ、驚愕きょうがくに目を見開く。

 ドラゴンの姿に戻ったシェラをはじめて見るニナも同じくだ。こちらは声もないらしい。


 一度見ているリンネやライナさんでさえ、恐怖とも緊張ともつかない感情に身を強張こわばらせているし、クトルにいたっては俺の影に隠れてわずかに顔をのぞかせているだけだ。


 ……妹もはじめて見るはずなのだが、顔色一つ変える事なく平然と見上げているのは勇者だからなのか、それともすでにシェラと結構仲良くなっているからだろうか?


 シェラ、妹の肉料理がいたくお気に召したみたいだからね……。



 それはともかく、変身を終えたシェラの体は小山のように大きく、その体を覆う白銀のうろこは、周囲の木々に積もっている新雪しんせつよりも美しく輝いて見える。


 シェラはその長い首を曲げ、顔を俺達のすぐそばへと寄せてきて、サービスのつもりなのか大きく口を開く。


 一番大きいのは俺の身長ほどもあるきばがズラリと並んだ口は、それだけでとんでもない迫力だ。

 加えてここから大地を震わせる巨大な咆哮ほうこうや、辺り一面を焼き尽くす猛烈な炎を吐くのだから、到底人間やエルフにどうこうできる存在ではないと改めて痛感つうかんさせられる。


 こんなものが敵意満載で襲ってきたら、それはもう完全に恐怖でしかないだろう。国家規模の厄災やくさいだと言われているのも納得だ。

 なにしろあのエイナさんが、体を震わせてライナさんの手を握っているくらいなのだ。


 本当は飛んでもらったりしたい所なのだが、すでに十分すぎるほどの衝撃があったようだし、飛んでもらうと辺りにすさまじい暴風が起こるので、今回は見送る事にする。


「シェラ、もういいよ。元の姿に戻って!」


 巨大な頭が目の前にあると遠近感が狂ってしまうが、多分耳まで10メートルくらいはあると思うので、聞こえるように大声で叫ぶ。


 シェラは首を上げるとまた光を発し、次の瞬間には少女の姿に戻っていた。

 銀色の髪をなびかせながらこちらにトコトコ歩いてきて、何事もなかったかのように俺から服を受け取って袖を通す……。


「あれ? シェラ、靴は?」


「くつ……ああ、あれか。そういえば履いてくるのを忘れておったな」


 気付かなかった俺達も俺達だが、雪が積もる森の中を裸足はだしで歩いたのに、シェラの足は指先まで傷一つ、霜焼しもやけ一つないきれいな状態だ。

 相変わらずドラゴンの頑丈さはちょっとおかしいと思う。



 まぁとにかく、これでシェラのお披露目ひろめも済んだ。大陸の統一と全エルフの解放を目指す計画に当たり、エイナさんに求められた条件は達成したと言えるだろう。



「……ではエイナさん。改めて計画についての話をしましょうか」


「――あ……ああ、そうですね。失礼しました……」


 呆気あっけに取られていたエイナさんが、我に返って返事をしてくれる。


 聡明そうめい度胸どきょうも据わっているエイナさんにしては珍しいが、まぁあんな光景を目の前にしたら無理もないだろう。


 過去に対峙たいじした大公や皇帝は話が通じる相手だったけど、ドラゴンは話が通じ……いや、一応シェラも話が通じるな。でも通じなさそうな気がするのはわかる。言葉だけ通じても、取引とか交渉とかできそうにないもんね。



 ……それにしてもエイナさん、俺を見る目が一瞬いつもと違った気がする。

 強大なドラゴンをの当たりにした衝撃が抜けていなかったのだろうか?


「……って、香織なにしてるの?」


 エイナさんが再起動した横で、妹が持ってきた大きな荷物をいてゴザを広げていた。


「え、話し合いするんでしょ? お腹すくかなと思ってお弁当を用意してきてるよ!」


 ……やけに大きな荷物だなと思っていたら、お弁当をはじめとするピクニックセットが入っていたらしい。

 シェラが嬉しそうに手伝っているのを見ると、シェラが背負っていたあの大荷物の中にはシェラ用のお肉も入っているのだろう。


 手早くかまどを作って火を起こし、お湯を沸かす妹を見ながら、俺は今更『いや、会議は帰ってからでも……』とは言い出せず、ニナやリンネ、ライナさんも手伝いはじめて手際よく並べられていくお弁当を、呆然ぼうぜんながめるのだった……。




大陸暦426年1月20日

現時点での大陸統一進捗度 36.2%(パークレン鉱山所有・旧マーカム王国領並びに旧イドラ帝国領の大森林地帯を領有・旧サイダル王国領の大湿地帯を領有・大陸の西半分を支配するパークレン王国に強い影響力・旧サイダル王国領東部に孤児こじ用の土地を確保)


解放されたエルフの総数 78万39人

内訳 鉱山に13万9562人 大森林のエルフの村4592ヶ所に53万1897人 リステラ商会で保護中の沼エルフ10万8580人(一部は順次大湿地帯に移住中) 保護した孤児2万2273人


資産 所持金 211億4913万


配下

リンネ(エルフの弓士)

ライナ(B級冒険者)

レナ(エルフの織物職人)

セレス(エルフの木工職人)

リステラ(雇われ商会長)

ルクレア(エルフの薬師)

ニナ(次期国王候補)

エイナ(パークレン王国国王)

クトル(フェアリー)

シェラ(エンシェントドラゴン)

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