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妹と異世界転移 ~引きこもりだった俺が妹を護るために大陸を統一するまで~  作者: おとしんくるす


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187 エンシェントドラゴンの主(あるじ)たる資質

『ワシのあるじとなるにふさわしい実力を見せてみよ』


 そう言ったエンシェントドラゴンさんに対し、俺は勇者を配下にしているという事実を告げてみた。


 そしてそれは、思ったよりも大きな動揺を与えたらしい。エンシェントドラゴンさんがちょっと早口になる。


「勇者といえば、ドラゴンさえも倒してしまうという幻の人族じゃぞ。一度ひとたび現れれば、魔獣の半数を殺し尽くしてしまうとも言われておる伝説級の厄災やくさいじゃ。我々魔獣にとっての天敵。まして魔王にとっては不倶戴天ふぐたいてんの敵であろう。それを配下にじゃと?」


 おお、魔獣の側から見ると勇者ってそういう認識なんだ。

 ドラゴンが人間やエルフにとって伝説級の厄災であるのと同じく、勇者は魔獣にとって伝説級の厄災なんだな。


「はい、たしかに配下にしています。まだまだ未熟な勇者ですけどね」


「未熟であるのなら、配下になどにせず今のうちに殺してしまえばよかろう」


「……それがですね、詳細はまだ調査中なんですけど、どうも勇者には勇者の魂というものが存在して、今の勇者が死ぬとその魂が違う人間に入って新たな勇者が誕生するようなのです。だったら殺してしまうよりも、今の勇者を弱いままで管理下に置いておいた方が良いと思いませんか?」


 これはエンシェントドラゴンさんが仲間になってくれた時、勇者である妹を攻撃しないようにとあらかじめ考えておいた話だ。


 もちろんなんの根拠もない作り話だが、こう言っておけば妹を攻撃しようとは思わないだろう。


「ふむ、勇者の魂……なるほどのう……」


 エンシェントドラゴンさんは、なにやら真剣に考え込んでいる。


 これで協力を約束してくれて、ついでに妹を攻撃する事もなくなってくれれば最高だけど、さすがにそこまで都合良くは運ばないかな?


 次の対応を考えていると、エンシェントドラゴンさんは突然視線をクトルに向けた。


「……おい、そこのフェアリー」


「ひゃい!」


 いきなりエンシェントドラゴンさんに呼ばれ、クトルがビクッと跳ねて裏返った声で返事をする。


「おまえはくだんの勇者を見た事があるか?」


「は、はい!」


 なんか俺との時より緊張してるな。

 まぁ、巨大なドラゴンの姿を見た直後だし、エンシェントドラゴンとフェアリーは魔獣としての格が全然違うのだろう。無理もないか。


「間違いなく本物か?」


「そ、それはもう間違いなく。魔獣としての本能でそう感じましたでちゅ!」


 語尾がおかしな事になってるぞ、おちつけクトル。


「もし間違いであったら、消し炭に変えるぞ」


「ひっ! は、はい。間違いありません!」


 エンシェントドラゴンさんににらまれて涙目のクトル。

 そして……今の言葉はちょっと見過ごせないな。


「ちょっとお待ちを、クトルは俺の配下です。たとえあなたが最強の魔獣であっても、俺の許可なく危害を加えるというのは聞き捨てなりませんね」


「魔王……様……」


 割って入った俺の言葉に、クトルが再び俺の腕にしがみついてくる。

 俺の目はエンシェントドラゴンさんを睨んでいるので様子を見る事はできないが、陰に隠すようにうでを持ち上げる。



 ――それからしばらく、重苦しい沈黙が続いた。


 エンシェントドラゴンさんも、その血のように真っ赤なひとみでじっと俺を睨み返してくる。

 後ろで『ドサリ』と、リンネとライナさんが腰を抜かしたのだろう音がしたから、多分尋常じんじょうじゃない殺気を向けられているのだろう。


 だが、俺は感情が高ぶっているせいかなにも感じなかった。ただ断固としてクトルをかばい、エンシェントドラゴンさんを睨み続ける。


 ……この人は計画のかなめになる大事な人だし、多分その気になれば俺なんて一瞬で殺してしまえる力を持った人だ。でも、それでもゆずれない一線はある。


 クトルは俺の仲間であり、スルクトさんの体の一部を受け継いだ大切な存在だ。

 そしてなにより、クトルは誕生した時に、目の前にいた勇者から俺を守ろうとしてくれた。


 おびえて震えながら。目に涙を浮かべながら、それでも俺と勇者の間に立ちはばかってくれたのだ。

 それなら今度は、俺がクトルを守ってあげる番だろう。


 俺は一歩も引かずに、エンシェントドラゴンさんの目を見続ける……。



「……ふっ、はははははっ」


 長い沈黙を破ったのは、意外にもエンシェントドラゴンさんの笑い声だった。


「なんだ。なりたての魔王だとうておったが、中々どうして素質があるではないか」


 楽しそうに笑い、言葉を続ける。


「よかろう、お主の配下になって力を貸してやる。もちろん、お主の配下を勝手に傷つけるような事もせんとちかおう」


 ――その言葉に、俺の方もふっと緊張を解く。


「それはありがたい。では契約をお願いできますか? 名前はそうですね…………『シェラ』でどうでしょう?」


『エンシェントドラゴン』という文字列の中から、よさげな文字を抜き取っただけなのは秘密だ。


「いささか安直あんちょくな気もするが、まぁよかろう。このシェラ、主殿あるじどのの配下となって忠誠を捧げる事をお約束いたします……」


 そう言って、少女は優雅ゆうがな動作で頭を下げる。名前の元ネタはバレていたようだ。


 とりあえず鑑定してみると、


 シェラ 魔獣エンシェントドラゴン 0歳 スキル:咆哮ほうこうLv0 火炎息Lv0 状態:満足 地位:高倉洋一配下


 と出た。うん、ちゃんと配下になってくれている。


「なにか体に変わった感じとかありますか?」


「そうじゃのう……全体的に能力が2~3割ほど増しておるようじゃ。これは魔王の力かなにかか?」


「多分そうだと思います。ではシェラさん、これからよろしくお願いしますね」


 そう言って、握手のための手を差し出す。


「配下になったのじゃから、呼び捨てで構わぬぞ。……ワシも言葉を改めた方が良いか?」


 握手の意図は通じたようで、エンシェントドラゴンさんもそう言いながら手を伸ばしてくる。


「では、シェラと呼ばせて頂きます。言葉はそのままで構いませ……いたたたたた!」


「あ、すまん。能力が増えた分、力の加減を間違えた」


 外見は幼さの残る少女とはいえ、中身は最強の魔獣であるエンシェントドラゴンで、増えた能力はその2~3割である。

 その差は、俺の手の骨など簡単に粉砕してしまう。


「「洋一様!」」


 リンネとライナさんが顔色を変えて、その場にうずくまる俺の元に駆け寄ってきてくれるのだった……。




大陸暦425年12月28日

現時点での大陸統一進捗度 36.2%(パークレン鉱山所有・旧マーカム王国領並びに旧イドラ帝国領の大森林地帯を領有・旧サイダル王国領の大湿地帯を領有・大陸の西半分を支配するパークレン王国に強い影響力・旧サイダル王国領東部に孤児こじ用の土地を確保)


解放されたエルフの総数 78万39人

内訳 鉱山に13万9562人 大森林のエルフの村4592ヶ所に53万1897人 リステラ商会で保護中の沼エルフ10万8580人(一部は順次大湿地帯に移住中) 保護した孤児2万2273人


資産 所持金 211億4913万


配下

リンネ(エルフの弓士)

ライナ(B級冒険者)

レナ(エルフの織物職人)

セレス(エルフの木工職人)

リステラ(雇われ商会長)

ルクレア(エルフの薬師)

ニナ(パークレン鉱山運営長)

エイナ(パークレン王国国王)

クトル(フェアリー)

シェラ(エンシェントドラゴン)

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