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妹と異世界転移 ~引きこもりだった俺が妹を護るために大陸を統一するまで~  作者: おとしんくるす


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184 世界を変える計画

 魔獣の脅威をもって人間とエルフの共闘を実現させ、人間の認識を変える事によってエルフとの共生を実現する計画。


 その具体的な実行方法について、犠牲者を0に。もしくは大幅に少なくできるかもしれないというエイナさんの言葉に、俺は大きな期待を寄せてその提案を聞く。


「まず初めに、最初に大きな衝撃を与える必要があるという洋一様の考えは完全に正しい。人間達がエルフに対する認識を一変させるには、上は国王から下は貧しい庶民しょみんにいたるまで、全員が等しく命の危機を感じるくらいの圧力が生じ、それがエルフの協力によって取り除かれたというくらいの実績が必要になります」


「はい……」


「その圧力を加える具体的な方法ですが、ドラゴンを使う事が可能であるのなら、その力でいくつかの街を完全に焼き尽くしてしまうのが良いでしょう。特に東のダフラ王国は人口において旧サイダル王国をしのぎ、かつては大陸一の大国でした。一番の抵抗が予想されますので、その首都を焼き払ってしまえば後の仕事が大変やりやすくなります」


 …………あれ、俺はいま犠牲者を一人も出さずにすむかもしれない方法を聞いてるんだよね?


「あの、それだと凄い数の犠牲者が出ちゃうんじゃないですか?」


「いきなり行えばそうなるでしょうが、幸いと言うべきか我々がサイダル王国を攻略した時の話が各地に広まっており、今はどの街でも空からの攻撃に備えて食料や武器、その他物資を守るために巨大な地下倉庫を建設しております。食糧の備蓄びちくが減って倉庫に空きができる夏を狙えば、外周部の住民は街の外に逃げ、中心部の住民は地下倉庫に逃げる事が短時間で可能になるでしょう」


「……そんな上手くいきますかね?」


「いかせるのが私の役目だと理解しております。最初は我が国の中で十分に準備を整えた上で行い。ドラゴン出現の情報と共に各地に広めれば、基本的な対応は伝わるでしょう。あとは避難が迅速じんそく確実に行われるように、あらかじめ人員を送り込んでおいて誘導させればよいのです。ドラゴンが洋一様の命令を忠実に守るなら、時間の余裕を長めに取る事もできるでしょうしね」


 ……なるほど。この方法なら犠牲者を0か、大幅に減らす事ができるかもしれない。

 死んでしまった命は戻らないが、焼けた街はまた作り直す事ができる。

 そして、街をいくつも焼き払ったドラゴンを追い払うのに貢献したとなれば、人間のエルフに対する見方も大きく変わるだろう。


 まだ俺がエンシェントドラゴンを配下にできると決まった訳ではないが、これは是非とも成功させないといけなくなってきた。


「実行時期はいつくらいから可能になりますかね?」


「こちらの準備としてはさして難しい事もありませんから、地下倉庫の空きを考えて秋の収穫前に行うとして、来年の夏にも実行可能でしょう。各地への根回しや下準備もそれまでにやっておきます」


 今が12月だから、8ヶ月くらい先か。それだけあればリンネも準備を整えられるだろうし、ドラゴンもなんとかできる……かな?


「わかりました。では来年の夏に実行予定という事で準備を進めておいてください」


「承知しました。……ところで、洋一様は事が成った後の大陸をどのようにしたいとお考えですか?」


「あー、そうですね……」


 まだ成功するかどうかも、予定通りに計画を発動できるかどうかさえ未定なのに、もう成功した時の話だ。でも考えておかないといけないよな……。


 さしあたっての問題は東の三カ国をどうするかだ。

 確か北から順に、クムシ王国・ダフラ王国・マヤン連合国だったと記憶する。


 クムシ王国は大山脈の北側を領地にしているが、大山脈の北側はすぐ海で大半が荒れた砂丘地帯、点々と小さな漁村が散在するだけだと聞いている。

 大山脈の東の果てにわずかな平地があり、そこに首都が置かれている小国との事だった。

 ある意味一番近くて遠い国であり、大森林の東端とうたんが領地に含まれている。


 ダフラ王国は三国中最大の国で、エイナさんが一番の障害だと言っていた。

 大陸東部に広大な領地を持ち、大森林の東のほか、大密林は丸々この国の中にある。

 有能だが独裁的な王が治めているらしい。


 南のマヤン連合国は複数の小国家の連合体で、大湿地帯の東部が領地に含まれる。

 現在ダフラ王国の圧力を受けて分裂・混乱中らしい。エイナさんによると、ダフラ王国はここを吸収する事によってパークレン王国に対抗しようとしているとの事。


 三国共にまだエルフの奴隷が普通に使われていて、牧場もある。これをそのままにしていては、人間のエルフに対する見方を変えるなんて不可能だろう。


「……やっぱり大陸を一つの国で統一する必要がありますよね」


「まぁ、それが一番確実で手早いでしょうね。ドラゴン襲来の混乱に乗じればさほど難しい事でもありません」


 エイナさんは相変わらずとんでもない事をさらっと言うなぁ……でもまぁ、それしかないか。


「では、その計画も併せてお願いできますか? なにか俺が手伝う事あります?」


「洋一様はドラゴンの使役に全力を投入して頂きたい所ですが……そうですね、洋一様の所で働いているニナという少女がいましたね。あの子を私に預けてもらう事はできませんか? 養子にして、数年後には国を継がせたいと思います」


「…………はい?」


 一瞬、エイナさんがなにを言っているのか理解できなかった。


「え、ニナを……ですか?」


「はい。あの子とは何度か話した事がありますが、幼い頃から洋一様と香織様、お姉様とエルフ達から教育を受けて育ち、リスティに商売を仕込まれただけあって、実に聡明そうめいで機転も利きます。物怖ものおじもしませんし、もう少し鍛えれば大陸の一つくらいは統治できるようになるでしょう。お姉様の薫陶くんとうをよく受けている分、平時の王としては私より適任かもしれません」


 ……薫陶って、たしか人格者からの良い影響みたいな意味だっけ?


 たしかに、豊富な知識を持つエルフさん達と、人格者のライナさん。実務に長けたリステラさんに、別世界の知識を持つ俺と妹。教育環境としてはこの世界で最高のものだっただろう。


 実際ニナは親代わりの俺のひいき目を差し引いても、とても優秀な子に育ってくれている。

 そこにエイナさんの指導も加われば、なるほど王も勤まるかもしれない。


 ……でも、ニナはまだ15歳。子供と言っていい年齢だ。


 もっとも、それを言ったらエイナさんだって22歳だし、鉱山でニナに色々と仕事を任せている俺はどうなんだって話ではある。

 だがそれでも、ニナは俺と妹が親代わりだ。あんまり辛い目にはあわせたくない。


「……ニナは孤児こじで元奴隷ですけど、そのせいで反発があったりしませんかね?」


「ないとは申しませんが、少ないでしょう。そういった事にうるさいやからは、元平民である私が王座にいた時におおむね排除済みです。なにか言う者がいても、私が責任を持って対処するとお約束いたしましょう。それに、あの子はそれほど弱くはありませんよ」


 おお、エイナさんのニナへの評価ずいぶん高いんだな。


 たしかにニナは強い子だ、それに努力家でもある。

 今まで積み重ねてきた努力の結果として国王の地位に就くのなら、それはニナにとっても良い事なのかもしれない。


 俺もエイナさんも嫌がっているが、本来国王といえば望んでも得られない最高の地位なのだ。


 ……それに、考えてみれば貴族制度を廃止したこの国にとって。あるいはこれからのこの大陸にとって、元奴隷だった孤児こじが王になるというのは、国の仕組みが変わった事を示す最大の象徴しょうちょうになるだろう。

 従来の価値観を一変させ、今まで奴隷だったエルフさん達の地位を改善するのに、大きな一助になる気がする。


 エイナさんは、そこまで考えてこの話を持ち出してきたのだろうか?


「……話は理解しましたが、エイナさんはそれでいいのですか? 自分の子供に王座を継がせたいとか思いません?」


「私の子供……ですか?」


 エイナさんが珍しく、想像もできないといった様子で視線を泳がせる。


 ああそうか。人間はエルフさん達と違って、女同士で子供をつくれないもんね。お姉ちゃん命のエイナさんにとって、男と子供をつくるというのは考えられない事なのかもしれない。


 考えてみればエイナさんがエルフに嫉妬しっとしていた理由って、意外とここに根っこがあるのかもしれないね。


 エルフさん達みたいに人間も女同士で子供がつくれて、ライナさんがエイナさんとの子供を身ごもって、エイナさんがお姉ちゃんとの子供を身ごもる状況が実現したら、エイナさんはどんなに喜ぶ事だろうか。

 もしそれが可能だったら、エイナさんはその子供に。あるいはライナさんの子供にひどく執着するだろう。


 だけどそれは絶対に不可能な事で、だからエイナさんはせめてずっとお姉ちゃんと一緒にいられるようにと、お姉ちゃんと同じ相手と結婚する事を望んでいるのだ。

 国王を辞めようとしているのも、多分それが目的だろう。

 そしてなぜか、標的が俺なんだよね……。


 と言うか、よく考えたらもし犠牲者を一人も出さずに計画を完遂かんすいできたら、エイナさんとライナさんを同時に伴侶はんりょに迎えると約束しているんだった。

 その場合の子供となると……いかん、話を変えよう。


「わかりました。最終判断はニナの希望を聞いてからになりますが、俺としてはニナを次期国王にす事に賛成します……香織はどう思う?」


「お兄ちゃんがいいって言うならいいと思うよ。できるだけニナちゃんの希望を尊重してあげてほしいけど」


 それはもちろんだ。俺だって嫌がるのを強制する気はない。


「うん、わかった。じゃあエイナさん。そういう事で、最終的な返事はニナの希望を聞いてから改めてしますね」


「はい。よろしくお願いします」


 そんなやりとりをして、とりあえず会議は終了となった。


 もっと詳しい所を詰めるのは、俺がエンシェントドラゴンを配下にするのに成功してからである。


 エルフさん達の未来に加え、数万人の人命もかかっているのだ。なんとしても成功させないといけない。


 俺は決意を新たに、ドラゴンの秘薬を握り締めるのだった……。




大陸暦425年12月2日

現時点での大陸統一進捗度 36.2%(パークレン鉱山所有・旧マーカム王国領並びに旧イドラ帝国領の大森林地帯を領有・旧サイダル王国領の大湿地帯を領有・大陸の西半分を支配するパークレン王国に強い影響力・旧サイダル王国領東部に孤児こじ用の土地を確保)


解放されたエルフの総数 77万5140人

内訳 鉱山に13万9562人 大森林のエルフの村4592ヶ所に53万1897人 リステラ商会で保護中の沼エルフ10万3681人(一部は順次大湿地帯に移住中) 保護した孤児2万1053人


資産 所持金 211億6203万


配下

リンネ(エルフの弓士)

ライナ(B級冒険者)

レナ(エルフの織物職人)

セレス(エルフの木工職人)

リステラ(雇われ商会長)

ルクレア(エルフの薬師)

ニナ(パークレン鉱山運営長)

エイナ(パークレン王国国王)

クトル(フェアリー)

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