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妹と異世界転移 ~引きこもりだった俺が妹を護るために大陸を統一するまで~  作者: おとしんくるす


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180 共犯者

 人間とエルフが肩を並べ、共に暮らせる世界を作るための計画。

 その計画を共に遂行すいこうしてくれる人が必要だ。


 おそらく数万人の犠牲者が出るであろう罪を共に背負ってくれる人を、俺は探さなければいけない。


 信頼できて、能力があって、一緒に罪を被ってくれて、心が強い人。それを人間とエルフで最低一人ずつだ。


 人間については、エイナさんかリステラさんか……ギリギリでニナかの三択。やろうとしている事の性質を考えれば、エイナさんほぼ一択だろう。

 問題は信頼関係と、協力を得られるよう説得できるかどうかだけである。


 人選で難しいのはエルフさんの方だ。

 リンネに薬師さんにレナさんにセレスさん。他にもヒルセさんやリンネの妹のレンネさんなどなど、信頼できる知り合いはこちらのほうが多い。


 だが協力を頼もうとしている内容を考えれば、レンネさんには過酷過ぎるし、レナさんやセレスさんやヒルセさんは布加工や木材加工が本業。薬師さんは精神面が心配だ。


 となると残るのは自動的にリンネ一人になるのだが、リンネか……。


 リンネは信頼できるし能力もある。俺が頼み込めば嫌とは言わないだろうし、全てのエルフが解放される事を強く願ってもいる。

 適任と言えば一番適任なのだが……俺としては非常に頼みにくい。


 リンネは俺達がこの世界に来たばかりの頃、一番危うかった時に手を差し伸べてくれた大恩人であり、妹さんの件では相当辛い目にもあった。

 もうこれ以上負担を強いるような事はしたくないのだ。


 ……だが、いくら考えてみても他に適任者はいない。


 森産まれで弓が得意なエルフさんなら何人もいるので、その中から誰かを選ぶ手もあるが、どんな人かよく知らない相手では不安が残る。

 その点リンネなら、この世界で一番付き合いが長い人なのだ。


 考えれば考えるほど、リンネに頼みたくはないが、それでもリンネしかいないという結論が強くなっていく。


 俺は部屋を出て、近くにいたエルフさんに、リンネを探して連れてきて来てもらうよう頼むのだった……。



 リンネは森に採取に出向いていたらしく、俺の部屋に姿を現したのは半日ほど経ってからだった。


 その間も必死に考え続けたが、やはりリンネに代わる人材は思いつかない。


「洋一様、お呼びでしょうか?」


 部屋に入ってきたリンネは、金色の髪の上にわずかに雪を乗せていた。外は雪が降っているらしい。もうすぐ12月だもんね……。


 椅子いすに座るリンネは、心なしか緊張している。

 この部屋に入ってすぐ、俺の表情を読み取ったのだろう。本当に賢くて、察しが良くていい子なんだよな……。


 この子に数万人を死なせる行為の片棒を担がせなければいけないと思うと、胸が締めつけられるようだ。


「リンネ、実は大事な相談があるんだ」


『もし嫌なら断ってくれていいから……』と言葉を続けようとしたのを、俺はギリギリの所で飲み込んだ。


 そう言った所で、リンネはきっと断らないだろう。

 それをわかった上で選択肢を与えるような事を言うのは、俺の弱さの現われだ。最後はリンネが自分の意思で決めたのだと、そんな言い訳が欲しいがための。


 そんな事ではいけない。俺はスルクトさんの命を賭した願いに応えるために、約束を果たすために強くならなければいけないのだ。


 そう改めて自分に言い聞かせ、俺はリンネの目をまっすぐに見て計画を話しはじめる……。



 俺と妹の事を打ち明け、魔獣としてクトルを紹介し、計画の説明をし、多数の犠牲者が出るだろう事も説明した上で、リンネの協力をお願いする。


 じっと黙って、途中からは辛そうな表情で話を聞いていたリンネは、話が終わるや否や立ち上がって頭を下げた。


「洋一様。香織様と魔獣を狩っていた事、隠し立てしていて申し訳ありませんでした――その上でまだ私の事を信用してくださるのなら、どんな事でもやらせて頂きます……でも……」


「でも?」


「……洋一様はよろしいのですか? 人族でもエルフ族でもなく魔族……いえ魔王であるというのなら、人族とエルフ族の関係など本来あずかり知らぬ事でしょう。それなのに、我々のためにこれほどまでに骨を折って頂くなど……」


 リンネの目は本気で俺の事を心配してくれている。

 何日か前、スルクトさんの事で思い悩んで憔悴しょうすいしていた俺を励ましに来てくれた時と、同じ目だ。

 ああもう、ホントにいい子だよねこの子は……。


「……リンネ、覚えてる? 俺達とリンネが初めて出会った時、リンネは宿屋で働いていて、俺と香織は無一文で汚れた格好をした、浮浪者も同然だった」


「……はい。よく覚えております」


「そんな俺達を、リンネは宿の主人に怒られるのを覚悟の上で泊めてくれたよね。そして自分の部屋と毛布を、自分の分の食事を俺達に提供してくれた。食べ物も満足にもらえてなくてせた体だったのに、貴重な食事を俺達に分けてくれた。俺達はリンネから見れば、自分達の村を襲って奴隷にした、憎い人族に見えたはずなのに」


「それは……」


「香織の姿に、生き別れになっていた妹の姿を重ねたからだっていうのは聞いた。でもそれでも、あそこまでしてくれる義理なんてなかったはずだよ。いま俺がしようとしている事よりも、あの時リンネが俺達にしてくれた事の方がずっと献身的な行為だった。そしてそのおかげで、俺と妹は命を永らえる事ができた」


「洋一様……」


「それに、薬師さんには妹の命を助けてもらったし、スルクトさんには仲間を助けるって約束した。たしかに俺はエルフ族じゃないし人族でもないみたいだから、人間とエルフの関係については部外者なのかもしれない。でも受けた恩を返すのに、大切な人を助けたり約束を守ったりするのに、種族は関係ないはずだよ。

 だから俺はこの計画を実現したい。だけど俺一人ではどうしても無理なんだ。リンネには辛い事をお願いする事になるけど、できれば力を貸して欲しい……」


 そう言って頭を下げると、リンネは慌てたように俺より低く、床にひざを着いた。


「――全てのエルフ族を代表して、お礼を申し上げます……この身でお役に立つ事があれば、なんなりとお命じくださいませ……」


「……うん、ありがとう。じゃあ人間と一緒に魔獣と戦える人材を集めておいてくれるかな。ある程度戦闘能力があって、人間と一緒に行動するのに耐えられる人を、なるべく多く。多分嫌な思いをする事もあるだろうから、それも考慮して……」


「承知しました、他にはなにか?」


「将来的には、大森林と大湿地帯。大密林にそれぞれエルフの国を建てる事になると思うから、その下準備もお願い。薬師さんに手伝ってもらうといいと思うけど、魔王の事は秘密にしておいてね。あとは……無理かもしれないけどあまり気負きおわないでほしい。耐えられない事があったら言ってきてね」


「承知しました、お気遣いありがとうございます……」


 リンネはそう返事をしたが、仲間の事ならともかく、自分の事なら言ってこないだろう。

 人数が集まったら、何人かにリンネの事をお願いしておかなければいけないな……。



 ともあれ、これでエルフ側の協力者……共犯者は得る事ができた。


 次は人間側の共犯者だ。

 エルフ側は人選が問題だったが、人間側はどう協力を得るかが問題になる。


 俺は国王陛下の顔を思い浮かべながら、考えを巡らせるのだった……。




大陸暦425年11月28日

現時点での大陸統一進捗度 36.2%(パークレン鉱山所有・旧マーカム王国領並びに旧イドラ帝国領の大森林地帯を領有・旧サイダル王国領の大湿地帯を領有・大陸の西半分を支配するパークレン王国に強い影響力・旧サイダル王国領東部に孤児こじ用の土地を確保)


解放されたエルフの総数 77万5140人

内訳 鉱山に13万9562人 大森林のエルフの村4592ヶ所に53万1897人 リステラ商会で保護中の沼エルフ10万3681人(一部は順次大湿地帯に移住中) 保護した孤児2万1053人


資産 所持金 211億6209万


配下

リンネ(エルフの弓士)

ライナ(B級冒険者)

レナ(エルフの織物職人)

セレス(エルフの木工職人)

リステラ(雇われ商会長)

ルクレア(エルフの薬師)

ニナ(パークレン鉱山運営長)

エイナ(パークレン王国国王)

クトル(フェアリー)

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