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妹と異世界転移 ~引きこもりだった俺が妹を護るために大陸を統一するまで~  作者: おとしんくるす


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174 妹の告白

 高倉香織 勇者Lv17 スキル:料理Lv4 裁縫さいほうLv3 光属性魔法Lv2 乗馬Lv1 剣術Lv1 火属性魔法Lv1 水属性魔法Lv1 特殊スキル:危険察知 鑑定 追跡 ステータス偽装 勇者の加護(ステータス成長加速・肉体年齢が衰えない) 状態:おび


 妹を鑑定してみた結果に、俺は衝撃を受けてしばらく固まった……。



 ……しばらく経って、ようやく再起動した頭で必死に考える。


 項目が今まで見ていたのとあまりに違うのは、特殊スキルの『ステータス偽装』のせいだろう。

 妹は、この世界に来た日に俺を騙すような真似まねを二回したと言った。一つが神様と会っていた事であるのなら、もう一つはこれなのだろうか?


 そして、俺自身も鑑定してみてほしいと言ったという事は……。


 俺はなるべく冷静さを保つように努力しつつ、自分に鑑定をかけてみる。


 高倉洋一 魔王Lv1 スキル:闇属性魔法Lv0 洗脳Lv0 威圧Lv0 特殊スキル:鑑定 魔獣生成 身体自動再生 魔王の加護(配下の魔獣の能力向上) 状態:困惑


 …………は? なんだこれ??


 突っ込みたい所は山ほどあるが、なにより問題なのは『魔王Lv1』の部分である。

 俺が魔王? 香織が勇者だったのに??


 俺の困惑の表情に、妹は状況を察したのだろう。話の続きを再開する。


「……わたしがおじいさんになにを言われたかだったよね。この世界で目を覚ました時、わたしの隣に本が一冊落ちてたんだよ。それに触れたらおじいさんの神様が現れて、『この世界には間もなく魔王が誕生するから、勇者となって魔王を倒し、世界を救うのだ。詳しい事はその本に書いてある』って言われた」


 妹はそう言って、辛そうに視線を下げる。


「わたしは混乱したし、状況を受け入れられなかったけど、とりあえず本を手に取って読んでみた。はじめの数ページに勇者の能力について書いてあって、あとは白紙だったからすぐに読み終わって立ち上がったら、少し離れた所にお兄ちゃんが倒れているのを見つけたんだよ」


 う~ん、成長に伴って内容が追記されていくたぐいの本だったのかな?


 そんな推測を立てながら、話の続きを聞く。


「混乱と不安の中で、お兄ちゃんの姿を見つけてどんなに嬉しかったか……。わたしはお兄ちゃんに駆け寄って抱き起こそうとしたんだけど、その時に、お兄ちゃんの隣にも本が落ちているのを見つけたんだよ。そしてその本を見た時、すごく嫌な感じがした。だからわたしは、その本を鑑定してみたんだ」


「それってひょっとして……」


「うん、『魔王の手引書』って出た。わたしは目の前が真っ暗になって、それでもなにかの間違いだと思ってお兄ちゃんを鑑定してみたら、出てきたのは……今お兄ちゃんが見たステータスだったんだよ。わたし、ショックで死んじゃうかと思った……」


「それは……とりあえず死ななくてよかったよ」


「そうだよね。せっかくまたお兄ちゃんと会えたのに、死んじゃったらもったいないもんね。だからわたしはお兄ちゃんと一緒にいるために、勇者の能力を使ってわたしとお兄ちゃんのステータスを書き変えた。勇者と魔王なんて、名前からして対立してしまいそうなものは全部消して、物騒ぶっそうなものも全部消して、平和な兄妹として生きていくのに役立ちそうなものだけを残した。そして、お兄ちゃんの隣に落ちていた本とわたしの勇者の手引書を、まとめて火属性魔法で燃やした」


 おおう、大人しい妹だと思ってたけど、結構大胆な事するのな。


「ステータス偽装の能力って、消したらその能力を使えなくなるのか?」


「ううん、わたし達の他に使える人がいるかどうか知らないけど、鑑定で見た時に見えなくなるだけだよ。お兄ちゃんが鑑定能力を使える事はいずれそれとなく気付いてもらおうと思ってたけど、次の日には使えるようになってたみたいでびっくりしたよ。もしかしたら他にも魔王のマニュアルみたいなものがあるのかなって、しばらくは脅えてた。独力で気付くなんて、やっぱりお兄ちゃんは凄いよね」


 あー、うん。あれは完全に偶々たまたまだったけどね。

 それにしても、衝撃の事実が次々に出てくるな。


 だが、言われてみれば心当たりも多い。

 特に長年気にしていた外見が変わらない問題は、俺が魔王で寿命が長いとかで、妹は勇者の加護で肉体年齢が衰えないせいだとすれば、納得がいく。


「……ん? ちょっと待って。俺の記憶だと、この世界の最初の記憶は草原でおまえと折り重なって倒れてたんだけど? なんかちょっと高い所から落ちた感じで」


「うん、わたしは二人分のステータスを書き変えたあと、眠っているお兄ちゃんを抱えて草原を歩いた。人か街かを探してね。でも歩きながら何回か鑑定を発動していたら急に意識が遠くなっちゃって、お兄ちゃんを抱いたまま倒れちゃったんだよ。お兄ちゃんの記憶はその時のだと思う」


 ああなるほど。あれはこの世界に転移してきた時の衝撃じゃなくて、妹の腕から落ちた衝撃だったのか。

 鑑定の使いすぎで気を失うのは俺も体験済みだ。


「俺は鑑定を6回使うと気を失うけど、そっちも一緒?」


「うん、最初はそうだった。もっとも一番最初の時は火属性魔法やステータス偽装も使ってたから、4回目で倒れちゃったけどね。すぐ目覚められたのは、魔力みたいなものが完全にゼロになったわけじゃなかったからだと思う」


 ふむ……数字は見えないけど、MP60で鑑定一回10消費みたいな感じなのだろうか?

 妹の場合は火属性魔法やステータス偽装で端数はすうが出て、1残しとか2残しとかになって、ふらついただけで完全に気を失う事はなかった……って所かな?


「最初はって事は、今は違うのか?」


「うん。レベルが上がったら使える回数が増えて、今は鑑定だけなら13回使えるよ」


「レベルか……そういえば、お前はどうやってレベル上げたんだ?」


「リンネさんを仲間にしたあと、3人でリンネさんの故郷まで森の中を旅したじゃない。あの時に、夜中こっそり起きだして魔獣を狩った。最初はレベル上げなんて怖いからやりたくなかったけど、ライナさんが護衛についてくれてすぐ、街で襲われた事があったでしょ。あの時は怖くてなにもできなかったけど、それじゃダメだと思って、いざという時にお兄ちゃんを護れるようにってレベルを上げた。でも……」


「でも?」


「……レベルを上げるとね、なんか頭の中に勇者の本能みたいなのが湧き上がってくるんだよ。『魔物を倒せ……魔王を倒せ……』って。だから怖くなって途中でやめた。勇者の本能に支配されてお兄ちゃんを攻撃するくらいなら、弱いままでいて、なにかあった時にはお兄ちゃんと一緒に死んだほうがマシだと思ったから」


 おおう……なんか愛が重いぞ。

 でも気持ちはわかる。俺だって魔王の本能に支配されて妹を攻撃するくらいなら、そんな力はなくていい。


「魔獣狩りって一人でやってたのか? 危ない目に遭ったりしなかったか?」


「……実は、リンネさんに手伝ってもらってた。最初は一人でやろうと思ってたんだけど、こっそり起き出したつもりがリンネさんには気付かれてて、隠すのも無理そうだったから、誰にも言わないでって約束して一緒にやってもらった。あ、リンネさんを怒らないであげてね。わたしが黙っててってお願いしたんだから……」


 ああ、リンネがついていてくれたのなら安心だ。魔獣探しからいざという時のサポートまで、森の中であんなに頼りになる人はいない。

 そして、もちろん怒る気なんてあるわけがない。妹を護ってくれていたのだから、むしろお礼を言わなければいけないくらいだ。


 信用問題に関しても、俺の配下だからってなんでも報告してくれる人よりも、内緒にしてほしいと言われた事はちゃんと内緒にする人の方が、個人的には好感が持てる。

 エイナさん辺りだと違う事言いそうだけどね……。



 ……とにかく、俺の知らない所で色々あったのはわかった。


 嘘がないという妹の言葉も信用する。俺が魔王で妹が勇者だなんて知ったら、俺だって全力で隠そうとしただろう。


 ただちょっと、気になる事がないわけではない。


「…………なぁ香織、俺ってずっとお前のてのひらの上で踊ってたのか?」


 その質問をした瞬間、妹の顔がサッと青ざめた。


「――違うよ! 絶対に違う! わたしがお兄ちゃんになにかしたのは最初の一日だけで、あとはなにも干渉してないよ。危険を察知したら警告したり、追跡能力を使ってお兄ちゃんの居場所を把握して、なにかあったら警告しようと思ってついて回ったりしてた事はあるけど、それだけだから! この世界に来てからのいろんな判断や決断は全部お兄ちゃんが自分の意思でした事だよ。お願い、信じて!」


 目に涙を浮かべて、必死に否定する香織。

 うん、今のは訊き方が意地悪だったよね。エイナさんの影響だろうか?


「ごめん、悪い意味で言ったんじゃないんだ。ただ、俺はお前が望むように行動できていたのか気になってさ」


「わたしの望みはお兄ちゃんと一緒にいる事だから、それはもう叶ってるよ。……お兄ちゃん、怒ってないの?」


「んー、びっくりはしたけど怒ってはないよ。多分俺がお前の立場でも全力で隠そうとしただろうしな。魔王と勇者に分かれてお前と戦うのも、お前に倒されるのもゴメンだし……うわっ!」


「――お兄ちゃん!」


 妹が、突然体当たりでもするかのような勢いで俺の胸に飛び込んでくる。


 俺の胸に顔を埋めて、『ゴメンね……ゴメンね……』と言って泣く妹の髪を優しくでてあげるのは、なんだかとても兄冥利みょうりにつきる状況だ。


 一方で、妹がこの秘密を打ち明けるのにどれだけ迷い、おび葛藤かっとうしたのかと思うと、そこまで心配をかけてしまっていた自分が情けなくなってくる。


「香織、ごめんな。心配かけて……ダメな兄で……」


「ううん、そんな事ないよ……。お兄ちゃんは優しいから。だからあんなに真剣に悩んでたんだって、ちゃんとわかってるから……」


 優しいから……なのだろうか? 

 ともあれ、妹のあつい信頼に目頭が熱くなるのを感じる。


 そして同時に、俺も妹に隠し事があるので、逆に申し訳なくもなってくる。


 隠し事の中で一番大きいものは、イドラ帝国侵攻前にエイナさんから明かされた十日熱の病原体の件だろう。


 ……ん、あれ? そういえばさっき、香織は『追跡能力を使ってお兄ちゃんの居場所を把握して』って言ってたよな?


 まさかとは思うけど、バレてないだろうな……。




大陸暦425年11月27日

現時点での大陸統一進捗度 36.2%(パークレン鉱山所有・旧マーカム王国領並びに旧イドラ帝国領の大森林地帯を領有・旧サイダル王国領の大湿地帯を領有・大陸の西半分を支配するパークレン王国に強い影響力・旧サイダル王国領東部に孤児こじ用の土地を確保)


解放されたエルフの総数 77万5140人

内訳 鉱山に13万9562人 大森林のエルフの村4592ヶ所に53万1897人 リステラ商会で保護中の沼エルフ10万3681人(一部は順次大湿地帯に移住中) 保護した孤児2万1053人


資産 所持金 211億6209万


配下

リンネ(エルフの弓士)

ライナ(B級冒険者)

レナ(エルフの織物職人)

セレス(エルフの木工職人)

リステラ(雇われ商会長)

ルクレア(エルフの薬師)

ニナ(パークレン鉱山運営長)

エイナ(パークレン王国国王)

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