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妹と異世界転移 ~引きこもりだった俺が妹を護るために大陸を統一するまで~  作者: おとしんくるす


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166 回復する心

 すごくうれしそうに、いい事があったのだと報告しようとするリンネ。


 その内容を聞いてみると、なんとエルフの人口が4人増えたのだそうだ。


 奴隷にされていたのを保護したとかではなく、エルフさん同士の自由恋愛によって子供が産まれたらしい。


 エルフさん達は女性しかおらず、交配すると両方妊娠するので、4人という事は2組だ。

 両方とも森産まれのエルフさん同士だったらしいが、恋愛ができるほど生活が落ち着いていて、子供を作ろうと思えるほどに将来に希望が持てているというのは、とても良い事である。


 いつかは牧場産まれのエルフさん達も、恋愛ができるくらいに感情を取り戻してくれるといいなと思う。


 出産には薬師さんが立ち会い、子供は今も鉱山にいるらしい。

『明日にでも見に行きましょう、すごくかわいいですよ!』とリンネにテンション高くすすめられたので、興味を示した妹とライナさんも一緒に見に行く事になった。


 以前に牧場を見学に行った時にエルフの繁殖施設を見たが、暗く陰鬱いんうつな雰囲気だったのを覚えている。だが今はあそこと違い、当人でもないリンネでさえこんなに笑顔にさせるほどに、優しくて暖かい空気に満ちているのだろう。


 ただの商品としてではなく、両親と周囲に祝福されて産まれてくるエルフの赤ちゃんがこれからも増えるといいなと、心から願わずにはいられない……。



「……そういえば、薬師さんは子供作らないんですか?」


 ――ぶっ! 『ゲホッ! ゲホ!』


 なにげなく思った事を口に出してみたら、薬師さんが口に含んでいたお酒を盛大にいた。直撃を受けたセレスさんがびしょ濡れになって、ニナとヒルセさんが慌てて拭く物を取りに行く。


「ゴホッ! お……おまえは、なにを言うのだ!?」


 これは珍しい、薬師さんが顔を真っ赤にして動揺している。長い耳の先端が特に真っ赤だ。


「いえ、エルフの寿命は300~400歳くらいと聞いたもので、薬師さん230歳くらいでしょ? いい年頃なのかなって」


「ばっ、大きなお世話だ馬鹿者! 相手あっての事なのだから、そう計算通りにいくものか!」


「お兄ちゃん、それセクハラだよ……」


 薬師さんに怒られた上、妹にはジトッとした目で見られてしまった。いかん、ダメな話題だったか。思った事を感覚で口に出すもんじゃないな……。


 慌てて謝って話題を変えようとしたが、気がつくと周りでは他のエルフさん達が。レナさんやレンネさん、お酒をかぶったセレスさんも。なんならライナさんまで、興味津々の様子でこちらを見ている。

 よく見ると、妹も目の奥に興味の光が宿っている。どっちなんだおまえは……。


 タオルを頭に乗せたセレスさんの元に数人がガサゴソと集まり、密談がはじまった。


『ルクレアさんと合いそうな相手ってだれ? やっぱり同じ村出身で歳も近いヒルセさん?』

『いや、私は意外とリンネが有力だと思うわ。よく薬の材料届けに行ってるから接点多いし、ルクレアさんに面と向かって意見できるのなんてあの子とニナちゃんくらいでしょう』

『あー、ルクレアさん恋愛方面は奥手そうだもんね。引っ張ってくれる相手のほうがいいかも』

『いっそニナちゃんがエルフだったらよかったのにね』

『えー、いくらなんでも200歳差はどうよ……』


 本人達はヒソヒソ話しているつもりなのだろうが、盛り上がって声が押さえられていないので丸聞こえである。


 恋愛話好きにエルフと人間の違いはないらしい。妹とライナさんも平然としている振りをしているが、全力で聞き耳を立てているようだ。


 ちなみに俺に聞こえているという事は当然薬師さんにも聞こえている訳で、耳の先まで真っ赤になっている。


「……わ、私の事を言う前におまえはどうなのだ! 人族ならいい歳だろう!」


 おおう、いきなり矛先がこっちに向いた。

 今まで薬師さんの話をしていたエルフさん達が、いっせいにこちらを向く。


『そういえば洋一様も浮いた話一つ聞きませんね』

『いつも一緒にいる二人がそうなんじゃないの?』

『あれは妹さんと護衛の方だと聞いていますが?』

『妹さんはともかく、護衛のかたはいけるのでは?』

『人族は複数の伴侶を持つ事もあるのでしょう?』

『そもそも妹だってダメって訳じゃないですよね』


 ……これ、自分が話題にされるの死ぬほど恥ずかしいな。

 そして、最後の人はこの世界のゆるい恋愛感で妙な事を言わないでほしい。


 ライナさんが顔を赤くしているのはともかく、妹なんて食い入るように聞き入っているじゃないか。


 まぁでも、この世界に来てもう5年半。俺は21歳、香織は19歳になった。

 この世界では10代なかばで結婚するのも珍しくないので、薬師さんの言う事もわかる。

 俺はともかく、妹はどうなのだろう……?


「……ねえライナさん、香織から好きな人の話とか聞いた事あります?」


「え……」


 となりで顔を赤くしているライナさんにそっと訊いてみると、ライナさんは一瞬妹に視線を移した後、ジッと俺の顔を見る。そして、なんともいえない微妙な表情を浮かべた。

 ……どういう意味だ?


 結局ライナさんからは『さぁ?』という曖昧あいまいな返事しか出てこなかったが、この反応、まさかだよね……。


 あんまりよろしくない予感がするのでそれ以上考えるのをやめ、思考をよそに移す。

 ……そういえばこの5年半で、ライナさんとエイナさんは大人の女性って感じに成長したよな。


 だが、俺と妹はあんまり変わった気がしない。同じく見た目が変わらないエルフさん達と一緒にいるせいで忘れがちになるが、これっておかしいよね?


 以前薬師さんと魔族がどうのという話をした記憶があるが、その後忙しくなったせいですっかり忘れていた。これから時間ができたら調べてみるのも悪くないかもしれない。


 そんな事を考えながら、まだ恋愛話で盛り上がっているエルフさん達を見る。

 自分が話題にされるのは恥ずかしかったが、こんな話で楽しそうに盛り上がれるのは平和になった証拠だろう。


 この場にいるのはほとんどが森産まれのエルフさん達だが、最近は牧場産まれのエルフさん達も自然に笑ったり怒ったりができるようになっている。

 産まれた時から人間の奴隷として育てられ、ここに来たばかりの頃はうつろな目をしておびえるばかりだったのに、本来の人間らしさ……じゃなくてエルフらしさかな? それを取り戻しつつあるのだろう。俺としても嬉しい限りである。


 エルフさん達の恋愛話はターゲットがリンネに移ったようで、セレスさんがお酒を片手にリンネの肩に手を回し、あれこれ絡むという完全にタチの悪いおっさんみたいになっていた。


 ……まぁ、平和でいい事だろう。お酒は貴重で、めったに飲めないみたいだしね。


 お姉ちゃんの危機に妹のレンネさんが助けに入り、セレスさんを引き剥がす。

 レンネさんも明るくなったよな……。


 リンネが命がけで回復させた右腕は、元々の腕と遜色そんしょくなく機能してセレスさんを羽交はがい絞めにしている。


 楽しげな笑い声が響くその光景を眺めながら、俺は久しぶりの穏やかな時間を満喫するのだった……。




大陸暦424年5月18日

現時点での大陸統一進捗度 33.1%(パークレン鉱山所有・旧マーカム王国領大森林地帯を領有・イドラ帝国をファロス王国に併合・サイダル王国をファロス王国に併合・ファロス王国に強い影響力・旧イドラ帝国領大森林に新拠点を建設・旧サイダル王国領東部に孤児こじ用の土地を確保・大湿地帯に拠点を準備中)


解放されたエルフの総数 50万7913人

内訳 鉱山に26万3806人 大森林のエルフの村1466ヶ所に17万4798人 リステラ商会で保護中の沼エルフ6万9309人(内一人は鉱山に滞在して山エルフと情報交換中) 保護した孤児530人


旧マーカム王国回復割合 99% ※わずかな山賊化した兵士を残すのみ


資産 所持金 305億4611万


配下

リンネ(エルフの弓士)

ライナ(B級冒険者)

レナ(エルフの織物職人)

セレス(エルフの木工職人)

リステラ(雇われ商会長)

ルクレア(エルフの薬師)

ニナ(パークレン鉱山運営長)

エイナ(ファロス王国財務大臣)

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