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妹と異世界転移 ~引きこもりだった俺が妹を護るために大陸を統一するまで~  作者: おとしんくるす


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162 規格品

 箱を売ると言った俺に対し、怪訝な表情を向けてくるエイナさんに計画を説明する。


「具体的な大きさはリステラさんに相談しようと思っていますが、こう一人で持てるくらいの大きさの箱と、二人で持つ大きさの箱。とりあえず二種類の規格きかくを決めて量産するのです」


「規格……とはなんでしょうか?」


 ああ、この世界にはまだ規格の概念がないか……。


「規格というのは、基準になる大きさや仕様みたいな意味です。縦・横・高さが同じ大きさの木箱なら、馬車に積んだり倉庫にしまったりする時に隙間なく積み上げる事ができて無駄がありませんし、崩れにくくて安定するのです」


「…………」


 エイナさんはなにやら考え込んでいる様子だが、とりあえず説明を続けよう。イメージするのは元の世界の宅配便だ。


「その規格品の箱を使って、運送業をやろうと思っています。中身詰め放題で一ついくら。それに目的地までの距離に応じて料金を加算して、指定された場所まで届けます。最初のうちは主要都市間でやる事になるでしょうが、荷札にふださえちゃんと付けておけば一台の馬車に複数人の荷物を積めますし、他の荷馬車のちょっとした空きスペースを使って運ぶ事もできるので、意外と商売になるんじゃないかと思うんですが……」


「……洋一様、どうしてもっと早くその話をしてくださらなかったのですか!」


 難しい表情で考え込んでいたエイナさんが、突然大きな声を出す。


「先の戦いに際して、袋に入った食料やつぼに入った油、予備の矢束やたばやその他さまざまな物資を、重量と形、積み重ねを考えて馬車に割り振るのにどれだけの手間をかけた事か……規格品の箱があれば気にするのは重量だけでよくなるではありませんか!」


 エイナさん、怒っているようでいて目が半泣きだ。

 大公領で戦いの準備を進めていた頃から、すごく忙しそうにしていたもんなぁ……。


「なんか申し訳ありません、大変だったんですね……」


「……いえ、こちらこそ申し訳ありません。少し取り乱しました……」


 あのエイナさんが取り乱すくらいだから、よっぽど大変だったんだろう。

 ただ、エイナさんが考えているのは宅配便ではなく、コンテナ輸送に近いものだと思う。

 あれも規格化の一種だからね。


 エイナさんは咳払いをして気を取り直すと、改めて言葉を発した。


「洋一様がおっしゃる規格品の箱は大変有用な物であると考えます。商売として成功するかどうかは私にはわかりませんが、それは追ってリスティに相談してみるのがよろしいかと。私も用件があってこちらに呼び寄せていますから、そう遠くないうちに姿を見せるでしょう」


 おお、それはありがたい。やっぱり商売に関してはリステラさんの領分だよね。


「ところで洋一様。この規格という考え方を他の分野にも導入したく思うのですが、先におっしゃっておられた特許料なるものをいかほどお支払いすればよろしいでしょうか?」


「え、頂けるんですか?」


「当然ではありませんか。特許制度がどうこう以前に、私は洋一様の配下なのですよ。部下が主人の気分を害するような事をして良いはずがありません」


 ……エイナさん、本気で俺の配下になる気なんだね。


「ええと…………規格化によって得られた利益を計算して、その十分の一でどうでしょうか?」


「承知しました。導入次第、毎年納めるようにいたしましょう」


「よろしくお願いします」


 いくらになるのかわからないが、追加収入の目処めどが立った。

 圧倒的な大金が必要とされる計画を前にどれだけ足しになるかは不明だが、とにかくありがたい事には違いない。


 あとは、本命の商売がどれだけ上手くいくかである。

 俺は計画をあれこれ考えながら、リステラさんが来る日を待つのだった……。




 月が変わって4月2日。

 南部にあるここオーサルでは春もたけなわの過ごしやすい季節を迎え、旧サイダル王国全土が平定されたという朗報も聞こえてきた頃。俺は突然エイナさんから呼び出しを受けた。


 いつものごとく、妹とライナさんを伴ってエイナさんの執務室をたずねると、そこにいたのは乗馬服に身を固めたリステラさんだった。明るい茶色の髪が少しほこりでくすんでいるので、本当に今着いたばかりなのだろう。


「洋一様、お久しぶりです」


 リステラさんは俺を見るなり、片ひざを着いて頭を下げる。


「ちょ、やめてくださいよ!」


 絵になっていてすごくカッコイイけど、俺の精神衛生上はあまりよろしくない。


 リステラさんは俺の言葉を受けて立ち上がると、ニコリとまぶしい。それでいて少しイタズラっぽい、人好きのする笑顔を浮かべた。


 からかわれただけ……かな?

 俺がいまいち状況をつかみかねていると、エイナさんの声が聞こえてくる。


「私の用件は済みました。洋一様もリスティに話がおありなのでしょう?」


 よく見ると、リステラさんの手にはまくらにできそうなくらいの分厚い紙束がかかえられている。

 リステラさんはエイナさんが最も信頼を置く人の一人だし、とても有能な人でもあるので、色々頼まれているのだろう。俺もエルフさん達の事をお願いしているしね。


 忙しそうな所申し訳ないが、俺も用件を口にする。


「リステラさん、実は新しい商売をはじめようと思っています。よければアドバイスと、可能な範囲での協力をお願いしたいのですが……」


「新しい商売ですか! それはもちろん、雇い主からの命令とあればエイナからの厄介事よりも優先して対応いたしますよ!」


 リステラさんは両手を広げ、わざとらしくオーバーな身振りでそう言って、チラリとエイナさんに視線を向ける。


 そして、エイナさんが書類仕事をしながら少しだけ渋い表情を浮かべたのを目ざとく見たのだろう。楽しそうに表情を緩めて、改めて俺に向き直る。


「それで、どのような商売をお考えなのですか?」


「あ、うん……」


 エイナさんとリステラさんの関係って、ホントに親友と言うのがピッタリだよね。


 今や大陸の半分をべる国の限りなくトップに近いナンバー2になった人と、その国で最大の商会の当主だけど、二人を見ているとまるで仲の良い学生同士にさえ見える。


 すごくほほえましいが、いつまでもそれを眺めてまったりしている訳にはいかない。

 俺は気持ちを切り替えて、新しい商売と規格品の箱についてリステラさんに話すのだった……。




大陸暦424年4月2日

現時点での大陸統一進捗度 31.4%(パークレン鉱山所有・旧マーカム王国領大森林地帯・イドラ帝国をファロス王国に併合・サイダル王国をファロス王国に併合・ファロス王国に強い影響力)


解放されたエルフの総数 44万8377人 ※情報途絶中

内訳 鉱山に30万6251人(森に避難していた人達帰還) 大森林のエルフの村1112ヶ所に13万2318人 リステラ商会で保護中の沼エルフ9808人(内一人は鉱山に滞在して山エルフと情報交換中)


旧マーカム王国回復割合 95% ※情報途絶中


資産 所持金 605億4679万(-26万)


配下

リンネ(エルフの弓士)

ライナ(B級冒険者)

レナ(エルフの織物職人)

セレス(エルフの木工職人)

リステラ(雇われ商会長)

ルクレア(エルフの薬師)

ニナ(パークレン鉱山運営長)

エイナ(ファロス王国財務大臣)

誤字脱字報告を下さった方、ありがとうございます。修正しておきました。



ありがたい事にレビューを頂きました。

レビューには返信機能がなく直接お礼が申し上げられないようなので、こちらにて。


レビューありがとうございました。とてもうれしいです。

お褒めの言葉を励みに完結目指して書いていきますので、よろしければ物語の最後まで見守ってやって頂けますと幸いです。本当にありがとうございました。

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