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妹と異世界転移 ~引きこもりだった俺が妹を護るために大陸を統一するまで~  作者: おとしんくるす


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158 戦いが終わって

 イドラ帝国・サイダル王国との戦いが一段落した3月10日。俺はエイナさんに呼び出されて、妹とライナさんと一緒に元サイダル王国王宮内の一室に足を運んでいた。


 忙しそうに書類仕事をしていたエイナさんが手を止めて、他の人を外に出して、俺達四人だけになる。


「こうしてこの四人でゆっくり話しをするのも久しぶりですね……」


 エイナさんがどこかしみじみとした口調で言うが、ついさっきまで忙しく働いていて、今も机に書類が山積みのエイナさんは、本当にゆっくりできているのだろうか?

 そして俺は、この部屋の隅に積んである木箱の中身がなんであるかを知っている。結局使わずに済んだが、戦いにおける最後の切り札として用意されていた物。俺とエイナさんが共有する秘密の品物だ。


 十日熱の病原体というとんでもなく物騒な物なので、俺としてはこの部屋は落ち着かない事極まりなく、あまりゆっくりする気分になれないのが正直な所である。


 だがエイナさんはお茶を一口含むと、おだやかな雰囲気で話しはじめる


「とりあえずの現状を報告しておきますと、降伏を申し出てきたサイダル王国の都市は全体の三分の一ほど、今日までに連絡が取れている範囲では全てですね。今月中にはおそらく全ての都市がくだるでしょう。ファロス王国は昨年までこの大陸に存在した6つの国のうち半数を。面積にして6割ほどを手に入れた事になります。

 洋一様のご希望であったエルフ繁殖牧場の運営停止と可能な限りの保護も、指示を出しておきました。数の把握はあくはもう少しお待ちください」


「それはどうもありがとうございます。よろしくお願いしますね」


 大陸の6割か……あんまり実感ないけど、改めて言われると凄いよな。主にエイナさんが。

 そう思っていると、当の本人が口調を硬くして言葉を発する。


「ところで洋一様。今回の戦いにおける功一等の実績を持って、ファロス王国の次期国王に就任する気はございませんか?」


「ぶっ!」


 油断していたので、口をつけかけていたお茶を盛大に吹いてしまう。

 妹が慌ててハンカチで拭いてくれるが……またその話か。


「功一等って、今回の戦いで一番功績を挙げたのはエイナさんでしょう?」


 というかほぼ独壇場だったじゃないか。

 本職の軍人さん達が自信なくしてたぞ。


「私はそうは思いませんね。この勝利は洋一様が提供してくださった知識あってのものです。気球やグライダーがあれば私でなくても同じような事ができたでしょうが、洋一様の知識がなければ今回の勝利は得られておりません。今頃ファロス大公領で滅ぼされていたか、せいぜい辺境の小公国として存在を許されている程度だったでしょう。どちらの功績が上かなど、考えるまでもないと思いますが?」


「…………」


 そうだろうか?

 たしかに俺が提供した知識は役に立っていたけど、それも実用化と運用する人あっての事だし、それこそエイナさんじゃなければイドラ帝国とサイダル王国への逆侵攻なんて考えもしなかったと思う。


 あっという間に二国を攻め滅ぼしてしまった手際も含めて、どう考えてもエイナさんの功績だと思うんだけどなぁ……。


 だがエイナさんの考えは違うらしい。真剣な表情で、じっと俺を見ながら決断を迫ってくる。


「いかがでしょうか? もちろんお望みとあれば、私が内務大臣なり財務大臣なり、手足となってお助けいたしますよ。他の三国も滅ぼして大陸全てを手中に収めたいとお望みなら、全力でお手伝いいたします」


「いやいや、そんな野望は持ってないですよ」


 エイナさんは一体俺をなんだと思っているのだろうか?

 ていうか、手足になると言っても宰相じゃないんだね。まだあのトラウマ引きずってるのか、どんだけ根深いんだよ……。


 そう思いながら横に視線を動かし、トラウマを植え付けた当人を見ると、ライナさんは自分が関わる話ではないと認識してか、目をつむってじっとしていた。

 反対側の妹も似たようなもので、興味なさそうにお茶を堪能している。救援は得られそうにない。


「えっと……国王はエイナさんの方が適任なんじゃないですかね?」


「自分で言うのもなんですが、私は人望がないので王位には適しませんよ」


「…………」


 自然な感じでそういう事言うのやめて欲しい。一瞬『ああ、なるほど』って言いかけたじゃないか。

 エイナさんはリステラさんとかファロス王とか、気の合う人には好かれるけど、大半の人には恐れられるタイプだからなぁ……正直俺もちょっと怖いし。


「人望で言ったら俺もないと思うんですけど?」


「洋一様は今まで表に出てこなかったから知られていないだけでしょう。今回の戦いの功績と、あとは私を部下の大臣にしたあと大勢の前で叱りつけ、私が神妙にひざをつく光景でも演じて見せれば、大半の者は一目いちもく二目にもくも置くでしょう」


 なにそれ怖い。

 そりゃ一目置かれるだろうけど、そんなの演じきる自信ない。絶対表情引きるわ。

 うん、やっぱりどう考えても無理だよな。


「……申し訳ありませんが、これからも表に出ない方向でいたいので、やはり遠慮しておきます」


「そうですか……すでに手中にある大陸の半分を。さらに将来の大陸全てを交渉のテーブルに乗せてなお、洋一様の関心を引くには足りませんか……」


 あ、またなんか盛大に誤解されている気がする。俺は単に命を狙われるような危ない地位に就きたくないだけなのに。


「いや、俺は単に田舎いなかでのんびり暮らしたいだけですからね」


「なにか目的を果たした後で……ですよね?」


「ま、まぁそうですね。エルフさん達が安全に暮らせるようにできたらいいなーとは思っていますが」


「大陸の半分を支配する王座に就くのは、その目的の実現に大いに役立つと思うのですが?」


「…………」


 いかん、嘘はついていないのに、なんか俺が隠し事をしているみたいになってるぞ。


 エイナさんは俺に探るような視線を向けたあと、小さく息をついて言葉を発する。


「無理に探りを入れて洋一様の不興を買いたくはないので追求はしませんが、もしエルフを指揮して人間を滅ぼすような事をお考えなら、その時は私とお姉様だけでも助けて頂けると大変ありがたく思います」


「え? いやいや、そんな事考えてませんって!」


 ていうかエイナさん、そんな事疑ってたのか? そりゃ俺を王にして人間側に繋ぎ留めようとするわ。

 完全にあらぬ誤解だが、ここでただ必死に否定の言葉を重ねても疑いは晴れないだろうしなぁ……。


 困惑する俺に、エイナさんはじっと視線を向けながら問いかけてくる。


「……そのお言葉、信じてよろしいのでしょうか?」


「もちろんですよ。なんなら誓約書にして残しましょうか?」


「誓約書ですか……商人のリスティなら信用はとても重たい物だと言うでしょうが、残念ながら私は紙に書かれた約束事をそれほど強く信じる事ができません。歴史を紐解ひもとけば、それは時に書かれた紙と同じくらいに軽いものです」


 その言葉にライナさんがピクリと反応し、エイナさんがビクッとしたが、これはエイナさんが正しいだろう。

 俺も元の世界の歴史で、中立条約や不可侵条約がいともたやすく破られた実例を知っている。


「じゃあ、他になにか信用してもらえる方法ってありますかね? 王になる以外で」


「そうですね……では、私を洋一様の配下に加えてください」


「…………は?」


 あまりに突然の申し出に、俺の思考は一瞬停止するのだった……。



大陸暦424年3月10日

現時点での大陸統一進捗度 20.9%(パークレン鉱山所有・旧マーカム王国領大森林地帯・ファロス王国に密かな影響力・イドラ帝国をファロス王国に併合・サイダル王国をファロス王国に併合)


解放されたエルフの総数 44万8377人 ※情報途絶中

内訳 鉱山に30万6251人(森に避難していた人達帰還) 大森林のエルフの村1112ヶ所に13万2318人 リステラ商会で保護中の沼エルフ9808人(内一人は鉱山に滞在して山エルフと情報交換中)


旧マーカム王国回復割合 95% ※情報途絶中


資産 所持金 605億4709万


配下

リンネ(エルフの弓士)

ライナ(B級冒険者)

レナ(エルフの織物職人)

セレス(エルフの木工職人)

リステラ(雇われ商会長)

ルクレア(エルフの薬師)

ニナ(パークレン鉱山運営長)

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