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妹と異世界転移 ~引きこもりだった俺が妹を護るために大陸を統一するまで~  作者: おとしんくるす


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143 大陸最強の騎兵隊

 イドラ帝国軍の騎兵隊を迎え撃つ準備を始めて5日後の、10月12日。偵察も兼ねているおとり地点の気球から、前日王都を出た伝令とおぼしき馬が一日で帰還して来たと知らせてきた。


 それはつまり、連絡に行った相手。まず間違いなく騎兵隊が、馬で半日ほどの距離にまで近付いているという事だ。

 おそらく明日か明後日には攻撃があるだろうとの事で、全軍わな作りを終了して、迎撃の配置につく。


 果たせるかな、翌13日の朝。気球からは『王都から多数の歩兵部隊が出撃』『北西方向に巨大な砂煙』の報告が相次いで発せられた。

 砂煙は間違いなく、敵の騎兵隊だろう。


 どちらも囮地点に上がっている気球を目指して進軍しているらしいが、囮地点の罠は騎兵用のものだ。

 なので気球からはグライダー部隊が出撃し、歩兵部隊に攻撃を加える。



 気球からは間もなく『敵歩兵大きく混乱、前進停止』の報告が送られてきた。


 グライダー部隊による攻撃はサイダル王国軍との戦いでも効果絶大だったけど、今回は数も少ないし、グライダー自体は王都への攻撃で何度も見ているはずだ。

 ちょっと効果が大きすぎるのではないかといぶかしんでいると、俺の表情を察したのだろう。隣にいたエイナさんが解説をしてくれた。


「普通に考えれば、騎兵と歩兵が同時に迫ってきた場合に優先して攻撃するべきは、打撃力の高い騎兵の方であるはずです。敵の歩兵も当然そう考えているでしょう。『騎兵隊が敵の注意を引き付けている間に、我々が背後から攻撃する』なんて訓示した指揮官もいるかもしれませんね。なのに、攻撃が自分達の方に来た。直接的な損害以上に、『作戦計画が失敗して、反対側に騎兵隊はいないのではないか?』と疑念を抱き、強い不安と疑心暗鬼ぎしんあんきに駆られるでしょう。歩兵だけでは勝てない相手との認識があれば、その不安は足を止めさせるのに十分なものです」


 ……なるほど。相変わらずエイナさんは人の心理につけ込むのが上手いな。絶対敵に回したくないタイプだ。


 頼もしさと恐ろしさを感じつつ、じっと経過を見守っていると、囮地点の気球から『敵騎兵隊が縄の罠にかかって相当数が落馬』という報告が送られてくる。


 第一弾の罠は上手くいき、いくらかの戦力をけずれたようだが、それでも敵はひるむ事なく、倒れた仲間を乗り越えて突撃してきているらしい。

 さすがは大陸最強とうたわれているらしい、イドラ帝国の騎兵隊だ。


 ……だが、倒れた仲間を乗り越えて必死に突入しようとしている場所は罠の中であり、死地なのである。

 少し心が苦しくなるが、これが戦争というものなのだろう。こんな感傷も、こちらが有利で思い通りに事が運んでいるからこそ抱ける物なのだ……。


 間もなく、気球からは『敵騎兵囮地点に突入』という報告が発せられ、気球の下から黒い煙が上がりはじめる。


 真下に突入してきた敵騎兵に対して、気球から油壺を投下したのだろう。

 馬が混乱して叫ぶ声が、かなり離れているここまで聞こえてきた。


 地上と繋がれているロープを切ったらしく、囮地点の気球はゆっくりと上昇しながら、風下に流されていく。

 それと入れ替わるように、俺達の周りでは沢山の気球が次々と上昇をはじめ、俺達もその一つに乗り込んだ。


 上昇して視界が開けてくると、囮地点で槍の壁に囲まれた騎兵隊が、周囲から降り注ぐ矢の嵐に襲われている光景が目に入る。


 罠を突破し、倒れる仲間を乗り越えて突入した目的地にあったのは、気球に熱を送る時に使う土台だけ。

 目標を失って停止した所に、上から落ちてくる火のついた油壺。そして周囲から降り注ぐ矢、遠くに次々と姿を現す沢山の気球。


 自分達が罠にはめられた事はすぐに気付いただろう。だが空から降ってきた炎に馬が驚いて暴れ、周囲には馬の行動を阻害する地面から生えた槍。


 そして木組みにくくりつけて移動性を増した槍の壁が運ばれ、敵騎兵が突入してきた西側も塞いでいく。

 矢の雨と、炎に脅えて暴れる馬とで大混乱に陥っている騎兵が、逃げ場のない罠の中で次々と倒れていく。


 中にはなんとか馬を落ち着かせ、反撃に出ようとする兵士もいたが、槍に馬の動きをさまたげられ、弓騎兵が撃ち返す矢も、窪地くぼちゆえの高低差でなかなかこちらの兵士には届かないし、弓騎兵が携行している矢は本数も限られる。


 一方こちらはサイダル王国軍から鹵獲ろかくした矢が大量にあるので、ほぼ無尽蔵に撃ち込めるのだ。

 そしてさらに、本陣から上昇した気球からグライダー部隊が発進し、追加の油壺を次々と投下していく。


 状況はもう戦いと呼べるようなものではなく、一方的な殺戮に近い。だがさすがに大陸最強を謳われた部隊だけあって士気が高いのか、降伏しようとする兵士はほとんどいないようだった。


 だけど、残念ながら大勢はすでに決してしまっていると思う。


 もしあそこに歩兵部隊もいたら状況は変わっていたかもしれないが、敵歩兵は囮地点から上がる煙を見てようやく行動を再開した所で、まだまだ遠い。


「……愚策ぐさくですね、今から動いても救援は間に合いません。王城に引き返して守りを固めれば、まだしも戦いようがあったでしょうに……」


 エイナさんが戦場を見下ろしながら、冷たい声でポツリと言う。


 そしてその言葉通り、囮地点に向かう歩兵部隊は空からグライダー部隊の攻撃を受け、対騎兵戦に加わらなかったこちらの騎兵隊の突撃を受けて混乱に陥り、次々に降伏していく。


 頑強に抵抗していた騎兵隊も、歩兵の援護がない事を悟ったのか次第に戦意を失い、降伏する兵士が出はじめていた。


 敵歩兵の司令官と一部の兵は王都へ逃げ帰ったようだが、警備に残した兵士を合わせても、とても篭城戦をやれる数ではないだろう。



 太陽が西に傾く頃には、たった一日の戦いで大陸最強を謳われたイドラ帝国騎兵隊は無残な敗残兵と化し。サイダル王国軍に続いて、イドラ帝国軍も壊滅した。

 しかも、ほとんど味方の損害を出す事なくだ。


 負傷者の治療に薬師さんから貰った薬の残り半分を提供したが、それで味方の治療全てをまかなえて、敵の捕虜にも使えるほどだった。

 薬師さんの薬は効果が高いので、これで命が助かる人が一人でも増えてくれたらいいなと思う。



 辺りが薄闇に包まれる頃には戦闘は完全に終了し、俺の周りでは勝利を喜ぶ大公軍兵士達の歓声がとどろいている。

 戦いは予想よりもずっと早く、はるかに順調に勝利にたどり着く事ができた。


 今日が10月の13日なので、年末まではまだ二ヵ月半ほどある。

 それだけあれば、旧王国領を回復して鉱山に食料を届ける事もできるだろう。


 俺は勝利の高揚感以上に、安堵と喜びの感情に満たされていた……。




大陸暦423年10月13日

現時点での大陸統一進捗度 2.2%(パークレン鉱山所有・エルフ31万2127人→25万人を森に避難中)(パークレン子爵領・エルフの村967ヶ所・住民13万2318人)

※鉱山とパークレン子爵領(大森林)の状況は不明なので、当面更新なし


旧マーカム王国回復割合 48%(南西部・ファロス大公領とその周辺貴族領+サイダル王国軍撃破+南部を中心に解放地域拡大中+イドラ帝国軍撃破)


資産 所持金 605億4841万


配下

リンネ(エルフの弓士)

ライナ(B級冒険者)

レナ(エルフの織物職人)

セレス(エルフの木工職人)

リステラ(雇われ商会長)

ルクレア(エルフの薬師)

ニナ(パークレン鉱山運営長)

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