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妹と異世界転移 ~引きこもりだった俺が妹を護るために大陸を統一するまで~  作者: おとしんくるす


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139 もう一つの問題

 俺達は今、敗走するサイダル王国軍分遣隊を追って王都へ続く街道を猛進している。


 サイダル王国の兵士達は一様いちように北を。本隊がいる方向を目指して逃げていくが、こちらは地上軍が無傷である上リステラ商会提供の高性能馬車もあるので、追撃の速度はかなり速い。


 徒歩で逃げる兵士達は疲れ果て、俺達に追いつかれて次々と捕虜になっていく。

 王都まで半分の距離を進んだ時点で8000人が捕らえられ、最終的には1万人以上が捕虜になると見込まれているそうだ。


 捕虜は武装解除の上、志願兵を監視につけて順次後方に移送している。

 志願兵達には他に、敵兵が捨てていった武器や装備の回収にも当たってもらっている。

 鉄は貴重品だし、戦争中なので武器はいくらあっても困る事はない。


 捕虜と各種物資の輸送はリステラさんが指揮をしているが、さすが40万人以上のエルフの大移送を取り仕切った人だけあって、大公領の行政官達が舌を巻くほどの手腕を発揮しているそうだ。

 補給が円滑で助かると、大公も大絶賛だった。


 そしてリステラさんにはもう一つ、俺が個人的なお願いをしている。


 それはサイダル王国軍で使われていた奴隷。兵数には含まれていないエルフさん達を保護し、かくまってもらう事だ。


 俺はまだ数人と会っただけだが、サイダル王国で使われているエルフの奴隷はリンネ達とは違い、肌が褐色で水色の髪をしている。

 身長はリンネ達と同じか、少し小さいくらい。160センチ台半ばくらいが平均だろうか?

 イメージ的には、元の世界でイラストにされていたダークエルフに近い。


 本来は大陸南部に広がる大湿地帯に住んでいる種族で、沼エルフというらしい。

 サイダル王国を含む南部地域では、もっぱらこの沼エルフが奴隷として使われているのだそうだ。


 そして、見た目は違っていても扱いは基本的に変わらない。

 首輪をつけられ、まともな食事も与えられずに酷使されているのだ。


 鑑定してみたらほとんどが数十歳以下だったので、牧場で養殖されているのも変わらないらしい。

 苦労の末マーカム王国では廃止に追い込んだエルフの奴隷制度だが、大陸中ではまだまだ当たり前に行われているのだ。


 俺がリンネと約束したのは、全てのエルフの解放である。当然その中には、この沼エルフさん達も含まれる。


 予想できた事態ではあるので事前にある程度の準備はしてあるが、戦争と同時進行になるのでどうしてもかけられる手間は限られてくるし、食料の調達も難しい。


 一般に、奴隷は兵士10人に1人くらいの割合で連れられているそうなので、分遣隊2万には2000人。本隊も合わせたサイダル王国軍全体で1万人ほど。イドラ帝国軍も含めれば2万人ほどが予想される。


 40万人以上に対応した事を思えば少なく感じるが、最初に鉱山を買った時の4倍であり、大公軍の本隊にも匹敵する数だ。

 食料も、住む場所も、首輪のネジ巻きなどの管理も、一筋縄ではいかないだろう。


 とりあえずはリステラさんに資金10億アストルと、薬師さんにもらった薬の半分を渡して対応をお願いしているが、どんな感じだろうか?

 大公とエイナさんの所に報告に来ていたリステラさんに時間をとってもらい、話を聞かせてもらう。


「リステラさん、忙しい所申し訳ありません」


「いえいえ、私は洋一様の雇われ商会長ですよ。今は大公閣下とエイナの仕事を手伝っていますが、本来一番優先すべきは洋一様の御指示ですから」


 そう言って、人好きのしそうな柔らかい笑顔を向けてくるリステラさん。

 ……この人も、エイナさんの次くらいに感情が読めない人だよな。


 今まで何度もお世話になったし、あのエイナさんの親友をやっているくらいだから優秀なのは間違いないが、どこか掴み所のない人でもある。

 頼りにしているし、信頼もしているけどね。


「ええと、保護をお願いしているエルフさん達の様子はどうですか?」


「現在1988人を保護しております。推定数的に、ほぼ全員に近いでしょう。商会からエルフに対して偏見の少ない物を選りすぐって対応させており、今の所大きな問題は起こっておりません」


 リステラさんがエルフさん達への対応について、『偏見』という言葉を使ってくれたのがうれしい。この世界一般のエルフに対する認識が誤った物だと認めてくれているという事だからだ。


「それはなによりです。食料などの確保はどうですか?」


「現状、失われる事を覚悟していたサイダル王国軍分遣隊の備蓄食料がほぼ丸ごと捕獲できましたので、若干の余裕があります。さすがに沼エルフ達が好む魚や、水生や半水生の植物の実などは用意できませんが、飢えさせる事はないでしょう。ただ、これから先数が増えて、期間も長引くとなると保証はできかねます」


「なるほど……資金が追加で必要であれば言ってください。それだけで解決できる問題でもないでしょうが……」


「商人からすると予算の制約がないというのはこの上もなく素晴らしい事ですが、おっしゃる通り金銭だけでは解決できない問題も起こりかねません。実際、なるべく人気の少ない場所を選んで収容施設を作ろうとしたのですが、黒いエルフだと言って周辺の住民が気味悪がり、襲撃を受けました。幸い人的被害は出ませんでしたが、収容場所の確保は諦めて、邪魔にならないよう進軍に同行させざるをえない状況です」


「それは……なんともご苦労をおかけします」


「いえ、これも仕事の内ですから。ですが将来的には、どこかに彼女達を住まわせるまとまった土地が必要になるでしょう。エイナにも話しておきましたが、洋一様も御検討ください」


「はい……」


 住む場所か……。

 本来の居場所である大湿原に戻る事ができれば一番いいのだろうが、大湿原はサイダル王国でも東部に位置するそうで、現状アプローチする手段が全くない。

 それに森エルフでも発生したように、牧場出身エルフさん達の生活力も問題になる。


 考えてはみるが、簡単に解決策が見つかりそうにもない問題だ。状況が落ち着いたらエイナさんとも相談してみよう。


「他になにかご質問は?」


「いえ、ありがとうございましたリステラさん。これからもよろしくお願いします」


「こちらこそです。なにかありましたら、すぐにお知らせいたしますね」


 挨拶を交わしてリステラさんを見送り、リステラさんは戦線の後方へ、俺は前線へと行動を再開する。


 大公軍の主力は10月の1日。王都南方に陣取るサイダル王国軍主力と対峙する位置に、布陣を完了した。


 奇しくも翌2日は、サイダル王国軍が国境を破って侵攻を開始した6月22日から、ちょうど100日目に当たる日だ。


 大公軍とサイダル王国軍とが雌雄を決する事になるであろう運命の日が、ゆっくりと夜明けを迎えようとしている……。




大陸暦423年10月1日

現時点での大陸統一進捗度 2.2%(パークレン鉱山所有・エルフ31万2127人→25万人を森に避難中)(パークレン子爵領・エルフの村967ヶ所・住民13万2318人)

※鉱山とパークレン子爵領(大森林)の状況は不明なので、当面更新なし


旧マーカム王国回復割合 15%(南西部・ファロス大公領とその周辺貴族領+サイダル王国分遣隊撃破+王都南方まで進撃)


資産 所持金 605億4841万(-10億)


配下

リンネ(エルフの弓士)

ライナ(B級冒険者)

レナ(エルフの織物職人)

セレス(エルフの木工職人)

リステラ(雇われ商会長)

ルクレア(エルフの薬師)

ニナ(パークレン鉱山運営長)

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