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妹と異世界転移 ~引きこもりだった俺が妹を護るために大陸を統一するまで~  作者: おとしんくるす


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128 子供の遊び

 ただ一人、俺達を追ってくる小隊長。

 帝国兵達の武装は二種類あって、弓と剣か、槍単品か。この小隊長は弓と剣タイプだ。


 弓は最初に防がれたので、距離を詰めて剣で俺達を襲う気なのだろう。

 互いの距離はジリジリと縮まっていく。もう、長槍なら届いてしまうような距離だ。


 ライナさんも剣を持っているが、体勢的に後ろから襲う方が有利だろう。真っ先に斬られるのは馬か、それとも俺か。

 どちらにしても大変よろしくない。


 俺が弓でも使えれば迎撃できるのだが、あいにくその手の心得はないし、そもそも弓矢がない。


 とりあえず財布の中身をありったけ、今度は直撃狙いで投げてみるが、揺れる馬上からなので全然コントロールが効かないし、そもそも当たっても大してダメージがない。


 他になにかないかとポケットを探ってみるが、出てきたのはメモに使う紙とペンだけ。

 ペンをダーツみたいに投げてみた所で当たらないだろうし、紙ではなぁ…………ん? 紙か……。


 少し考えて思いついた考えをダメ元で試すべく、紙を二つに折り、それを中心線として三角に折っていく。

 レナさん特製の紙は適度な硬さがあって折りやすく、あっという間に飛行機の形になった。子供が遊ぶ、折り紙の紙ヒコーキだ。


 この世界では紙が高級品なので折り紙なんて遊びはないし、飛行機も存在しない。

 こんな物でも、全く未知の物体のはずだ。


 俺はめいいっぱい声を張り上げ、小隊長を威嚇いかくする。


「そこの帝国兵! 我はマーカム王国が最高魔術師、ヨージである! 貴様などにはもったいないが、特別に我が魔術を披露してやろう!」


 言ってて最高に恥ずかしいし、名前も洋一を洋二に変えただけの超適当だ。

 妹にも聞こえていると思うといたたまれないが、この際わがまま言っていられない。

 まだ見た事はないけれど、この世界には魔法が存在しているらしい。小隊長の顔に緊張が走る。


「触れた者に死を運ぶ白き妖精よ! 我が声に応えよ!」


 そう叫んで、紙ヒコーキをヒュッと投げる。


 放物線を描く通常の投擲とうてきと違い、フワリと浮いた見慣れない動きで飛んでくる見慣れない物体。

 人間初めて見る物は警戒するのが当然だし、俺のでまかせ効果もあったのだろう。小隊長は慌てて馬の手綱を引き、紙ヒコーキを避けようと全力で体をひねった結果、道の脇に落馬してしまった。


 ……正直成功するとは思っていなかったのだが、予想外の効果があったようだ。

 やってみるもんだね。


 小隊長の姿はどんどん彼方に去っていき、その後ろから追ってくる砂煙もかなり遠くだ。

 これでかなりの時間が稼げたと思う。


 車やバイクと違って馬は生き物なので、定期的に休みをとらせて水を飲ませないといけない。

 そして、見た所帝国兵達は予備の馬を連れていなかった。


 俺達も予備の馬を失ってしまったが、馬の疲労度で言えば武装した兵士を乗せている向こうの方が大きいと思う。


 彼方に見えていた砂煙が小さくなり、帝国兵達が休憩をとったのを確認して、俺達も馬を休ませるために、小川を見つけて停止する。


 乗馬はかなり体力を使うので、馬以外に人間の休憩も兼ねているはずなのだが、ライナさんは自分は休もうとはせずに水を飲んでいる馬に声をかけ、草を束ねた簡易ブラシで馬の足をこすって、マッサージをしてやっている。


 俺も手伝うべきなのだろうが、体中が痛いので草の上に転がっている事しかできない。

 妹もさすがに辛いのか、俺の隣に来て寄り添うように横になると、すぐに寝息を立てはじめた。


 小隊長相手にやった恥ずかしい小芝居を冷やかされないのはありがたいが、逆に言えばそんな余裕もないという事だ。


 手伝えなくて申し訳ありません……という視線をライナさんに送っていると、それに気付いたのかふと顔を上げ、ニコリと柔らかく微笑んでくれた。

 この状況で、なんとも肝の据わった人である。


 ライナさんの笑顔に強い安心感を与えてもらい、30分ほど休んだあと俺達も水を飲み、再び馬上の人になる。


 妹に大丈夫かと声をかけたが、『大丈夫だよ、ありがとうお兄ちゃん』と力強い返事が帰ってきた。この妹も、大概たくましいよな……。


 一本道で敵は後ろからしか来ないとわかっているので、警戒は楽だし妹の危険察知もあるが、追われる身なのでどうしても気がいてしまう。


 砂煙を警戒して時々後ろを振り返り。畑で仕事をしている人を見た時や途中の村では『イドラ帝国軍が攻めてくるぞ!』と叫んで急を知らせつつ、ひたすらに王都を目指す。


 警告がどれだけ効果があるかわからないが、これはもう俺の気休めみたいなものだ。

 もし信じてもらえれば、数十分の間にできる事もあるだろう。



 帝国軍との距離が取れた事でライナさんはわずかに緊張を解いたのか、馬を走らせながら話しかけてきた。


「洋一様、先程はどうやって敵兵を落馬させたのですか? 魔術と言っておられましたが……」


「あ、ああ……あれね……」


 やはり突っ込まれる運命のようだ。


「あれは魔術でもなんでもなくて、俺の生まれた村にあった子供のおもちゃ……というか遊びです。こっちだと見かけなかったので、脅しに使えるかと思いまして。魔術と言うのはでっち上げです」


「そうなのですか。珍しい物なら、今度エイナに教えてやってください。あの子は珍しい物が大好きですから」


「はい、無事に合流できたらそのうちに」


 エイナさん、紙ヒコーキに興味を示すだろうか?

 熱気球と違って、飛行機はこの世界では到底再現できなさそうだけど……グライダーとかの参考にはなるだろうか?


 まぁいずれにしろ、今直面している危機を無事に乗り越えた後の事だ。

 辺りは徐々に暗くなってきたが、夜も速度を落として走り続ける。


 予備の馬がいれば、空荷で体力を消耗していない馬と交互に乗り換えるのだが、薬師さんにもらった薬と一緒にどこかへ行ってしまった。なので、休憩を多めにとって馬の様子を見ながら進む。


 そうして翌日の日没前、俺達は無事に王都の街壁が見える場所まで戻ってきた。


 さすがはライナさんが選んだ馬だけあって、二頭とも過酷な行程を実によく耐えてくれた。

 自分は休憩もとらずに、馬の世話をし続けてくれたライナさんのおかげでもある。

 妹もよくがんばった。俺は……一応ちょっとは働いたので大目に見てほしい。



 とにかく、決死の連絡行は成功したのだ。


 後はエイナさん達と合流して、一日も早く敵軍を追い払うべく全力を尽くすだけである……。




大陸暦423年7月9日

現時点での大陸統一進捗度 2.2%(パークレン鉱山所有・エルフ31万2127人→25万人を森に避難中)(パークレン子爵領・エルフの村967ヶ所・住民13万2318人)

資産 所持金 615億5258万

配下

リンネ(エルフの弓士)

ライナ(B級冒険者)

レナ(エルフの織物職人)

セレス(エルフの木工職人)

リステラ(雇われ商会長)

ルクレア(エルフの薬師)

ニナ(パークレン鉱山運営長)

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