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妹と異世界転移 ~引きこもりだった俺が妹を護るために大陸を統一するまで~  作者: おとしんくるす


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122 エイナさんの心

 俺はライナさんがエイナさんを平手打ちにするという、衝撃の現場を見てしまった。


 床に倒れたエイナさんは、叩かれたほほを押さえて呆然と姉を見上げている。

 一方のライナさんはエイナさんを打った右手を固く握り締め、目からポロポロと涙を流していた。


「エイナ……貴女はこれだけ言っても、まだ全てを話そうとはしませんか……。他の事はともかく、大恩ある洋一様をあざむき、大切な仲間を失わせる危険を放置し、口先の甘言かんげんろうしておのが正当化を図ろうとは……私は貴女の事を託されたお母様に会わせる顔がありません……」


 ライナさんはそれだけ言うと、おもむろに短剣を引き抜いて首元へ持っていく――


「お姉様!」「ちょ、ライナさん!」


 エイナさんの悲鳴と俺の声が同時に響くが、動いたのは俺だけだった。


 短剣を持つライナさんの腕に飛びつき、首元から離す。

 妹がすぐに加勢してくれ、ライナさんを押し倒して手を押さえ込む。


「ライナさん、なにするんですか!」


「洋一様……私は母に詫びねばなりません。息を引き取る直前、最後の言葉としてエイナの事を頼まれたのに、私は妹の育て方を間違えました。この上は死んで詫びるよりありません。従者の任を全うできなかった事、どうかお許しください……」


 そう言って、ライナさんは短剣を持つ手に力を込める。

 俺が両手で押さえているのに、その手は強い力でゆっくりと持ち上がっていく。強く振り払わないのは、俺を傷つけないようにとの配慮だろう。冷静さを失っている訳ではない……


「――――パァン!」


 一か八か、俺はライナさんのほほを思いっきり平手で叩いた。

 瞬間、背後のエイナさんから背筋がゾクリとするほどの殺気を感じたが、それに耐えてありったけの声を張り上げる。


「落ち着いてくださいライナさん! 今ここで貴女が死んで、誰が幸せになるっていうんですか! そんな事を母親が望んでいると、本気で思っているんですか!? 妹の育て方を間違えたのなら、もう一度正しい方向に導いてあげるのが姉の役目でしょう! 死んでしまうのは責任の放棄で、エイナさんを見捨てるって事です。それこそ母親との約束をたがえる行為じゃないですか!」


 元引きこもりで、わりと人生を誤った事のあるお前が言うなよ案件だが、俺が立ち直るのに妹の存在が必要だったように、エイナさんにもライナさんが必要なはずだ。


 ライナさんは普段と違う俺の剣幕けんまくに驚いたのか、しばらく目を見開いて硬直していたが、やがて目をつむって深く考え込む。

 ……そしてしばらくの後、ライナさんは腕の力を抜くと同時に短剣を握る手を緩め、俺は短剣を手から抜き取った。


 短剣を離したライナさんが体を起こそうとしたので、俺と妹が押さえていた手を離すと、起き上がったライナさんはひざをついて深々と頭を下げる。


「洋一様、私は過ちに過ちを重ねる所でした……。わが身の未熟を恥じ入るばかりです……」


 ライナさんはそう言うと頭を上げ、床にへたり込んだままのエイナさんに視線を向ける。


「エイナ。私は貴女の母親代わりとして、もう一度貴女を育てなおします。この命に代えてもです」


 ライナさんの強い意志が込められた言葉に、エイナさんは弾かれたように床にひざまずく。


「はい! 必ず、必ずやお姉様の理想に恥じない人間になってごらんにいれます。どうかよろしくご教示ください!」


 ……エイナさん相手に先生ができるのなんて薬師さんくらいだと思っていたけど、意外な所にいたものだ。

 もっともこっちは、知識を教える先生じゃないけどね。


 ライナさんはエイナさんを優しく抱きしめてやり、エイナさんはお姉ちゃんの腕の中でわんわん泣いている。とても、一国を滅ぼす謀略を巡らせていた人とは思えない。


 智謀に優れたエイナさんと、仁徳じんとくの厚いライナさん。この姉妹は、なんだかんだで最高の組み合わせだと思う。

 ライナさんがいなかった場合のエイナさんって、想像すると怖いよな……。


 それにしても、俺は今日産まれて初めて人を殴ったし、その時エイナさんから向けられた殺気も人生最強だった。

 事情があったとはいえ、最愛のお姉ちゃんに手を上げる人間を見て、思わず我を失いかけたのだろう。


 限界まで弱っているタイミングだったからよかったけど、そうじゃなかったら俺どうなってたんだろうな?

 今度からはもっと考えて行動するようにしよう……。



 まぁなにはともあれ、これで全て丸く収まっ…………てないよな?


「洋一様……」


 エイナさんが、床に正座した姿勢で俺を呼ぶ。


 エイナさんが『隣国の侵攻』『この国を滅ぼす計画』という超重大事よりも深く隠そうとしていた事。


 ライナさんがその存在を感じ取り、妹を叩くほどに怒ったエイナさんの秘密。


 それを聞かないといけないのだ……。




大陸暦423年7月6日

現時点での大陸統一進捗度 2.2%(パークレン鉱山所有・エルフ31万2127人)(パークレン子爵領・エルフの村967ヶ所・住民13万2318人)

資産 所持金 1128億6768万

配下

リンネ(エルフの弓士)

ライナ(B級冒険者)

レナ(エルフの織物職人)

セレス(エルフの木工職人)

リステラ(雇われ商会長)

ルクレア(エルフの薬師)

ニナ(パークレン鉱山運営長)

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