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妹と異世界転移 ~引きこもりだった俺が妹を護るために大陸を統一するまで~  作者: おとしんくるす


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119 不審(ふしん)

 エイナさんが提案した、ファロス大公領への避難。

 それは俺に違和感を覚えさせた。


「大公領へですか? 鉱山とかの方が安全じゃないですかね?」


 たしかに大公領にはつてがあるが、南東から迫ってくる敵に対して南西に避難するというのは、なんか微妙な気がする。

 それなら北東にある鉱山の方がいいんじゃないだろうか?

 マーカム王国は東西より南北に長いので、距離的にはかなり離れている。


 だが、エイナさんは主張を変えなかった


「私としては、より安全なのは大公領だと考えております。鉱山は距離的には戦場から遠いですが、防衛する兵力がありません」


 それはたしかにそうだ。エルフさんには弓の名手が多いけど、戦い向きの性格ではない。


「じゃあ、北西部のネグロステ伯爵領はどうでしょう? あそこなら軍隊も強そうですし、敵と正反対側です」


「それはたしかに候補の一つでしょうが、伯爵は兵を率いて南東部での迎撃戦に向かいます。私が懸念しているのはそれに負けた場合の事ですので、兵力的には不安が残ります。あの家の家風的に、迎撃戦に負けて王都が陥落してこの国が滅びても、自領を守るために最後まで戦うでしょう。そうなったらある意味一番危険な場所になります」


「そうなったらそうなってから考えて、たとえば大森林にでも逃げればいいですし、王都が陥落して国が滅びる状況を想定するなら、北東部の鉱山周辺は一番戦いにならなさそうな安全地帯じゃないですか?」


「それはそうかもしれませんが、国が滅びる事態になったら大きな混乱が起こるでしょう。その事態を想定し、香織様の身の安全を第一にとお考えになるのなら、私としては今のうちにファロス大公領への避難をぜひともお勧めいたします」


 ……なんか今日のエイナさんは妙な感じがする。

 たしかにファロス大公領への避難は有効かもしれないが、そんなに強く推してくるほど絶対的な選択肢だとは思えない。

 そもそも、俺なんかに何回もツッコミを入れられている時点でエイナさんらしくない。

 いつもはぐうの音も出ないほどの正論を言う人なのに。


 それに、普段は情報やアドバイスはくれても、判断を強く押してくる人ではないのだ。


 ……国が滅亡するかもしれない危機に直面して動揺している? いや、俺の知っているエイナさんはそんな性質タチではない。最近少し元気がなさそうだったのと関係しているのか?

 エイナさんが俺に悟られるレベルで元気をなくす理由……どう考えても一つしか思い浮かばない。お姉ちゃん、すなわちライナさん絡みである。


 俺と妹が大公領に避難するという事は、当然護衛であるライナさんも同行するという事だ。エイナさんはなにかそれを強く推したくなる、サイダル王国軍とは別の危険が迫っているのを知っているのだろうか?

 そしてそれは、俺には言えない話なのだろうか?


 ……一つ釣り針を落としてみよう。


「わかりました、俺と香織はファロス大公領へ避難します。ライナさん、申し訳ありませんがその旨鉱山のエルフさん達に伝えてください。そしてしばらく鉱山に留まって、リンネ達ともしもの場合の対応を話してみてください」


「はい、承知しまし『あ、あの!』


 ライナさんの返事が終わらないうちに、エイナさんがめったに出さない動揺した声で割って入ってくる。爆釣ばくちょうの予感!


「あの……避難は道中を含めて危険が予想される事ですし、護衛役のお姉様は同行なさった方がよいかと……。鉱山へは私の方から連絡しておきますから……」


 エイナさん、あからさまに目が泳いでいる。

 こんなエイナさんを見られるのはすごくレアだろう。


 そして、明らかになにかを隠しているのが発覚した。エイナさん相手にえさがライナさんとか、約束された釣果ちょうかだったよな。


「エイナさん、なにか隠していますよね? 俺には言えない事でしょうか?」


「――――っ」


 エイナさんは顔色をなくして黙り込んでしまう。


 これもまたすごく珍しい光景だが、なんかものすごく罪悪感があるな。

 なにか俺には話せない事情があるのかもしれないし、最低限だけ訊いてあとはエイナさんの言う通りにするか……。


 俺がそんな事を考えてどこが落とし所かを考えていた時、突然背後からライナさんの厳しい声が飛ぶ。


「エイナ、なにを隠しているのです? 普段であればあなたのする事には口を挟みませんが、あるじの安全に関わる事となれば話は別です。それとも、私にも話せない事ですか?」


「……あ……お、お姉様…………」


 いつもは優しいライナさんから発せられる、厳しい声。

 それを向けられたエイナさんはビクリと肩を縮こまらせ、子犬のように脅えている。

 涙目で恐怖に震えるエイナさんなんて、とんでもなくレアな光景だ。



 エイナさんはしばらく躊躇ちゅうちょした後、恐る恐るという感じでゆっくりと口を開くのだった……。




大陸暦423年7月6日

現時点での大陸統一進捗度 2.2%(パークレン鉱山所有・エルフ31万2127人)(パークレン子爵領・エルフの村967ヶ所・住民13万2318人)

資産 所持金 1128億6768万

配下

リンネ(エルフの弓士)

ライナ(B級冒険者)

レナ(エルフの織物職人)

セレス(エルフの木工職人)

リステラ(雇われ商会長)

ルクレア(エルフの薬師)

ニナ(パークレン鉱山運営長)

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