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妹と異世界転移 ~引きこもりだった俺が妹を護るために大陸を統一するまで~  作者: おとしんくるす


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111 ドラゴンの秘薬

 リンネを担架に乗せて鉱山へ運ぶ強行軍を、エルフさん達は実にがんばってくれた。


 足場の悪い中、二人一組で交代してリンネを乗せた担架を持ち、なるべく揺らさないよう慎重に、それでいて急いで走ってくれる。


 途中何度も妹の警告を受けて進路を変え、夜中でも警告があれば飛び起き、リンネを担いで逃げる。

 戦力がないので、とにかく逃げの一手なのだ。先を急ぐ意味でも、体力の限り走り続ける。


 道中の俺の役割は、コロコロ進路を変えても目指す方角を見失わないようにする事と、一日一回リンネに傷薬をふりかけ、ほんの少しを飲ませる事。


 出発前の薬師さん講座で『重度の全身火傷、もしくは頭部の火傷の場合は、水を飲ませてはいけない』と言われているので与える水分は最小限にし、少しでも延命を図る。


 方角については幸いここは南斜面で、以前リンネに教わった『木の根元を見て、湿ってコケが生えている方が北』の原則がそのまま通用する。


 エイナさんからもらった地図と、出発前にリンネが書き込んでくれた目標地点。往路で見た目標物を思い出しつつ鉱山へ鉱山へと急ぐが、周囲は高い木に囲まれていて見通しが悪いので、どれだけ正しいルートを辿たどれているかは正直自信がなかった。


 それだけに、森の中で不意にエルフの一団と出会い、それが鉱山からフランの花を採取に行く途中の新入りエルフさんだと分かった時には、緊張の糸が切れて思わずその場に崩れ落ちそうになった。


 森で出会ったエルフさんを案内に立て、最後の力を振り絞って走り、鉱山に到着したのは11月15日だった。

 行きは28日かかった距離を、半分以下の12日で走破した事になる。


 とはいえ、リンネが瀕死の重傷を負って十日以上。

 ここ数日は呼吸もごく弱く、毎朝まだ息がある事を確認しては安堵する日々だった。

 とにかく急いで、リンネを薬師さんの元へ運んでもらう。


 リンネの体は重度の火傷やけどで皮膚がただれ、とても直視できない酷い状態になっている。

 薬師さんはそれを見て一瞬眉をしかめたが、すぐに処置室に運び、応急処置をしてくれた。


 俺は疲労で意識を失う直前、薬師さんに『これを……』と言ってドラゴンの心臓から採取した珠を渡し、いつもは細く鋭い眼鏡の奥の薬師さんの目が大きく見開かれたのを見た所で、記憶が途切れてしまった……。




 俺が目覚めた時、かたわらにはなぜか、顔を赤く染めた妹がいた。

 ……俺、寝てる間に変な事されてたりしないよね?


 不安になって体を確認してみるが、一応ちゃんと服は着ている。

 ただ、大森林を十日以上駆けたにしてはきれいな服だし、汗と土埃にまみれていたはずの体もなぜかキレイになっている。


 ……あまり深くは考えない事にしよう。


「香織、今日何日?」


「11月の18日だよ。お兄ちゃん三日も眠り続けてて、ホントに心配したんだから……」


 そう言って目を潤ませる妹に、申し訳ないと思いつつも、口を突いて出たのは別の事だった。


「リンネは? リンネはどうなった!?」


「大丈夫だよ。まだ意識は戻ってないみたいだけど、ルクレアリアさんの話によるとドラゴンの秘薬のおかげで一命を取り留めたって」


 その言葉に、全身から力が抜けていくのを感じるのと同時に、安堵の息を吐く。


「そうか、よかった……」


「うん。もしドラゴンの秘薬がなかったら危なかったって。一晩材料の採取を待ったの、さすがお兄ちゃんだよね」


 この妹は隙あらば俺を持ち上げてくれるが、今回ばかりは俺の判断が吉と出たようだ。


 俺は起き上がって、リンネの元へと向かう。

 ドラゴンの肉を食べたおかげか、三日間眠っていたわりには全く空腹を感じなかった。



 病室で診察中の薬師さんを捕まえ、リンネの居場所を訊くと、自ら別室へ案内してくれた。


 ……そこにいたのは、全身に包帯を巻かれてミイラのようになったリンネ。

 だが移送中より力強く、はっきりと呼吸をしている。


「ドラゴンの秘薬が効いた。意識を取り戻すのはまだ先になるだろうが、命の心配はない」


 薬師さんの言葉は熱砂に撒かれた冷水のように心地よく、俺の体に染み渡る。


「そうですか……よかった……」


「おまえが秘薬の材料を持ち帰ってくれたおかげだ。それに、毎日傷薬をかけて少量の水分を摂らせる対応も良かった。

 秘薬がなければ、あと十日生きられた確率は四割、一ヵ月後には一割以下だっただろう。毎日傷薬をかけていなければここに辿たどりつく前に死んでいただろうし、リンネの命が助かったのはおまえのおかげだ、ありがとう……」


「いえ、そんな……」


 薬師さん特製の傷薬を何度かけても回復しなかったので心配していたが、やはりかなり危ない状態だったらしい。


 薬師さんに褒められると、なんだかむず痒いような落ち着かないような、妙な気持ちになる。だが、対応をめられて悪い気もしない。


 ひとしきり感慨にふけった後、俺は大事な仕事に戻る。

 ドラゴンの肉と素材回収隊として、森出身のエルフさん二人に、道案内をかねてリンネを運んでくれたエルフさん。牧場出身エルフさん300人を一隊とした隊を四つ編成し、大山脈へ向かってもらう。


 本格的な冬になると大山脈は雪に閉ざされてしまうそうなので、その前になるべく多くの物資を運び出すのだ。

 延べ1200人を超える人手を送るので、一人20キロとして24トン以上。

 肉の大部分と素材の一部を運ぶ事ができるだろう。


 そんな段取りを整えていたその日の夜。俺は改めて薬師さんに呼び出されるのだった……。




大陸暦422年11月18日

現時点での大陸統一進捗度 2.2%(パークレン鉱山所有・エルフ35万9676人-4500と+22)(パークレン子爵領・エルフの村504ヶ所+31・住民8万4701人+4500)

資産 所持金 7億3067万(-9億211万)

配下 リンネ(エルフの弓士) ライナ(B級冒険者) レナ(エルフの織物職人) セレス(エルフの木工職人) リステラ(雇われ店長) ルクレア(エルフの薬師) ニナ(パークレン鉱山運営長)

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