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妹と異世界転移 ~引きこもりだった俺が妹を護るために大陸を統一するまで~  作者: おとしんくるす


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102 全てのエルフの解放に向けて 6『小さな産業革命』

 部屋に戻っていった大公はエイナさんの時より長く、二時間ほどしてからサンプルなど一式を持って戻ってきた。


 俺達は応接室みたいな所で待っていたが、そこに台車に乗せられた大公がゴロゴロと運ばれてくる。

 気に入ったのかな?


 大公は、エイナさんを通じてこれらの品を売り込みに来たと紹介された俺の前にくると、鋭い目でギロリと見上げてくる。

 これ完全に権力者の顔だ。正直かなり怖い。

 にらんでくるのが台車の上からなので、一歩間違うと笑ってしまいそうになるのが余計に怖い。


「簡潔に答えよ。そなた、なにが望みじゃ?」


 単刀直入な質問に、俺は作ってきたキャラを全力で演じる。


「恐れながらファロス大公閣下に申し上げます。私めは敬虔けいけんな教会の信徒で、神のしもべでございます。ですから私には、神の御子たる人間と野蛮な亜人であるエルフとが交じり合って暮らしている現在の状況が、どうにも我慢ならないのです。亜人共を全て北の大森林に追放し、人間だけの清浄な国を実現する事が私の望みでございます」


「……それで、それとこれらの品を持って参った事がどう関係する?」


「はい。これらの品々は、いま使われているエルフ奴隷の代わりとして、パークレン子爵の協力も頂いて考案した物でございます。願わくば大公閣下にはこれら品々の改良と量産、普及に関してご助力を賜り、もって亜人追放のかなめとなっていただければと願ってやみません」


「……なるほど、たしかにこれらの品であれば多くの分野に多大な変革をもたらし、エルフ奴隷の必要性も大きく低下するであろう。だが、本当に亜人の追放だけがそなたの望みか? これだけの品、一つを取ってみても偉大な発明者として歴史に名を残し、巨万の富を得る可能性を秘めておろう?」


「はい。私の望みはただ、神がお示しくださった理想の世界に一歩近付く事のみでございます。ですがもしお願いできるのであれば、併せて教会にご寄付を頂けますと、これに勝る喜びはございません」


「そなたにではなく、教会にか?」


「はい、もし叶いますならば……」


 これに関しては、俺が1億アストル寄付するよりも、ファロス大公が1億アストル寄付する方が教会に与える影響が段違いになる。

 大公家の意向だと勘違いしてもらえれば、亜人追放の教会令を出してくれる可能性がぐっと上がるはずだ。


 そんな目論見もくろみもあっての言葉だが、大公の俺を見る目は思いっきり胡散臭そうである。


 まぁ、そりゃそうだよね。エイナさんが北部の大森林地帯を領地にと望んだ事は、当然大公も知っている。

 その場所にエルフを追放するために数々の品を考案したという俺が、他ならぬエイナさんの紹介でやってきたのだ。怪しまない方がどうかしている。


「……エイナ、少しよいか?」


「はい」


 大公はエイナさんを別室に連れて行く。


 一応設定上は、俺とエイナさんは昔からの知り合い。俺の思想を知っているエイナさんは、将来的に大量に追放されてくるであろうエルフを使って、大森林で薬草栽培や素材集めをしようと大森林の領地を所望した。……という事になっている。


 正直穴だらけで突っ込み所てんこ盛りだが、あとはエイナさんの話術に期待するしかない。

 エイナさんの事だから、他にもそれっぽい理由や誤魔化しを色々考えてくれていると信じている。

 謀略Lv3だしね。


 本当は正直に理由を話して味方になってもらえたら最高なのだが、大公家の当主という立場上難しいだろうし、外した場合のリスクが怖すぎる。


 この国に三つあるエルフ牧場の一つは大公家の領都であるトレッドの近郊にあるし、大公家の領軍でもエルフ奴隷は使われているようだ。

 それらの利害もあるだろうし、なによりも大公がエルフ嫌いだった場合、逆に俺達の敵に回ってしまったら太刀打ちのしようがない。あっという間に潰されてしまうだろう。


 今の所そんな気配は感じ取れないが、元公爵の大公ともなれば、奴隷の中でも一段下に扱われているエルフなんて、見た事もない可能性が高い。下等な亜人だという噂だけは聞いていて、会った時に嫌悪感をもよおしたりしない保証はどこにもないのだ。

 いや、ひょっとしたら大公の事だから、エルフの剥製とか持ってるかもしれないな。それはそれで嫌だけど、人間の剥製とか標本も医学や生物学の面では必要な物には違いないからなぁ……。


 そんな事を考えていたら、一時間ほどして大公とエイナさんが戻ってきた。

 あ、台車になんか豪華そうな椅子が固定されてる。それに座って運ばれてくる大公もこれはこれでなんか面白いな……。



 エイナさんと話した大公が俺に告げた返答は、


・各種道具と知識の量産・普及・改良には全面的な協力をしてくれる


・道具とアイディア提供の見返りに、教会に寄付をしてくれる。ただし資金は道具と知識の量産・普及・改良に優先的に投入するので、あまり多額は無理


・亜人追放計画についても、教会と歩調を合わせてある程度協力してくれる


 という、満点に近いものだった。

 さすがエイナさん。どうやって説得したのかは、知りたいような知りたくないような……。



 ともあれ、これで主要な根回しは全て完了した。

 元の世界の産業革命ほどじゃないだろうけど、これからこの世界では急速に機械化・準機械化が進む事になる。

 あとは来年春の計画発動までに、なるべく体勢を整えるだけだ。


 鉱山での受け入れはもちろんだが、リステラ商会に手伝ってもらう予定のエルフの大量移送。殺されたりせずにちゃんと追放してもらえるようにする対策など、やる事は山積みだ。


 ファロス大公に頼んで普及してもらう道具についても、一部の木製歯車や精密な部品などは量産化に時間がかかるので鉱山で作ってもらわないといけないし、タイヤに貼るゴムっぽい革は鉱山の特産品にして収益源にする予定なので、鉱山からの供給になる。


 ゴムタイヤもどきはあると快適で使いやすいというだけで、なくても実用上は問題ないので、普及の妨げにはならないだろう。

 計画には多額の資金も必要になるので、どこかで稼がないといけないのだ。


 さて、計画発動まであと一年。忙しくなるぞ……。




大陸暦421年3月14日

現時点での大陸統一進捗度 1.2%(パークレン鉱山所有・エルフ3163人)(パークレン子爵領・エルフの村24ヶ所・住民2301人)

資産 所持金 34億4775万

配下 リンネ(エルフの弓士) ライナ(B級冒険者) レナ(エルフの織物職人) セレス(エルフの木工職人) リステラ(雇われ店長) ルクレア(エルフの薬師) ニナ(パークレン鉱山運営長)

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