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異世界無双ハーレム物語  作者: 時野ゼロ
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第九十七話

「三日っ!?俺、三日も寝ていたのか?」

「仕方ないさ、マスターは巨人との戦いで高速再生のスキルが無ければ死んでもおかしくないダメージを受けたから」


 あまりにも衝撃的な事実を知って、思わずベッドから飛び降りた。変にテンションが上がった俺とは反対的に、レヴィはただ淡々と言葉を述べた。


「ヴァナヘムルを使った反動も忘れるな」


 そしていつの間にかレヴィの隣に実体化したイリアにも指摘された。戦闘でのダメージで寝込むことは想定内だったけど……イリアの口調から察するに、≪ヴァナヘムル≫の負担は俺が想定したのより高かった。未だにベッドの横に置かれた椅子に座っていたセツも心配気味な眼差しで俺を見詰められている。


 ……いや、過ぎた事に騒いても仕方ないか。今は一旦落ち着いて、今後の事を考えとくか。


「どうせこの後はギルドに行くつもりだろう?折角レヴィが朝食を持っていたんだ、先ずは腹拵えてから考えよう」

「分かった」


 レヴィは食パンが乗せたトレイを木製のテーブルの上に置き、俺とセツにの食パンを渡した。むっ!?最近では食べ馴染んだ筈の味なのに、三日間寝込んでいたせいかいつもより食欲がそそられる。寧ろ、何個食べても腹が膨らまない気がして来た。でも流石に一気に食い過ぎるとヤバそうなんで……四個目で手を止めた。


「そう言えば、マスターは何で三日間寝込んだぐらいでそんなに慌ててるの?別に急ぐ事は無いんじゃ……?」

「居るよ?例えば巨人の残骸を確保するとか」

「えっ……私、あの巨人の身体を結構粉々まで爆発させたけど……」

「いいや、それなら大丈夫だ。残骸と言っても、俺が欲しいのはその骨。あれだけの強度を誇る骨だ、セツに良い武器や防具を作れるに間違いない」

「……私?」


 俺とレヴィの会話を食パンを齧りながら黙々と見守っていたセツは急に話題が自分の事に変わってキョトンとした。話の再確認をするかのご如く、自分の顔を指差した訊ねた。


「えっと、確か三日前セツが下級悪魔と戦った時、あの悪魔の外骨格を上手く斬れなかっただろう?」

「……うん」

「なぁ、あの短剣を使って、何か違和感は有ったか?」

「…………」


 セツはまるで俺の言葉の意味が理解できない様に、不思議そうに頭を傾げた。まぁ、これは俺の説明が足りなかったか……なら、質問を変えて――


「ああ、そうだな……セツは全力であの悪魔に剣を振ったのか?」

「ううん。全力だと、剣が壊れる」

「そう、それだ!セツにくれた短剣は店に並べた量産型の物だ。恐らくその用途はモンスターの剥ぎ取りに使われていた剣で、戦闘用に作られていないんだ。しかもあの店には獣人族の膂力に耐えられる様な剣は売っていなかった」

「なるほど、だからマスターは巨人の骨を欲しがるのか」


 おっ、どうやらレヴィは俺の意図を汲み取れたようだ。彼女に軽く頷いて、イリアとイジスに目配りしたが……うん、あの二人に説明する必要も無かったな。特にこの事を俺に指摘したイリアには尚更だ。


「かと言って、普通に売っている戦闘用の剣はセツの戦い方に合っていない。現物がないのなら、作れば良い。金や素材は俺達(こっち)が持っていくんだ、拒む鍛冶屋は無い筈だ」

「良いの?」

「なぁに、気にするな。これもお前の復讐を手伝う一環だ。どれだけ優れた武器でも、それを扱える者が居なければただの鉄の塊と変わらない。その逆も然り。どれだけ凄腕の剣士でも、彼に相応しい剣が居なければ大した戦力に成らない」

「……ありがとう」 


 これ以上言っても俺の意見が変えられないと悟ったセツは諦めて、感謝の言葉を口にした。少し落ち込み気味なセツは普段とは別格な可愛さが溢れ出ていた。そんな彼女を見て、思わず口元が緩み始めた。


「「…………」」


 うっ、イリアとレヴィの視線の圧が重い……そう言えば昔もイリアにじっと目で睨まれたことが有ったな。でも今回はレヴィが加えたから感じる威圧も倍になっている気がする……


「こほんっ!と、取り敢えず朝食が済んだらギルドに行こうか?」

「はぁ~確かに武器の製作も時間が掛かるよね……」

「そうですね、セツさんにも新武器に馴染みさせる時間が必要です」


 た、助かったぁ~!ワザとらしい咳払いで無理矢理話題を変えようとしたが……少々無理があったな。でもナイスフォローだ、イジス。ありがとう!





 という訳で、イジスの助力で何とかイリアとレヴィのじっと見地獄から解放された後、俺達はギルドにやって来た。


「相変わらず賑やかな場所だな」

「まぁ、あれから三日も過ぎたからね。重傷者も多くないみたいだよ」

「へぇ~そうなんだ……」


 あれ?何か違うぞ。三日前に比べれば何か、確実な違和感があるような、無いような……ああっ!


「って、レヴィ。お前は擬人化して良いのか?」


 そっか、謎の違和感はこれか!普段はレヴィ達の正体を隠す為、セツと二人でギルドに行くだけど、今日はレヴィが擬人化しているから三人だ。一人増えたならそりゃ違和感がある。


「ああ、それは多分大丈夫だよ。マスターが寝込んでいる間、私とセツちゃんが食料などの必要品を買ったから……特に宿の人はもう見慣れたと思うよ」

「なるほど……」

「因みに私はマスターの妹という体で行動しているよ」

「そ、そっか」


 レヴィと他愛もない会話を進めると、何時の間にか受付カウンターに辿り着いた。


「レイ君はもう起きて大丈夫!?数日寝込んだと聞いたんだけど」


 カウンターに着いた瞬間、案の定例のハイテンション受付嬢が跳び掛かる勢いで俺の肩を掴んだ。やはりこいつのハイテンションに付いて行けないな……ていうか、俺が数日も寝込んだ事を知ってながらこの勢いで話し掛けるか、普通?


 いや、この人に普通の概念は通用しない。寧ろこの人こそ普通の概念から最も離れた者だと思う……はぁ、ここは適当に茶化すか。


「ああ、多分」

「ダメですよ!怪我人は大人しくベッドで寝てください!」

「お、おう」

「あ、そうだ!ギルマスがレイ君に用事が有るから、ギルドに来たら三階の部屋で待っているってさ。でもレイ君はまだ休息が必要だからまた数日待つよう、私がギルマスに話すからね!」

「いいや、俺はもう大丈夫だから!それじゃ、三階だよね!ありがとう!」


 こうして、俺は本日二度目の地獄から解放され、三階へ繋ぐ階段を駆け上げた。


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