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異世界無双ハーレム物語  作者: 時野ゼロ
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第九十六話

 レヴィが指を鳴らしと同時に、巨人の身体が内部から弾けた。そこから大量な血飛沫が飛び散る中、イジスが結界でそれらを防げた。そのお陰で俺達以外の樹々や地面は真っ赤に染め上げた。しかし今の俺にはその事を気にする余裕は無かった。


「れ、レヴィ……今のは?」

「巨人を体内から爆発させた」

「「…………」」


 さらっと凄い事を言い出したレヴィとは真逆に、俺とセツは返す言葉を失った。彼女は大罪悪魔で、初代魔王の魂から生み出した事は知っていた。それで常識外れの力を持つことも同然予想済みだ。けど、まさかここまでとは……


 一応レヴィが巨人を爆発させた仕掛けはある程度把握済みだ。でもそれはあくまで理論上な物で、到底実戦で使用出来るとは思えない。


「……レヴィ様は、何をした?」

「う~ん、巨人の身体の中に大量な水を侵入させた。その水を操作しただけだよ?」

「それは大体想像出来るが。一体、いつその量の水を仕込ませた?」

「いつって聞かれても……マスターがそれをやったじゃん?」


 ん?俺がやった?レヴィの水魔法を扱った事なんて一度も無かったし、ましてや巨人の体内に仕込ませる機会なんて……あっ――


「もしかして、最後の攻撃の時?」

「そう!マスターが巨人の心臓を貫いた時に、刃に纏わせた水の殆どを侵入させた」


 なるほど。セツに墜落の危機から救われた頃から握っていた魔剣に違和感を感じたのはこれが原因か。しかし、幾ら魔力枯渇で意識朦朧の状態とは言え、あれ程重かった剣がいきなり軽くなる事実に気付かないなんて……


「――ご主人様」


 俺がレヴィの凄まじさを改めて再認識したのと同時に、耳元からセツの緊迫した声が聞こえた。


「向うのから私達を見ている者はどうする?」


 そう言いながらセツは離れた所の林を小さく指差した。この事を聞いて、≪気配感知≫を発動して確かめたが、やはりそこから数人の気配を感じ取れた。まぁ、あれだけ派手な戦闘が繰り広がれたんだ、寧ろ誰も来ない方が怪しい。


 しかし参ったな。奴らが掴めた情報によって、国一つを敵に回すこともあり得る。そもそもあいつら全員がギルドの者だとも限らない。


「なぁ、セツ。あいつらは何時から見ていた?」

「巨人との再戦が始まった直後」


 そんな前からか……流石にそこから見てたのなら、色々と誤魔化せない部分が多すぎるな。レヴィを生み出した魔王の立ち位置が分からない以上、そう易々とレヴィの正体を悟られたくない。普通に考えて、ゲームやアニメの中の魔王は世界の、少なくとも人間の共通の敵である事が殆ど。


 俺が今でも途切れそうな意識を必死に繋ぎ止め、知恵を絞って打開策を講じる中、セツはゆっくりと腰の短剣に手を伸ばした。


「私が始末しようか?」

「一人残さず殺せる自信はあるか?」

「……ない」


 俺の指摘に対して、セツは落ち込むように視線を下へ逸らした。今すぐ彼女を慰めたい所だが、上半身どころが、今の俺は腕一本でも上手く動かせない。


「ごめんね、私のせいでマスターに迷惑を掛けた……」


 今度は左側から悲しみを帯びたレヴィの声が聞こえた。


 俺が地面に仰向けの状態で倒れているから、二人の落ち込む顔が視界の内に入った。くっ、そんな顔をさせるなんて……本当、嫌な程自分の無力さを感じさせるね。


「二人とも、そんな悲しい顔をするな」


 今の俺が出来る事。それは精一杯の笑顔で彼女達を励ます事に過ぎない。ただそれだけの効果はどれだけ有るのかは分からない。それでも、何もしないよりマシだ。


「セツ、お前には復讐に協力するって約束したからな。だから俺はその為の力と知識をお前に与える。それが終えた頃、お前はもう今みたいな悔しい思いを感じさせなくって済む。レヴィ、お前は何も悪い事をしていない。ただ魔王に生み出されただけで……ただここに居るだけでは罪に成らない」


 クソ、瞼が重い……待って、まだ彼女に伝えたい事があるんだ。耐えて、俺の身体。お願いっ……!


「だから、自分を責めないで――」





「……ここは?」


 目が覚めたら見覚えのある木製の天井が視界に入った。横の窓から差し込んだ日差しに当てて、思わず目を細くする懐かしい日常。そして背中の柔らかめの感触……


「おはよう」


 声がする方へ振り向くと、セツがベッドの隣の椅子に座っていて、俺の顔を覗き込んでいた。


「セツ……?」

「ん?」

「俺は確か、巨人と戦って……魔力切れで倒れてた、よね?」 

「はい。私が宿まで運んだ」

「…………」


 まさかの本日二回目のお姫様抱っこ……うぅ~恥ずかしい!しかも町や宿の者に見られた可能性が大きい……穴があったら入りたいよぉ!って、あれ?


「マスターが起きたって!?」


 元気な声と共に部屋の扉を勢いよく開いたレヴィ。彼女の手には数人分の食パンが乗せたトレイがあった。


「おはよう、レヴィ」

「マスターもおはよう!あっ、皆の分の()ごはんを持ってきたんで、皆で一緒に食べよう」

「ありがとう。でもその前に、一つ聞きたい」

「なに?」

「俺はどのぐらい寝た?」


 そう。俺達がモンスターの大群との戦闘が始まったのは朝方、巨人と戦う頃はもうとっくに昼過ぎの時間帯だ。そして現在、レヴィは確実に()ごはんって言った。つまり俺は少なくとも十二時間以上は寝ていた。


「ん~三日ぐらい」

「……はっ!?」


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