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異世界無双ハーレム物語  作者: 時野ゼロ
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第八十九話

 魔法陣から現れたソレはあまりにも規格外な存在であった。横幅数メートルの壁が二つ、俺達の前に聳え立っていた。いいや、それはもはや壁と呼べるより、〝摩天楼〟の方がより適切だろう。


 イリアは契約した相手を呼ぶ魔法と言った。だけど、無機物でも契約の対象になれるのか?っと、そのような考えが一瞬脳内を巡った。それは多分、俺の中の何処かにこのような生物が存在する事を認めたくなかった。ソレが次の瞬間に取った行動が無ければ……


――ゴォォォオオオオ!


「「「ッ!?」」」


 咆哮。たったそれだけの行動で俺達四人も含み、この辺り一帯が咆哮の風圧によって飛ばされた。地面に叩き付けられる前、咄嗟に風魔法で勢いを緩和した。隣で同じように飛ばされたレヴィとギルドマスターを目配りしたが、案の定あの二人は無事でした。しかもレヴィは意識を失ったセツを抱えている。


「クソ、よりによって幻魔種を召喚したか……」


 戦斧を構えたギルドマスターが呟いた一言。その中には聞き思えのない単語が混ざっていた。


『幻魔種……なにそれ?聞いたことが無いぞ』

『さぁ、私も知らない単語だ。目の前の個体は巨人族、幻魔種なって呼び名は無かった。冒険者を率いる者が敵の正体を間違えるか?』

『…………』


 イリアすら知らない単語を発するギルドマスター。こいつ、一体どんな知識を持っている?イリアが封印された間で新たに知り得た知識か……


「なぁ、ギルマス。その〝幻魔種〟って何だ?あれはどう見ても巨人族じゃないか?」

「なんだ、巨人族って知ってるのか?なら話は早い。幻魔種は竜族や巨人族など、個々の強さが高く、しかし稀に出くわさない種族の総称さ」

「へぇ~因みにその単語は何時から使われていたの?」

「変な事を訊いてどうする?」

「いやぁ、ちょっと気になって……」

「俺も詳しく知らねえよ。でも百年以上は使い続けているぞ」

「……なるほどね」

「もう気が済ましたか?余計な事は後にしな、巨人族は俺一人でもキツイ相手だ。気ぃを抜くな」


 百年ぐらい前か……そりゃイリアも知らないのも納得だ。しかし、元Sランクの冒険者でもキツイ相手、巨人族。まぁ間違いなく、先程に感じ取った威圧感はこいつからだ。


 叫んだ時の風圧だけで周囲の物を吹き飛ばせる、摩天楼に見間違えるほどの両足。恐らくこいつの全身の筋肉は下級悪魔の外骨格の数十倍の硬さは有るんだろう。でもその咆哮のお陰でそいつから多少の距離が取れたし、周りの樹々が無いから巨人の全貌が何とか視界に収まった。


 巨人は服装から装備まで、全体的にはバイキングな印象を受けた。何等かの革から出来ていた革鎧を纏っていても、隆々とした筋肉を隠しきれなかった。その右手には石で出来た剣を握っていて、左腕には小さくて丸い石質の盾が付いている。頭には兜を被っていたせいで顔が見えない。何よりその巨体は10メートルの巨壁を余裕で超えた。こうして見比べると、巨壁が可愛く見えてきた。


巨人族(こいつ)と戦ったら、俺の勝機はあるのか?』

『……五割ぐらいかな?』

『五割か……想像以上に高いな。てっきり三割あたりだと思ってた』

『ちょっと、イリアさん!私が居ればマスターの勝機は百パーセントです!あんまり私を甘く見ないの!』

『駄目だ。レヴィは気絶したセツを守ってあげて』

『うっ……』


 そう言えば、セツは未だ目を覚めしてないなぁ。あの毒霧がそこまで彼女の体内に侵食したか……でも確かに、誰かがセツを守らなければならない。そこでイジスは予想外の発言をした。


『まぁまぁ、イリアさん。セツさんは私が守ります』

『イジスさん!?』

『守りなら私が適役でしょう?』

『そうですけど……でもそうなったら誰かがマスターの守るんだ!?』

『これもまた、レイさんへの訓練の一環です。あんまり私に頼り過ぎるとダメですからね』


 ……正論だ。悔しいが、今までの俺は確かにイジスが居るからある程度の無茶でも構わずにやってた。万が一俺達は別行動を取らねばならない状態で戦闘になったら、多分それに勝利する事は難しい。だから俺は――


『分かった。それで行こう』


――イジスの決断に賛同した。


『マスターまでぇ……はぁ~分かりました。なら私が全力でマスターのサポートをします』

『ありがとう』


 さて、残りの問題はやはり……ギルドマスター。レヴィの正体と冥獄鬼(ネクロス・)の鎧骨(ガーディアン)と事は何としてでも隠し通す。あいつがここに居て、もしくは俺と共闘したら絶対に誤魔化せない。なら、こいつをここから遠ざける為に取るべき行動は……


「なぁ、ギルマス。一ついいか?」

「まだ何かあるのか?あの巨人が攻撃を仕掛けて来ないといっても、少年は気が緩過ぎだ!」

「まぁ、そう言うな。これは巨人が攻撃を仕掛けて来ない今だからこそ話せるんだ」

「……早く言え」


 巨人族を目の前に、緊張と焦りがギルドマスターの気象を荒くさせる。その口調は明らかに彼の苛立ちを代弁する。だが、それで良い。もっと彼を爆発寸前まで追い込む!


「な~に、あの巨人族を俺達に任せたいだけだ」

「は!?何馬鹿な事をほざけってるんだ!?」

「だ・か・らぁ、俺達があの巨人を討伐するって言ってんの!」

「ふざけるなっ――」

「ふざげていなさ。今こうして、俺とお前が会話を交わす最中でも、他のモンスターに命を奪われた冒険者が居るかもしれない。この隙に乗じて、町に侵入する輩も居るかもしれない」

「…………」

「冒険者達を率いて、それらを防げる者は一番権限が高いギルマスしかいない。だからここは俺に任せて、他の者を助けに行きな。その代わり、悪魔の報酬とは別件で、巨人討伐の報酬も用意してよね」

「……俺が戻るまで耐えてくれ」

「ごたくは良いから、早く行け!」


 ちっ!っと舌打ちをしながらギルドマスターはここから去った。よし、作戦通り!ギルドマスターを出来るだけ苛立たせ冷静な判断が出来ないようにして、ちょっとだけ嘘を付いた可能性をそんな状態の彼に聞かせば、当然より多くの命が助かる選択肢を取る。


「一応聞くけど、作戦はあるのか?」


 何時の間にか俺の後ろにイリアとイジスが実体化した。イリアが俺に話し掛ける最中、イジスはセツが寝転んでいる側に待機した。


「有るは有るんだけど、それがどれだけ通用するかは不明だ」

「大丈夫だよ。マスターならきっと何とかなるさ!」

「そこまで期待されると、逆に困るな」

「ほら、ギルドマスター(あのマッチョ)が戻る前に片付けるぞ」

「は~い」「ああ」


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