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異世界無双ハーレム物語  作者: 時野ゼロ
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第八十八話

 重傷を負って、瀕死の下級悪魔から莫大な量の魔力が壊れたダムに似た勢いで噴き出した。他の二体に比べに成らないぐらい程、寧ろ次元の狭間で戦ってたネクトフィリスさんに近い威圧感。幾ら悪魔族でも、レヴィが言う雑兵程度の個体からの威圧感では無い。


 ……それとも、威圧感の正体はあの魔法陣から?確かに込められた魔力の量は桁外れだが、それ程にヤバイ魔法だったのか?……いや、もし本当にヤバかったらイリアがそれを止める筈。それとも止めないじゃなくって、止められない(・・・・・・)としたら?


 クソ、情報が少な過ぎて真面な判断が出来ない。それにしても、魔法を発動した術者たる悪魔自身が苦しんでいるように見えるんだが……?


「心配しなで、その魔法は直接な危害は無いよ」

「……あれを知っているのか、レヴィ?」


 いつの間にか立ち上がったレヴィがそう呟いた。険しい表情をしたまま、彼女は下級悪魔を睨んだ。


『本来はこの魔法の事を教えたく無かった』

『イリア?』

『……あれは≪代価魔法(コスト・スペル)≫の一種――』


 念話を通じて、渋々に説明してくれた。しかし彼女の口調は普段より重かった。一拍を置いて、イリアが言葉を続いた。


『――以前お前とセツが私達の訓練を受け始めた頃に説明したように、スキルと魔法の大まかな違いは?』

『一部の例外を除いて、魔法は魔力を消費する事に対して、スキルの発動に魔力は要らない』

『そうだ。そして現在、目の前の魔法はその例外の一つだ』

『…………』

『≪代価魔法(コスト・スペル)≫は魔力以外の物を消費する事で発動する魔法の総称。そこで質問だ。あの下級悪魔が使用した≪代価魔法(コスト・スペル)≫の代償は何だと思う?』


 意味深に問いかかるイリア。幾ら≪看破の魔眼≫が有るとしても、俺には見た事のない魔法の代償なんて知れる筈がない。本来の使用者のイリアならまだしも、仮初の俺には無理だ。


 ……いいや、待ってよ。俺が魔眼の力をフルに活用できない事はイリアも承知の上の筈だ。となると、魔眼の力を借りずでも分かる程明確な答えだったのか?ふむ、明らかに術者の器を遥かに超える性能を持つ力を手に入れる為に支払うべき代償……


「まさか……!?」

『ええ、そうよ。あの悪魔が支払った物は己の魂、つまり寿命だ。因みに魔法の名は≪魂魄犠牲ソウル・コントラクト・サクリファイス≫』

「やっぱり、身に余る力を手に入れる方法は命を削るのが定石か……でもさ、自分の魂まで削ってまで発動した魔法。一体どんな効果が有るんだろう?さっきレヴィは危害が無いって言ったけど?」


 目の前の悪魔から視線を剝がして、隣のレヴィに目配りながら彼女に訊ねた。


「……召喚獣の強制(・・)支配よ」

『本来召喚魔法は術者とモンスター等の双方の同意上で結ばれる契約を通じて、件のモンスターを使役する魔法だ。しかし魂魄犠牲(それ)は一方的に契約を結び、自分の魂を犠牲する代わりに、その契約相手をある程度まで操れる』

「分かりやすく説明すると、自分の魂を契約相手に乗り移るかな?」

「な、なるほど……」


 これはちょっとヤバイな……俺の脳的に。イリアは物事を説明するのが好きなのは薄々気付いているけど、それをレヴィの説明に加えられた。言葉と念話の両方から交互に彼女達の声が聞こえてくる。危うく俺の脳のキャパシティーを超える所で彼女達にストッパーを掛ける事に成功した。今後は二人以上の説明を同時に聞かないでおこうっと深く心の中に決めた。


「おっ!少年、ここに居たのか?」

「ギルマス!?」


 俺が自分の過ちを反省している間に、ギルドマスターが何事もなかったのように、向う側の森から歩き出た。


「まさかあの悪魔を倒したのか?」


 未だに魔力が噴き荒れる下級悪魔を無視して、俺が倒れた個体の亡骸を見て、驚いた顔色を見せながらこっちに訊ねた。


「ああ、ばっちりだ。報酬の件は忘れるなよ?」

「任せておけ……っと言いたい所だが、まずはこいつを片付けてからだ。新入りにカッコイイ所を見せないといけないからな」


 豪快に答えたギルドマスター。それにしても、新参の冒険者に格好つけるのか……一応威厳を保つ必要も要るんだね。どうやらギルドマスターは想像以上に面倒な職業らしいな。


「ん?そこの嬢ちゃんは?」

「……双子の姉です」


 ギルドマスターがいきなり話題をレヴィの事に変えた。いくらギルドマスターでも、流石にレヴィの正体に気付くとは思えない。何せ、桁外れな力と魔力量以外は普通の人間とさほど変わらない。だから咄嗟に思い付ける嘘を口にした。


 正直、この嘘が通れる自信は無い。かと言って、今更「あっ、間違いました!」なって言える筈も無い。このまま乗り切るしかない!


「ふ~ん、あんまり似てないな」


 信じた!?あんな無理に捻り出した嘘を信じた!?まさかギルドマスター(こいつ)はとんでもない馬鹿だったのか?


「よく言われる、あはは……」


 全力でポーカーフェースを維持しながら乾いた笑い声で答えを濁らせた。いや、ギルドマスターはまだ完全に信じ切っていない。何か、話題を逸らせるモノが……


「と、ところでギルマスはあの悪魔が何をしているのか分かるの?」

「……さぁ?でもヤバイって事ぐらいは本能的に分かる」

「…………」


 ダメだ。このギルドマスターは色々と残念だ。何でこんな人が一ギルドのトップに居られるだろう?秘書のリサさんがよっぽど似合うと思うなぁ。まぁ、単純にこいつの戦力は文句の付け所がないから荒くれ集団の一歩手前の冒険者達を統括できるかもしれない。


「……ッ!?」


 ちょうど俺がギルドマスターの残念な所に呆れた頃、下級悪魔から噴き荒れる魔力が急にその身体に収束し始めた。魔力の収束と共に、悪魔は耳障りな断末魔を上げた。


『さ、あの悪魔が契約した者のお出ましだ』

『……因みにイリアはそれが誰か分かるのか?』

『まさか、流石の私でもそれは無理よ。兎に角、自分の魂を捧げたんだ、これなりの強敵が出るのは想定内。くれぐれも油断しないでね』

『ああ、分っている』


 周囲の魔力が殆ど魔法陣に吸収し終えた頃、何かの姿がその魔法陣から現れた。まるで鯨が浮上しているみたいに、地面に描かれた魔法陣から巨大な何かが徐々に浮上した。やがてその何かの全貌が見えて――


「なっ!?」


――俺は絶句した。


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