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異世界無双ハーレム物語  作者: 時野ゼロ
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第八十二話

 冒険者とモンスターの乱戦が始めてから約十数分が過ぎた。だけど体感的にはもう一時間以上戦い続けている気がする。そん間、俺一人だけでも二十体近いモンスターを屠ったけど、モンスターの総数が全然減らない。倒しても、倒しても次々から迫って来る多種多様なモンスター達。もはやこれは無限ループじゃないかって心配になってきた。


 戦いの最中に他の冒険者の状況を≪看破の魔眼≫と≪気配感知≫で見ていたけど、やはり皆の消耗が激しい。魔法を武器にする魔法使い共の魔力残量は殆ど残っていない。殆どが半分をきった。前衛に戦う冒険者達も少なからずの傷を負っていて、重傷者の数も刻一刻に増えていく。


 このままだとジリ貧だ。かと言って、今の俺が考え付く突破口は広範囲の攻撃魔法を使って、一気にモンスターを殲滅する一手だけ。でもその時の犠牲者はこの戦場の者に限らない。万が一その魔法が誤発し、街中に流れ弾が入ったら……


「――クソ……消耗戦に持ち込まれた」


 悪態を吐きつつ、俺は事態の深刻さに気付いた。向こう側には数で勝っている。もし両方の消耗スピードが同じと仮定するなら、こっち側がどれだけ不利な状況に居るのは言わずも分かる。それに、このモンスターの大群の動きはあまりにも軍隊の進行に似ていた。前列のモンスター達が先頭し、仲間のモンスターに道を切り開くように見える。後方のモンスターも戦闘に参加せず、ただ落ちた仲間の死体を踏みながら町へ迫る。


 種族が異なるモンスター達がここまで連携が取れると思えない。ましてや他種族の為に自分の命を犠牲するなんて考えにくい……だとすれば、この大群の指揮を執る者は必ずこの近くに居る。少なくともここの戦局を見ている筈だ。


『イリア!』

『――既にやっている!』


 幾ら乱戦状態に堕ちた今でも油断出来ない。もし誰かにイリア達の存在を気付かれた時は確実に面倒事から避けられない。だからここは敢えて念話でイリアに話し掛けた。そして俺の意図を察したイリアは声を掛けた直後にすぐさま返事した。


『相変わらず仕事が早いな。で?見付かったか?』

『見付かってはいたけど……何かが変だ』

『変?』

『……ええ。確かにこの大群の指揮を執る個体は見付け出したけど、何かが間違っているきがしるの』

『珍しいですね。イリアさんが自分の答えに疑っているの』


 確かに、イジスの言う通りだ。俺がイリアに出会ってからそんなに時間は経っていないけど、自分が出した答えを疑う場面は初めて見た。ともあれ、ここで妄想を膨らませるのも得策じゃないし……リスクはあるけど、試してみるか。


『ところでイリア、その人物の場所は?』

『え?大群の一番後ろにいるよ』

『自分だけ安全地帯に居るって訳か……仕方ない。イリア、悪いけど皆に謝っといて。あと、今後は面倒事に巻き込まれる覚悟をしてって伝えて良いか?』

『レイさん!?』

『大群の目を盗んで周りから背後へ回るのは不可能に近い。ならば正面突破だ!』

『……はぁ~くれぐれも冒険者達を巻き込まないでよね』

『ちょっと、イリアさん!?』

『仕方ないでしょう。体力と魔力の消耗以上に、長時間で周りを警戒続ける冒険者達の精神の消耗が酷い。だから早くこの乱戦を終わらせないといけない』 


 ああ、言わずとも分かるよ。だから俺はこうして、脳内会話をしている最中でも最前線へ走った。巻き添えの犠牲者を減らせる最善の方法は最初からその人数を減らせば良い。ならば簡単だ。この場で一番冒険者の数が少ない場所、つまり最前線で広範囲の攻撃魔法を使えば、それに巻き込まれる人数が最小限に抑える。


 お願いだから、魔法の軌道に突然乱入する馬鹿が居ない様にっと心の底からそう願って、必要な魔力を掌に集めた。……よし、これでこれぐらい集めたら十分だろう。あとは最前線に出た刹那で放つだけ――


『ストップだ、レイ!』

『――ッ!?』


 イリアの警告を聞いて、俺は咄嗟に足を止めた。そして次の瞬間、最前線で戦っている冒険者達よりそこし前、凄まじい爆音と伴に一つの光の柱が落ちた。その柱から発する光は眩しくて、思わず瞼を閉じた。数秒後、光柱の光や爆音が収まった。その直後に見た光景はあまりにも信じ難いモノだった。


 光柱が落ちた場所がまるで隕石が落ちた様な大きいクレーターが出来た。クレーターの中は勿論、その周囲十数メートルも草一本も生やしていない焦土へ変えた。そして大気中に漂う焦げ臭い匂いと肌をピリピリと刺激する尋常じゃない量の静電気……


『雷?……さっきの光か?』

『ええ、凄まじい量の魔力を使った雷魔法だ。にしても、それだけに派手な攻撃の反面、巻き添えを喰らった冒険者は一人もいない』

『嘘、だろう……あの一撃で大半のモンスターが消し飛ばされたんだぞ?』

『気抜かないで。クレーター内に誰かいるぞ』

『ッ!?敵の増援か?』

『多分違うと思いますよ?もし敵なら冒険者が密集する中央部分を攻撃しますし』

『そうね。でも一応油断しないで』

『分かった』


 殆どの冒険者やモンスターは意識を光柱が落ちた所に集結した。まぁ、気持ちは分かるけどね……しっかし、そんなに集中して、奇襲を受けるリスクが増えるじゃないか?今回は敵味方の注意がそこに集まった事が幸いだった。


「やぁ、久しぶり過ぎてつい威力の調整を忘れたぜ」


 緊迫した空気が支配する戦場に似合わぬ呑気な声がクレーター内から木霊した。その声を聴いた者は種族問わず、皆その声の主に対する警戒心が一層増した。そんな中、一つの人影がゆっくりとクレーターから俺達、冒険者が居る方へ歩き出した。


 全身が鋼の鎧を纏っていると勘違いする程、隆々とした筋肉を持っている。金髪碧眼で、時の流れを感じさせる幾つかの皺が顔に刻まれた。最初の印象はまさしく元の世界の西欧のおっさんだ。しかし、彼を俺や他の冒険者と区別する目立つ特徴が有った。それが二メートルをも上回る巨体だった。


 こんな巨漢を見たのは初めてだ。悲しい事に、俺はこの世界に来てからそれなりのマッチョな男を見たけど、これまでに鉄壁を連想させてくれるのは彼だけだ。正直、こいつと戦うより、俺はディメンション・ウォーカーと戦う方が楽な気がする。


「遅れてすまんな。こいつを取り行くのに時間をかけた」


 大衆の注目を浴びている事も関わらず、巨漢はそう言いながら右手で握っている彼と同身長の黒塗りな戦斧に目配った。


「おぉぉぉ!」

「貴方様が居れば楽勝だぜ!」


――等と、彼を見た大半の冒険者達が興奮を隠しきれず、高揚な声で上げた。雰囲気的には相当な強者だと分かるが、だった一人の出現で味方の士気が上がった?そんな彼の事を横に居る冒険者の先輩に訊いた。


「何だ、知らないのか?あのお方こそが我ら冒険者ギルドのギルドマスター、元Sランク冒険者のラインバルト様だ」

「……マジで?」

「ああ、そうとも!」


 先輩冒険者の言葉を聞いて思わず自分の耳を疑ったが、冷静に考えると一理が有る。元Sランクの冒険者ならその体から浸みだす迫力も説明が付く。しかし、この脳筋がギルマスなら秘書のリサさんも苦労しそうだ。


「さ、今から俺も参戦とする!皆の者よ、俺に続け!モンスターの大群を素早く殲滅せよ!奴らに反撃のチャンスを与えるな!」

「「「「「「おぉぉぉぉぉ!」」」」」」


 先鋒に立つギルマスことラインバルトが戦斧を天に掲げながら宣言した。それと伴い、冒険者達も雄叫びを上げた。





 しかし、その時の俺達は知らなかった。ラインバルトの出現に心を躍らせ、興奮したのは味方の冒険者だけでは無かった。


「……フフフ、ヤット来タカ」


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