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異世界無双ハーレム物語  作者: 時野ゼロ
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第八十話

 受付嬢から教え貰った緊急討伐依頼の集合場所まで足を運んだ。そこは俺達が馬車で通った扉からそう遠く離れていない広場。俺達が着いた時は既に男女問わず、五十人弱の冒険者がその広場に集まっていた。


 彼らが身に纏う防具や武器は統一性が無く、各々の使い慣れた武具を装備した。ある者は大剣を、またある者は槍を、杖を、戦槌を所持した。鎧も同じく、ある者は軽鎧、ある者は全身鎧を纏った。そんな十人十色な光景の中、唯一の共通したものが居た。それが、彼ら全員の顔立ちは緊張感によって引き締めていた。


 俺達は広場で待機する様、ギルドの職員から指示が下された。広場に着いてから約30分が過ぎた。その間も着々と他の冒険者が広場に集まっていた。現時点での総数は80人を超えていた。『あとどれだけ待つ必要があるの?』っと考えた瞬間、集まった冒険者達が騒ぎ始めた。皆の視線を辿って、広場の端に数人が立っていた。俺から離れ過ぎて、その姿ははっきり見えないけど、彼らが騒ぎ出す理由である事は明白だ。


「聞け!この広場に集いし、勇気ある冒険者の諸君!」


 その数人の内の一人が片手を天に掲げた次の瞬間、念話に似た声が聞こえた。イリア達がいつも使ってた念話とは違い、この声は魔力では無く、声を発した者の声が伝わってきた。


『これは風魔法を運用した通信手段。昔は伝言手段の一つとして、良く戦場で使われた。その仕掛けは自分の声を風魔法で受信者の耳元まで運ぶ。同時に情報漏れも防げる』

『へぇ~中々便利じゃないか』

『ええ。でも弱点も当然存在する。使用可能な範囲は限られている上、魔力操作に長けた者なら簡単に命令を発する者の特定できるから、その者達は常に敵側の砲撃を浴びるリスクを背負っている』


 な、なるほど。その便利さを相殺するリスクのある魔法か……中々使い処が限られるな。ともあれ、今はその魔法を使った人の話を聞いてからこの魔法の使用について考えよう。まだ俺が使えるかどうかは分からない以上、余計な考えはしない方が良い。


「今現在、数百をも及ぶモンスター大群がこの町に迫っている。その大群に対し、我々の数はたったの80。この圧倒的な戦力差は脅威だが、けして乗り越えない壁では無い!」


 現実の厳しさに押し付けられた広場の冒険者達は一層と騒めいた。開戦前にそんな絶望的な数字を教えて良いのか?皆の戦意に影響を及ぼす事態は避けたい……でもこの状況下ではそれを隠す意味は無い。なら、最初から覚悟を決めた方が、後々彼我の戦力に絶望するよりは数倍マシだ。


「現在確認できるモンスターの種類はゴブリン、オーク、コボルドと獣系のモンスター。その中に我々が認識していないモンスターの存在も十分にあり得る!くれぐれも油断しないように!報酬は各自討伐したモンスターの種類とその数によりますが、少なくとも一年間は困らないと約束しよう」

「「「「「おぉぉぉぉぉ!」」」」」


 本来は戦力差を知って、落ち込んだ冒険者達は報酬の事を聞いた瞬間、雄叫びを上げた。ったく、どんだけ金に困っているんだよ、ここの冒険者は?まっ、俺達もセツが加わってから金の消費速度も上がっているから他人事みたいに言えない。それにしても、何となく聞き覚えのある声だと思って、≪看破の魔眼≫を使ったものの、まさかこの演説をしているのはリサさんだったとは……


 ともあれ、これで冒険者達の士気は心配なさそうだ。皆がリサさんの方に視線を集中している際、俺はセツを以前イリア達三人とのデートの最後に登った巨壁の上まで連れた。イリア達と違い、セツは実体化解除が出来ない。だから俺にお姫様抱っこの形で登った。てっきり途中で暴れると思ったけど、案外と大人しいかった。


 巨壁の上から見える草原の景色は地平線の向う側からこっちに迫っている黒い波みたいな物だけだ。でも、セツの≪遠見≫のスキルならもっとはっきり見える筈だ。その希望を胸に抱いて、俺はセツに訊いた。


「どうだ、セツ?見えるか?」


 俺の意図を察したセツは草原の方を向いて目を細めた。そして数秒後……


「……目測では二百ぐらい。でも、多分五百以上は居る」

「五百か……思ったより多いな」

『問題ない。今のレイとセツなら百体は大丈夫』

『ちょっと待って!百体は流石に無理でしょう!?』

『マスターなら二百も問題無い!セツちゃんも私が保証するから安心して』

『レイさんの事ですし、一人で全部片付ける事もアリですね』

『ナシよ!皆は俺をどんな怪物だと思っているの!?』


 イリアから始まり、レヴィ、そしてイジスも次から次とエスカレートする発言は止めて……お願いだから、セツもそんな真っ直ぐな目で俺を見ないで!五百の大群を一人で片付けるのは無理に決まっている!こ、ここは話題の変えなきゃ……


「どうだ、セツ?やれるか?」

「……五百体を?」

「そんな高いハードルを出さないよ。ただ、生きて帰るか?」

「……勿論。まだ復讐をしてない、ここで死ねない」

「……そうだな」


 ちょっとの間を置いたセツの答えは良い意味で俺の想像を超えた。これなら他のテンプレ的な死亡フラグよりマシか……少なくとも彼女は現状の依頼より重要な目的が有る。最悪の場合は彼女をここから連れて逃げる事も可能だ。何せ彼女はこの町に未練はない、ここから逃げても反対しないだろう。その時はせいぜい依頼放棄で報酬の金がもらえないぐらいだけだ。金の事なら生きていれば稼ぐチャンスは幾らでも有る。


「よし。もう一度俺達の目的を確認するぞ」

「…………」

「先ず最優先は生き延びる事だ、それ以外の事は考えるな。依頼達成する為に命を投げ出す行為は禁止」

「はい。だって私にとって、この町の事は二の次」

「うん。なら問題無いな」


 ちょっとおっかない返事だけど……まぁ、これこそセツらしい。段々下の広場の騒ぎが収まっていると思いきや、もう依頼が開始されて、皆は着々と巨壁の扉を潜った。


 冒険者達の視線の死角をつくため、俺は巨壁の向こう側、樹々が生い茂った所でセツを降ろした。そこで俺は考え付いた。これだけの大人数、全員の顔を覚える筈がない。ならここで勝算を上げる為にも……


「なぁ、レヴィ。暴れたいか?」

「え?良いの?」

「ああ、久しぶりの戦いだ、思う存分に暴れたいでしょう?」

「もう!マスターは私のことをどれだけの戦闘狂だと思ってるの?」

「でも参加したいんだろう?」

「それは否定しない!」

「はは、イリアとイジスは如何する?」

「私はレイさんとセツさん、レヴィさんのサポートをしますわ」

「私も」

「分かった……なら、開戦といこうか」


 こうして、レヴィも今回の依頼に参加する事に成った。大罪悪魔の参戦により、こっち側の勝算も大幅に上がった。表向きは勝算を上げる為だけど、レヴィが生き生きとした顔を見る為が本音だけどね……


 理由はともあれ、80人強の冒険者対五百体のモンスターの戦争の幕が開けた。


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