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異世界無双ハーレム物語  作者: 時野ゼロ
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第七十一話

――現在・オルベック宿


「それから、私は逃げてた。何年も……何年も逃げ続けた。貴方達と出会うまで……」

「「「「……」」」」


 一応事情を話すって言ったのは俺だけど、まさかここまでな過去を体験したとは……正直、完全に舐めてた。お陰で俺達は如何話し掛けるか分からなくて、四人揃って黙って込んだ。そんな壮絶な過去を無表情で語った本人の話を果たして信じて良いのか迷ってたが、彼女の音色やイリアの反応から察すると、信じても問題なさそうだ。


「これで、私の話は……終わり。次は……貴方達の番」

「そうだな。約束してたな」


 もうここに来て、彼女に隠す必要は無いな。て言うか、多分隠しきれないと思う。俺が彼女の過去を尋ねたんだ、こっちにも相当な責任が有るもんな。


 ふぅ~っと彼女の話から気を取り戻してからこれまでの出来事を彼女に話した。イリア、イジスとの出会いからネクトフィリスさんとの戦い、メルシャー村に起きた出来事、遺跡の調査、ディメンション・ウォーカー戦、そしてレヴィとの出会い。それら全部を話した、勿論俺がこの世界の住人じゃない事も含めて。


 俺が別の世界から来た事を語った時、彼女の無表情の仮面も少し剥がれ落ちた。言っていることが全く意味分からんと言わんばかりの顔で俺を睨んでた。まぁ、良いんだけどね。いきなり「自分は異世界人です!」って言われたら、そいつを信じる方がおかしい。それよりも、彼女がレヴィの正体を知った事も関わらず、レヴィに怯えていなかった。それも彼女が体験した事によって、差別心が無くなったか?ともあれ、それはそれで助かる。


「幾つか信じられない点がありましたが……嘘じゃなさそう」

「助かる、ありがとう。ああ、因みにこの話はは他言無用だぞ?」

「勿論知ってます。……私の話も同じく」

「了解」


 この通り、お互いのお話が一段落終わった頃、互いの過去を他人に話さないっと約束した。初対面の人にあんまり信じない方が良いんだけど、彼女に限って、約束を破る行為はしないだろう。そして、俺はここである事に気付いた。


「そう言えばさ……俺達、まだお前の名前を聞いていないよな?」


 そう。彼女ことフードの人はこれまで一度も自分の名前を教えて貰えなかった。彼女が過去の事を話している最中も無かった。その事を指摘された彼女は少し躊躇ってから口を開いた。


「……その前にもう一つ、交換条件がある」

「今度は何?」

「……私を、貴方の奴隷にして」

「「「「…………はい?」」」」


 彼女の爆弾発言に対して、俺達の思考が一瞬止まった。いや……ちょ、ちょっと待った。ドレイ?今、ドレイって言わなかったか、こいつ?ドレイってあの昔人身売買の奴隷?師匠とか、復讐のパートナーじゃなくって、奴隷!?


 …………俺は確か≪並列思考≫と≪思考加速≫のスキルが有ったよな?今発動せずに、何時発動するんだ!


「……な、何で奴隷なの?」


 二つのスキルを使ったまで、無理矢理自分を落ち着かせ、彼女のその発言の真意を恐る恐る尋ねた。その間、皆の思考も再活動し始めた。


「そ、そうですよフードさん!女の子はそんな事を言っちゃダメです!」

「別に私は、本当の奴隷に成る訳じゃない。あくまで形上な関係だけだ」

「どういうことだ?」

「……私が逃げた時に通った町も、村も獣人族を差別する。多くの人族は獣人族の事を嫌う、または物として見ている」

「なるほど。だから彼女は自分から〝奴隷〟と言う身分を持って、周りの人の目を自身から逸らす。自分が奴隷なら主人の命令を口実に行動できるからな」


 フードの人の意図を察したイリアが彼女の代わりに説明してくれた。な、なるほど。一応筋は通っているけど……幾ら形上の関係だと言え、いきなり俺の奴隷に成るって言われたらねぇ……慌てない方が難しい。


「い、一応理由は分かったけど……それはお前の名前とどんな関係?」

「その条件を受けたら……教える」

「はぁ~分かった分かった。お前がそれで良いなら」


 本当、俺は女の子の圧しに敵わないな。でもま、こっちに損はないから別にいいけど……唯一のディメリットは食費ぐらいか。まっ、大丈夫だろう。


「うん。なら次、私の名前を下さい」

「は?」

「私は復讐者に成る、昔の名前は要らない。だから付けて?」


 昔の自分を捨てる覚悟、か……まぁ、あれだけの事の後だから無理も無い。俺も覚悟を決めなきゃな、この人(狼?)に関わると決めた時点で最後まで見届ける覚悟を。


「言っておくが、俺のネーミングセンスは当てに成らないぞ?」

「構いません、お願いします」

「後悔すんなよ」


 さて、新しい名前を付ける事を承諾したのは良いものの、何を付ければいいのか全く分からん。


 復讐者……リヴェンジャーか?いやいやいや、絶対ダメ!それじゃ適当過ぎる!なら白狼族だから、ロボス?でもいまいちなぁ。じゃ逃走、か?……駄目ね。う~もう駄目だ。雪国からの復讐者の白狼族……当て嵌まるれる、かつ違和感のない名前って、そうはいないよな?…………うん?


「な、一応候補は有ったけど……」

「大丈夫、言って」

「……『セツ』なら、どう?」

「……」

「嫌か?」

「……いいえ、今日から私は『セツ』だ。これからよろしくお願いします」

「ああ。こっちこそ」


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