第七話
「…なるほど、大体の話が分かった。俺を助けて、ありがとう」
「良いわよ。私にとっても都合が良いから」
「それでも感謝しなきゃ。ああ、もう一つ聞いても良い?」
「ん?」
「封印って、俺が触るだけで解けるほど軟な物か?それじゃ、封印する意味が無くて?」
「実はね…あの封印は神の力を持った者だけが解くことが出来る。そもそもここは人間及び神の親族が来れない場所なの」
「は!?」
少女の爆弾発言で思わず声を上げた。人間と神の親族が来れない場所?何で俺がそんなところに!?やばいな、やっと話に付いて来たと思ったのに……
「ここは次元と次元の間に存在する、いわば『次元の狭間』みたいな場所だ。神の親族も正当な理由が無いと来れない場所よ。何せ、ここに来る為には膨大の魔力が必要だから――」
それから彼女の説明で分かった事を一段落で纏まると……彼女は昔、大きな罪を犯した。その罰として、神が彼女をこの次元の狭間と言う名の監獄に封印された。で、ここへ来るには膨大な魔力が必要。
彼女の説明で確信を得た事は幾つかある。先ず俺はゲームとかラノベやアニメの中によくある異世界召喚か異世界転生にあって、次元の狭間に飛ばされた。でも彼女が言うに、異世界召喚の儀は昔に幾度も行われたけど、俺が体験した激痛に前例は無かった……彼女の推測だと、今回の儀式、つまり俺を召喚しようとした儀式は不完全、もしくは何らかの妨害を受けた可能性が高いとのことだ。
俺の召喚した者の正体やその訳を気にならないと言ったら嘘のなるけど……今のこの状況でそれらを知る術は無い。別に知ってたとしても、多分俺の立ち位置は変わらない。ゲームでこう言った展開は大概魔王討伐みたいの理由で勇者として呼ばれたけど、先ず俺には人間側と言うよりかは魔王側か第三勢力の方が好ましい。
次に判明したことは、この世界は剣や魔法、まさにテンプレ的なファンタシー世界。世界の名は≪エグラード≫。そしてこの世界は基本、三つの次元が存在する。即ち天界、人界と冥界。
「今更だけど、まだ貴女の名を聞いてないな」
「そうですね。私の名はイリア。気軽に『イリア』と呼んで」
「分かった。イリア、俺は逆崎零。俺も零で呼んで良いよ」
「ん、知ってる」
彼女……もといイリアはそう言った時に悪戯を成功した子供みたいに微笑んだ。俺はそれを思わず見惚れてた事は秘密で。
「何でお前はそんな恥ずかしいことを……」
「え、まさか今まで俺が考えた事が!?俺の思考が読めるのか?」
「……ん」
何やら意味有り気な呟きを漏らしたイリアにこれまで彼女との会話で生じたある疑問を彼女に訊ねた。そしたら彼女は何とも表現し難い表情を浮かべながら小さく頷いた。ああ、なるほど……道理でイリアは幾度も怪しげ行動を取ったわけだ。
「怪しげとは何だ!?私だって恥ずかしいから、あんなことを聞いたら……」
「いや、別にあれは口説いてる訳ではなく。あれは本意というか、何と言うか……えっと、えっと」
「知っています。ただそんなに言われたのは……初めてなんで」
雰囲気は一気に気まずいモノに変わった。お互いの間は暫く沈黙が続けた。そんな雰囲気に耐え切れず、俺からこの沈黙を破ろうと決めた。
「あのさ、イリア。俺が考えることが分かるなら、記憶も?」
「……はい。ごめんなさい、勝手に見て」
「じゃ、俺がこの≪エグラード≫の人間じゃないことも」
「はい」
「なぁ、イリア。お前の目の前にいる俺は誰だ?」
「ふふ、私のことを可愛いと心の中に連呼する男。そして、私を封印から解放した男。他はいないよ」
「……それは、ありがとう……かな?まっ、良いや。でもあんまり他人に話すんじゃないぞ?」
「分かっています……その代わりと言っても何ですが、一つ私の願いを聞いていい?」
「俺ができる範囲の物なら幾らでも構わないが……で、内容は?」
「私の友人を救って欲しい」