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異世界無双ハーレム物語  作者: 時野ゼロ
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第六十二話

「ふぅ~何とか離れた……」


 俺達がイリアの警告を受け、素早くかつ密やかにその場から離れた。本来は夕方頃になったら風魔法で移動速度を上げて、最短距離で町に戻る予定だった。でもこの場合は魔法が発動した際の魔力が感じられないため、イリア達がそれぞれの実体化、及び擬人化を解いた。上手く密林の樹々を使って、異変に気付いた冒険者らしきのグループの目から潜り抜けて、そのまま町に戻った。


 あんまり町に戻るのが早過ぎると怪しまれるから、出来れば夕方ぐらいに帰れたい。でもまぁ、半日も過ごしたし……風魔法で移動時間を短縮させたって言えば大丈夫だよね?


 そんな疑問を抱えながら巨壁の扉を潜った。その際に――


「よっ!初めての依頼を無事にこなせたね!」


――なんと、扉の門番に声を掛けられた。一応周りを見て、彼が本当に声を掛けた人が俺なのか確認する。


「ははは。君だよ、君。ここに君以外、新人冒険者で初依頼を受けた人はいないだろう?」

「……どうして俺が冒険者になったばかりの事を知っている?」

「そう警戒するな。俺だって伊達にここの門番を五年以上勤めてたわけじゃない。この扉(ここ)を使う人は大抵冒険者だから。それに、記憶力だけは自信があるんだ」

「……なるほど。それで、何か用?」

「用が無いと声を掛けることが出来ないのか?そんな事は無いだろう。冒険者ってのは常にリスクを伴う仕事だから、一人でも多く、無事に帰られるならそれでいい。そう思わない?」

「そう……だな。ごめん、疑って」

「良いって。因みに、俺の名はジャスティン、君は?」


 っと、気軽に名乗った門番もとい、ジャスティンは涼やかな顔で右手を差し出した。こいつ……根は良い人らしいけど、なんか俺はこの人に何か引っかかる。何だろう?このもやもやの感じは?ともあれ、もしこいつが本当に何かを企んでいたとしても、ここで彼に目付けられたくない。少し躊躇って、俺も右手を差し出して、ジャスティンを握手した。


「よろしく。ルイン(・・・)だ」

「おう!よろしくな、ルイン」

「こちらこそ。では、ギルドに報告が有るので、失礼するよ」

「ああ。こちらこそ引き留めてすまん」


 今だニコニコ笑っているジャスティンを後にして、ギルドの方に足を運んだ。その途中は≪気配感知≫のスキルを使って、尾行する人の有無を確認し続けた。その一方、イリアからはこういった念話が届いた。


『先ほどの会話及び握手の中に魔法は勿論、スキルの発動も無かった』

『俺の考え過ぎ、か?』

『いいえ。レイさんがその人を警戒するのは正解だと思います。私もその人から嫌な感じがします』

『それはそうとして。本名を名乗らないのはいいけど、もっと真面な名は無いの?こっちは笑いを堪えるのは必死だぞ』

『悪かったって。その場凌ぎの為、咄嗟に考え付いた名前っぽい名前はそれしか無かったんだ』

『ジャスティンとやらの事は後にして、もうすぐギルドに着くぞ』


 確かにイリアの言う通り、今は依頼完了の報告を優先するべきだけど、でもなんか引っかかるだよなぁ。う~ん……駄目だ。初対面の人の本性はそう簡単に暴けないもんだな。早く気持ちを切り替えないと……


「はぁ~よしっ」

「何かお困りですか?」

「へっ!?」


 やっと依頼の達成を報告しようと、気持ちを切り替えた直後に困った顔の受付嬢が俺の顔を見詰めていた。ん?これは一体どんな状況?…………あっ。


「もしかして、俺、声に出した?」

「……あ、はい。てっきりお困りのようかと」

「ああ。うん、心配ないぞ。ちょっと考え事……っと少し緊張してたから。何せつい先日で登録したばかりだ」

「なるほど。何かあったら何時でも私が相談を乗りますので、君が少なくともDランク成らるまでの質問や面倒を見るのも一応私達の仕事に含まれています」

「へぇ~でも今日はいいや。それに、依頼達成の報告をしに来た」

「もう依頼を受けたのっ!?あ、いいえ。私は三日前から病を倒れて、今日で持ち場復旧したばかりで、君が登録した時の事情が知りませんでした。もしかして物凄く強い人?」

「いや、ただの薬草採集依頼だよ」

「それでも誇ろばしい事ですよ!登録したばかりでもうソロで依頼を挑む事なんて」


 何だ、この受付嬢は?やけにテンションが高いな。別に嫌いじゃないけど、初めて会った人にこのテンションはちょっと……どう対処すべきか分からない。


「兎に角、これが依頼の薬草、ちょうど5束を集められた」

「確かに。ではこちらが報酬の100銅貨です」

「……」

「あの~、一つ聞いていいですか?」

「何?」

「この薬草はどこから取り出した?」

「えっ!?あ、ああ。ポケット中からだよ?」

「でしたら、早めにせめてバッグを一つ購入する方がお勧めですよ」

「確かに、それなら装備を多く持っていられるな……因みに、その値段は……」

「それはそのサイズによるけど、基本は銀貨一枚ぐらいで売ってますよ」

「う~ん、考えとくよ。んじゃ、今日もう疲れたから宿に戻って寝るよ」

「分かりました。また近いうちに」


 やっと解放された~っと俺は心底感激している。あのテンションは疲れる。嫌な人じゃないんだけどなぁ……でもこの町の常識を教える役割を務めたいから、悪い印象は残したくないなぁ。


『随分と鼻の下を伸びていますね、レイさん?』

『別に伸ばして無いよ?』

『いいや。マスターは絶対、鼻の下が伸びてた。あの受付嬢、結構な美人だし』

『そんな事ないぞ。俺が好きのは…………』

『好きなのは?』

『もう知ってるだろうが、お前ら!』


 何の罰ゲームなんだよ、これは!?めっちゃ恥ずかしいな……


『兎に角!今後マスターがさっきみたいな事が起きない為にも、明日からは私達がびしばし鍛えるから。覚悟してね?』

『だからしてねって!ていうか、鍛えるのは戦闘に関するものだよね?』

『『『……』』』

『なんでそこで皆黙るのよ!?』


 こうして、俺達四人以外に聞こえない念話で通じた俺の叫びをもって、レヴィ達による特訓が幕を開けた。


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